2002年 6月1日(通巻147号)



目   次
巻頭言

政府首脳の非核三原則見直し発言に抗議し、撤回を要求する
             ………………………佐藤 光雄 

論 文 

研究部会プロジェクト活動報告G
    労働時間は労働条件全般の基礎
             ………………………西村 直樹
研究部会プロジェクト活動報告H
    国際労働研究部会活動の1年
             ………………………藤吉 信博
労働運動総合研究所の『地域政策研究プロジェクト』について
    −活動経過の概要
             ………………………芹沢 寿良
5月の研究活動・事務局日誌他
             




政府首脳の非核三原則見直し発言に
抗議し、撤回を要求する

佐藤 光雄

 「憲法上は原子爆弾(の保有)も問題ではない」(安倍官房副長官)、「原子爆弾は法理論的には持ってもいい」(福田官房長官)、「何ら問題発言ではない」(小泉首相)。
 これらの発言は、核兵器廃絶をめぐる国連における世界の流れも、そのなかで日本が果たすべき被爆国としての重要な役割もまったく眼中にない、おどろくべき暴論である。
 断固抗議し、「非核三原則」否定発言の撤回を強く要求する。
 日本国憲法は一切の戦力の保持を禁止しており、人類史上最悪の大量破壊兵器である核兵器の保有が憲法上認められないことは明白である。非核三原則はこの憲法と、被爆国国民として核兵器廃絶を求める立場からの、当然の原則である。
 いま米ブッシュ政権は「核体勢の見直し」(UPK)で、核兵器使用の立場を公然と明らかにし、そのための小型核兵器開発をすすめるため、今年中にも核実験の再開準備を開始していることが報じられている。
 そしていま、小泉政権と与党三党がすすめようとしている有事法制は、こうしたアメリカの無法な戦争に日本が参戦し、国民を動員する態勢をつくろうとするものである。国会審議の中で小泉首相は、核兵器先制使用を選択肢とするブッシュ政権の動きについても、これを公然と支持する答弁を行った。歴代日本政府は、核兵器搭載艦などの通過と有事再配備を認める日米核密約を結び、いまだにこれを破棄していない。一連の核兵器保有、非核三原則見直し発言は、こうした政府のアメリカの戦争への参戦態勢づくりと深く結びついているとみなさざるをえない。1996年の「日米安保再定義」と「日米安保共同宣言」、「新ガイドライン」は「日米の平素の協力に核抑止力と前方展開」が合意されている。2000年10月の「成熟した日米パートナーシップにむけて」(アーミテージ報告)は、国際ルールを無視した身勝手な外交政策と対日要求が行われているが、日本政府は完全に追従する姿勢を示し、世界の笑いものとなっている。われわれは、核兵器保有合憲の「解釈」を改めさせ、有事法制策動を阻止し、日本国憲法を守る、国民的大運動を大きく広げなければならない。

(原水爆禁止世界大会実行委員会運営委員会代表)



研究部会プロジェクト活動報告G
労働時間は労働条件全般の基礎

西村 直樹

 

1.労働法制改悪によつ労働条件の破壊

 @裁量労働と変形労働時間制が1日当たり・週当たり労働時間を伸縮自在にし、これまで以上の長時間労働を独占資本に保障した。独占資本はこれを大いに利用してただ働きを一般化させてきた。
 A派遣法・職安法改悪・3年の有期契約制を導入することで不安定雇用労働者を大量に生み出した。正規雇用労働者の派遣・疑似派遣(請負)労働者への置き換えを促進した。
 B女性労働者に深夜労働、交代労働、上限のない長時間残業、休日労働の強制させることのできる体制を独占資本に保障した(これを受け入れられない女性労働者をパートなどの不安定就業に追いやり、差別をいっそうひどいものにした)。
 C年金改悪が中高年労働者を黙らせ、リストラ「合理化」受入れを促進した。

2.リストラ「合理化」促進の産業法制

 @独禁法の改悪が純粋持株会社を公認し、産業再生法・会社分割法制と労働契約継承法が大企業のリストラ「合理化」を大きく促進した。
 A中小企業基本法改悪と大企業のリストラ「合理化」による中小企業労働者への玉突き解雇を促進し、また民事再生法が中小企業とりつぶしを促進し、かつてない高率の失業労働者をつくりだした。金融再生法・早期健全化法が中小金融機関とくに信金信組破壊を通じて中小企業倒産を促進し、今もつづいている。
 B失業率の増大が職場労働者の労働密度引き上げへの抵抗を抑え、セル生産システムなどJIT方式の導入が大規模に進行した。

3.労務管理システムによる労働条件破壊

 @最低労働基準をなくし、成果主義賃金へと移行させることで、労働時間を賃金からきりはなした。ただ働きはこれによって大きく促進された。
 A労働時間からきりはなされ、成果に基づいて支払われる賃金は、請負業者に支払われる請負契約料と似た性格となり、労働者の労働者性が薄められ、当然労働組合は存在制を薄められる(連合系労働組合の存在価値の急速な低下)ことになった。SOHOやインディペンデントコントラクター(ヤクルト販売の女性労働者のように)がひろがり、労働者としての法的保護を受けることのできない労働者を大量に生み出しはじめている。
 こうして集団的労資関係が崩されるので、個別に賃金を切り下げる攻撃が一般化し、大企業のリストラ「合理化」では子会社への転籍で3割、4割の賃下げが当たり前のようにされてきた。これへの抵抗のない労働組合をみこして、2002年春闘ではワークシェアリングと称して賃下げをさらに一般化しようとしたが、労働組合がすんなりと定昇凍結などの賃下げを認めたために日経連流ワークシェアリングは2002年春闘では行なわなくて済んでしまっている。
 B労働者は個々に企業経営者に雇ってもらうために、自身のエンプロイアビリティを高めるが、雇用そのものの拡大が保障されないので再現のない個別のサバイバル能力開発競争にたたき込まれることとなった。労働者の失業と貧困化は急速に深化した。  Cこれらの状況を作ることをさらに促進する上で、90年代後半の労働法制改悪だけでは独占資本に取って不足と感じられてきた。総合規制改革会議の2001年12月答申はそれを補うため、
*職業紹介業務の有料化・業者の参入促進、
*裁量制の拡大、
*有期雇用制の短縮・汎用化、
*派遣労働者の医療現場・製造業の現業への導入許容、
*特殊専門能力をもつホワイトカラー労働者への労働時間規制の撤廃、
などを推進しようとしている。

4.少なくない運動の成果

 以上に概括したとおり、21世紀の日本の労働条件は大変劣悪な状況を強制されてきた。しかし少なからぬ成果を日本の労働者・労働組合はあげてきている。
 資本の脅迫に負けずにたたかいを挑む労働者にたいして、人権を無視する暴虐な攻撃がかけられたが、NCR、日本IBM、セガなどでこれをはねかえすことに成功してきた。これらの成果は日産自動車やNTTのリストラ「合理化」攻撃に対して連合の労働者への大きな激励をあたえてきた。また連合系大手の中で、住友金属和歌山での転籍強要拒否、三菱電機伊丹でのただ働き残業の規制、スズキ自動車での年休取得条件の改善などの成果もかちとられてきた。これらのたたかいの成果の表現が最近の厚生労働省の一連の通達などに見えている。
 2001年4月6日のただ働きをなくすための厚労省通達
 2001年12月12日の厚労省、地公災補償基金、人事院の過労死認定基準の変更
 2002年2月1日の厚労省労働局長によるただ働きの告発を家族にも認めるとの回答
 2002年2月12日の厚労省の過重労働による健康障害防止対策
 2002年4月5日の厚労省のVDT作業の新ガイドライン、など

5.労働時間短縮闘争の再構築へ

 @憲法、労働基準法、労働組合法にそった要求の再確認
 A人間らしく働くための、職場の民主化・団結の見直し=民主的な職場を作るための労働組合のたたかいの意味
 B改ためて、ILO第1号条約に立ち返る。またILOのディーセントワークへのキャンペイン、EUの諸文書にあらわれている人間らしい労働への接近の努力、基本的人権を擁護する労働のありかたの提言、企業の社会的責任論の発展、国連社会件規約委員会の2001年8月の対日勧告などをふまえての宣伝活動

6.研究成果の取りまとめと出版

 以上のためにワークシェアリングについてのECガイドライン、これに基づくオランダ・モデルの研究などを積み重ねたが、2001年10月の段階で以下のような目次で研究結果の整理・執筆を予定するにいたった。
 2003年春闘前には刊行できるように分担する。
 序章
 第1章 グローバリゼーションのもとでのリストラ「合理化」と労働時間、財界、政府、労働組合ナショナルセンターの動向
 第2章 職場の労働実態と企業存立基盤の崩壊現象の告発
 第3章 リストラ「合理化」下の労働時間短縮闘争の構築
 第4章 諸外国の労働時間短縮闘争から学ぶ
 以上としたが、2002年春闘での日経連ワークシェアリング論をふまえ、構成を改めていくことを決定。次回までにその項目と執筆者を提案することになっている。

(理事)



研究部会プロジェクト活動報告H
国際労働研究部会活動の1年

藤吉 信博


1 小林勇理事の逝去をいたむ

 3月26日、小林勇理事が逝去さえた。6月23日午後2時から、全労連・平和と労働会館大ホールで、「小林勇さんをしのぶ集い」が開かれる。  小林さんは国際労働研究部会の活動を精力的に引っ張ってこられた。昨年3月24日に開かれた「労働総研研究部会・プロジェクト責任者会議」での発言は大変印象深い。  小林さんは「研究会員の小林由知さんが病魔にたおれたが、部会員の年齢構成が高いので、早急に若返りを図らないと、研究活動に支障をきたす。そのための常任理事会のイニシアティブを」と力説された。  昨年の5月2日に小林さんの自宅を訪れた。小林さんは6時間にわたって、ご自身の半生を熱っぽく語られた。東大卒業後、毎日新聞社に就職し、従軍記者としてフィリピン・マニラで敗戦を迎え、現地の知人にかくまわれたことや捕虜収容所での生活、帰国後、毎日新聞でレッドパージに遭い再び辛酸をなめたこと、平和運動の原点がそれらの体験に根ざしていることなどとともに、労働総研の発展と国際労働研究部会活動の充実についての貴重なお話であった。  その直後に入院されたから、小林さんと親しくお話できたのはそれが最期となった。

2 部会活動について

 小林さんの発言を契機に、国際労働研究部会の若返りという永年の懸案を解決するための措置が、常任理事会で講じられた。  常任理事会の努力の結果、2001年度の国際労働研究部会は、新たに2名の研究部会員の参加をえて、スタートすることができた。  議論のなかで、各研究部会員のカバーする地域も再編成され、全体としてカバーする領域が拡大した。討議も活発化している。  この研究部会の特徴は、「グローバリゼーション」=多国籍企業化した国際的独占資本とたたかう世界各国の労働組合運動と日本の労働組合運動との共通点や日本に活かせる教訓などを解明するために、労働総研と全労連国際局とが協力しておこなっている「世界の労働組合運動の現状調査報告」のための調査・研究である。  その成果として、今年度で第8回となる『世界の労働者のたたかい2002年版』(第8集)を発行することができた。頒価1000円(+送料実費)である。購入希望のかたは全労連・国際局(〒113-8462 東京都文京区湯島2-4-4)へ直接申し込んで欲しい。  執筆は、岡田則男(国際労働問題研究者)、小森良夫(国際労働問題研究者)、斉藤隆夫(群馬大学教授)、坂本満枝(国際労働問題研究者)、島崎晴哉(中央大学名誉教授)、宮前忠夫(国際労働問題研究者)、加藤益雄(全労連国際局員)の方々である。記して感謝したい。  本報告書は36カ国1地域をカバーしている。 *アジア(韓国、中国、中国・香港特別行政区、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、インド) *オセアニア(オーストラリア) *アフリカ(南アフリカ) *北米(アメリカ、カナダ) *中南米(アルゼンチン、コロンビア、ブラジル、メキシコ) *欧州(EU、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア、ドイツ、オーストリア、スイス、フランス) *東欧(チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア) *独立国家共同体(ロシア、ベラルーシ、グルジア、カザフスタン、ウクライナ)

3 公開研究部会の計画について

 『世界の労働者のたたかい2002年版』発行を期に、公開研究部会を開催したらどうかという議論もでている。  その理由は、@日本に紹介されている各国独自の制度などを歴史的・社会制度的に理解する必要があるが、それらのことを『世界の労働者のたたかい』で記述することは紙数の関係から不可能にちかいこと、A研究部会員間にもニュアンスの違いがあること、B『世界の労働者のたたかい』の活用と実践的な要望を知る必要があること、などからである。  公開研究部会の形式としては、『世界の労働者のたたかい2002年版』の執筆者を報告者にした公開研究部会、あるいはパネルディスカッションなどを、全労連との共催をも視野に入れて、おこなうことなどが議論されている。

(理事)




研究部会プロジェクト活動報告I
労働運動総合研究所の『地域政策研究プロジェクト』について
−活動経過の概要

芹沢 寿良


 労働運動総合研究所は、全労連の3回にわたる地域政策研究集会の開催にあたって研究所内に特別のプロジェクトチームを編成し、その成功のために必要な協力を行なってきた。
 その活動の終了に伴い、1999年3月、地域経済の崩壊状況と雇用失業問題の深刻化のなかで、労働組合運動の地域政策活動のあり方を調査、研究するための新たな「地域政策プロジェクト」をスタートさせることとなった。
 (1)プロジェクト活動は、1999年度は、3月以降、新たな体制の確立と活動目標の設定を視野に、暫定的な活動として、以下の研究会を開催した。
 @「北海道における公共事業の雇用、就労実態と改革方向について(北大椎名助教授の報告)」、A「大阪労連の地域的課題との取り組み(服部大阪労連副議長の報告)、B「福島県の産業・労働事情と県労連の地域経済と雇用確保の運動(小川福島県労連事務局長の報告)、C「都市計画法、中心市街地活性化法等の制定と中小商工業防衛の活動の現状(八幡作新学院大助教授の報告)」、D「地域政策と労働組合運動の今日的意義」(労働総研黒川代表の問題提起)、E「今日の労働組合運動の『地域』に対する認識と地域的課題への方針(労働総研芹沢理事の報告)」、F「『地方自治憲章(案)』の作成意義と基本的内容(中西都留文化大教授の報告)」について討論をおこなった。
 2000年度は、引き続き、G「大垣市の中心市街地活性化の新しい街づくり」(鈴木岐阜経済大教授の報告)、H「埼玉における県労連・地域労連の活動」(原富埼玉労連事務局長の報告)、L「神奈川における神奈川労連の地域活動」(岡本神奈川労連事務局次長の報告)を中心に取り上げた。
 以上のように、地域政策研究プロジェクトの研究会活動は、主に全労連傘下の大阪労連、福島県労連、埼玉労連、神奈川労連からそれぞれの地方における労働組合運動の現状と地域経済の再生・発展をめざす運動、緊急雇用対策確立の運動、介護保険開題など福祉充実の取り組み、対自治体要求実現の諸運動、地域組織の拡大の運動などについて副議長、事務局長クラスを招いて、具体的な報告を聞き、それらをめぐって意見交換を行なったことと、研究者サイドから「地域政策と労働組合運動」や「今日の労働組合運動の『地域』認識と地域的課題への対応方針」、自治体労働者の立場から自治体の在り方をまとめた「地方自治憲章」の意義と作成過程などについて、さらに地方の公共事業における雇用、就業実態とその改革方向、中小商工業の存立に関わる中心市街地活性化法など立法政策の問題点、地方都市における市街地活性化のための取り組みなどの具体的報告を受け、その質疑をおこなったことに分けることが出来る。
 そして全体を通して、労働組合運動と住民の要求の解決をめざすさまざまな住民の活動との幅広い対話と共同を発展させ、新たな活力ある「地域再生」をめざす取り組みや問題点などについて研究、討論を行なったが、地域政策研究プロジェクトの研究活動をさらに前進させる上で多くの示唆に富む有益なものであった。
 (2)地域政策プロジェクトとしては、以上の暫定的活動の成果の上に、今後の「研究計画」として、現代日本の地域社会の階級、階層構造の基本的な認識から地域における労働組合運動をはじめ農民組織、業者団体、中小企業者、その他さまざまな伝統的社会集団、新しい社会運動の特徴的な現状、それらの相互関係も出来るかぎり正確に把握し、今日における労働組合運動の地域政策活動の在り方についての研究討論を行ない、それらをベースに、全労連と地方労連の組織、とくに地域政策活動の取り組みの経過と現状、問題点の実情調査も適切な時期を選び、有効な方法で実施していくことを構想として設定した。
 しかし、この「研究計画」の具体化を検討する段階において、「労働総研の研究プロジェクトは、従来からおおむね2年を目途に調査研究活動を終了させ、その成果を対外的に発表して解散することになっている」ことが指摘された。2001年1月の地域政策プロジェクト会合では、プロジェクトの「活動期間2ヵ年」という慣例を遵守してその活動経過と成果をまとめるためには、現在のプロジェクトの体制とメンバーの活動事情に規定された能力などの各種の主体的諸条件を考慮すると、当初の「研究計画」を大幅に縮小変更して、残余期間は2001年7月末までに纏められる現実的で可能な課題の実施方法に限定していく以外にないのではないかということで基本的に意見の一致を見た。
 この段階で、暫定的に設定したメンバーから地域政策プロジェクトの正式メンバーを以下のように確認した。
 黒川 俊雄(労働総研顧問)
 平石 裕一(地域金融問題研究家)
 芹沢 寿良(労働総研理事)
 草島 和幸(労働総研事務局長)
 大江  洸(労働総研代表理事)
 小谷 紘司(政治経済研究所)
 大須 真治(中央大学教授)
 岡本  一(神奈川労連事務局次長)
 八幡 一秀(中央大学教授)
 小川 英雄(福島県労連副議長)
 その後、実施に向けて、地域政策プロジェクトとしての活動を締め括る新たな活動をめぐる議論をいろいろと重ね、その結果、@「地域再生をめざす全労連運動における地域政策活動の実践と教訓」をメインテーマとして、これまで研究会で活動経験や教訓を聴取した全労連傘下の大阪労連、神奈川労連、埼玉労連、福島県労連の四地方労連を調査対象にし、より詳細な聞き取り調査・資料調査等を実施して、その活動状況の実態、問題点などを具体的に把握するAその結果は労働総研の報告書としてまとめ公表する−の基本的二点を確認した。
 さらに、労働総研常任理事会との調整、協議を進め、6月下旬に一定の猶予期間の了承を得て、2001年9月からの実施となったのである。
 (1)調査対象−▽大阪労連 ▽神奈川労連 ▽埼玉労連 ▽福島県労連
 (2)調査方法−聞き取りと資料調査
 (3)調査の意義と内容
 今日、わが国は深刻な経済的、政治的、社会的危機が広がるなかで、国民生活の基盤である地方・地域に、その崩壊につながる数多くの困難や課題が相次いで生じて、打開、解決を求める各種の運動が多様な形で進んでいる。地方・地域の労働組合運動も固有の要求とともに地域的課題を重視し、民主的団体や住民主体の運動団体と共同してその解決をめざす取り組みを積極的に進めている。その現状と問題点をトータルに調査、把握することは、地域問題解決の運動の前進にとって、また労働組合運動の地域的基盤の新たな構築にとっても今日必要なテーマである。こうした調査実施に対する関心は高く、期待も大きい。今回の調査は、労働総研としての初めての全労連運動の実情調査ではあるが、時間的な制約のなかで、調査対象は少なく、調査方法も不十分さは免れないものである。そうしたなかでも、可能な限り今後の運動に役立つ問題提起の調査結果となるように取り組みたいと思っている。
 (4)調査のポイントは、「地方労連の地域政策活動の取り組み」として、四地方労連が特に重視して取り組んだ活動を中心に地域政策の立案決定の過程、運動の組織化(地域住民との関係、社会的な共闘関係)、具体的な展開状況、自治体(議会、行政)・企業、経営者団体との交渉、運動の結果、問題点、取り組み経験からの地域政策活動についての考え方、今後の取り組み方針、計画などの把握とする。  (5)調査グループ
 ▽大阪労連班−大江洸、草島和幸、小谷紘司、服部信一郎(特別協力者)
 ▽神奈川労連班−黒川俊雄、小谷紘司、岡本一
 ▽埼玉労連班−芹沢寿良、平石裕一、原富悟(特別協力者)
 ▽福島労連班−大須真治、八幡一秀、小川英雄 以上が、地域政策プロジェクトのスタートから四地方労連調査の実施にいたる活動経過の概要である。
 なお、各調査グループの調査結果に基づく報告書のメイインテーマは以下の通りである。
 1.大阪労連の雇用、就業、地域経済を守る運動の推進
 2.雇用と地域経済を守るための地域政策一神奈川労連の大企業のリストラ規制の取り組み
 3.地方・地域における社会保障運動発展の経験一埼労連と県社保協の「対話・共同」路線による介護保険制度改善の取り組み
 4.福島県をめぐる経済・政治情勢と福島県労連の雇用失業の願い

(理事)




 5月の研究活動
5月9日 女性労働研究部会=厚生労働省「ワークシェアリングに関する政・労・使合意について」
 13日 賃金最賃問題研究部会=賃金・所得の社会化
21日 労働時間問題研究部会=出版企画の再検討
23日 青年問題研究部会=「フリーター」について他
28日 政治経済動向研究部会=出版に向けて最終調整会議
29日 中小企業問題研究部会=「月刊全労連」6月号の合評



 5月の事務局日誌
5月18日 第6回常任理事会
  第1回理事会



 第6回常任理事会協議メモ
 
 (1)定例総会への提出案件を承認した。
 (2)理事・常任理事の退任と選任の中間報告と進捗状況について承認した。今期の死亡退任理事は田沼肇・嶋津千利世・小林勇の各氏である。
 (3)2002年度活動方針案骨格案をフリートーキングし、一部修正のうえ理事会に提案した。

 第1回理事会協議メモ
 
 (1)@2002年度の主な活動、A総会提出案件、B理事・常任理事の退任・補充についての報告を提案どおり承認した。
 (2)2002年度活動方針案骨子のフリートーキング概容は以下のとおりである。
 世界の情勢論との関連で:方針案には冒頭世界資本主義の動向を位置づける。解明すべきテーマとして、'80年代の新自由主義から'90年代ヨーロッパ社民政党の復活。ヨーロッパ・EU内の“ルペン現象”。戦後アジア諸国が押し付けられた反共主義の見直・克服方向と日本。日本はアメリカの駒のように動いている。等々。
 特に、アメリカ分析が重要。石油・軍事産業を代表するブッシュは、核戦争・バイオ戦争を本気でやろうとしている。エイズ感染者3000万人の半数がアフリカにいる。日本はこの問題で人類史的な国際貢献をすべきだ。
 多国籍企業の動向を、労働者・人民の生活と権利やアジア金融恐慌との関連で分析を深めるべきだ。
 労働運動との関連で:労働組合の役割の低下は企業主義の限界の現れ。脱皮の方向を要求政策と結びつけて出すことが重要。財界のパートを中心にすえた労働力政策・労資関係構築の動向や今春闘での賃金・労働条件引き下げ攻撃。連合の変化など労働組合の実態をリアルに分析する。労働貴族論・労働官僚論の再検討。
 能力主義・成果主義賃金が前面に出ている。かつての「支払能力論」や「整合性論」者は今何と言っている。労働者・労働組合が団結できる要求を検討する。「単身賃金論」を展開している論者は、家族賃金である「リビングウエジ」にどのような見解を持っているのか。今なぜ「単身者賃金論」なのか。サービス業とは何かを詰めて議論する必要がある。
 全労連が国民的論議の第一線に立って活動できるよう、労働総研は協力をすべきだ。
 公開研究部会は賛成。少なくとも2ヶ月前には告知すべきである。

次回常任理事会予定
  6月29日(土)13時30分〜
  ユニオンコーポ2F会議室

2002年度総会
  日 時:2002年7月27日(土)13時〜
  場 所:水道橋・グリーンホテル