2002年3月1日(通巻144号)



目   次
巻頭言

 『地域に役立ち失業者を支える就労対策を目指して』が問うもの……川村 雅則 

論 文

解雇規制立法化と破産法制の抜本改正について………………………黒川 俊雄 
研究部会プロジェクト活動報告D
   青年の不安定就労と職業訓練、教育をめぐって…………………竹内 真一 




『地域に役立ち失業者を支える
就労対策を目指して』が問うもの

川村 雅則

 「何回も仕事に出たい。不景気で働くところが無い。もっとこの事業を続けて私たちを使って欲しい。体が働けるうちは働いてそのお金で暮らしたい。」
 雇用・失業情勢がかつてなく深刻化する中、緊急地域雇用特別交付金事業(旧交付金事業)が、事実上継続されることとなった(新交付金事業)。冒頭は、旧交付金事業で側溝掘削事業に従事した、公営住宅で暮らす女性失業者(69歳)の訴えである。「臨時」「つなぎ」とマスコミには否定的な評価を受けて開始されたこの交付金事業だが、就労者から実際に話を聞くと、就労の機会が、賃金受給による生活保障だけではなく、就労を通じての社会的なつながりの回復や失業がもたらす深刻な精神的ストレスからの開放・軽減など種々の効果をもたらしていたことは明らかだった。しかも交付金事業における事業費当りの雇用創出効果は、例えば同じく雇用創出がうたい文句でもある公共事業と比して約8〜9倍(平均)もの差があり、かつ、事業の内容は、教育・福祉・環境分野などのいわゆる地域住民生活の改善を実現するものでもあった。大型公共事業に費やされる事業費総額からわずか1%でもこの交付金事業にお金がまわれば果たしてどれだけの失業者の救済と住民サービスの実現が可能になるのかとつい考えてしまう※。
 さて、このたびわれわれ、「基金(交付金)事業研究委員会」が作成した『最終報告書』には、本稿の題でもあるが、「地域に役立ち失業者を支える就労対策を目指して」という題をつけた。それは、政府・財界の思惑やこの制度の限界を冷静に見据えながらも、経済の振興と雇用の創出を地域から具体的に展開し得る交付金事業の豊かな可能性とそれを現実のものとしてきた労働組合・失業者運動への期待を示したものである。失業者の状態に最も共感的であるはずの労働組合が、広範な支持と共感が集まるこの(新)交付金事業を、各地域あるいは全国レベルでどう展開していくのかが問われている。
※例えば北海道内の平成11年度の公共事業着工実績は約1兆4000億円であるのに対して、新交付金事業で全国に配分されるのは三年分をあわせて3500億円。

(緊急地域雇用特別交付金事業研究会会員)

 『最終報告書』をご希望の方は、建設政策研究所北海道センター(TEL&Fax:011−251−3601)まで。頒価2000円。



解雇規制立法化と
破産法制の抜本改正について

黒川 俊雄


はじめに

 京浜工場地帯を抱える神奈川県は、長引く「不況」と大企業の地方展開や海外進出などによって、大企業の生産拠点から研究開発拠点に変わりつつあるとはいえ、相変わらず大企業の事業所が集積する地域である。そしてサービス業も含めてほとんどの産業で事業所数と従業員数も減少してきた。その上いまや不良債権の最終処理、新たな「リストラ」と称する大企業の大量解雇、事業所閉鎖、企業倒産に伴う大規模な雇用削減や下請再編・削減がおこなわれてきた。このような「リストラ」を規制する条例の制定に神奈川労連は、大企業労組がほとんどすべて「連合」に加盟している中で取り組んできた。その取り組みは「地域経済の発展と雇用の確保に関する条例」や「地域経済と中小企業・業者の振興をはかる条例」などの制定をめざす請願運動である。そして川崎市の地域経済振興条例の直接請求運動が民商、建設労連、川崎労連などによって取り組まれた。神奈川労連としては「一定の成果をあげている」とはいえ、「自治体等を活用した規制については成功していない」としている。
 「リストラ」規制と言っても、具体的には解雇規制、倒産企業に対する労働債権の保護強化、下請関連二法の活用と改善を地域から追及して立法化をめざす全国的な国民共同行動に発展させることが不可欠である。

1.解雇規制立法化のために

 解雇規制については、日本にも、整理解雇4要件という整理解雇法理があるけれども、それは実態法的な規制ではなく、労働組合運動の成果とはいえ、判例法理であるために、要件上および立証責任上の明確性を欠いている。それゆえ財界・政府は、この整理解雇法理が「終身雇用慣行」を前提としているとし、「バブル」崩壊後「終身雇用慣行」の終焉を口実にして、「解雇の自由」を一層前面に出し、解雇の正当性の立証責任を使用者が負わずに、判例法理の整理解雇4要件を緩和し、さらにその適用そのものを否定するまでになってきている。
 もともと「終身雇用慣行」自体が大企業中心の慣行であり、中小企業ではそのまま妥当しない。しかも政府財界が言うように、日本の大企業が「終身雇用慣行」を取ってきているから整理解雇法理が生まれたわけではない。日本の整理解雇法理も、労働組合運動の成果とは言え、ドイツで1951年に制定された解雇制限法や1963年に採択されたILOの「使用者の発意による雇用の終了に関する勧告」(第119号)の影響を受けている。
 ドイツでは1920年の従業員代表委員会制度の継続の上に、戦後1951年に解雇制限法が制定されて、これが解雇規制立法の先駆となった。同法は従業員代表に対する使用者の事前の企業情報開示と労使協議を前提にして、「社会的に不当」な解雇は無効として、解雇を「@労働者の行為・態度による解雇」「A労働者の一身上の理由による解雇」「B経営者の必要性による解雇」という三つに類型化して、いずれについても「社会的正当性」を立証する根拠を持たない解雇は無効であるとしている。しかも解雇を「最終手段」としてのみ承認するという立場から解雇回避可能である場合にも解雇は無効であるとしている。そして「社会的正当性」の立証責任は使用者にあくまであるとしている。
 「経営上の必要性による解雇」の有効要件は日本の整理解雇四要件と同じように、@緊迫した経営上の必要性、A解雇回避努力を尽くすことの必要性(配転の可能性、職業転換、向上訓練による継続雇用の可能性、労働条件変更による雇用の可能性、他の職場の時間外労働規制や短縮労働による雇用継続の可能性など)、B「社会的視点」(労働者の事業所所属期間、労働者本人と家族の収入・財産状況、労働者の年齢、健康状態、転居の有無など)を十分考慮することの必要性、「C経営組織法(1952年制定、72年全面改正)による従業員代表委員会の事前の意見聴取の必要性と異議申し立てによる訴訟終結までの継続雇用、となっている。
 しかし1970年代に、ヨーロッパでも解雇規制が立法化されている国は、このドイツとオランダなど少数であり、フランスでも立法化されたのは1975年であった。それ故1973年に多国籍化学企業であるAKZO社が、ドイツ、オランダを避けてベルギーで大量解雇を実施しようとして大きな問題になった。そこで旧ECは1975年「大量解雇に関する加盟国の法制の接近に関する指令」を出して、労働者に責任のない理由によって30日間企業規模別に従業員の10%相当の人員を解雇するか、90日間に20人以上の従業員を解雇する場合、大量解雇を回避し限定する可能性について使用者は従業員代表と意見の一致が得られるように協議し、従業員代表がこれに建設的提案が出来るように関連情報すべてを適宜提供しなければならない、とした。そして92年に改正して多国籍企業の国外の親企業の決定による子会社の解雇も適用されることになった。
 一方、ILOは1982年に63年の119号勧告を発展させた「使用者の発意による雇用の終了に関する条約」(158号)および166号勧告を採択し、「雇用は…妥当な理由がないかぎり、終了させてはならない」とし、「経済的解雇」(=整理解雇)については、従業員代表との雇用終了理由等の情報提供、終了を回避し最小にする措置に関する協議、終了に妥当な理由があることを立証する責任が使用者にあることを規定した。
 しかし、日本にはいまだにこのような解雇規制立法はなく、その前提となっているドイツの従業員代表委員制度やフランスの企業委員会制度による事前の企業情報開示・労働組合の枠を越えた協議制度も立法化されてはいない。それゆえILO条約・勧告やEU指令などで国際労働法上常識になっている解雇の正当性の立証責任が使用者にあることを自覚していない日本の使用者に「解雇の自由」があると日本の財界・政府は主張しているために、使用者が事前に企業情報開示もせず、解雇権を濫用しながら、その濫用の立証責任を労働者に負わせるようになってきている。このような流れの中で、大企業のリストラは、雇用労働者に対してだけでなく、中小企業、自営業者に対しても、下請関連二法にさえ違反して、協議もせずに、契約を一方的に無視したり、変更したり、打切ったりしてきている。その結果、失業者・半失業者が激増して「個人消費の低迷」をひきおこして、地域の自営業者、中小企業者、農漁民の営業と生活のゆきづまりや、地域に密着した銀行、金融機関の経営難を生み出してきている。
 以上のような流れを変えるためには、地域や企業内の複数の組織系統の労働組合は、労働組合の存在理由の原点に立ち返って団結し、共闘を進め、解雇規制の立法化をめざす国民的共同行動を地域から全国に向けて組織していくことが重要な課題になってきている。

2.破産法制改正による労働債権の保護強化のため

 民事再生法を申請して事実上倒産した池貝の場合、連合JAMに加盟するイケガイユニオン(組合員数430名)と全労連JMIU池貝支部(組合員数29名)の二つの労働組合を中心に全員解雇後も多くの労働債権者が行動してきている。
 しかし、労働債権者に支払われる退職金は未払い状態がつづいており、これは明らかに労働基準法第24条違反である。
 ところが、池貝に経営者を送り込んできている日本興業銀行を中心とする抵当権者などの「別除権者」である金融機関が全額を回収することになっている「再生計画案」が出された。そして池貝との取引企業の再生債権は1〜3%しか弁済されないことになっている。それゆえ裁判所が職権で選任している監督委員も「再生計画案に対する意見書」の中で、「別除権付債権」に対する「労働債権」との関係で「衡平・公正を欠く」と指摘している。この「再生計画案」は東京地方裁判所が2001年10月3日に認可決定するところとなったが、2001年11月7日の衆議院厚生労働委員会で厚生労働大臣は「労働債権保護の観点から十分な対応に努めてまいりたいと考えます」と日本共産党の木島日出夫委員に答弁している。
 現在、池貝に見られるように、企業倒産で解雇された従業員の退職金が確保されない事例がふえている。民事再生法では、給与、解雇予告手当、退職金など、従業員の労働債権は、再生手続前は「一般の先取特権」として債務者の一般財産からの優先弁済が認められ、再生手続開始後は、「計画」によらずに随時支払われる「共益債権」とされている。そして再生債務者である倒産企業の従業員の労働債権の弁済に金融機関が抵当物件の売却代金を充てるように、従業員が金融機関と折衝することになっている。
 旧労働省の「労働債権の保護に関する研究会報告書」(2000年12月13日)は、労働債権と抵当権、租税債権との優先劣後関係の根本問題を調査している。
 ILOは1949年「賃金保護条約」を採択してから、「使用者の支払い不能の場合における労働者債権(Workers' Claims)の保護を促進した加盟諸国の法令および慣行に著しい進展が見られた」ので、1992年に「使用者の支払不能の場合における労働者債権の保護に関する条約」(173号)を採択した。日本政府は(前述のILOの1982年の「使用者の発意による雇用の終了に関する条約」(158号)も批准していないが)この173号条約も国内法制の現状から批准しがたいと見て採択にあたって棄権しており、いまだに批准してない。この173号条約第8条には「労働者債権については、国内法令により、特権を与えられた他の大部分の債権、特に国及び社会保障制度の債権よりも高い順位の特権を与える」とされている。そしてフランスでは、労働者債権は租税債権だけでなく抵当債権よりも優先されることになっている。
 いずれにせよ、労働者債権を最優先させるようになってきているのは、人権尊重の思想の発展にもとづいている。
 日本では、労働者債権が保護される度合いが企業形態の違いによって「一般の先取特権」としても、商法第295条に比べて民法第308条では弱くなっている。また、労働者債権が保護される労働者の範囲については、民法第308条で「雇人」、商法第295条で「使用人」となっているように、雇用労働者だけであって、「請負」や「委託」等の契約にもとづいて労務を供給する者を含めてはいない。
 しかし、ILO条約で「労働者債権」というのは‘Workers' Claims’の訳であって‘Worker’は雇用労働者に限られるものではない。下請関係が普及してきている日本では、企業倒産によって債権者となっている業者も、“売掛け債権”だけでなく、「自家労賃」も保護されるように保護を強化すべきである。そして日本では、中小零細業者・自営業者が「大企業体制」のもとで上下関係となっているピラミッド型下請関係に依存して“仕事が来る”のを待ってきたが、地域で困難ではあるが工夫に工夫をこらして“仕事おこし”をすすめて、「リストラ」・親企業倒産を逆手に取って、対等・平等な取引き関係をつくり出していくチャンスにしていくことが大切である。そのためには、“仕事おこし”だけでなく、“地域づくり”“まちおこし”などと言われる地域振興政策を、雇用労働者の組織である労働組合が中心になって、中小企業者、自営業者、農漁民の団体や市民団体と協力して「対話と共同」によって作成し、実現していくための国民共同行動を、地域から全国に向けて組織していくことが重要な課題になってきている。

(このレポートは地域政策研究プロジェクトの神奈川チームの報告の一部である)

(労働総研顧問)




研究部会プロジェクト活動報告D

青年の不安定就労と職業訓練、
教育をめぐって

竹内 真一


1.部会の共通テーマ

 労働総研01年度「プロジェクト、部会代表者会議」直後の部会討議では、その内容を部会の研究活動にどう生かしていくかについて、意見が交換された。討議のなかでだされた問題の一つは、「青年労働者の要求」の作成を準備するうえで、部会はどのような研究テーマを設定すればよいか、またできるか、ということであった。
 とかく忘れがちなことであるが、青年の独自の基本的要求は「18歳選挙権、18歳最低生活の保障、18歳までの中等教育」である。わが国では、青年に「18歳までの中等教育」を保障する教育制度は整備されてきた。青年の高校進学水準の高さは、それを物がたっている。しかし、青年の政治的、社会経済的な基本的権利は、まことに低く、貧弱なである。
 「18歳選挙権」は、いまでは国際的な常識になっている。しかし、わが国では民主的青年諸団体のいくどかの18歳選挙権獲得の運動によせられる、労働組合や民主団体の実際の協力と援助は青年の期待にこたえるものだったとはいいがたい。また、教職員組合と教育労働者が、この運動の推進主体となったとは聞いていない。「18歳最低生活の保障」がどの程度に実現されているかは、最低賃金制の現状をみればよくわかる。
 こうした政治的、社会経済的権利の状態がわが国の青年教育に反作用し、青年の発達におとす影をとみに濃くしている。
 「青年労働者の要求」を準備するということは、このような青年の現状を深く追求し、その解決の道を具体化する作業をぬきにしてはできない。それは部会の研究討議の共通のテーマであり、長期の課題として確認されてきた。

2.部会討議の経過

 2001〜02年度も、「最賃制の現状と課題」・「日本IBMにおける技術労働者の状態」・「大学再編の最近の動向−−とくにエリート養成大学を中心に」・「高卒者の就職動向と就職保障のたたかい」について部会の、また他部会のメンバーから報告をうけ、討議をつづけた。一連の討議であきらかになったことは、体制的な「教育改革」の進行と青年の失業、不安定就業の拡大が「青年の危機」をかってなく深刻にしているとともに、日本社会の階級的分極化が青年の進路と状態に先端的に反映されているという現実である。
 たとえば高校段階では、普通・総合・専門高校の三類型化とその内部でのコース分化のなかで、各都道府県における中高一貫校の新設や「スーパーサイエンスハイスクール20校」の展開をとおしてエリート育成コースの設置が進行している。また大学段階では、高度な研究を中心とする大学院大学・高度の専門職業人を養成する大学(たとえばロースクール)・多くの大手私大と地方国立大学を組みこむ教養大学・地方私大の「生涯学習大学」(大学のカルチャー・センター化)への分化、大学の自律と自治を切りちじめると大学管理施策が実施にうつされている。「トップ30校」への予算の重点配分は、その露骨なあらわれである。
 他方、新産業としてのIT産業の担い手としてSEを日本IBMの職場でみると、それは産業別・顧客別に技能が特化され、OSがかわれば新しいものはつくれない技能の陳腐化が現実になっている。かっては他産業以上だった初任給も、手当て込みで約20万円にとどまっている。
 制度的、実態的分析から、青年の要求、気分、動向の具体的把握に移るうえで、部会運営や研究手法に新しい工夫が必要になっている。これまでの部会活動を支えたメンバーから高齢を理由に辞退者もあり、とくに手薄な青年労働者の研究のためには、それが本部会の重点テーマでもあるので、新しい活力をもとめて部会の再編の必要も認識されている。

3.これまでの研究結果のまとめ

 部会の研究の結果を「労働総研クオータリー」にまとめて、もう二年余になる。そこで部会が共同してまとめられるテーマをきめるために、各自の、あるいは部会としての検討課題をレジメ化し、それをふまえて二回の検討会をもった。その課題の内容を要約すると、こうである。

A.青年の職業教育訓練

1.概念の吟味(職業の概念・ILO勧告の定義・労務管理上の教育訓練の定義)

2.IT革命との関連


 林紘一郎・牧野二郎・村井純監修『IT2001 何が問題か』(2001)は、IT(情報技術)またはICT(情報通信技術)革命という言葉によって限定される条件と問題点を整理している。それによると、IT革命とは、パソコンの高性能化とインターネットの普及によるビジネス革命のことである。電子商取引とは、インターネットを通じて製品やサービスの注文・取引を行うことである。が、そのもたらす影響は核兵器並の破壊力がある。それは「社会制度の根本革命も同時に迫る『革命』である」。

3.職業訓練の課題──日本的職業訓練の性格
B.「就職連絡会」の活動と日高教・技術職業教育検討委員会「技術職業教育の提言」について
C.政策提言の関連研究として青年労働者の賃金(最低賃金)・住宅・教育・職業訓練が焦点になる。そのばあい各国法制の比較研究が必要になる。今回の中間まともめとしては国際比較を通しての日本の教育・職業訓練制度の問題と政策上の課題があげられる。
D.青年問題と青年運動の検討

1.全労連・連合をとわず、組織と運動の現状に危機感、組織建設が焦眉の課題。これらの運動体で「なにが、どのように」問題とされているか

2.民主的青年運動研究の到達と評価。青年問題研究の概観をつかむこと

3.これまでの職業技術教育研究の引き継ぎ

4.労働者教育研究


 「60年代はじめ、60年代〜70年代初めの、二つの時期を節に問題意識の高揚があり、さまざまな問題をはらみながら、70年代から80年代初めにかけて、集団研究と出版活動の持続が見られるが、以降こうした形での展開はみられない。
 この「空白」・・・はなにを意味するのか。80〜90年代の、実践・理論研究をどう整理するか、他の実践・研究分野も視野にいれつつ、一定の整理をしておきたい」。

 二回の検討の結果、部会研究報告を青年と職業教育・訓練にしぼり、一応のまとめをつける。2002〜03年度は新テーマを設定し、深い活動を再編することとした。現在、報告準備のための作業を、つぎのようなテーマでの報告討議が進行中である。
 第一回 日本的職業訓練の性格
 第二回 日高教「技術職業教育の提言」(またはその骨子)の検討
 第三回 ドイツ・フランス・イギリスの職業教育・訓練の特徴とわが国の比較──青年労働者の権利の角度から  第四回 フリータの現状、内部区分、全体としての評価
 「労働総研クオータリー」発表の最初の部会報告のなかで、日本の教育・職業訓練の研究はタテ割り行政によって教育研究と職業訓練研究が分離しておこなわれてきた経緯があり、その結果民主的教育学の内部でも職業訓練の軽視が長年にわたり支配的であり、それがいわゆるIT革命をともなう根本的な構造変化、直接には最近の失業の進化のなかでの民主的教育の対応の弱さにつながっていることを指摘した。
 本年冒頭の部会で予定した研究者からも、戦後における教育概念や「教育をうける権利」の解釈の狭さが指摘されている。英語文献の教育の定義では、教育とは「転職や仕事のために訓練やインストラクションによって資格を取らせること」など必ず技能の習得の問題、callingの問題がはいっていること、国語辞典にみられる教育の規定とちがうこと、また最近の国際的な人権関連の文書では、日本国憲法の順番とちがい、そして生存権とかかわらせて教育の権利を考えるという従来の発想とちがい、文理上労働の権利とつながって教育の権利を考えていることが指摘され、日本の教育関係者のあいだでは「労働の問題を無視して教育を論じている傾向がある」と問題提起されている。
 日本の教育観そのものの根本的転換の必要は、労働者と労働組合にいま教育とはなにかを、深刻に問いかけている。

(青年問題研究部会責任者・理事)




 2月の研究活動
2月2日  関西圏産業労働研究部会=リストラ問題をとらえる視点
  6日  社会保障研究部会=出版計画について
  21日  女性労働研究部会=「女性の年金検討会・報告書」について
  23日  基礎理論プロジェクト=家族賃金、個別賃金をめぐる動向について
  25日  中小企業問題研究部会=中小企業問題と労働運動の課題について



 2月の事務局日誌
2月22日 第7回企画委員会
  23日 第4回常任理事会




第4回常任理事会協議経過
報告事項

(1)「雇用問題緊急提言」記者発表・1月31日(厚生労働省記者クラブ)、2月4日三田クラブ(労働問題専門紙・誌)とその反応について報告し、討議した。

(2)企画委員会の内容は協議事項との関連で報告した。

(3)その他の事項として、全労連「組合員教科書」発行とその反応、講師活動を通じて見た02春闘の職場・地域の状況などについて報告し、討議した。
協議事項

(1)死亡による退会3名と1名の新規加入を承認した。

(2)基礎理論・不安定雇用研究プロジェクトについて


@“基礎理論”はメンバーも確定し、2月23日、第1回の研究会がおこなわれた。報告レジメおよび討議要旨は別途公表することとした。


A“不安定雇用”メンバーの構成とともに既存の研究会との関連など若干の調整がのこされているが、4月13日(土)に第1回研究会をおこなうことになった。


B二つのプロジェクトのテーマが他の研究部会と関連することを考慮して、必要に応じて協力すること、年間を通じて何回かの「研究例会」を開くこと、研究会の報告レジメと討議要旨は全研究部会責任者に送付すること、などが確認された。

(3)研究部会・プロジェクト責任者会議を開催することとした。


日時:3月30日(土)13時〜17時
場所:ユニオンコーポ2F会議室

(4)2002年度定例総会開催(予定)


7月27日(土)13時から

(5)総会に向けた諸会議日程を以下のとおり確認した。


@第5回常任理事会:4月20日(土)13時30分〜


A第6回常任理事会:5月18日(土)11時〜


B第1回理事会:5月18日(土)14時〜


C第7回常任理事会は6月中におこなうが日程は今後調整することにした。


D第2回理事会は定例総会当日の午前中におこなう。

(6)その他:研究例会を東京以外の地方で開催することなどについて今後検討していくことにした。