2002年2月1日(通巻143号)



目   次
巻頭言

 「小泉改革」の終焉…………………………………………………平田 寛一 

論 文

「『緊急地域雇用創出特別交付金』を活用し、改善を求める緊急提言」
の発表にあたって……………………………………………………大須 真治 
研究部会プロジェクト活動報告C
   最近の政治経済動向部会の議論から…………………………大木 一訓 




「小泉改革」の終焉

平田 寛一

 田中真紀子前外相の更迭問題が、小泉政権の屋台骨を揺るがし始めた。頼みの支持率は崩落、「小泉改革」も風前の灯火だ。外相更迭によって、これまで覆い隠されていたこの内閣の実力と、「小泉改革」の虚構性が、一気に露呈した格好だ。
 小泉政権は支持率だけが頼りの政権であるため、この政権の命運を握るのはやはり支持率である。支持率が50%前後を維持していれば、政権はどうにか存続するだろう。「抵抗勢力」も早急な政権交代を望んでいるわけではない。「抵抗勢力」の側にこれといった後継候補がいないからである。彼からが望んでいるのは「抵抗勢力」の声を聞く「物分りの良い首相」(関係者)を自分たちが担ぐことである。そのために、閣内に「抵抗勢力」を送り込んで内側から政権を乗っ取り、最期は内閣改造で党三役ポストを奪還する、というのが彼らの基本戦略だ。
 そうなればもちろん「小泉改革」は頓挫する。しかし、はっきり言って「小泉改革」はすでに昨年の秋に終わっている。実は小泉首相は昨年秋から「改革」を軌道修正するタイミングを計っていたフシがある。そうさせたのはデフレの進行と金融不安の高まりであった。金融危機が勃発すれば政権は吹っ飛ぶ。危機感を抱いた首相は、「金融危機は絶対に起こさない」と誓ったが、そのためには「抵抗勢力」の協力が不可欠であった。こうして表向きには「抵抗勢力」と「対決」するポーズを見せながら、政策では「抵抗勢力」と談合するという構図ができ上がっていった。外相更迭は、この軌道修正の仕上げであったと言ってよい。つまり外相更迭は「小泉改革」が後退した結果であって、原因ではない。
 自民党の古賀誠前幹事は先週末、盛岡市内で講演し、「これから本格政権として与党が力を合わせ、本物の政治をやっていかなければならない」と述べた。「本物の政治」――これは、「改革」の主導権はこれからは「抵抗勢力」が握る、という意味である。ただし、これはあくまで「抵抗勢力」の「抵抗勢力」による、「抵抗勢力」のための「改革」でしかない。今後は、「抵抗勢力」がますます小泉包囲網を強め、「小泉改革」を換骨奪胎していくだろう。しかし、その結果、市場が構造変化を強制するリスクが一段と強まる。保守勢力は総力を挙げて市場と対決するだろう。しかしそのコストを支払うためには彼等は大幅増税、デットマネタイゼーション(政府債務の貨幣化)といった自己破壊的な政策へと突き進んでいくことになる。

(評論家)




「『緊急地域雇用創出特別交付金』を活用し、改善を求める緊急提言」の発表にあたって

大須 真治


「緊急提言」発表の経緯

 労働運動総合研究所は本年1月、「『緊急地域雇用創出特別交付金』を活用し、改善を求める緊急提言」を発表し、厚生労働省記者クラブ(1月31日)、三田クラブ(2月4日)などでそれぞれ記者レクチャーをおこなった。
 この「緊急提言」の全文は、労働総研のホームページ(http://www.iijnet.or.jp/c-pro/soken/)に掲載されているので参照していただきたい。
 「緊急提言」は、昨年10月、研究所内につくられた「公的雇用・就業拡充のための政策提言作業部会」(代表:大木一訓当研究所代表理事)が、その研究成果の一つとして緊急にとりまとめたものである。なぜ緊急に「提言」をとりまとめ、発表したかについて若干の説明をおこなっておきたい。
 昨年秋に労働総研内につくられた「公的雇用・就業拡充のための政策提言」研究プロジェクトチームは、現下の深刻な雇用・失業情勢にかんがみて、今日の雇用・失業状況と雇用・失業政策に関する調査研究をおこない、当初は2002年3月末までに、雇用・失業政策についての体系的な提言=「公的雇用拡充のための政策提言」を、おこなう予定で作業をすすめてきた。
 ところが、2002年3月で終了するとされていた「緊急地域雇用特別交付金」(「旧交付金」事業に変わって、「緊急地域雇用創出特別交付金」(「新交付金」)が新たに発足する事態となった。この「新交付金」事業は、のちにみるように、さまざまな弱点をもってはいるものの、主体的・積極的に活用していくならば、現下の深刻な失業者の仕事と生活を保障する上で一定の積極的役割をはたすことができるという結論に、研究プロジェクトチームがたっしたからである。
 「新交付金」事業は、昨年11月に閣議決定され、12月に補正予算が確定したという事態を考慮して、研究プロジェクトチームは、「新交付金」事業の積極的活用が緊急に求められていると判断したので、「公的雇用拡充のための政策提言」に先立って「緊急提言」をとりまとめることとしたのである。

「旧交付金」事業の特徴

 研究プロジェクトチームは、「新交付金」事業の分析にあたって、1999年6月以後実施されている「旧交付金」事業に注目をし、調査研究を開始した。研究プロジェクトがこの事業に関心を持った理由は、この失業対策がこれまで政府がすすめてきていた雇用・失業政策とは、かなり性格を異にするものとなっている都判断したからである。
 従来、政府がおこなってきた雇用・失業政策の基本は、失業者に対して、直接にその仕事や生活の保障をおこなうものではなく、事業主に対して助成をおこない、民間企業の活力に依拠して、失業を「予防」したり、再就職の促進をおこなおうとするものであった。いわゆる「失業なき労働移動」の実現である。
 これに対して「旧交付金」事業は、基金を「都道府県に交付することにより、各地域の実情に応じて、各地域公共団体の創意工夫に基づき緊急に対応すべき事業を実施し、雇用就業機会の創出を図る」というものである。失業者に仕事を保障することによって、失業に対処しようとするものである。われわれは、かねがねこのようなタイプの失業対策が必要であると考えてきたが、政府は、なかなかその実施にふみださなかったというのが現実であった。
 政府が「旧交付金」事業の実施にようやく重い腰をあげたのは1999年になってからであった。ようやく踏み切ったとはいえ、それが長期の安定した制度として確立することを極力避け、あくまでも臨時・応急の措置にとどめ、いつでも止められるような事業としておこうとするのが政府の姿勢であった。
 しかし、「旧交付金」事業をひとたび実施してみると、その雇用創出効果の高さがあきらかになり、政府もそれを認めざるをえなくなった。建設政策研究所北海道センターが実施した調査結果でも、「旧交付金」事業の雇用創出効果の高さがあきらかになっている。それだけでなく事業への就労者、事業の施行者、自治体など、多方面から、「旧交付金」事業に関連する人びとが、評価していることが確認された。「旧交付金」事業を評価する声は、「旧交付金」事業の延長を求める声の高まりとなった。各地で「旧交付金」事業の延長を求める運動が起こり、全国の500に近い地方議会が延長の決議をおこなうまでになった。

「新交付金」事業の意義

 そうした声を背景に、当初、概ね2年で終わることしていた「旧交付金」事業は、2001年度補正予算で、新たな「交付金」事業の発足に引き継がれることとなった。新たな「交付金」事業である「緊急地域雇用創出特別交付金」(「新交付金」)事業は、3年間、3500億円で実施されることとなった。
 研究プロジェクトチームは、今日の失業状況を考慮すると、この「新交付金」事業を最大限に能動的・積極的に活用していくことが重要であると考えた。というのは、長期化し深刻化する現下の失業情勢のもとで、失業者の就労状況は極端に悪化し、その生活は破綻に瀕している。こうした失業者の実態を考えれば、政府はもとより、労働組合運動をはじめとする国民的な共同の最重要課題のひとつが、失業者の困窮を少しでも和らげ、生活の破綻を極力回避するための政策的努力に最大限の力の集中をさせることが必要とされているのである。そのため少しでも失業者の仕事と生活を保障するために利益になるものは、有効に活用していかなければならないし、当面活用できないものも活用できるようなものに変えていくことが要請されているのである。
 そのような視点で「新交付金」事業を見てみると、この事業は多くの問題点をもってはいるとはいえ、これを積極的・能動的に活用していくことによって、地域の失業者や業者、住民などに利益をもたらす事業に発展させていく可能性をも同時に内包しているということがあきらかとなってくるのである。しかも、「新交付金」事業では、「旧交付金」事業を運営する中で出てきた問題点をそれなりに改善していく方向も「実施要綱」や「実施要領」に反映されており、これらを誠実に実行し、さらにその考えを拡充していくならば、それは地域の失業者、住民の.要求を実現する上で一定の重要な結果を生むことが確実であると判断することができる。
 「新交付金」事業がそのような結果をもたらすものとなりうる根拠は、「新交付金」事業の以下のような要因の中にあると、考えることができると判断している。

公的責任による雇用創出

 第一に、「新交付金」事業は、失業者が仕事を確保し、安定した生活を確保することを目的にしている。「新交付金」事業は、政府・自治体が雇用について責任をもち、雇用の創出をおこなうものであるから、それによって失業者の一定程度の就労を間違いなく確保することになる。これは民間企業の雇用吸収力に依存して、民間企業に助成をおこなって、雇用の確保をおこなうよりは、ずっと直接的で、即効性のあるものである。また、公的な雇用創出を出発点にして、波及的に雇用を拡大していく効果を産むことは間違いない。このよう「新交付金」事業は、長引く不況で活力を失った民間企業の雇用吸収力をあてにしておこなう雇用・失業対策よりも、ずっと直接的で、即効性のある失業対策となりえるものである。

地域住民の日常的な要求と結びつける可能性

 第二に、「新交付金」事業は、単に失業対策として効果が大きいだけでなく、この雇用創出を地域住民の日常的な要求実現と結びつけて実現できうる要素をもっている。「新交付金」事業は自治体の創意工夫によって就労の場をつくりだすこととなっている。自治体は地域住民の日頃の要求を事業として実現させながら、就労の場をつくりだすことができる。多くの住民が自治体にさまざまな要求を持ち込んでいけば、その要求の実現と就労の場の確保を結びつけることができる。地域の業者や労働者が地域住民のための地域密着型の仕事をおこなっていくことができる。そのように事業を運営していく要素を「新交付金」事業はもっている。

失業者の力を結集する可能性

 第三に重要なのは、失業者の声を集めるという点である。失業者は単に救済されるだけの対象ではない。失業者の問題は、失業者自らの声を集め、失業者自らの力によって解決されることが本来の姿である。しかし現実には、失業者は自らの問題を自ら解決していく力を失わされている。今日の失業者は、自らの生活を維持していくのにきゅうきゅうとしていて、力を合わせて失業者の仕事と生活の問題を解決していくために結集して運動していくだけの余裕をもっていない。
 その上、政策的に失業者は個々バラバラにされている。こうした状況から脱皮するために、失業者の生活に最低限の余裕が保障されなければならない。「新交付金」事業は、失業者に最低限の余裕を保障する要素をもはらんでいる。また、事業を通して、失業者が相互に交流する機会をつくることが可能となる要素をももっている。「新交付金」事業はこのように失業者を単に救済するだけでなく、失業者に最低限の仕事を保障することによって、失業者に物質的・精神的な余裕を与え、失業者が自らの声を集める力をえることができる可能性をもっているとともに、失業者が結集できる場を提供する要素をふくんでいる。
 こうして「新交付金」事業をとおして、失業者は失業問題を自ら切り開いていく力をえる可能性をもつことができる要素をふくんでいる。そのことが現実化していくならば、まさに失業問題は民主的に解決される方向をたどるであろう。失業問題を民主的に解決していく力を育てる場として、「新交付金」事業は重要な役割を果たす可能性があるのである。

地域住民要求実現とむすびつける可能性

 さらに第四には、地域における雇用創出の問題の解決を、地域住民の要求実現とむすびつけていける可能性をもっている。自治体を中心に地域の失業者・業者・住民が結集し、それら地域住民の力によって、地域の雇用問題と地域住民の生活改善のためにでてくるさまざまな要求を実現していくことと一体のものとして、事業化していく要素をふくんでいる。地域におけるさまざまな構成要員が一体となって、あるべき地域の要求を実現していく方向で、地域における雇用問題の解決と結びつけて事業化していく可能性がある。
 このようにして失業問題の民主的な解決と地域問題の民主的な解決を同時に実現するものとして「新交付金」事業を活用していく運動がいま緊急に求められているのではないだろか。

 以上のような発展の萌芽を内包した「新交付金」事業を自主的・積極的に活用することが重要である。これらの積極的要素・可能性は、失業者や住民の利益のために最大限に活用されて、はじめてその現実化への威力を発揮できるものであり、そうした取組みをおこなわなければ、その結果はたちまち予算の無駄使いと、不安定雇用の無制限な拡大に帰結することとなるに違いない。
 研究プロジェクトチームは、「新交付金」事業の主体的で積極的有効活用を、緊急に訴える必要を痛切に感じて、「緊急提言」をおこなうこととしたのである。われわれは「新交付金」事業の能動的で積極的な活用をつうじて、「新交付金」事業を、現在の事業からより安定した失業対策制度に発展させていくことが必要であると考えている。そして今日の貧弱な雇用失業政策を豊かで安定したものにしていく道筋をつくっていかなければならないと考えている。「新交付金」事業の積極的な活用は、失業者の仕事と生活保障のための、深刻な失業問題の現実から出発するそうした道筋の最初の入り口にならなければならない。
 以上のような考えにもとづいて「緊急提言」を作成し、多くの人々にわれわれの考えを訴えることとした。

(労働総研常任理事・中央大学教授)




研究部会プロジェクト活動報告C

最近の政治経済動向部会の議論から

大木 一訓


1 本研究部会の課題

 最近の情勢変化はきわめてテンポが速い。しかも、ドラスティックな質的変化をともない、地球規模的な広がりをもつものが少なくない。そうした情勢変化を、労働運動の見地からできるだけ敏速に把握・分析し、必要な情報や資料の提供に努めていこうというのが、本部会の第一の課題である。それとともに今年度は「活動方針」にも述べられているように、全労連が採択した「21世紀初頭の目標と展望」を念頭におきつつ、労働運動の側からの経済政策を、小泉「構造改革」に対抗して研究し提起していきたいと考えており、それがもう一つの課題となっている。
 第一の課題については、部会研究会の成果を「情勢四季報」的に、研究所の出版物等に発表してきている。昨年総会後について言えば、たとえば『季刊・労働総研』に掲載された、内山エ・天野光則「今日の政党配置と小泉『改革』のねらい」、藤吉信博「国民諸階層の全般的状態悪化と小泉『改革』」(いずれも2001年秋季号)や、平田寛一「激変する国際政治経済情勢と小泉『改革』」(2002年冬季号)がそれである。また、全労連・労働総研編『2002年国民春闘白書』の第1章「今日の経済政治情勢と国民的共同への諸条件」も、本部会での討議を土台として執筆されたものである。
 もう一つの課題については、昨年来、竹中平蔵氏の「経済理論」研究などもふくめ、まず小泉「構造改革」の分析に力を入れてきた。そして、その成果を近く、単行本『小泉「構造改革」の政治経済分析――労働運動からの日本再生への展望』(仮題)として刊行する計画をすすめている。
 いずれの課題についても、情勢に立ち遅れない敏速さとともに、より深くより系統的な調査と分析が、今後いっそう求められてくるであろうが、その要請に応えていくことは容易ではない。その点では、部会研究会の構成メンバーだけでなく、他の研究部会や会員のみなさんにも、より広く協力をお願いしていきたいと考えている。そこで、以下では、本部会研究会のなかで、どんな論点が議論されているかを、筆者なりに若干紹介しておくことにしたい。

2 小泉「構造改革」破綻と経済危機進行への対応

 アメリカの経済学者ポール・クルーグマンが、竹中平蔵氏と懇談した後『ニューヨーク・タイムズ』で、「『改革』は失敗する、このまま『改革』をすすめれば悲惨な事態になるだろう」と警告したという話は、『労働総研ニュース』No.137でも紹介されているが、今日の日本経済は、まさにその「悲惨な事態」の真っ只中に投げ込まれるに至っている。経済政策の破綻は目を覆うばかりであり、すでに「デフレ・スパイラル」と国際的な「日本売り」が進行しているにもかかわらず、小泉内閣は不良債権処理と大規模リストラをいっそう加速させようとしている。この点ではまた、やはり破綻しつつあるアメリカ経済とブッシュ政権に見る狂気のアメリカ帝国主義が、日本経済を大々的に収奪しようとしている、という問題もある。いまや労働運動は、進行しつつある経済破綻が、具体的にどのような形で現れ展開しつつあるのか、それに対して、破綻の進行を少しでも抑え制限しつつ、労働者・国民の生活を守るためにできることは何かを、具体的実践的に検討しなければならなくなっている。たとえば、ペイオフ実施、海外生産移転、貿易黒字急減、円安、国債暴落、銀行倒産、倒産多発、大量失業発生などの事態が、どう進行し、どんな生活難や地域破壊をもたらすことになるのか。それらに対して、国民諸階層の要求実現との関連で、緊急の対応策および抜本的解決への接近策の問題があろう。現在すすめている公的雇用拡大にかんする緊急提言プロジェクトなども、そうした政策的努力の一環であるが、そうしたものが他の領域でも準備される必要があるのではなかろうか。

3 労働運動による経済政策・産業政策の提起

 情勢は、労働運動の側からの、小泉「改革」に代わる経済政策・産業政策を切実に求めるようになってきている。われわれの政策が、国民の購買力を拡充し、中小企業を中心とする地域からの経済活力を振興することを基礎に、国際的に対等平等の経済協力関係を発展させるものであることは言うまでもないが、積極的な政策提起のためには、いくつか理論的政策的に解決していかねばならない問題もある。たとえば、それは、@今日のグローバルな諸条件のもとで、急激に変化している日本の経済・産業構造の本質的解明を土台に、A大企業ばかりでなく、多くの中小企業も海外との連携や海外への経済進出をすすめている今日、産業「空洞化」に歯止めをかけ、地域経済をどう守るのか、Bアメリカを中軸とする国際金融資本の収奪政策と日本の金融の民主化と社会的規制の構築、Cますます加速度的な発展をみせている技術革新について、その成果を中小企業や途上国も活用できるようにする社会的保障を、いかに確立するか、D「アジア経済圏」の構想をどう評価するか、それは、アジア地域の産業連関発展のうえに、リアルな展望をもちうるであろうか、E「インフレ・ターゲット」論とも関連して、円の将来を、国際的なパースペクティブのもとでどう展望するか、等々の問題があろう。
 これらの問題は、個々バラバラにではなく、全体の連関のなかで考える必要があろう。資本主義そのものが今日では、全体として深刻な衰退と改革への分岐のなかで、大きな質的変化をとげつつあるからである。

4 「小泉人気」の源泉と民主日本の政策主体

 しかし、民主的な経済・産業政策が力をもちうるかどうかは、それを遂行する社会的勢力が確立されるかどうかにかかっている。いいかえれば、労働者・国民が自らを政策主体として自覚し、結集し共同して、政策実現のために小泉政権を乗り越えるようなたたかいをたたかうかどうかである。この点では、「小泉人気」の源泉=小泉政権の基盤の解明が、特別に重要な意味をもってくる。それは組織された「人気」ではあるが、田中真紀子前外相更迭を契機に急下落している小泉「人気」や次つぎに国民の目の前で暴露されている自民党・小泉内閣の本質が理解され、政治基盤を急速に弱体化させている側面をも見ておく必要がある。これらのこととも関連して、ブッシュ米大統領の「悪の枢軸」戦略と結びついた有事法制化策動の下で、たとえば、@行政改革後の小泉内閣にみる権力構造の変化、A日本の権力構造に対するアメリカの影響力の飛躍的強化、Bマスコミの変質、C教育基本法解体攻撃と教育制度への影響、D労働運動の弱体化、E謀略的デマゴギーの役割、F歴史的に形成されてきた労働者・国民の意識構造の問題、などが解明される必要があろう。全労連が提起している大胆な組織拡大方針も、こうした社会的諸要因への対抗と対応の中で前進していくことになろう。

5 政治変革の決定的重要性と知識人の役割

 今日の危機的局面を打開する唯一の途は、労働者・国民の側からの政治改革である。それを可能にするためには、労働運動が国民的諸要求実現のための共同行動の中心的部隊としての信用を国民から獲得しなければならない。今日における政策の策定・遂行には、専門的な知識や調査・研究が不可欠であり、労働運動と知識人との連携がいよいよ重要となっている。
 わが国の経済政治情勢は、3月から4月にかけて、いよいよ緊迫の度を高めようとしているが、労働運動は、どのような不測の事態が起きようとも、労働者・国民の生活を守るためにその責務を全面的にはたしていこうとしており、労働総研は、すべての会員の力を結集し、全力をあげてその事業に協力すべき時を迎えている。

(政治経済動向研究部会責任者・労働総研代表理事・日本福祉大学教授)





 11・12・1月の研究活動
11月5日  賃金最賃問題研究部会=新しい段階の賃金闘争
  10日  関西圏産業労働研究部会=京都の労働者の現況について
  11日  不安定就業・雇用失業問題研究部会=アメリカ型雇用と人材供給サービス業・OECDと直接的雇用創出政策
  24日  政治経済動向研究部会=出版物のレジュメ討論
  28日  女性労働研究部会=女性労働研究について
  29日  青年問題研究部会=2001年度の研究計画
  30日  国際労働研究部会=「世界の労働者のたたかい2002」について
12月3日  賃金最賃問題研究部会=成果主義賃金の現状
  4日  労働時間研究部会=「オランダのワークシェアリング」について、その他
  5日  中小企業問題研究部会(公開)=中国における中小企業の現状について、その他
  8日  社会保障研究部会=出版計画について
  15日  緊急シンポジウム「大リストラと大量失業を告発する」(「労働総研ニュース」141+142合併号収録)
  20日  女性労働研究部会=総合規制改革会議の「第1次答申」について
      青年問題研究部会=本年度部会の共同研究について
  22日  関西圏産業労働研究部会=島津製作所のリストラ問題
  26日  国際労働研究部会=「世界の労働者のたたかい2002」について
1月8日  社会保障研究部会=報告・討議/雇用・失業問題
  15日  労働時間研究部会=最近のワークシェアリング論
  24日  青年問題研究部会=日本的職業訓練の性格
  26日  地域政策研究プロジェクト=調査のまとめについて
  29日  政治経済動向研究部会=単行本の進捗状況について、その他
  30日  中小企業問題研究部会=中小企業問題と労働運動の課題について




 11・12・1月の事務局日誌
11月8日 全労連全国討論集会(藤吉)
  20日 第4回企画委員会
12月1日 第2回編集委員会
  6日 国民春闘討論集会(藤吉)
       『2002年国民春闘白書』発行
  14日 第5回企画委員会
  15日 第3回常任理事会
1月7日 板垣保会員葬儀(藤吉)
  11日 全国教研集会へメッセージ
  15日 第6回企画委員会
  30日 全労連旗びらき(草島)
  31日 「『緊急地域雇用創出特別交付金』を活用し、改善を求める緊急提言」厚生労働省記者クラブレクチャー(大木、大須、藤吉)




第3回常任理事会協議経過
報告事項

5件の報告事項が承認された。
協議事項

(1)会員3名の新加入を承認した。

(2)基礎理論・不安定雇用のプロジェクト研究の検討状況が報告され討論した。

(3)3研究部会の出版企画が検討された。


@社会保障=監修者は相澤常任理事を確認し、大月書店から出版予定である。


A政治経済動向=新日本出版社から出版する予定である。


B労働時間=企画案が報告され、討議した。

(4)機関誌・紙の編集企画に、日本の労働組合運動の新たな発展方向を示す研究論文など内容を充実すべきの意見が出され了承された。