2001年12月、2002年1月1日(通巻141・142合併号)







労働総研緊急シンポジウム

大リストラと大量失業を告発する


と き:2001年12月15日
ところ:中央大学市ヶ谷キャンパス

主催者あいさつ
 大木 一訓(労働総研代表理事・日本福祉大学教授)
第1部 パネル討論 
 コーディネーター:
 牧野 富夫(労働総研代表理事・日本大学教授)
 パネリスト:
 大須 真治(労働総研常任理事・中央大学教授)
 境  繁樹(JMIU日産自動車支部書記長
 岩崎  俊(通信労組委員長)
 金子 紀興(大田区労協副議長・不況打開大田区実行委員会事務局幹事)
第2部 全体討論



  主催者あいさつ:

 大木 今日は、「大リストラと大量失業を告発する」緊急シンポジウムを、開催させていただきました。今回のシンポジウムは研究所としては異例です。第1に土曜日の夕方から、人間的な暮らしにとって大切な時間に開いたこと、第2に「告発する」というテーマで開催し、しかも、開催までの時間が短く、準備が必ずしも十分でありません。
 しかし、この異例な開催を私たちに迫ったのは、とどまることのないリストラの横行、大量失業を余りにも安易に容認し、さらにはそれを促進する最近の風潮に対して、研究所に結集する研究者や運動家の皆さんの怒りが、このまま何もやらずに年を越してしまうわけにはいかないということで、皆さんと一緒に私たちに出来ることを考えたいという思いを募らせました。そして今日のこの開催に至ったわけです。  私たちは今日のシンポジウムを皮切りに研究所らしい取り組みを一段と強化したい。第1に調査研究を通じて事実を告発する。第2にそれを克服する政策的な展望を示す。さらには研究者あるいは研究所という立場で、出来る限りの行動を起こすことが必要だと感じています。
 今日はこの問題で皆さんと突っ込んだ議論をし、お互いにあらん限りの知恵を出し合って、真摯な議論と打開の展望を探求したいと考えています。(拍手)。

  パネル討議:

 牧野 さっそくシンポジウムに入りたいと思います。今年の後半になり、完全失業率が5%を超える、実際は10%を超えていると思いますが、それに加えて、不安定雇用も急激に増大しています。それらをテコに、賃金押し下げをはじめさまざまな労働条件改悪がかつてないやり方で行われています。大木代表が言いましたように、研究所としても実態を分析するだけでなく、こういう状況を改めるための国民的共同の道を探りたいと、シンポジウムを開きました。
 早速パネリスト討議に移りたいと思います。最初に、大須真治さんにご発言いただきます。

破綻した政府の失業者対策

 大須 新聞などは毎月労働力調査が発表されるたびに失業率が史上最悪と言います。その通りです。最近発表された12月の完全失業率は5.4%、完全失業者数は352万人です。完全失業者352万人は正真正銘の失業者です。しかし、完全失業者だけでみると失業の実態を正確に捉える事が出来ません。
 今日は失業の問題にウエイトを置いて話をします。問題は統計上の完全失業者352万人をどう考えるべきかです。完全失業率の年平均の変化をみると、2000年は完全失業者320万人、失業率4.7%です。90年の2.1%からうなぎ上りに増え続け、12月時点で5.4%、今後も相当の勢いで上昇すると言われています。
 失業と就業とは単純に切り離せる問題ではないという点を見る必要があります。牧野さんも完全失業者は352万人だが、現実の失業者は1,000万人以上いると言われましたが、そういう状態を抜きに失業問題は考えられません。雇用労働者と失業者を完全に区分できるのは、正規雇用の労働者が失業した時だけです。アルバイト・臨時・派遣労働者など不安定就業者は、絶えまなく失業したり就業したりしています。失業問題を考える場合、そういうふうに問題を立体的に捉えることが重要です。
 はじめに、政府が失業問題のどう対応しようとしているのかを確認しておきます。第1に、「労働力の需要供給を質量両面にわたり均衡させ、失業の発生を極力防止する」、第2に、「発生した失業者については、再就職までの生活の安定を図りつつ、できるだけ速やかに失業状態から脱却させるよう努めなければならない」(労働省職業安定局編『失業対策事業通史』96年3月)と言っています。この政府の言葉によれば、第1に失業を未然に防止する施策を取らなければならい、第2に失業してしまった人には、失業中の生活を保障し、できるだけ早く失業から脱却できるような手当をする。これが政府の責任です。
 政府の失業対策を2000年6月の資料で見ますと、45種類の失業対策が揃っています。これらは事業主が、失業者を出さなかった場合、失業者を出した場合、失業者を受入れた場合、失業者を職業訓練した場合など、全部事業主に助成金がでる、事業主にとっては至れり尽くせりの失業対策です。
 しかし、失業した人に対しては、現在の制度としては雇用保険法しかありません。雇用保険法の中でも求職者給付しかありません。政府は、失業した人の生活を安定させ、失業から離脱させる施策を促進することを政府自身の責任と認めていますが、現実には直接失業者に対する援助制度は、雇用保険しかないのです。かつては失業者に仕事を供給し生活を保障する制度として、失業対策事業がありました。この制度は1996年に廃止され今は存在しません。失対事業の後始末的なものが若干残っていますが、制度はないのです。
 なぜこうなったかと言えば、1974年に、かつての失業保険法を現在の雇用保険法に変えたときに逆上ると思います。失業保険法を雇用保険法に変える政府の説明は、「給付内容の改善整備を行うとともに、雇用状態の改善、能力開発の推進などにより、質量両面にわたる完全雇用の実現への要請に積極的に応えることが出来るよう失業保険制度を改善発展させ、雇用に関する総合的機能を持った雇用保険制度を創設する」と言うことでした。
 失業保険制度は、それまでは失業者に対する生活援助を基本にしましたが、雇用保険は雇用の需要供給関係の調整機能も担ったのです。この政策転換の根拠は、「失業を出さない政策」への転換にあります。この政策がうまくいけば、例外的に失業が出るとしても、原則として失業は出ないと言うのです。失業対策事業も、そういう流れの中で廃止されたのです。政府は現在もこの考え方自体変えていません。
 政府が、雇用保険法をつくった当時予測した通りに事態が進んでいれば、今日のような深刻な失業問題は起こらなかった筈です。しかし、現在、失業率が5.4%、352万もの完全失業者が出ており、失業問題は非常に重要な問題であるということは政府自身も否定できません。ですから、これだけ失業問題が深刻化していること自体、政府が進めてきた「失業者を出さない政策」が完全に破綻していることの証明です。
 失業者は1990年以降急増し、300万人を越えています。その300万人のなかで、失業期間が1年を超える失業者が、今年の2月現在で83万人もいます。完全失業者の26.1%は失業期間が1年を超えているのです。失業保険で求職者給付を受けられる期間は、今年の4月から改定されていますが、改定前でも最高300日、1年未満です。失業期間が1年以上の人は、失業者に残された唯一の保障制度である雇用保険の対象から完全に排除されています。最高 300日ですから、90日の人、180日の人もいますから、現実には83万人を超えて雇用保険を貰えなくなっている人が相当数いるのです。
 新制度ではもっと厳しくなりました。一般の失業者の場合は最高180日、半年分しか保障されなくなりました。失業保険制度から排除される人は、現在はずっと増えているということになります。今年4月から実施されている新しい失業給付の状況ですが、雇用保険財政のうちの失業給付に係わる収支状況を見ると、毎年失業者が増えるのに従って4兆7000億円あった労働保険特別会計雇用勘定の積立金が取り崩され、2000年度には2,693億円まで下がるという予測だと言って、政府は今年度から失業給付の仕方を変えました。政府は、厳しい失業状況に対する重点的な求職者給付の配分を行うと言って、実際やったことは、一般離職者の給付日数は最高で180日しか保障しない。解雇・倒産等非自発的理由による離職者の求職給付の最高は330日にしましたが、20年以上保険に入った45歳から60歳未満の人だけです。60から65歳の人は一律に引き下げられ、20年以上保険に入っいても 240日しか出ません。
 このように、唯一失業者にあった保障制度も、今年の4月からは非常に狭められている中で、雇用保険の支給終了者が、すでに160万人を超えてます。失業が厳しくなって失業者に対する保障の制度を狭めているというのが実態です。この2000年度の改定時で、約5,000億円の支出を節約する措置が取られました。これは失業率5%を前提にしての均衡ですから、現在すでに5.4%という状態になっていますから、雇用保険制度の改悪は更に進むと思います。
 深刻な失業問題を解決するためには、1970年代後半から政府・労働省が進めてきた失業対策のやり方を、根本的に変えることがどうしてしも必要だと思います。失業者に対する雇用保障制度を強化すること、失業した人に対する制度をもっと多様化することです。かつての失業対策事業制度をそのまま復活せよとはいいませんが、少なくとも失業者に対して就労を保障して生活が維持できるような制度を創設することが必要です。
 1999年から緊急地域雇用特別交付金制度が創設されました。この制度も失業対策としてはきわめて不十分で、非常にささやかな制度ですが、みなさんの運動をも反映して、一応来年度以降も3年間継続されることになりました。このような制度をもう少し失業した人に対する対策に役立つような制度として多様化し、強化することが、いまどうしても必要になっていると思っています。(拍手)
 牧野 ありがとうございました。トータルに今日の失業状態を、注意点も含めて報告いただきました。つづいて、JMIU日産支部書記長の境さんからご報告いただきます。

日産リバイバルプランの現段階

  私は現在日産自動車の座間事業所に通勤しています。この3月までは村山工場で働いていました。村山工場にはまだ200数十名が働いていますが、3月末全面閉鎖され、私が働いている部門が座間事業所に移転したので、100名の同僚とともに座間工場に移動しました。私は埼玉県の新座市に住んでいます。西武池袋線の保谷駅から池袋、JRで新宿、小田急線で相模大野、江ノ島線の南林間で、バスに乗り換え座間事業所に通勤しています。片道2時間です。私も日産リバイバルプランの被害者の1人です。
 最初に、村山工場の労働者が今年の4月のほぼ全面閉鎖の時点で、どのように移動したかについて報告します。村山工場は、リバイバルプラン発表の1999年10月18日から、1ヵ月後の11月時点で、合計2,963名いました。1年後の2000年12月時点で見ると、2000年10月、11月にマーチとキューブという車を造っている部門が追浜工場に移動を終えたのに伴い600人が追浜に、スカイラインを造っている職場が栃木工場に移り、420人が栃木へ、退職・出向・転籍で454名、殆どが退職です。2001年4月の時点では、栃木工場への移転が3月にいっせいに行われ、累計で1,010名にまで増えています。追浜工場の場合は110名が移動し600名から 710名になりました。最終的に退職・出向・転籍の数は690名で、合計 2,963名のうち、約700名が退職を余儀なくされ、栃木工場に1,000名以上、追浜工場に700名以上、座間事業所に117名移動しました。現在、村山工場にいる220名は、当面、会社が移転しにくい生産部門、メッキ工場と大型のプレス機械の部門に従事していますが、この人たちも2004年3月には全面的に村山工場を閉鎖・売却する予定になっていますので、この時点で身の振り方を決めなければなりません。
 つぎに移動を余儀なくされた人々の住環境について報告します。私は往復4時間かけて通勤していますが、追浜工場、栃木工場、とくに栃木工場は通勤できる地域ではありません。若い人の場合転居する人や村山で寮に住み、栃木工場でも寮に転居した人もいましたが、殆どの人が単身赴任です。追浜工場も一部通勤できる人がいます。朝6時半から午後3まで、午後4時から午前1時までという交替制勤務ですから、とても通勤するのは不可能です。東京地区から移転した人はほとんど寮生活をしています。寮も、昭和30年代40年代の高卒を大量に採用した当時の独身寮です。6畳一間で台所もトイレもない、押入れがある程度の粗末なものです。テレビなど買って置けるけれど冷蔵庫はとても置けません。そういう寮で30代40代の人が入れられています。とても人間らしい生活とは言えない状態です。
 座間事業所の実験部門に移動した25名中20名が単身赴任で、会社のすぐ側の工場からも見える本当に狭い寮に1人で住んでいます。しかも将来帰れる見通しはないのです。定年の近い人はなんとか我慢するとしても、30代40代の人たちはこれからを考えると大変な状況です。
 つぎに、長時間・過密労働について報告します。カルロス・ゴーンはリバイバルプランで、村山工場、日産車体の京都工場、愛知機械の名古屋にある港工場、ユニット組み立ての日産久里浜工場、日産九州工場の5つの工場を閉鎖すると発表しました。生産能力が過剰であるという理由です。リバイバルプランで、当時国内の生産能力200万台を240万台と言い換えました。200万台は普通のレベルで定時間勤務での生産能力である。これからは残業を毎日1時間、休日出勤を月3回行う。この労働時間で年間片番2,200時間、両番4,400時間の稼働時間で計算すると240万台である。この数字を基礎にすれば、実際の国内生産台数は、当時128万台であるとカルロス・ゴーンは言ったのです。会社はその後の交渉の中で今後150万台を超えることは絶対にないと言い直します。150万台に対して240万台の生産能力は大きすぎるから5工場を閉鎖すると言う論理です。
 私どもが団体交渉で今でもこんなに残業が多いと追及すると、実際にリバイバルプランで言うほど過剰ではない言わざるを得ません。自動車は年間平均的に売れる商品ではありません。夏枯れ商品なのです。一番売れるのは1、2、3月で夏の2倍近く販売に開きがあります。今まででも1、2、3月は殺人的な勤務実態で生産を行っていたのです。それが3つの車両組み立て工場、村山工場、日産車体京都工場、愛知機械名古屋港工場を閉鎖したのですから、残った工場が殺人的になるのは当然です。
 追浜工場に移動し私ども組合員の労働実態を会社の給料明細で見ますと、残業が年間で232時間、休出が235時間、そのうち深夜時間が交替制をやっているので490時間含まれており、残業と休日出勤の合計では年467時間の残業・休日出勤をやっています。これは労働省が指導している年間残業を360時間以内に抑えろという目標を、大幅に超えています。
 退職を余儀なくされた殆どの人はまだ仕事を見つけていません。近況を尋ねると「ハローワーク通いだ」と言っている状態です。
 最近のマスコミ等の状況を見ますと、カルロス・ゴーンが日産を再生させたと非常に高く評価されていいます。実態はそうではないということを、改めて告発をしたいと思います。
 マスコミは、カルロス・ゴーンは日産をV字型の業績回復をさせたと褒め称えています。バランスシート上はそうかも知れません。しかしその殆どは日産が持っていた豊富な財産を売却して、会計上の利益を上げた結果です。カルロス・ゴーンの手腕が評価されるとすれば、日産の資産に目を付け、それをどんどんお金に変え、キャッシュフローを改善したことです。実際の販売台数は依然として横ばいで、経営的に成功していません。総合的な評価はこれからだと思います。
 最後に、共感のひろがりについて報告します。私どもはリバイバルプラン発表直後から、全労連の全面的な支援を受け、JMIU中央本部、東京地方本部、東京西部地協、各地域の労働団体等の支援のもとに、日産リストラ対策現地闘争本部を組織してたたかってきました。闘争の前半は週2回体制でビラを撒き、後半からは週1回でしたが、ビラですべての労働者の要求実現のために共にたたかうことを呼びかけ、奮闘しました。リバイバルプラン以前は、日産の労働者はなかなかビラを取らなかったのですが、この問題が持ち上がってからは、飛ぶようにビラを取るようになりまました。村山工場の3,000弱の労働者が700枚ぐらいのビラを取る状況が最後まで続きました。4月には殆ど村山工場の人たちは各工場に散らばってしまいましたが、私どもはビラをはじめ資料の郵送を続けています。
 今日お配りした資料の中に、私も参加しましたが労働総研日産経営分析チームが行った研究報告「日産自動車の赤字から黒字への転換の内容分析」を特集した「労働総研ニュース」があります。これを労働総研から分けていただき、日産自動車支部の名前に変えて郵送しました。もう一つの資料は11月23日、移動先の栃木工場と追浜工場で現地の労働組合団体の支援を得ながら撒いたビラです。これに対する反応は非常によくて、とくに「日本の企業として日本経済の調和の取れた発展に資するような経営方針に改める」こととか、「世界から信頼され尊敬されるような日産自動車にしたい」という表現が共感を得ています。10年以上前、塩路一郎会長が君臨していた当時、参議院の全国区選挙にたくさんの人たちが選挙専従として動員され、その酷さが身に沁みているので、企業ぐるみ選挙を止めさせたことは本当に良かったというメールが、私どもの組合に送られてくる状況にもなっています。(拍手)
 牧野 ありがとうございました。つづいて通信労組委員長の岩崎俊さんにお願いします。

NTTの11万人リストラに反対する

 岩崎 私どもはNTTの11万人リストラ反対闘争をたたかっている最中です。12月から来年1月にかけて、50歳以上の労働者約5万5000人に、期限を切って退職強要が進められるというのがいまの事態です。会社は5月1日から新しい会社に、50歳以上の労働者すべてを退職させて、30%賃金を切り下げ、再雇用する方針をだしました。50歳以下は在籍出向、賃金持ち込みで、同じ仕事をするという内容です。
 NTTは1999年7月に分割され、現在は純粋持ち株会社が東西会社のすべての株を持って支配しています。ドコモは50%以上、国際会社NTTミュニケーションは、100%持ち株会社が持っています。
 今年4月、純粋持ち株会社が東西会社の社員11万人をリストラする3ヵ年経営計画を発表しました。この計画が出る1年前、昨年4月に一度3ヵ年計画を出しましたが、それでは駄目だと、新しい計画をたてたわけです。
 昨年の10月からNTTが募集した希望退職に、はじめ8,000名が応募しました。職場に展望がないという状況の中で、残念ながら今年の12月までに16,400人が応募しました。NTTの計画の1つの柱が人減らしですが、もう1つの柱は成果業績主義賃金の導入です。今年の4月1日から導入しました。賃金に反映するのは、来年の2月に査定が行われてからですが、その前段として今年の12月10日に支払われた特別手当に成果業績主義を導入しました。いわゆる原資と言いますが、2.6ヵ月の原資が出たわけです。その原資の75%は一律に支給する、あとの25%を査定するというのです。100万円の原資であれば、75万円が一律で25万円が査定されるのです。査定は4ランクで、平均25万とすれば、D評価はゼロ、C評価は25万円を下回る。平均を上回るとすればB評価を取らなければなりません。実際は、A評価でも昨年の実績を下回る結果になりました。昨年の実績からすべて0.3ヵ月減額したので、すべての社員が昨年実績を下回りました。この成果業績主義賃金でいま職場は騒然となっています。
 3ヵ年計画の内容に入ります。NTTはこの3ヵ年計画の大きな柱として、東西会社が現在行っているユニバーサルサービスとしての電話事業に係わる業務を外注化するとしています。電話相談を受け付ける116番、故障受付の113番、営業窓口の部隊、電話の直接設備を保守・設置する業務、これらすべてを外注化するために、新しい会社をつくるのです。新会社は各県ごと地域ごとに設備会社、サービス会社をつくるのです。その新会社の労働条件は、NTTの現在の賃金を30%引き下げるという内容です。ただし東京とか大阪は、別の調整手当を付けて15%から30%ぐらいの減にするという内容です。
 新会社は、派遣会社と同じです。東日本は各県に3つずつつくりますが、資本金は1,000万円から5,000万円です。そこに30%賃金を下げて何百人という労働者を再雇用するわけです。資本金から見て新会社は中小零細です。そこに200人、300人、500人、600人と雇用させるのですから、本当に資本金が少ない。株式会社の最低資本金は1,000万円ですから、資本金1,000万円の会社の労働者が銀行ローンを借りにいけるのかという疑問が出ています。新会社は自社ビル、設備は一切持ちません。結局人間だけがいてNTTのビルに働きに行き、賃金をもらう。完全な派遣会社だと思います。
 NTTの宮津社長は、11万人のリストラを実施する東・西会社は生きていけるのかという報道陣の質問に対して、「スリム化で東西は食べていけるようになる。心配なのは東西会社から人員が移った地域会社の新会社だ」(12月6日付けの読売新聞)と、初めから心配だという新会社をつくって、われわれ労働者にそこへ行けと、本当にけしからんことを言っています。
 そして「50歳退職・再雇用」は、転籍だと考えています。マスコミも転籍というふうに扱っています。国会で、日本共産党議員が追及したとき、小泉首相は「転籍であるから、最高裁の判例にしたがって進められていると考えている」と言っているにもかかわらず、NTTは「転籍」と言いません。NTTには、現在、就業規則と労働協約で転籍規約をもっています。転籍であれば、労働条件はすべて持ち込みです。団体交渉で、「これは転籍ではないかと」と追及すると「転籍であれば現行の賃金を下げることが出来ない、退職・再雇用という違うシステムを入れるから、この就業規則と労働協約は守る必要がない」という理屈です。「コストを削減するために50歳退職・再雇用の新しいバージョンを入れているのだから法の違反にはならない。」こういう無茶苦茶なやり方です。
 私どもは団体交渉で違法だと追及するわけですが、残念ながら連合のNTT労組は、11月8日の中央委員会で、この「50歳退職・再雇用」を合意し、導入をすると決定しました。NTTは、脱法的な行為だということを十分知っていて、われわれに対しては、「退職を強要するということはしません。生首は切りません。だから法違反ではありません」と、あくまでも労働者が自主的に退職をし、再雇用の道を選ぶのだから法に触れない、こういう理屈を言っています。
 それではNTTに残る道があるのかという点です。会社側は、「NTTに残る道はあります」と言うのです。「東西会社のNTTに残ってもらって結構です。ただし、現在やっている仕事はありません。働く場所は全国どこでも配転が可能ということを了承してもらわなければならない」と、二つの脅しで退職に追い込もうとしています。いまやっている仕事は取り上げる。北海道の人は東京へ、九州の人は東京や大阪への単身赴任を強要する。それが嫌であれば退職して30%賃下げの新会社に行きなさい。いまこの退職強要とたたかっています。
 NTTは、11万リストラをする理由に、東西会社が赤字だと言っています。まったく偽りの赤字です。東西会社が赤字になるようにNTTを分割しておいて、その責任を労働者におっかぶせるという、本当にひどいやり方です。アメリカや大企業の要求に応じて長距離その他の業者がNTTの回線を使ったときに支払う接続料を思い切り下げることによって東西会社の収入は減っています。県間の長距離を使う業者、NTTの設備を使う業者は、接続料が下がりますから、安く商売が出来て営業がよくなるというシステムです。
 NTTは、接続料が下がったことによって、1,900億円の収入減になったと。これは大変なことだと言いますが、ドコモは約200億円、コミュニケーションは700億円の収入をあげました。結局NTTの中で約1,000億円の操作が行われたのです。そういう点でも本当に作られた赤字です。9月期決算でNTTは連結決算で約4,000億円以上の収益を挙げています。会社側は約7,600億円の特損があるから、実質的には赤字だと吹聴しています。この7,600億円は誰が損をさせたのかといえば、持ち株会社です。1つはコミュニケーションがアメリカのベリオという会社を買い込んで、4,000億円以上の損害を与えた。ドコモはオランダの携帯電話に投資して、2,000億円以上の赤字になった。これらを特別損失として7,600億円計上するから、全体で赤字だと言っている。持ち株会社が国際事業で失敗した責任を、労働者におしつける、けしからん内容です。
 新会社をつくってリストラするというNTTのやり方を本当に認めたら、いまの日本の労働者の雇用は守れないし、賃金はいつでも下げられる。こういうシステムを導入させてはならないということで、全労連は、日本における大企業のリストラ反対闘争の集中点としてNTT問題を取り上げ、NTTリストラ対策本部を設け、通信労組と一体となっていまたたかっています。私どもは200万以上のビラをNTT労働者に届け、要求実現のために共同のたたかいを強めるために、対話と共同を強めています。連合の労働者は本当に悩んでいます。この計画が発表されてから、通信労組に約70名以上が加入してきました。まったく通信労組がなかった福島県、群馬県、山梨県に組合が結成され、いま意気高くたたかっているところです。このたたかいは日本の労働者の21世紀の働き方を決めるたたかいだ、NTTの労働者だけではなしに、5,300万労働者の働くルールを決めるたたかいだと位置づけ、いま奮闘しています。(拍手)
 牧野 つづいて、不況打開大田区実行委員会の報告を大田区労協副議長の金子さんにお願いします。

不況打開大田区実行委員会のたたかい

 金子 大田区の六郷の出張所が、この夏「六郷わが町」という新聞折り込みを全家庭に入れました。「工業の町からマンションの町へ」の見出で、六郷地区126ヵ所の工場に番号を付け、ここの土地には昔こういう工場があったが、いまはなんと言うマンションになっているとい折り込みで、かなり話題になりました。大田区不況打開実行委員会は、マンションにもならない自宅兼工場の零細業者が、2つの信用組合破綻とともに潰されそうになる中で、大きな危機感を持って、いまたたかっているところです。
 はじめに、大田区不況打開実行委員会の構成と運動について報告します。93年春闘のとき、労働組合は春闘何連敗と言って非常に元気がなかったのですが、大田区内の3つの民商が区役所にすわり込み、新しい融資制度をつくらせました。業者の方たちは、あんなに頑張っているということで、労働組合と商工業者との懇談会を、労働組合の方から申し入れました。4度にわたり懇談会を続けた結果、翌94年2月23日に「共同アピール」を発表し、不況打開大田区実行委員会をつくりました。それ以降、恒常的な組織として、地域の経済を守るために頑張っいます。実行委員会は要求を実現するたたかう組織であると同時に、調査、政策発表、提言の出来る組織で、節目節目には15〜16人で合宿をし、大田区の問題をみんなで討論しながら頑張っています。
 地域の経済を守るたたかいを全国に拡げたい思いで取り組んだのが民間サミットの開催です。行政側が全国10都市の中小企業都市サミットをやっています。私たちは、中小企業の町・民間サミットを開催しようと全国10都市の関係者をオルグし、全国の実行委員会も大田区で引き受け、開催にこぎつけました。いままでに東大阪、大田区、墨田区と3回の民間サミットを行い地域の運動を交流しました。2002年5月には尼崎市で第4回が開催されます。要求を勝ち取る点では、工業集積地域活性化支援事業を東京都につくらせました。これは例えば工場の作業改善をする場合は、業者は6分の1の負担で、あと6分の5を都と大田区から出させるといった制度です。大型店の出店反対では、フジスーパーの出店計画を撤退させ、オリンピックという業者には売り場面積を縮小させるという成果も勝ち取ってきました。
 地域経済振興条例制定の直接請求も行いました。残念ながらつくることは出来なかったけれど、大田区は一定の政策転換をせざるを得なくなりました。直接請求の運動は各地に引き継がれ、浜松市、川崎市などで地域経済振興条例をつくる運動が進んでいます。
 いま、不況は深刻な状況です。2つの選挙後、不況打開実行委員会はお盆明けに集まり、不良債権処理の問題や大手電機の大規模なリストラが大田区の中小工場にどう現れているか聞き込み調査を行いました。日産リストラのときにも聞き込み調査を行いましたが、今回も民商の会員さんを中心に、労働組合は業種的に大手電機と付き合いがありそうなところを中心に調べました。全部面談での聞き取り調査です。仕事が増えているのは、キャノンが池貝に出していた仕事が、池貝が倒産したので回ってきたので仕事がたくさんあって嬉しくてしようがないという1社だけで、その他は、売り上げは25%から50%減、単価は20%から30%減、中には黙って新しい単価表が配付されてくるといった状況もあります。
 こうした事態を打開するため、政策提言が出来る実行委員会ですから、この時点で新しい共同提言を作成発表して、いままでよりいっそう大きな共同の運動をつくろうと、共同提言の準備に入りました。その最中に深刻な不況を反映していると思うのですが、東商の大田支部、大田工連、大田商連のみなさんが11月1日、会場に入りきれないほどの480名で危機突破総大会を開きました。3区、4区選出の自民党国会議員、大田区長、東京都、通産省関東経済産業局を壇上に来賓として並べ、それぞれの団体の方たちが、「借金を5年間据え置け」などといった要求を突きつけました。
 一方、私たちは準備していた共同提言を「危機突破の提言」として11月27日に発表し、その説明と討論、交流をしようと準備を行っていました。ところが11月2日、大田区内の大栄、東京富士信用組合が大手銀行とまったく同じ金融検査システムによって破綻に追い込まれました。3日、4日は休みだったので、11月5日に緊急会議を開きました。債務者区分だとか整理回収機構が株式会社で、非常に厳しい取り立てをするだとかといったことを議論し、いよいよ不良債権処理で、大田区の中小金融機関と中小業者が政府の政策によって潰される、この問題を急いで取り組む必要があるということで、27日に予定していた提言発表の場が危機打開決起集会になりました。不安と怒りが町中に広がっています。
 2信用組合の融資額は約1,000億円です。融資を受けている業者の人は3,000件、それ以外に個人の住宅ローン等が8,000件あります。中小金融機関と中小企業を容赦なく潰す不良債権最終処理がいよいよ大田に来たと、この緊急集会には80人の会場に162人集まりました。債務者区分で不良債権ということになればRCCに送られ、RCCは一括返済を迫ってくる、工場や自宅が担保に入れてあれば担保は競売にかけられる、商売がやっていけなくなるということを明らかにし、皆で小泉「構造改革」に風穴を開けるために頑張ろうという決起の場になりました。
 それ以降、区議会に陳情書を出したり、管財人に会いに行ったり、受け皿になっている信用組合に要請に行ったり、各種の運動に取り組んできました。手形貸付を例に取りますと、利息だけ払って次の期限がくると手形を差し替え、また利息だけ払う。これが手形貸付の制度として業者の間では普通に行われていました。そういうことを信用組合、信用金庫は普通の取り引きとして行ってきました。先進国基準でいけば、利息だけ払い、元金を返済しないのは不良債権ですから、中小企業と中小金融機関の普通に行われている取り引き自体が不良債権にされる。真面目に働いている中小業者が潰されてたまるかと、みんなで決起しました。
 いま町の中に不安が広がっていますので、情報センターという形で運動を展開し、12日から昨日14日までに8ヵ所で説明相談会を行ってきました。チラシを見て、約20人の方たちが集まりしたが、皆さんはもの凄く深刻です。従業員2〜3人、統計にもかからない4人以下の所が殆どです。自宅兼工場ですから、担保として自宅も担保に入っている。「私はここで頑張らないとあとは多摩川に行くしかない」。多摩川は大田区にある河川敷です。ホームレスになる以外にないと言って、相談会に来ています。ある方は、説明を聞いて「心配しているだけじゃ駄目ということですね」といって、「これからはどこに要請行動があれば必ず誘って下さい、皆さんと一緒に頑張りたいと思っています」言われていました。
 いよいよ問題は大変だということで、金融担当大臣と経済産業大臣に要請に行きました。金融庁は本当に冷たいものです。ルールどおりやるだけですと言って、ぜんぜん聞く耳は持ちません。13日の新聞赤旗1面に「中小企業救済、経済産業大臣に直訴」という記事が載っておりますが、平沼経済産業大臣は「大田区の地場産業の重要さは非常に貴重だということで認識している。金融庁が求めている基準は非常に画一的であって、実態には合わない。もっときめ細かな対応をするように私のほうから金融庁に言います」「金融庁の柳沢さんは浜松出身だから本当はもうちょっと中小企業のことがわかる筈なんだがな」というようなことを言いながら、「物づくりを大切にしたいという立場で金融庁にもの申したい」と言いました。
 大田区は毎日がこの問題で騒然としています。共産党の大門参議院議員が大銀行と同じ金融検査システムを信金・信組に当てはめるのはおかしいと鋭い追求をしまして、金融庁も見直しをしなければいけないということを一応は漏らし始めています。不況打開大田区実行委員会の「負けてたまるか」という緊急提言を区内で千部増し刷りして、いろんな所に浸透させ、なんとしても地場産業を守ると運動を前進させるために奮闘中の報告であります。(拍手)
 牧野 ありがとうございました。全体を見渡した大須報告、あとのお三方からは大リストラの現場、雇用破壊の現場からリアルに、しかも運動面にも触れながらご報告いただきました。

  全体討論

 牧野 全労働副委員長の木下さん、ご発言をお願いします。

労働行政の窓口から

 木下 お手元に私どもが最近発表した「雇用対策の提言」を配らせていただいております。ぜひご一読いただきたいと思います。シンポジストの皆さんから大変厳しい雇用・失業情勢の実態が報告され、不良債権処理だとかリストラで大量の失業者がさらに生み出されようとしているなかで、行政がどんな雇用対策を行おうとしているのかについて、話させていただきます。
 先ほど大須先生から、雇用保険、助成金についての話がありました。私は今国会で補正予算が新しく成立し、12月1日施行の新しい助成金に触れながら、政府の雇用対策について報告したいと思います。先の通常国会で、職業安定行政の基本法である雇用対策法が括弧付きですが「改正」されました。この「改正」で雇用の安定という考え方が基本的に変えられたと思います。これまでは学校を出てから定年までを一つの企業で働くという標準労働者をモデルに長期雇用を雇用の安定と言っていました。今回の法改正によって、1人の労働者の全職業期間を通じて雇用の安定を図ると変わりました。雇用が短期化・不安定化してきたことを前提に、これからは1人の労働者が職業生活のなかで何度か離転職を経験するのが当たり前になる。だから失業の期間を出来るだけ短くなるような援助をする。そのような政策に変えられたのです。
 あわせて事業主に再就職支援の努力規定が設けられました。こうした基本理念の変更にともない、最近の雇用対策として新たな助成金がつくられており、報告させていただきます。いずれも今からお話しするのは12月1日施行の新しい助成金です。
 労働移動支援助成金というのがあります。これは事業主がリストラを行うときに、職業紹介事業者、再就職支援会社を活用して再就職支援を行う再就職支援給付金です。雇用対策法に基づく再就職援助計画を作成した事業主が、民間会社を使って再就職を実現した事業主に1人当たり上限30万円まで支給します。100人いれば3,000万円払うことになります。
 2つ目は、継続雇用の定着促進助成金を拡充しました。55歳以上65歳未満の高齢者が50%いる高年齢者の会社を新たに設置し、そこで再採用すれば、その会社がリストラになった元の会社よりも定年が1年以上長ければ助成金をだすというものです。
 3つ目は、今までは在職者の求職活動支援助成金を行ってきました。これらは高年齢者の雇用安定法に基づく再就職援助計画を作成して、先ほどと同じように民間職業事業者による再就職の支援をする。そして再就職を実現した場合、1人当たり30万円を上限に支給する。この場合、離職予定者に対して休暇を与えたり、いろんな訓練を行った場合、休暇1日当たり5,000円、これも上限1人当たり30万円まで別途支給されることになります。
 4つ目は、退職前の長期休業助成金の創設が新たに出来ました。希望退職の募集に応じた労働者の再就職援助計画をつくって、退職前に6ヵ月以上2年以内の期間休業させる。これは45歳以上、勤続10年以上の労働者でないと駄目だと言う条件があります。この場合、休業手当は事業主が払いますが、休業期間中に支払った手当の3分の1を、1年間を上限に払うものです。私は職業安定行政の窓口でいろいろ仕事した経験がありますが、たとえば2年間労働者が休んで、そのあと退職したら、この労働者の働く意思と能力はガタンと落ちて、2年後離職しても働けないのではないかと思います。なぜこういう制度をつくったのか、その狙いがよくわりません。また2年間の休業期間中は残業手当の支払いはなく休業手当のみの支払いとなり、労働者の生活も大丈夫なのかと心配です。
 移動高年齢者等の雇用安定助成金が創設されました。事業再構築をする事業者に雇われていた45歳以上65歳未満を対象者に、離職後直ちに雇い入れる事業主に助成金をだすものです。これまで助成金の対象から外していた、リストラをやる会社の子会社とか系列会社を、助成金の対象にしたのです。今まで系列会社に助成金を出すことは認めてなかったのは、意図的に労働移動が行われる可能性があるからです。今回、こういう助成金を設けたのは、NTTが関連子会社を新たに興して、そこに労働者を移動させると通信労組の岩崎委員長が先ほど話されたように、そうしたリストラを促進する大変危険な助成金ではないかと思います。この場合も、雇い入れる会社が、ただ雇用しただけでは駄目なのです。元のたとえばNTTよりも定年が1年以上長くないと助成金は支給されません。65歳まで雇用できる就業規則等であれば1人当たり30万円、1,000人を上限としていますから、NTTのような大規模な所であれば、3億円払うことになります。65歳未満だったら1人当たり10万円になります。
 建設業労働移動支援助成金がつくられました。これは建設関連の事業で、建設業の人を雇い入れる場合、1人当たり20万円を払います。建設関連でも資格・技術の有する者に限っており、無技能者は対象外にしています。余談ですが、雇用保険も非自発的離職者に給付を重点化する「改正」が行われました。国民に公平なサービスを提供する行政で、財政を理由にサービスを重点化するとして雇用対策に職理由や技能のある、なしで差を付けることに疑問を感じています。
 新たな助成金について簡単にお話ししましたが、これらの助成金は、リストラなどによる離職を前提に、失業期間を経ることなく労働移動をさせようという助成金です。しかしこういう助成金制度は、リストラを行う会社を支援し、社会的にリストラをしやすくする=リストラを国が援助するという一面も合わせ持つと思います。先ほど岩崎委員長の報告で、NTTは決して仕事がなくなったわけではない、仕事を外注化し、そこに再雇用して賃金を7割にすると報告されました。職業安定所にもこれとよく似た話があります。たとえばA社が大量の解雇を行う。A社を就労先にしているBという業務請負会社から、安定所に100人、200人という求人が入ってくる時に、このリストラは本当に必要だろうかと、私どもはなんともやるせない気持ちで仕事をやらざるをえないのです。仕事はあるのに会社組織を変更して、あるいは外部に業務委託して労働者を再雇用し、労働条件をひきさげる。私は、こういうことは社会正義上許されないと思います。
 雇用の安定は、生活の安定であり国民経済を安定させる上で重要なことだと思います。政治や行政は、まさに国民生活や経済を安定させるためにあるのではないでしょうか。安易なリストラを決して認めることなく、私たち行政の窓口から見ても、解雇規制法の制定だとか労働基準法の強化といった労働者保護法の制定強化がいま重要になっていると思います。(拍手)。
 牧野 日高教中央執行委員の林さん、お願いします。

青年の就職難解決に向けた共同の広がり

  私は、高校生の就職問題の状況と新たに結成された就職連絡会について報告をし、政策提言と国民的共同の可能性に触れて発言したいと思います。
 12月5日に、日高教と全国私教連とで行った10月末の高校生の就職内定実態調査結果を発表しました。それによると、高校生の就職内定率は54.2%です。9月末は37.0%でした。例年ですと内定率はまだ伸びていきますが、今年はいわゆる2次募集がほとんどないという報告が多く、非常に厳しい状況です。さらに、男女間格差も10%近くあり、1年間の有期雇用やパートなど不安定雇用で就労せざるをえないなど大きな問題があります。沖縄県の内定率は16%、北海道が36.6%など地域格差も大きい状況です。全国の高校で生徒も教職員もがんばっていますが、現在でも約10万人の高校生の就職が決まっていないと推定されます。このままでは、来年3月末には相当多数の高校生が就職を希望しながら就職できないまま卒業していく。その多くがフリーターと言われる状態になると想定されます。
 完全失業率が5.4%、さらに潜在失業率が10%であると発言がありました。これを学校で考えますと、40人定員のクラスで4人の親が失業していることになります。この影響が現実にさまざまの場面で表れてきています。修学旅行に行かないと申し出る生徒。何万円もかかる宿泊行事に欠席する生徒。卒業アルバムを買えない生徒。アルバムもいま1万円から2万円かかります。そういう生徒がどんどん出てきている。私立では学費未納による退学処分、中退になるわけです。この不況・リストラが高校生の就学にも大きな影響を与えています。
 つぎに、就職連絡会の結成について発言します。労働総研ニュース(No.140)にも書いていますが、この就職連絡会の特徴の1つは、従来の枠を越えた幅広い共闘が実現できたことだと思います。強調したいのは、日青協(日本青年団協議会)が正式に参加をし、世話人団体にもなっていることです。日青協の方がシンポで発言されましたが、雇用の破壊で青年団の大きな仕事である地域の祭りが維持できない状況になってきている。さまざまな働くルールの無視、白木屋と似たようなことが地方でもいっぱい行われている。そういうことで日青協も団員の声に目を向けたら動かざるを得ない状況にある、このことを事務局長以下事務局員が真剣に受け止め、何とかしたいということで参加されたのだと思います。首都圏青年ユニオンというフリーターの労働組合やフリーター問題を考える東京の会と埼玉の会などフリーターにかかわる団体も参加をしてきています。このように、従来は考えられなかった幅広い参加で連絡会が結成できました。
 12月10日には、連絡会の最初のとりくみとしてシンポジウムを開き、アピールを発表しました。シンポジウムには、18団体113名が参加し、大きく成功しました。日高教の組合員も、「このように元気の出るシンポは久しぶりだ」とか「青年の声を聞けてよかった」と語っています。
 3番目に、政策づくりの課題です。政府の雇用政策の問題では全労働の木下さんから話されましたが、首を切ったら補助金を出すのではなく、雇用したら補助金を出すとか、公的分野、とくに教育・福祉分野での雇用を拡大していくとか、全労連の掲げている基本的要求に加えて学卒未就職者、これは大学生も含みますが、学校を出て就職出来なかった人たちへのきめ細かな政策、たとえば無料の職業訓練を一定期間行う、その期間中一定の手当を出すとか、学卒未就職者を雇用したら補助金をだすなど、厚生労働省の施策をも研究して、それを拡充していく方向で実現できないかと思っています。連絡会でも、次の取り組みとして政策づくりにとりくむことを申し合わせており、明後日の連絡会から取りかかります。
 もう1点、教職員組合として感じているのは、教育課題の問題です。青年が働くルール、権利を知らないとということを、ずいぶん聞きました。「パートには年休がない」と言われ、それをそのまま信じる青年が多数いるとか、「遅刻したら1万円賃金カットだ」と言われても黙って認めてしまう、青年のこのような状態について高校教育は責任がないのか、そうではないはずだと、私は考えています。それをいかにつくっていくかを、教職員組合としては考えていきたいと思っています。
 最後に連絡会にかかわって、この連絡会の組織を、各県でもつくっていきたいと考えています。働くルールの問題では大きな取り組みがありますので、政策づくりの中でそういうところに合流していくことも展望しながら、就職連絡会を中心に日高教独自の活動も含めて、いっそう高校生・青年の雇用と働くルールを求めるため頑張りたいと思っています。(拍手)
 牧野 東京春闘共闘の柴田さん、お願いします。

職安前アンケートから出発して

 柴田 東京春闘共闘は、東京労連、東京地評を中心に構成された組織です。労働組合が失業者を組織していないこともあり、雇用・失業の問題になかなか接近できないでいました。失業率が高まるなかで、98年から職安前のアンケートを取り組みました。98年は、1,600名を超えるアンケートが寄せられ、99年は約850名、今年は1,226名です。この取り組みを通じて直接的に失業者の生の声を私たち労働組合がしっかりつかみながら、国や自治体や経営者団体に対して今日的な雇用・失業問題について毎年改善を求めてきています。アンケートには今日の状況が色濃く表れています。過半数をこす人が、解雇等の会社都合でやめさせられており、1割強の方が1年以上仕事を探している状況です。
 東京春闘は失業者を組織する一つの手掛かりとして、NPO法人「働きたいみんなのネットワーク」づくりのお手伝いをしました。リストラ・解雇された人たちは大変苦しんでいます。「働きたいネットワーク」に来て、お互いに話し合い、元気を取り戻している、といいます。不安定ではあるが、とりあえずの仕事を紹介するなど、少しずつ活動を進めています。
 東京春闘と「働きたいネット」は共催で、10月31日、失業・雇用問題をテーマに学習会を持ち、11月30日、5.4%という高い失業率が公表された日ですが、朝8時半から霞が関の厚生労働省や国土交通省前で、失業をなくせという声を上げ、たたかいを起こしました。これ自体私たち、労働組合としては初めての取り組みでした。東京土建、首都圏建設共闘、建交労、「働きたいネットワーク」、生活関連公共事業拡大連絡会、東京春闘の5団体共催で、「仕事よこせ、失業者をなくせ、リストラやめろ」の大行動を組み、全体で2,000名が参加しました。
 厚生労働省と緊急地域雇用交付金事業について交渉を行いました。国土交通省に対して落ち込んでいる建設産業の雇用と営業を守れと要請行動を行いました。金融庁の指導で多くの企業が潰されているので、金融庁に対して中小企業をつぶすなと要請行動を行いました。国土交通省は当初、雇用問題は厚生労働省の管轄ですと言っていましたが、70人近い要請団に対して、緊急地域雇用交付金事業の問題では、国土交通省もオブザーバー参加しながら厚生労働省と雇用の問題についていろいろと関わりを持っているということを認めました。初めての取り組みではありましたが、運動に1つの足がかりをつくれたと思います。
 厚生労働省は、今年で打ち切ると言っていた緊急地域雇用交付金事業を、新たに3,500億円の予算をつけて、3年間延長しました。私たちは地域交付金事業の延長・拡充のためにさまざまな問題について要請を行ってきました。私たちのような取り組みが全国的に強化される中で、旧交付金事業の改善が行われ延長されました。
 建交労が厚生労働省交渉で確認している内容は重要です。都道府県と各市区町村での交付金事業の配分はおおむね5対5が望ましい。各都道府県の事業計画費の8割以上、4分の3が失業者の雇い入れに使われなければならない。交付金事業の対象となる失業者の認定は、月のうち就労日数の少ないダンプ労働者をも含めて交付金事業の対象の失業者と認める。委託先は建交労が進めている高齢者事業団や失業者を組織しているNPOも対象団体であるなど、です。
 東京春闘共闘も来春闘で、失業者問題を大きく据えた春闘にすることにしています。労働組合は正規であれパートであれ、雇用を維持している労働者の組織体ですが、失業者や路上生活者にまでなかなか心が行かないわけで、こうした運動を通じて東京春闘としてもぜひ大きなたたかいを組みたいと考えています。(拍手)
 牧野 労働法専門の立場から、萬井さんお願いします。

看板一つかけただけで補助金とは

 萬井 今年の春、滋賀県のリストラ問題の学習会で、私は会社分割法とそれに伴う労働契約承継法の話をしました。労働契約承継法では、分割されて他の会社に継承される“営業”で主として働いていた労働者は、会社が行けと言えば必ず行かなくてはならないことになっています。従来の法律枠の基本は本人の同意を必要とするということでしたが、本人が了承しなくても他の会社に飛ばすことを強行する法律ができて大問題になっているのです。
 滋賀県にあるIBMの野洲工場で実際にやられたことですが、“不況部門”の半導体部門とエプソンとが協同して新しい会社を造るということで、会社分割法が使われました。ところが実情は、IBM野洲工場に看板が1枚掛かっただけで、やっている仕事も、職場も何も変わらない。エプソンは、若干の人を出し、新会社の経営陣に名前を連ねているだけで、中身は変わらないそうです。ところが、別会社にされた。リストラを本格的に進めるさいに会社分割法が大いに利用されると言われていましたが、その実例を目の当たりに見せつけられました。
 ところで、IBMの野洲工場の半導体部門が別会社になって、新しく雇用を創出したと評価を受けて、その会社が、労働者1人当たり70万円の助成を受けたと、IBMの労働者の方は言っていました。IBMは何もやらないで、看板1枚掛け替えただけの“新会社”が、ひょっとすると実はドロ舟で何年か先には沈んでしまうかもしれないと言われているのに、会社分割法を使うだけで、労働者1人当たり70万円も助成を受けている、ということです。助成金の財源と総額はいかほどなのでしょうか。
 木下 1人70万円の助成金というのは、「新規・成長分野の雇用創出特別奨励金」のことで、平成11年8月から実施されています。これは新規成長分野の事業主が中高年齢者の非自発的離職者等を雇い入れる、その雇い入れる時期を、前倒しして常用労働者として雇い入れた場合に、70万円を支給するというものです。これは今年の10月から公共職業安定所の紹介だけではなく、民営職業紹介所の紹介による雇い入れも認めることになりました。それから、厚生労働省と経済産業省の連携が進みまして、経済産業省の法律である中小企業経営革新支援法に基づいた中小企業にも、労働省の助成金が配付されることになっています。70万円は雇い入れ対象者1人について支給されます。
 牧野 「働きたいみんなのネットワーク」の豊田さん、お願いできますか。

無料職業紹介所立ち上げめざして

 豊田 私ごとですが、かつて石播解雇撤回闘争では牧野先生に大変お世話になり、ありがとうございました。3年前、石川島の解雇争議が解決して、春闘共闘のアルバイトをやっていた頃、失業問題が深刻になり、失業者の雇用と生活を守るための組織をつくろういうことでできたのが「働きたいみんなのネットワーク」です。人に言わせれば、よくできたなぁという状況です。現在倒産で失業した仲間、テレビや新聞で報道を見て、「ネットワーク」を頼ってきた仲間、再就職して失業者ではなくなった仲間など10人が事務局として頑張っています。会員は40人に満たない状況です。
 しかし、毎月発行しているニュースを通じて繋がっている失業者の皆さんが、約 300人ぐらいいます。これは職安前で行った「働きたいみなさんのアンケート」に住所・氏名を記入して回答してくれた方々です。
 いま、無料職業紹介所を旗揚げするために力を入れています。ここにいらっしゃる木下さんにも大変大きな助言をいただきながら、いろんな人たちのバックアップがあって事務所も確保出来たし、ピカピカなパソコンも入れてもらいましたが、人材が不足しています。
 われわれの活動ぐらいでは深刻な失業状況を改善できるという状況ではないですけれども、失業してみて本当に失業の大変さがわかった。失業者に少しでも力になれることをやろうということが、最大の売りですし、事務局で頑張っている人たちの心でもあります。コーチや素晴らしい人たちがいっぱいいますから、皆さんのお力もお借りして、年内には無料職業紹介所の申請をして、来年旗揚げしたいなと思っています。(拍手)
 牧野 パネリストの皆さん、5分程度で第2 回目の発言をお願いします。金子さんから。

運動が事態を動かしはじめた

 金子 先ほどは、不況打開実行委員会の活動を中心に報告したが、労働運動としてどんな活動をしてきたかに触れた発言をします。
 11月14日、全都的な総行動が行われました。大田春闘共闘委員会は、大手電機メーカー7社の東京本社、松下は東京支社に対して、リストラ反対の抗議行動を行いました。それから不良債権最終処理問題が、労働者の間でまだきちんと理解されてない部分があります。この弱点を克服することが求められています。進んでいるところのひとつ全労連全国一般の組合では、6期赤字を理由に、希望退職、賃金カットが会社から提案され、雇用を守るために頑張ろうと20数年ぶりに従業員組合と共闘し、地方工場の労働者を激励に行ったり、リストラ計画を出させているのは不良債権処理に取り組む銀行だということで、東京三菱銀行への抗議行動に立ち上がっています。今年の大田区労協の運動方針が、労働組合として企業の財務状況をもキチンとつかむ、経営実態を正確に把握するために財務諸表の提出を会社に求めることの大切さを指摘していることなどは、この弱点を克服する上で重要です。
 昨日区議会にわれわれが出した大田の地場産業を守ろう、不良債権の最終処理を画一的にやるなという陳情が審議され、国と東京都に対して全会派一致して要望書を出そうとまとまりつつあると言われています。
 大門さんの国会質問以降、新聞赤旗は、この問題を大きく扱ってくれて、今日の4面は、北海道の網走の信組問題と、栃木県の信金の問題が大きく取り扱われています。そういった意味で頑張ってきたことが事態を動かし始めているという感触を持っています。不良債権最終処理で犠牲者が出ないよう、これからも頑張りたいと考えています。(拍手)。

NTTに社会的責任を果させる

 岩崎 先ほど木下さんが言われた新規成長分野の雇用創出特別奨励金は、来年の3月で切れる時限立法と聞いていました。NTTはこれを申請するのかなと思って、交渉で聞いたら、これの申請はしないが、事業再雇用助成金は申請すると言っています。国の予算で80億円です。NTTの50歳以上の人が殆どやめたら5万5000人です。国の予算80億は2万7000人ぐらいです。この辺はぜひ勉強したいと思います。
 NTTは現在60歳の定年制ですが、NTTは新しい会社の定年制をどうするかといえば、50歳以上の者がNTTを1回退職して、新しい会社に再雇用されそして60歳で新会社を退職し61歳から65歳までは契約社員で、時給875円で雇う。これは助成金の申請に当てはまるのかどうかも検討したいと思います。
 働くルールを求める連絡会の報告でありましたように、学生の就職難にはNTTも大きな責任があります。ぜひ抗議してもらいたいと思います。東西会社は毎年3,000名の新規採用をしていました。このリストラ計画で、当面、今年から2年間一切新規採用を凍結しています。高校、大学の卒業生は一切採らないのです。こういう点からも、大企業の社会的な責任を果してないと思います。私たちは、全国の地方自治体 3,200に総合的な窓口を置いて、国民サービスを提供しろという提案をしています。1個所で50人、地場から労働者を雇えば全国で16万人雇用できると考え、そういう提案をいましているところです。
 NTT11万リストラは、いよいよ1月から差し迫ったたたかいになってきます。ぜひ今後とも皆さんのご協力をお願いして、私の発言を終わります。(拍手)。

ただ働き残業をなくし雇用を増やす

  日産のリストラ反対闘争は、最終的にどんな成果があったのかと聞かれます。残念ながら工場閉鎖や組合員の拡大という成果はありませんでしたが、大企業の無法身勝手なリストラは許されないという世論形成に一定の役割を果たしたと思っています。実利という面では、過酷な強制的退職に歯止めかけ、本人同意原則と異動基準を明確にさせ、雇用が一定程度守れたことや、日産では転進支援制度と言っていますが、50代で退職をした場合は、通常の月収の42ヵ月分をプラスさせるとか、転居をともなう配転に応じ、東京から栃木工場に単身赴任ではなく、引っ越しをした場合、最高306万円までの特別赴任手当を出させたなどです。
 私たちは地方労連の力も借りて栃木や追浜工場でのビラまきなどを行っていますが、ビラの受け取りも良く、反響も大きいなものがあります。この背景には、村山工場から追浜や栃木の工場に移動した、村山工場での私たちのたたかいに共感を寄せてくれた仲間がいるのです。
 今回のリストラの背景にはフランスのルノー資本がいたわけで、私どもは当初からフランスの労働組合CGTルノー労組と交流を進めてたたかってきました。このことは労働者の励ましにはなりました。ベルギー・ヒルボード工場閉鎖とたたかったルノー労組の経験も、われわれには非常にプラスになりました。11月、ルノーは日産と合弁で、オランダに統括会社をつくると発表しましたが、CGTルノー労組はわれわれの経験を踏まえて機敏に反撃しています。これに真っ正面から反対し、フランス国民にとって大きなマイナスであるという声明を出しています。
 きょうのシンポジウムのテーマである緊急雇用対策に関連して日産の私たちが皆さんのご支援を得てできることは、膨大な残業やただ働きをなくして新規採用を増やすことと日産が計画しているアメリカなどへの生産移管をやめさせて国内生産を維持・拡大することではないでしょうか。
 牧野 ありがとうございました。全労連の中島さん、ご発言いただけませんか。

産業空洞化への対応を

 中島 全労連の幹事会で話題になった話ですが、100 円ライターを国内でつくると単価25円、中国では2円で出来とのことです。日本の製造業は最低賃金額しか払わなくても、中国などとの国際競争力で負けてしまうわけです。ここをなんとかしない限り、大リストラとか大量失業の問題は解決しないのではないかということが、何度か議論がされているようです。
 EUの指令や各国の条約などを参考に、政策的には立案できるとしても、それを国の政治に認めさせるたたかいをどうやってつくるかという問題を、そろそろ話し合いのテーブルに載せなきゃならないかなというのが、私自身の問題意識にはあります。
 労働総研中小企業問題研究部会は、先日初代部会長の福島先生が招かれた中国の黒竜江省大学助教授のユージンさんを招いて勉強会を持ちました。中国経済は、世界的な不況の中で、7%、8%の高度成長を続けていています。これは持続可能だと話されました。中国政府は何ヵ年計画かで、西部大開発をやる方針だそうです。工業立地を内陸の農業・林業の地域に持っていき、さらに安い労働力を活用しようとしているようです。
 技術力の点でも、日本が要請するものは殆ど造れるそうです。あと10年も高度成長が続けば日本経済は完全に追い越されるという報告がありました。
 全労連は、この大リストラ・失業問題で、かって諏訪地域の調査を労働総研のご協力をいただいてやった経験がありますが、全商連と共に現段階でもう1回、電機産業と自動車産業に絞って、行おうという相談を始めたところです。02年4月上旬を目処に、新潟、浜松、静岡、四国もどこか1つ選んで、大調査をしたい。その調査に基づいて社会的な大きくアピールするための準備をしたいと思います。(拍手)
 牧野 ありがとうございました。最賃すれすれの低賃金でも、中国との競争には勝てない、そこをなんとかしなければいけないという難しい問題が出ることを予想して最後にそこにも触れて、大須さんの発言をお願いします。

雇用創出交付金の活用を

 大須 『資本論』という本を読みますと、資本主義社会では失業は必然なのだと書いてあります。いま日本の失業が深刻なのは、労働組合がだらしがないからだと言う人もいますが、労働組合が頑張ったからといって、失業は簡単になくなる問題ではありません。しかし、まだ頑張りようはあると思います。いま起きている失業問題は、単にあちこちの企業が勝手にやっているような問題ではなくて、政府がらみで、ひょっとするとその裏にはアメリカ帝国主義がいるかもしれない。そのくらいのデッカイ構えの話だと思うのです。
 だから、こっちは相当考え、力を出さなければいけないけれども、いま失業者がたくさん出ているときに、失業者を救う手だてを、現行の制度から少しでも拾ってくることが必要なのではないかと思います。そういう点で、雇用保険法を強める問題と緊急地域雇用創出特別交付金制度の活用、失業者に仕事を保障する制度を拡充していく運動が重要だと思います。政府は1回廃止した失業対策に似た制度を始めているのです。失業情勢が深刻でやらざるを得ないということで始めました。しかもこれを延長してこれから3年やりますといっている。こんな制度はろくでもないと言う言い方もありますが、この3年間で、労働者や失業者にとってもっと役に立制度に労働運動として変えていく必要があると思うのです。そうした運動が強まれば、失業者を支援する制度が雇用保険制度と交付金制度と、1つから2つになります。そのためにも頑張るしかないと思います。(拍手)
 牧野 ありがとうございました。最後に参加者一同の名において「『有識者・諸団体の方々に』大リストラと大量失業に反対する連携行動を訴える」アピールを、皆さんの拍手でご承認をいただければと思います。(拍手)

有識者・諸団体の方々に「大リストラと大量失業に反対する連携行動を訴える」
2001年12月15日
 各界の研究者・有識者・諸団体の皆さん。
 私たちは本日、労働運動総合研究所の呼びかけで開かれた緊急シンポジュウムに参加し、とどまることを知らない最近の大リストラ・大量失業の広がりについて、さまざまな角度から実情を検討するとともに、状況打開にむけた率直な意見交換を行いました。その結果、以下のような趣旨で皆さんの御協力をいただきたく、お願いのアピールを出そうということになりました。お忙しいことと思いますが、御一読いただき、ぜひ御協力を賜りますようお願いする次第です。
 (1)私たちは今日の雇用・失業情勢に関して、次のような共通認識をもっていることを確認いたしました。皆さんとも、これらの点で認識を共有できれば幸いです。
 @大手電機メーカーをはじめ、大企業が次々と競い合うように強行している今日の大量解雇は、国民の生存そのものを脅かす重大な攻撃である。どうしてもこの事態に緊急に歯止めをかける必要がある。
 A小泉内閣のもとで推進されている不良債権の直接処理は、中小企業経営と地域経済を直撃し、倒産や廃業を多発させており、日本経済を破綻に導きつつある。将来性のある企業をも破綻に追いやるような直接償却を、直ちに中止させる必要がある。
 B総務省の調査によっても、すでに実質的な失業率は10%をこえており、冬を迎えて、ホームレスをふくむ失業者の生活保障拡充のため、緊急の対策を取る必要がある。
 C小泉政権の政治や一部のマスコミのなかで、国民の生命や生活を脅かすリストラや失業を、改革の一環だとして容認し、さらには推進しようとさえする風潮のあることは、きわめて重大な問題である。この風潮を批判し、国民生活の深刻な状況を政治や世論の中心問題とする必要がある。
 D今日の情勢の中では、大衆運動の強化とともに、心ある有識者の方々によるこの点での積極的な発言や行動がとりわけ重要になっていると考える。
 (2)上記の共通認識にもとづき、当面する深刻な失業・雇用と国民生活危機の打開に向けて、緊急に以下の諸課題実現のために、私たちもそれぞれの立場から努力しようと申し合わせました。
 @大手電機企業などによる大規模な人減らし・リストラ計画実施を中止すること。あわせて、不払い残業や恒常的残業解消・年次有給休暇完全取得保証する事業計画により雇用機会を拡大させること。
 A都市銀行など金融機関の期限づきの不良債権処理を停止するとともに公的責任による中小企業への金融支援を拡充すること。
 B雇用保険の失業給付期間の延長とあわせて、給付期間切れとなった未就職者や自営業者・学卒未就職者・雇用保険未適用者などすべての失業者を対象とする生活支援給付をおこなうこと。
 Cすべての失業者と家族に保険料納入を免除し健康保険・介護保険など社会保険の権利を保障すること。
 D福祉・環境・教育などの公的就労事業とともに各種公的免許取得など生活支援をともなう技術・技能習得機会を拡充すること。
E住宅ローン・サラ金など失業者の借金返済猶予とともに、公営・公的住宅の空室の確保や民間住宅借り上げなどにより失業者とその家族に住宅を提供すること。
 (3)私たちは、解雇・倒産・失業の状況がこれ以上深刻化し悪化することを断じて許してはならないと考えます。そのためには、危機感を共有する各界の有識者・諸団体の方々に、まず、「このままではだめだ」と言う声を上げていただく必要があると考えます。

 皆さんにぜひお願いしたいのは、以上の趣旨に御賛同いただき、御一緒に大量リストラ・大量失業を批判する連携行動に参加していただきたい、ということです。そして、どのような連携行動がてきるかも、共に考えていきたいのです。皆さんの積極的な支持と協力を心から期待したいと思います。

「大リストラ・大量失業を告発するシンポジュウム」参加者一同