2000年12月1日(通巻129号)



目   次
巻頭言

 担い手がいなくなる?
 劣悪なヘルパーの処遇………………宇和川 邁

論 文

 産業再編下の「合理化」攻撃と
 金属機械労働者のたたかい…………小林 宏康

 「行革」に反対する国公労働者の
 たたかい………………………………小田川義和

第2回常任理事会協議確認事項ほか



担い手がいなくなる?
劣悪なヘルパーの処遇

宇和川 邁

 4月から実施された介護保険について、連日のようにマスコミでも、制度の矛盾や介護現場における問題点の実例を挙げて報道している。しかし、介護現場における、とりわけ在宅介護を担っているヘルパーの処遇の実態についてはあまり知らされていなかった。最近、二つの調査が相次いで発表された。一つは、東京労連傘下の東京医労連、福祉保育労東京、自治労連都職労、建交労などが10月6・7日、11月15日に実施した「介護ヘルパー労働110番」のまとめ報告(24件)であり、もう一つは日本介護クラフトユニオン(連合加盟)の介護事業で働く労働者の就業実態調査報告である(6〜7月時点で調査、10月16日発表)。在宅介護を担っているヘルパーの処遇の実態には、次のような特徴が挙げられる。
・ 大部分が登録型雇用・非正規雇用である=時給は幾分高いが月収は非常に少ない、労働時間が不安定(担当の利用者が入所・入院になった場合に賃金保障なし)、労基法が守られていない、社会保険に入れない、直行・直帰のため移動・記録時間などが労働時間として扱われていない、就業規則が提示されていない・作成していないところもある
・ 感染症の情報提示が不十分である=MRSA、疥癬、結核、肝炎ウィルスなどの有無がヘルパーに提示されていない、事業者も感染マニュアルを作成していない
・ ヘルパーの研修がおこなわれていない=入職したら直ちに現場に派遣される、研修・事例検討・カンファレンスなどがおこなわれていない、不安の中で仕事をしている
・ ヘルパーの横の交流ができない=問題が発生した場合、一人で抱え込んでしまい相談する場がない、ヘルパー同士のつながりが欲しい
・ 深夜の訪問介護が一人体制である=危険な目にあった事例がある、等々
 こうしたヘルパーの処遇の実態について、マスコミも「ヘルパーを志す若者や主婦は、介護や福祉の仕事に大きな意欲を持つ人たちである。このままでは、その意欲がしぼんでしまわないかと心配だ」と強い懸念をしめしている(朝日社説「担い手がいなくなる?」10月29日付)。こうした処遇の実態のままでは、ヘルパーは在宅介護を支える専門職として成長していくことは不可能であり、使い捨てられることにならざるをえない。このままでは介護保険制度は自壊していくのではないだろうか。

(理事・労働問題研究者)



産業再編下の「合理化」攻撃と金属機械
労働者のたたかい

小林 宏康 


 いま日本の金属機械産業は世界的規模での「大再編」にみまわれている。
 自動車産業では、フォードとマツダ、ルノーと日産、GMと富士重工・スズキ・いすず、ベンツ・クライスラーと三菱自工など、アメリカを中心とする海外独占体による系列化が進行し、トヨタ、ホンダを合わせると6つの系列に再編されつつある。鉄鋼業界は、NKK・川崎製鉄が鉄鋼部門で提携、新日鉄を中心とするグループとに2分されつつある。新日鉄が住友金属と提携(日新製鋼とも連携の方向)、自動車など需要業界への影響力を強めていることへの危機感が背景にあるといわれる。造船は運輸省が99年夏に国内造船業の再編の方向性を提示。現在の大手7社から、日立造船・NKK、川崎重工・三井造船、川崎重工・三井造船・IHI、三菱重工など3、4グループに集約される見とおしである。住友重機とIHIは、艦艇の製造を統合する。電気電子関係では、事業部門ごとの集中が進行中で、モーター部門では日立・富士電・明電、東芝・三菱がそれぞれ業務提携、半導体では、品目別に、NEC・日立、東芝・富士通、日立・富士電、NEC・三菱の提携が発表されている。
 巨大企業が世界規模の「大競争」下で生き残りをかけて、資本の集中・提携にのりだしているためである。産業の再編成はいわゆる、「IT革命」と密接に結びついている。
 産業の再編を契機として、資本は、「リストラクチャリング」の名のもとに、新たな質の大「合理化」運動にのりだしている。事業所の閉鎖・統合、資産や事業の売却、企業の分割、分社化、アウトソーシング、下請け・中小企業の整理淘汰が大規模に進められ、これにともなって事実上の大量解雇が強行されている。徹底したコストダウンを通じて、短期間で企業の収益率を飛躍的に改善することが、そのねらいである。
 事実上の解雇といったのは、労働者が「やめる」というまでくりかえされるしつような退職強要、通勤困難な遠隔地への配置転換、労働条件の大幅な切り下げをともなう転籍、仕事の取り上げ・隔離部屋への押し込めなどの「いじめ」・人権侵害によって、労働者を退職に追い込むやり方が、主要な手段とされているからである。
 こうして、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、一般機器、電機機器、輸送用機器、精密機器の金属機械7業種の合計で、91年末から98年末までの7年間で、2万8000の事業所、93万人の労働者が減少した。減少率は91年末対比で事業所数で17%、労働者数で16%になる。鉄鋼、非鉄金属、電機、精密機械の減少幅が大きい(規模4人以上、通産省「工業統計」による)。99年の工業統計によると、1年間で23万6000人減った(従業者4人以上)。労働省の雇用動向調査で99年の前年比常用雇用指数をみると、調査産業計△1.2に対し、製造業は△2.6、金属機械産業は、鉄鋼△6.4、非鉄△4.8、金属製品△4.0、一般機械△3.2、電機機器△3.1、輸送用機器△2.6、精密機器△2.8である。事態は一層悪化している。
 リストラクチャリングとは事業の再構築を意味することばだが、日本では「リストラ」と略されて、「首切り」の同義語として流通している。
 人べらしと平行して、長期継続雇用をたてまえとする「正規雇用」のパートタイマーや派遣労働者、請負労働者など「不安定雇用」への置き換えが、劇的に進行している。
 自由民主党を中心とする日本政府は、ここ数年にわたる立法・法制度の改定をつうじて、大企業の産業再編・「合理化」政策をバックアップしてきた。政治による後押しは、2つの側面から行われた。第1の側面は労働法制の改悪である。第2は産業・企業の再編を促進する経済法制の改悪である。
 ここ2、3年に限っても、第1の側面ではは、@8時間労働制を骨抜きにする労働基準法の改悪、すなわち「女子保護」規定の撤廃、1年単位の変形労働時間制の上限規制緩和(以上99年4月実施。裁量労働制の拡大(2000年4月実施)。A直接雇用や長期継続雇用の原則を壊す、職業安定法の改悪(2000年4月実施)、労働者派遣事業法の改悪(99年12月実施)、3年未満の有期雇用の導入(2000年4月)が主なものである。第2の側面では、独占禁止法改悪による持株会社の解禁(97年)、税金の投入、税制・金融上の優遇措置をつうじて大銀行、大企業のリストラを促進する「金融再生」2法の制定(98年10月実施)、産業再生法の制定(99年10月実施)、会社分割法の制定(2000年5月成立)などが上げられる。
 その結果、企業規模の大小を問わず、金属機械労働者の雇用は危機的な状況に追いこまれた。99年の完全失業者は317万人、失業率は4.7%と最悪を記録した。こうした事態にさいして、労働組合はどのようにふるまったのか。
 日本の金属機械産業には約520万人の労働者が働いている。労働組合員は230万人、ナショナルセンター別にみると、その85%が連合に所属している。組織率は44%と比較的高い方だが、労働組合の存在感は薄れる一方である。
 金属機械大産業の大企業労働組合は、ほとんどが「正規雇用」のみを組合員とする企業内組合で、資本の「リストラ」政策に抵抗せず協力しているためである。連合は、労働法制の改悪に対しては一定の抵抗を行った。しかし、連合加盟の金属機械関係の単産、企業内組合による企業のリストラ政策に対する抵抗は、まったくといってよいほど見られない。
 これに対して、全労連に加盟している金属機械労働者は0.6%にすぎないが、資本の「リストラ」と果敢にたたかっている。金属機械産業で、唯一の全労連単産であるJMIU(全日本金属情報機器労働組合)のたたかいについて報告する。JMIUは労働法制の改悪に反対しストライキでたたかった、金属関係単産では唯一の組合である。いまも「改悪を職場に入れない」を合い言葉に、事前協議・同意協定確立のたたかいを、大企業の横暴から労働者と中小企業の職場を守るたたかいと結合してすすめている。スペースの関係から、これらのたたかいについては省略し、報告は職場の「リストラ」反対闘争に限定する。
 JMIUでも98年以降、企業組織の再編にかかわる工場閉鎖、分社化、労働者への退職・転籍強要などの攻撃があいついだ。
 アメリカ資本の日本NCR、日本IBMで、分社化・労働者の転籍を柱とする大規模な「リストラ」攻撃が加えられた。JMIUは巨額の利益をあげている大企業の不法行為を告発し、職場の内外にたたかいを広げている。NCRは転籍に同意しない労働者を、各地のサービスセンターの狭い一室、一区画押し込め、仕事を取り上げた。IBMでは、転籍を断ったベテラン労働者が、子会社に出向させられたうえ、まともな仕事を奪われている。セガエンタープライゼスでも、退職強要を拒否し隔離部屋に閉じ込められた労働者がJMIUに加入して、たたかいを起こした。
 すでに本誌で報道済みなので内容にはふれないが、ルノー資本による日産自動車の大「リストラ」に対する、全労連・JMIUを中心とする大きなたたかいもある。
 これらのたたかいについては、労働者の運動をほとんど報道しない日本のマスコミもある程度とりあげるようになり、「リストラ」容認の世論に変化を引き起こしつつある。
 これらは、日本の大企業の「リストラ」政策が、労働者の組織的抵抗に直面した数少ないケースである。いずれもJMIUはごく少数であり、資本の施策を大きく修正させることはできていない。たたかいはいまもつづいている。
 一方、JMIUがある程度の組織と影響力をつちかってきたところでは、たとえ少数でも「リストラ」に歯止めをかける成果も生まれている。
 長野の高見澤電機では、親会社の富士通が高見沢の主力工場である信州工場の仕事をそっくり高見沢の子会社の千曲通信に営業譲渡する(信州工場の事実上の閉鎖)。労働者には退職か、賃金40%ダウン、労働時間の年間200時間延長をのんでの転籍か、の選択を迫る攻撃をかけてきた。信州工場にはJMIUの支部と企業内組合がある。企業内組合は会社提案を受け入れたが、JMIUは退職・在籍強要をはねのけ、信州工場の閉鎖を許さず雇用を守り抜いた。富士通資本はこの問題への関与を否定しつづけているが、JMIUは、破綻した高見沢つぶし政策をとりやめ、信州工場の存続・発展を求めてたたかい続けている。
 スウェーデン・スイス系資本傘下の日本テトラパックでは、兵庫の西神工場(西神テトラパックという子会社の形をとっている)を閉鎖し静岡の御殿場工場(御殿場テトラパックという子会社の形をとっている)に事実上集約する、労働者は大幅な労働条件切り下げをのんで御殿場に転籍するか、退職するか選択せよという攻撃がかけられた。ここでは、以前から組合つぶしの不当労働行為がしつようにくりかえされ、その過程で第2組合が生まれ、連合のCSGに加入していた。ところが、今回の「合理化」案には、JMIUはもちろん、連合加入労組も反対し、事実上の「共同闘争」となった。会社は労働者との個々面接で退職・転籍を迫ろうとしたが両労組の反対で実現せず、会社は西神工場の閉鎖を撤回し、労組側の完全勝利となった。
 埼玉の北村バルブでは、同社を買収した米国タイコ社が、労資協定・慣行無視の人ペらしを強行しようとした。労働組合はJMIUの支部と連合労組とに労働者は2分されており、非組合員の管理職からかなりの退職者が出た。JMIUはパートタイム労働者をも組織しており、その解雇に反撃するなかで、「雇用形態のいかんにかかわらず、もう人べらしはやらない」という「リストラ終息宣言」をかちとり雇用を守った。
 これらのたたかいは、全労連、地方労連と連帯する、地域ぐるみのたたかいともなっている。こうしたたたかいを通じて、私たちは、「たたかえば道は開ける、リストラに歯止めをかけることができる」という確信を深めている。

(会員・JMIU副委員長)



「行革」に反対する
国公労働者のたたかい

小田川義和 

中央省庁の再編を目前に

 2001年1月6日、日本政府の組織が変更になる。1府12省22庁(内、閣議の構成員である国務大臣を長とするもの1府12省9庁)を、1府10省17庁(内、国務大臣を長とするもの1府10省2庁)に再編することが決定している。
 日本の行政組織は、厳格な「法定主義」のもとにある。省庁の設置目的と編成、数、名称の変更まで、法の改正が必要である。したがって、行政権限が帰属し、行政組織を統轄する内閣でも、勝手に省庁の編成を変えることはできない。国会で法改正をおこなわなければ、省庁間の任務分担すら変更できない省の編成が政治的な対立を招く一因でもある。
 そのこともあって、1948年の省庁編成が50年間にわたり基本的に維持され、省あって国なしとまでいわれる「縦割り行政」を温存したとの批判が、国民の一部にあった。それだけに、今回の行政組織の変更は、行政そのものの変革につながるものと位置づけられ、少なくない国民にも同様の受けとめが広がっていた。

「行革」に反対した国公労連

 国家公務員で組織する国公労連は、省庁再編をはじめとする「行革」論議がはじまった1996年11月から、一環して反対の運動を展開してきた。
 その理由は、以下のような点にある。
 一つには、政府が、省庁再編などの行政改革をおこなおうとした目的と関連する。
 改革を論議した行政改革会議の第1回会合で、ときの橋本首相は、次のように述べている。「我が国の発展を支えてきた経済システムが、内外の環境変化の中で限界を露呈している」、「このため、国家・行政の機能を根本的に問い直すことが重要である」「大胆な規制の撤廃や緩和をすすめ、行政をスリム化し、ふさわしい省庁体制や官邸機能を構築する」。
 改革の目的は、高度成長経済の終焉やバブル経済崩壊後の経済的な停滞が強く意識されていた。この経済的な停滞を打破するため、80年代から活動を活発にしていた多国籍企業の活動のバックアップを中心目的とする国家・行政への改革がめざされた。自由競争を最善とするグロバリゼーションに適合した日本社会の構想改革である。国公労連は、そのような改革が、社会的連帯を基礎とする福祉国家の構築という国家・行政目的を後退させるものに他ならないと考えた。
 改革の結果は、例えば、社会福祉、社会保障一般の行政を任務としていた厚生省と、労働者の福祉と職業確保を任務としていた労働省が合併し、厚生労働省に再編されることとなった。労働者の活動が徹底して抑圧された経験をもつ日本では、労働省の存在は戦後民主主義の一つの象徴として受けとめられてきた。同時に、過労死にも象徴されるように、現在でも多くの労働者の権利が侵害され続けていることから、労働省には特別の期待が寄せられていた。厚生労働省への再編は、そのような期待に反して労働者行政の後退を示す象徴である。
 二つには、日本では、1980年代はじめから、行政改革が歴代内閣の中心的な政治課題にすえられ、国家公務員の削減が、その成果として強調されてきたことに関連する。
 今回の省庁再編も、「行政スリム化」の名目で、25%もの定員を削減するとしている。そのような「合理化」の結果が、公務員労働者への労働強化と行政サービスの後退にしかならないことが明らかだったからである。
 もともと、日本の公務員数は他の先進諸国と比較しても特段に少ない。1997年時点の統計で、人ロ1000人当たりの国家公務員数(国防関係を除き、国営企業を含む)は、日本が10.2人、イギリスが32人、フランスが47.5人となっている。連邦政府であるアメリカでも、7.5人である。公務員数だけで言えば、特別に「小さな(中央)政府」と言える。そのような人員で、中央政府の活動を支えているのは、補助金などを駆使して、実施事務を地方政府や民間セクターに押しつけてきたことにある。同時に、40人もの生徒に対して1人の教師しか配置しないという「制限」や、16時間もの深夜勤務を看護婦に押しつける労働強化の実態も見過ごせない。
 国公労連などの調査でも、2000年2月の一ケ月間の残業時間が100時間を超える労働者が、本省庁職員の13%を上回っている。そのような事態は、年々増加しており、過労死におびえる労働者は少なくない。行政需要の検証もおこなわずに、法律で公務員削減を決定し、労働者を犠牲にする改革に労働組合が賛成できるはずはない。
 三つには、中央政府の行政責任を限定する制度改革が意図されたことである。その内容は、地方分権の名による自治体への事務分担の押しつけと、あらたな行改組織とされる独立行政法人制度創設の二つである。
 特に独立行政法人制度は、医務や教育、研究などにかかわる国の機関に、国とは別の法人格をあたえ、限られた予算で最大の成果を求める仕組みとして創設された。例えば、独立行政法人の対象とされる国立病院は、独立行政法人化によって国による財政的支援なしには存続が難しい地域の医療でも独立採算を強制する仕組みとなっている。結果として、医療施設のない地域を、これまでより拡大することになりかねない。仮に、独立採算が上手くいけば、民営化の対象とされることは容易に想定される。廃止、民営化の「次善の策」が独立行政法人制度である。
 四つには、軍事大国化の意図をもって、首相の権限強化の改革がすすめられたことである。行改組緻の改革と同時並行で、「戦争法」、「国旗・国歌法」、「盗聴法」などの成立が相次いだことが、その証である。省庁再編でも、防衛庁の「国防省」昇格論議が、いまなお継続している。「戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認」を明確に規定した憲法第9条のもとでの防衛庁(自衛隊)の存在は、戦後政治の中心的な争点であった。高度経済成長を「国家目標」としえなくなった今日、あらたな「国家目標」の設定が保守政治の課題となっていた。国際貫献などを口実に、防衛庁(自衛隊)の認知を国民にせまる動きは、バブル経済崩壊による経済的混乱によってさらに強まっている。グローバリゼーションへの対応と同時に、新たなナショナリズムでの国民統合をめざす改革の突破口として、政府は、行政組織の再編を位置づけたと考える。

国公労連の取り組み

 国公労連は、以上のような「行革」の問題点を広く訴えるとりくみを重視し、国民的な世論を背景にした国会斗争を強めた。そのことで、「行革」の強行に反対する国公労働者の意思を表明した。取り組みは、署名や大量宣伝などを中心においたが、そのような取り組みを「行革」反対の運動の中心におかざるを得ないのは、労働条件決定にかかわる労働組合の権利と無関係ではない。
 日本の公務員労働者は、労働条件の決定にかかわって、争議行為はもとより政府との直接的な交渉も否定されている。1948年、GHQから出された一通の書簡(マッカーサー書簡)によって、政府は、全ての公務員から労働基本権を剥奪したのである。そのことの弊害は、今次の行政組織改革でも顕在化した。過労死におびえる労働強化を強いられながら、さらに25%もの定員削減が決定されようとしている時に、直接的な反対のたたかいが展開できなかった。現時点で、約7万人の国家公務員が、国との雇用関係を切られ独立行政法人に移されようとしているが、それに対抗する直接行動は、刑事罰を覚悟しなければ行使できないのである。

取り組みの到達点とこれから

 1996年時点では、贈収賄事件など、官僚の不祥事が相次いだこともあって、「行政改革に反対する者は国賊」とする世論形成がおこなわれていた。しかし、約4年経過し、省庁再編を目前にした現時点では、「行革」への期待は薄れている。それは、「行革」が、社会保障制度の後退や失業の増大といった「陰」を持っていること、GDP比で130%近くにも達する財政赤字累積の解消と無縁であること、などに国民が気づきはじめたことによる。そのことは、2000年6月に実施された総選挙で、行政改革推進を公約した政権党・自民党が後退したことにも示されている。そのような世論の変化に、国公労連の運動が少しは影響したのではないかと自負はしている。
 しかし、グローバリゼーションへの対応と新たなナショナリズムの構築をめざした改革の方向が、僅かでも修正された訳ではない。2001年1月の省庁再編で、改革が加速する危険性も否定できない。現に、政府は12月1日、特殊法人の整理廃止、公務員制度見直しを中心とする行革大綱を5年ぶりに決定した。たたかいは、これからが本番である。
 国公労連は、戦力を放棄し、福祉国家の建設を掲げた憲法原則の実現をめざす中央政府への転換をめざす国民的な合意を広げることが、これからの闘いの目標だと考えている。その点での、たたかいの強化を、2000年8月に開催した大会でも、決意もあらたに確認した。公務員削減や独立行政法人化など、「行革」で強まる「合理化」に反対する取り組みを大切にしつつ、大きな目標をもって粘り強く運動を展開したいと考えている。

(会員・国公労連書記長)



 第2回常任理事会協議確認事項
 第2回常任理事会が11月18日(土)13時30分〜17時30分におこなわれた。
 協議に入る前に、「“IT革命”をどう見るか」について藤田実会員から報告を受け質疑・討論がおこなわれた。

報告事項
 3点の報告事項(@全労連との定期協議、A全労連主催国際シンポジウム、B研究会活動)について承認した。

協議事項
1 加入・退会を承認した。
2 刊行物の編集・企画案のうちクォータリー42の編集・企画を検討し、承認した。
3 全国一律最低賃金制の研究については、@パートなど非正規雇用の実態調査、A各国における最低賃金制成立にいたるまでの社会的事情と運動についての研究を具体化し、全労連と協議し進めることとした。
4 本年度第1回研究例会を2001年1月19日(金)午後6時から行うことを決定した。
5 研究活動充実についてはアクションプログラムを検討し、各プロジェクト・研究部会責任者会議に常任理事も参加して3月24日(土)午前中から一定時間をとって協議することとした。




 11月の研究活動
11月4日  政治経済動向研究部会=国連・社会開発調査研究所報告『見える手』報告・討論
  9日  労働時間問題研究部会=研究成果の出版企画の構成など検討
  11日  社会保障研究部会=出版に向けての作業
  13日  国際労働研究部会=2001年版年報の構想と計画・進行状況
  23日  不安定就労・雇用失業問題研究部会=『現代失業政策の方向・規制緩和?それとも?』、『グローバリゼーションと日本的労使関係』のコメント・討論
  24日  地域政策研究プロジェクト=神奈川における県労連の地域活動
  28日  女性労働研究部会=パート労働法改正への政策提案について



 11月の事務局日誌
11月13日 第3回企画委員会
  18日 第2回常任理事会



 労働総研研究例会のご案内

テーマ:賃金をめぐる現状と問題点
   ──日経連労働問題研究委員会報告をふまえて

講 師:金田 豊(労働総研常任理事)
日 時:2001年1月19日(金)午後6時〜
場 所:北とぴあ901号室(JR・地下鉄王子駅前)