2000年7月1日



 [1]1999年度定例総会以降の経過報告
T調査研究事業
U広報・出版事業
V資料収集・提供事業
W調査・政策交流事業
X全労連との連携の事業
Y研究所の整備・拡充の事業

 [2]2000年度事業計画(案)
T21世紀初頭における情勢の特徴と研究課題
  −労働総研|10年を総括して−
U広報・出版事業
V資料収集・提供事業
W調査・政策交流事業
X全労連との連携の事業
Y研究所の整備・拡充の事業
Z設立10周年記念事業

 [3]規約改正(案)





1999年度定例総会以降の経過報告
  1999年度定例総会以降における事業活動の経過の概要は下記のとおり。

[T]調査研究事業

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 1、99年度における研究プロジェクト・部会の活動
 研究プロジェクト
 @、地域政策研究プロジェクト
 全労連・労働総研共催の第3回地域政策研究交流集会以降の研究活動の経過は以下のとおり。
 1、北海道における公共事業の雇用・就業実態と改革方向について(椎名北大助教授/99・3・6)
 2、大阪労連の地域的課題と取り組み(服部大阪労連副議長/99・5・15)
 3、福島県の産業・労働事情と県労連の地域経済と雇用確保の運動(小川福島県労連事務局長/99・7・2)
 4、都市計画法、中心市街地活性化法等の制定と中小商工業防衛の活動の現状(八幡作新学院大助教授/99・9・11)
 5、地域政策と労働組合運動の今日的意義について問題提起(黒川代表理事/99・10・9)
 6、今日の労働組合運動の「地域」に対する認識と地域的課題への方針(芹沢理事/99・11・22)
 7、「地方自治憲章(案)」の作成意義と基本的内容(中西都留文化大教授/99・12・18)
 8、「21世紀初頭の研究計画(案)」の討議素材作成のためのフリー討議(2000・2・4)
 9、「21世紀初頭の研究計画(案)」をレジメに基づき第1次討議(2000・3・11)
 10、「大垣市における地域おこしの取り組み」(鈴木誠岐阜経済大助教授/2000・5・20)
 A、日本的労使関係研究プロジェクト
 研究活動の経過は以下のとおり。
 ・「集団的労使関係から個別的労使関係へ」(99・6・12)
 ・「グローバリゼーション下の日本的労使関係と労働組合」(99・7・24)
 ・共同執筆検討会(99・9・25)
 ・「グローバリゼーション下の日本的経営」及び「グローバリゼーション下の公務労働」(99・11・13)
 ・「グローバリゼーション下の雇用問題」及び「グローバリゼーション下の人事・賃金問題」(99・12・23)
 ・「グローバリゼーション下の社会保障、企業福祉」、「ジャパナイゼーションードイツの場合ー「グローバリゼーション下の女性労働」(2000・1・29)
 ・「グローバリゼーション下の日本的労使関係」(2000・3・12)
 ・共同執筆について最終打ち合せ(2000・4・1)
 99年度の研究活動は、本研究プロジェクトの第3弾目の研究成果を出版するためのメンバーによる研究報告を中心にほぼ月1回のペースで研究会をもってきた。現在は、上記の研究会での議論をふまえて各自の原稿をまとめている段階に入っている。
 B、日産問題研究プロジェクト
 99年11月2日に開催された99年度第2回常任理事会において、10月18日に発表された日産自動車リバイバル・プランにもとづく大規模なリストラ計画に緊急に対応するために、研究チーム「日産問題研究プロジェクト」(責任者・牧野富夫常任理事)を発足させ、全労連・日産リストラ対策委員会の協力を得つつ、資料収集・分析と研究討議を重ねた。
 研究活動は以下のとおり。
 ・「ゴーン・スピーチ」、「愛知機械の近況」及び「日産99年有価証券報告書による事業内容」(99・11・15)
 ・「日産のリストラと自動車産業の動向について」(99・11・22)
 ・「車体京都工場をめぐる動向」、「日産問題とトヨタの動向」、「日産のリストラ計画と産業連関分析」及び「政策課題の整理にむけての提起」等(99・11・29)
 ・「ルノー・ベルギー工場閉鎖をめぐって、35時間制以降など最近の労資関係、ミシュランのリストラについて等」、「下請企業の最近の状況、下請二法の概要と活用について」(99・12・13)
 ・「政策レジメ」の検討(2000・1・11)
 ・「政策(案)」の検討(2000・1・24)
 ・「政策(案)」の最終とりまとめの検討(2000・2・17)
 ・日産村山工場見学及び総括(2000・3・2)  研究成果については、「日産自動車リストラの特徴と政策課題」と題する報告にまとめられた。この報告については、本年3月2日、全労連・現地闘争本部で記者発表を行うとともに、「労働総研ニュース」(本年3月15日付・号外)に掲載した。当研究チームは以上をもって解散した。
 なお、本研究チームのメンバーの執筆によって、「労働総研クォータリー」本年夏季号(6月15日発行)で「日産自動車リストラ」特集を行った。
 研究部会
 @、賃金・最賃問題研究部会
 当研究部会は、97年3月、「財界新戦略と賃金」を出版した。ところが、その後わずか2〜3年後において、経済・社会環境は激変し財界の政策の急速な浸透のなかで、賃金をめぐる新しい課題も登場するところとなった。賃金問題は労資の利害が明確に対立する領域であるが、今日ではそれは労働者階層間の対立要因ですらある。
 部会としては新たな情勢に対応して、そこでの課題を整理し現在の財界の政策・攻撃の矛盾を内在的に実証分析し、相手側の論理と噛み合い、現在の労資対抗関係の問題の所在を認識できる理論書を出版することとした。
 そこで、99年6月から2000年5月にかけて、部会として研究を積み上げ、研究すべき課題、内容を検討し、各メンバーはそれぞれの課題に沿って毎月1回のペースで報告した。そして、2000年3月末には各メンバーの集中討論を実施し、5月上旬に各自最終稿を持ち寄り調整した。この研究成果は「今日の賃金ー財界の政策の矛盾ー」(新日本出版社刊)として、本年度の全労連大会に合わせて出版される予定である。
 A、労働時間問題研究部会
 1、98年3月に「変形労働・長時間・深夜労働−労働時間と『規制緩和』」(学習の友社発行)を出版した。一休み後、98年9月から再開、99年度はほぼ1ヶ月半に1回の割合で計9回研究会を行った。
 2、98年9月より99年7月までの間、労働時間との関わり合いのもとでの他の諸課題、たとえば、裁量労働制や成果主義賃金の問題、変形労働制や有期雇用契約などの労働法制の改悪問題、派遣労働と請負契約、賃労働と家内労働、賃金労働者とSOHOやテレワーカーなど「自営業者」、それぞれについての境界と区別の問題をめぐって報告と討論を行ってきた。
 3、99年9月より、研究課題の焦点をワークシェアリングにしぼり、ドイツのフォルクスワーゲンの週4日28時間労働の問題、フランスの週35時間法、わが国労働省の83年以後のワークシェアリング研究の内容及び99年の「労働力需給の展望と課題」、日経連2000年「労問研報告」での「柔軟なワークシェアリング」などについて研究を重ねてきた。
 4、この間、研究成果については、「学習の友」99年秋別冊号に「ワークシェアリングでの雇用確保の大運動と時短」(西村直樹)、「月刊全労連」2000年3月号に「時短、ワークシェアリングをめぐる諸問題と労働運動の課題」(辻岡靖仁)をそれぞれ発表してきた。
 B、労働法制研究部会
 99年度においては、メンバーの海外留学、家族の介護、大学の役職など個人的事情が重なって、部会としての研究会をもつことができなかった。
 C、社会保障研究部会
 99年度における研究活動は以下のとおり。
 ・「当研究部会の『中間まとめ』」(99・6・12)
 ・「社会福祉基礎構造改革の問題点」及び「当研究部会の『中間まとめ』」(99・7・24)
 ・「病院における職員の労働実態と医療事故」及び「当研究部会の『中間まとめ』」(99・9・17)
 ・「安上がり労働力の活用・安上がり福祉の実態」(99・11・13)
 ・「研究成果の出版作業の具体化」(2000・2・26)
 ・「年金『改革』の動向−社会保険事業概要の特徴にふれて−」及び「当研究部会の21世紀初頭における研究計画」(2000・3・28)
 ・「研究成果の出版作業の具体化」(2000・5・20)
 D、青年問題研究部会
 機関誌「労働総研クォータリー」への会員の寄稿や書籍・論文による研究発表で、今日の青年労働の概略の把握がすすんだことを受けて、99年度は、一方では青年就業のいっそう正確な追求と未開拓な領域をのこす職業教育・訓練の実体の究明をすすめた。
 前者では「教育法」掲載の高梨・天野対談などの紹介と討議、パラサイト・シングル論批判などによって、不就業の実態の解明をすすめた。家庭の階層によりパラサイト・シングルはモノカラーではないこと、フリータには就業動機により複数のタイプがあることなどが議論されたが、産業構造の変化のなかで急速にすすむ社会階層の分化をとおして青年の労働と生活をトータルにつかむこと、長引く不就業状態が青年のあいだにどのような行動と意識をもたらすかが課題として残されている。
 職業教育・訓練の実態については、ドアー氏のまとまった労作があり、その内容紹介と討議がおこなわれたが、職能資格制度の変容・大企業リストラの実態については新年度に継続したい。
 オールドメンバーの病気その他の事故によるやむをえぬ欠席に対処すめため、新会員の発掘に努力することとし、3人の参加をえた。
 E、女性労働研究部会
 99年度においては、8月を除き毎月研究会をおこなった。
 研究テーマは、部会メンバー及び全労連女性部の要望もふまえて毎回設定してきたが、(これまでと同様に)財界・政府の「21世紀戦略」推進が女性労働にもたらす影響、それに伴う女性労働の変化の検討を基本に研究・討議を重ねてきた。
 具体的には以下のとおり。
1、金融ビッグバン、都市銀行の合併等に伴う女性労働の変化と現状について。
  捧富士銀行、第一勧業銀行を事例に人事管理、賃金体系当の変化、放同行が国会に提出したリストラ計画等の検討
2、99年4月施行の「改正均等法」と、男女差別是正の運動課題について
  捧戦後の男女差別裁判闘争の経過と現状、放「改正均等法」下、日本航空客室乗務員の調停委員会提訴の経過と結論(担当弁護士を招請)、方労働省「雇用対策研究会報告」と女性少年問題審議会における基本方針策定について
 3、フランスの「週35時間法」について(宮前忠夫会員を招請)
 4、女性労働に係わる財界・政府の政策動向について。
  捧「産業再生法」、「緊急雇用対策」、「経済白書」、「国民生活白書」、「雇用保険法」、放日経連「労働問題研究委員会報告」
 5、参考文献とした諸論文について
  (1)「新自由主義批判」(「経済」99年5月号の諸論文)、(2)「労働問題の新展開」(「経済」99年12月号の諸論文)
 F、不安定就業・雇用失業問題研究部会
 深刻化する失業問題にたいする対策をめぐって、財界や規制緩和推進論者は、リストラを推進しつつ、賃金切り下げ、失業者の不安定雇用への転換、労働者のエンプロイヤビリティの向上などの方針を打ち出している。この状況を踏まえて、99年度の研究会では部会参加者の問題関心を生かしつつ、今日のリストラ、派遣労働や請負労働者問題、労働行政の分析を行った。研究会の報告者およびテーマは以下のとおりである。
 第1回(99・10・2) 藤田 実「企業リストラの特質と雇用問題」
 第2回(99・12・23) 桜井絹江「登録型派遣労働と女性労働者」及び斎藤 力「今日の労働行政について」
 第3回(2000・3・18) 白井邦彦「機械産業生産現場における請負労働者活用に関する一考察」及び鈴木ふみ「炭坑合理化と現代のリストラ」
 第4回(2000・7・16) 仲野組子著「アメリカの非正規雇用」(青木書店・2000年3月)及び大橋範雄著「派遣法の弾力化と派遣労働者」の合評、「今後の研究計画について」
 G、中小企業問題研究部会
 昨年7月以降、5回の研究会を行った。主として「中小企業基本法」「関連法案」の検討、その影響を念頭においた研究に重点をおきつつ、長びく不況下で、中小企業が直面している労働条件や経営環境などもその都度分析・交流してきた。
 この間、自自公政権は、99年秋の第146臨時国会を「中小企業国会」と銘打って「中小企業基本法」の改悪・「関連法案」の成立をすすめてきた。院内では日本共産党だけが反対し、「中小企業政策」を発表してその実現をめざしてきた。全労連、関係各単産、全商連などは、当部会での研究・交流の成果に立って、政党・議員要請などを行ってきた。付帯決議に「既存の中小企業に対する施策」「小規模事業者や個人事業者に対する配慮」などが盛り込まれたが、法案そのものは修正されなかった。
 部会責任者の相田利雄法大教授が海外留学(2000年3月から1年間)のため、その間は、松丸和夫中大教授を部会長に運営することになった。
 H、国際労働研究部会
 前年度に引き続き、全労連の委託で「世界の労働者のたたかい2000−世界の労働組合の現状調査報告」を作成。この報告は、全労連国際局から年次報告として、2000年4月に発行された。引き続き2001年版を作成する予定である。
 I、政治経済動向研究部会
 99年度における研究活動は以下のとおり。
 ・「規制緩和とアマキアセンの経済学」(99・6・5)
 ・「今日における政治経済動向について」(99・9・18)
 ・「国際会計基準について」、「『春闘白書』総括について」及び「今後の研究計画について」(99・10・23)
 ・「日産のリストラ計画と産業連関分析」(99・11・27)
 ・合評「経済政策の正しい考え方」(99・12・28)
 ・合評「経済政策の正しい考え方」(継続)及び「日産リバイバル・プランと経営責任」(2000・2・19)
 ・「ドイツの労働運動の実情」及び「日産自動車問題について」(2000・3・11)
 ・「最近の政治経済動向について」及び「当研究部会の21世紀初頭における研究計画について」(2000・4・15)
 ・「産業連関分析等について」(2000・5・20)
 J、関西圏産業労働研究部会
 99年度においては、以下のように研究会を行った。
 第1回・テーマ:経済戦略会議報告をどう読むか(99・5・22)
 ・三好正巳 「『日本経済再生への戦略』をどう読むか」
 ・桜田照雄 「経済戦略会議(99・2・6)における金融問題」
 ・上滝真生 「経済戦略会議の『人的資源』政策」
 第2回・テーマ:社会保障改革の現状と課題(99・7・24)
 ・丹下晴喜「社会保障改革の現状と課題−公的介護保険制度を中心に−」
 第3回・テーマ:日本経済の現局面と研究活動の方向性をめぐって(99・11・27)
 ・戸木田嘉久「21世紀に向けての情勢の特徴と研究課題」
 第4回・テーマ:社会保障論の現状について(2000・1・22)
 ・丹下晴喜 「広井良典著『日本の社会保障』の検討」
 第5回・テーマ:リストラ調査のために(2000・3・17)
 ・三好正巳 「今日の地域問題と地域調査の意義」
 99年度は、「『日本的企業社会』の変容」をテーマにして、研究活動を行ってきた。そのなかで、今後、地域に現れてきている企業のリストラクチュアリングの影響の実態を調査していくことを研究会の一つの柱とすることが合意された。また、研究会の成果は、部会ニュースとして残す努力をしてきた(第4・第5回分は未公刊)。今後も研究活動の成果の積み上げを行っていきたい。
 2、公開研究例会
 本年3月27日、「ドイツ労働運動の実情を聞く」をテーマに、第21回公開研究例会を全労連及びいのちと健康全国センターの協賛を得て開催した。大木一訓常任理事の斡旋で、愛知労働問題研究所とドイツ・ブレーメン大学付属「労働・政治アカデミー」との定期研究交流で来日された6人の代表のなかの2人が出席した。ヘーゼラー博士が「ドイツにおけるリストラ・解雇規制」と題して、ミューラー博士が「職業安全・健康のヨーロッパ標準化」と題して報告を行い、質問や意見の交流を行った。外国から報告者を招いたのははじめてであったが、時宜にかなったテーマであり、有意義な研究交流が行われた。35人が参加した。通訳として全労連国際局の布施恵輔氏の協力を得た。
 3、研究プロジェクト・部会責任者会議
 研究プロジェクト・部会責任者会議は、企画委員会の責任で、2000年5月8日開催された。各研究プロジェクト・部会すべてから99年度の活動経過及び2000年度を初年度とする21世紀初頭の研究計画について報告が行われ、交流を行った。

[U]広報・出版事業

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 1、機関紙誌の発行
 前年度に引き続き、3種類の機関紙誌を発行した。
 @、月刊「労働総研ニュース」
 月刊「労働総研ニュース」(B5・8ページ)を113号(99年8月号)から124号(2000年7月号)まで12号を発行した。発行は事務局が担当。
 A、季刊「労働総研クォータリー」
 季刊「労働総研クォータリー」(B5・50〜60ページ)を36号(99年秋季号)から39号(2000年夏季号)まで4号を発行した。編集は相沢与一常任理事を責任者に7人で構成する編集会議が担当。
 B、英文・季刊「Rodo-Soken Journal」
 海外向け英文・季刊「Rodo-Soken Journal」(A4・6ページ)を28(99年秋季号)から31(2000年夏季号)まで4号を発行した。日本の労働運動の動向にかかわる情報(会員が提供)及び本研究所の事業活動を海外の研究者、研究所、大学図書館、労働団体等に発信した。編集は国際労働研究部会と連携をとりつつ事務局が協力。
 2、研究成果の発表・出版
 99年度において、以下のように研究成果の発表・出版を行った。
 @、国際労働研究部会は、研究成果をまとめた全労連編「世界の労働者のたたかい2000−世界の労働組合運動の現状調査報告・第6集」(全労連・2000年3月)を発行した。
 A、日産問題研究プロジェクトは、研究成果をまとめた報告書「日産自動車リストラの特徴と政策課題」を、本年3月2日、全労連・現地闘争本部で記者発表を行うとともに、機関紙「労働総研ニュース」号外(本年3月15日付)に掲載した(2ページ「日産問題研究プロジェクト」の項参照)。
 B、賃金・最賃問題研究部会は、研究成果をまとめた小越洋之助監修・労働運動総合研究所編「今日の賃金ー財界の戦略と矛盾」(新日本出版社・2000年7月)を出版した。

[V]資料収集・提供事業

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 @、前年度に引き続き、本研究所の定期発行物の提供を介して、研究機関等諸団体、出版社等から機関紙誌、単行本、調査資料等の相互交換や入手につとめた。
 A、「労働総研ホームページ」を介して、本研究所の事業活動等についての情報を提供することにつとめた。
 B、政府関係の各種報告書・資料等の入手つとめるとともに、会員の要望に応えて提供することにもつとめた。

[W]調査・政策交流事業

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 99年度においては、とくに挙げるような事業は行われなかつた。

[X]全労連との連携の事業

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 @、労働総研・全労連の協議
 両者は、本研究所側は企画委員会メンバー(代表理事中心)、全労連側は議長・専従4役等が出席し、本年6月16日、それぞれの結成10周年を迎えての到達点をふまえ、今後のさらなる前進のために、相互の緊密な連携をいっそう強化・発展させることを課題に協議を行った。
 A、日産リストラ反対闘争に協力
 上記のように、99年11月2日に開催された99年度第2回常任理事会において、10月18日に発表された日産自動車リバイバル・プランにもとづく大規模なリストラ計画に緊急に対応するために、研究チーム「日産問題研究プロジェクト」(責任者・牧野富夫常任理事)を発足させた。そして、全労連・日産リストラ対策委員会の協力を得つつ、短期間で資料収集・分析と研究討議を重ね、報告書「日産自動車リストラの特徴と政策課題」を取りまとめ発表した。
 B、全労連編「2000国民春闘白書」作成への協力
 前年度に引き続き、編集・執筆に協力した。
 C、全労連編「2000年版ビクトリーマップ/検証・大企業の内部留保」作成への協力
 前年度に引き続き、編集・執筆に協力した。
 D、「労働法制の全面的改悪に反対し、働く権利とルールの確立をめざす中央連絡会」への協力
 全労連のイニシアチブで96年7月11日、結成された表題の中央連絡会に加盟し、運営委員会、事務局に役員を送り協力した。
 E、「働くもののいのちと健康を守る全国センター」への協力
 全労連のイニシアチブで、98年12月15日、結成された表題の全国センターに賛助会員(団体)として加盟し、協力した。
 F、その他
 全労連及び加盟組織の各種の討論集会、学習会への講師要請等に協力した。

[Y]研究所の整備・拡充の事業

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 1、個人・団体会員の現状(略)
 2、「労働総研クォータリー」の頒布の現状(略)
 3、ホームページ・インターネツトの現状
 ホームページは毎月改定し、本研究所の活動に関する情報を提供した。また、インターネットを通して、政府関係・研究所等から情報を入手することにつとめた。内外からEメールを介しての照会も入ってきている。
 4、機関会議等諸会議
 @、常任理事会
 99年度常任理事会は、99年9月2日、99年11月2日、2000年1月11日、2000年3月10日、2000年6月3日、2000年7月1日の6回開催した。常任理事会においては、適宜、構成員の持回りでテーマを設定して研究報告・討論を行った。
 A、理事会
 99年度理事会は、規約にもとづき、2000年7月1日、2000年7月28日の2回開催した。
 B、監査
 99年度事業計画もとづく事業及び予算の執行状況について、2000年6月30日、山口孝、岩田幸雄両監事に監査を受けた。
 C、その他諸会議
 事業計画及び常任理事会の決定・申し合せ事項などを推進するために、常任理事会のもとに設置されている企画委員会(代表理事中心に6人で構成)は、拡大企画委員会として99年10月8日、2000年6月3日、6月16日の3回、企画委員会として99年10月8日、2000年4月15日、5月8日、5月23日の4回開催した。
 D、事務局
 事務局は99年度事業計画及び常任理事会の決定・申し合せにもとづき業務をすすめた。事務局は3人体制(専従)で業務を分掌し、1人は主として調査研究事業を分掌した。なお、全労連事務局員の協力も得た。



2000年度事業計画(案)

[T]21世紀初頭における情勢の特徴と研究課題
−労働総研10年を総括して−

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 労働総研は、昨年12月、設立10周年を迎えた。この節目にあたり本文章は、この10年間の本研究所の研究活動と労働者・国民をめぐる90年代の情勢の特徴を整理し、さらに21世紀初頭の情勢の特徴を展望しながら、労働総研として中期的な研究課題をはっきりさせようとするものである。本文書は、99年度定例総会で提起した「素案」をもとに検討してきたもので、2000年度定例総会の決定を経て、21世紀初頭における本研究所の「研究の方向(方針)」として位置づけ、以後、機関誌「労働総研クォータリー」2000年秋季号に掲載し、対外的にもアピールしていくことを予定するものである。
 なお、そこに示される研究課題は、いずれも全労連を中心に労働運動を発展させ、各分野の民主的諸運動、各勤労諸階層との共同を強め、同時に政治革新を追求し、大企業の横暴な行動にたいする《民主的規制》を強め、労働者・国民の状態改善をめざすためのものである。
第1章、労働総研10年の事業活動
 (1)、この10年の活動の広がり
 「全労連との密接な協力・共同」のもとに、「運動の発展に寄与する調査研究活動をすすめる」(設立趣意書)としてきた労働総研も、昨1999年12月には全労連とともに設立10周年を迎えた。
 設立以降10年間、労働総研はどのように活動してきたか。その詳細は、別資料「労働総研10年の事業活動の広がりと到達点」によって整理されているが、ここではまずはその要点だけを記述しておこう。
 @、会員数の増加と定期的な機関誌・ニュース・海外向け英文「ジャーナル」の発行
 個人会員は、設立当時の呼びかけ人40人から現在300人を超え(約8倍)、団体会員は、全労連とその傘下の単産・都道府県労連などを中心に67団体となっている。
 機関誌「労働総研クォータリー」(季刊、B5版、50〜60ページ)は、設立翌年の90年12月に創刊号を発行。テーマ・内容の充実、紙面・レイアウトの改善をすすめながら、すでに39号まで発行、執筆は会員にとどまらず、会員外もふくめ延べ約460人から協力をえてきている。
 機関紙「労働総研ニュース」(月刊、B5版、8ページ)は、設立翌年の90年4月に創刊号を出し、すでに124号まで発行、執筆は会員を中心に延べ約350人から協力をえてきている。
 同じく機関紙「Rodo-Soken Journal」(英文・季刊、A4版、6ページ)は、93年1月に創刊号を出し、すでに29号まで発行。この英文ジャーナルは、海外の研究機関、労働組織などに情報を提供するとともに、これを介して資料の交換を求めている。執筆は会員を中心に延べ約70人から、翻訳は会員内外の専門家の協力をえてきている。
 A、労働総研の研究活動
 研究活動は、部会研究とプロジェクト研究の2つの形態ですすめられている。  部会研究は、原則として期間を設けないが、おおよそ2年ごとに研究成果の発表ができるように努めることにしている。現在、雇用、労働時間、女性労働、賃金、労働法制、社会保障、中小企業、政治経済動向、国際労働、青年問題、関西圏産業労働の11の部会がある。それぞれ当面の研究課題を設定し、個人会員と労組活動家による研究会が組織されている。
 プロジェクト研究は、おおむね2年を目途に調査研究を行い、その完了をもって解散することとしている。これまでに「現代における生活保障体系研究」「規制緩和と経済民主主義研究」「首都圏地域開発と労働運動研究」「日本の団体交渉制度研究」の各プロジェクトが研究成果を発表して終了。「外国人労働者問題研究」は、諸般の事情により一時終了。現在、「日本的労使関係研究」「地域政策研究」の2つのプロジェクトが活動している。
 B、この10年の研究活動の成果
 研究部会・プロジェクトの研究活動の成果
 研究部会・プロジェクトの研究活動にもとづく成果は、以下のように23本がまとめられた。「男女平等社会をめざす賃金・生活費・生活時間調査報告」(91年、92年)、「フレキシビリティ/今日の派遣労働者」(91年)、「規制緩和と経済民主主義」(92年)、「現代の労働者階級−『過重労働』下の労働と生活−」(93年、野呂栄太郎賞授賞)、「日本の労働時間−賃下げなしのワークシェアリングと大幅時短への展望」(94年)、「動揺する『日本的労使関係』」(95年)、「規制緩和で日本はどうなる」(95年)、「日本の団体交渉制度の現状−改革のために−」(95年)、「開発・県政と労働者・住民の運動」(95年)、「『現代の労働者階級』データのジェンダー分析−階級分析への補足」(96年)、「中小企業労働組合運動の挑戦−21世紀を展望して」(96年)、「財界新戦略と賃金」(97年)、「規制緩和と雇用・失業問題」(97年)、「変形労働・長時間・深夜労働−労働時間と『規制緩和』」(98年)、「『日本的経営』の変遷と労資関係」(98年)、「世界の労働者のたたかい−世界の労働組合運動の現状調査報告」(1995〜2000各年版)、「日産自動車リストラの特徴と政策課題」(2000年)など。  委託研究・共同研究の成果
 全労連からの要請にもとづく委託研究・共同研究は、以下のように8本のテーマで行われ、それぞれ研究成果がまとめられた。「ILO夜間労働に関する見解(案)」(90年)、「ILO多国籍企業及び社会政策に関する諸原則の第三者宣言への回答書(案)」(92年)、「『過重労働』下の労働と生活に関する調査報告」(92年)、「労働基準法(労働契約法制)『改正』の評価と提言」(93年)、「規制緩和で日本はどうなる」(95年)、阪神・淡路大震災に際して「市民本位のみなとの復興と港湾労働者の生活・雇用・労働条件のための提言」(96年)、「生計費研究報告」(96年)、「NTT持ち株会社化は何を目指すか」(98年)。
 C、この10年間に21回の公開研究例会、全労連との共催で9回のシンポジウム・研究交流集会の開催、全労連主催の2回の国際シンポジウムへの協力
 21回の公開研究例会は、別資料「労働総研10年の事業活動の広がりと到達点」参照。
 9回のシンポジウム・研究交流集会は、以下のとおり。「労働時間短縮の日本的障害とその克服の道」(92年)、「国民本位の不況対策の実現を−大企業の民主的規制の追求−」(92年)、「不況・リストラ『合理化』と民主的規制」(93年)、「人間らしい労働と生活の確立をめざして−ナショナル・ミニマムの確立を−」(94年)、「雇用破壊・賃金破壊とナショナル・ミニマム−労働組合の役割−」(95年)、「生計費・全国一律最低賃金制」(96年)、「地域政策研究交流集会」(95年、97年、98年)。
 2回の全労連国際シンポジウムへの協力は、以下のとおり。国際シンポジウム「日本的労使関係と労働者の権利」(91年)及びアジア・太平洋労働組合シンポジウム「労働者の権利・人権・多国籍企業の民主的規制」(94年)。
 D、全労連編「国民春闘白書」(1990〜2000年各年版)及び上記の「世界の労働者のたたかい−世界の労働組合運動の現状調査報告−」(各年版)の編集・執筆・に協力。
(2)、労働総研10年の研究活動の総括
 以上のように、労働総研10年の活動の整理をしてみると、90年代の情勢の特徴にかみあうかたちで研究活動はそれなりに確実に積み上げられ、その研究諸成果の公刊は、労働総研の社会的存在と評価を確固たるものにしてきたといえよう。しかし、その研究活動の総括については、あらためて2つの重要な基本的課題が指摘される。
 第1の課題は、雇用、賃金、労働時間、生活、社会保障、地域破壊、労使関係等、各研究プロジェクト・部会による独自な調査研究が、他の研究プロジェクト・部会による独自な調査研究との相互関係をも強く意識し、相互の調査研究を体系化し、これを労働運動の要求と政策課題により密接に結びつけていくことである。
 第2の課題は、第1の課題とも関連するが、労働総研としては、21世紀を迎えるつぎの10年には「全労連運動の発展に積極的に寄与する調査研究活動」や「政策活動」の水準を、質的にも量的にも一段と引き上げ、労働運動の側からの期待にこたえるとともに、研究機関としての社会的評価をも一段と高めることである。  この2つの基本的な課題の前進的な解決には、それに対応する研究体制、役員・事務局体制の確立とあわせて、各研究プロジェクト・部会が内外にわたる経済・政治情勢との関連を一層鮮明な問題意識をもって把握し、集団研究・共同研究に取り組んでいく必要があろう。
第2章、21世紀初頭の情勢の展望と労働総研の研究活動
 労働総研設立以降10年の研究活動は、「全労連との緊密な協力・共同」をはかりながらすすめられてきた。そして当然のことだが、この10年の研究活動は、1990年代の経済政治情勢と労働者状態を反映するものであった。したがって、いま労働総研として、21世紀初頭の予想される情勢の特徴と研究課題を想定するに際しては、まずは90年代情勢を回顧し、その特徴を整理しておく必要があろう。
(1)、90年代の情勢の特徴
 @、特徴の第1は、90年代のバブル崩壊をきっかけとした「90年代不況」の長期化と泥沼化である。この不況の根本原因は、大企業の横暴な「ルールなき資本主義」とよばれる搾取活動と、その結果である資本の高蓄積による生産設備能力の増大と、抑制された国民の最終的消費との間の矛盾の拡大にある。くわえて、バブル経済にあおられ肥大化した、大企業の独占利潤や銀行の過剰貸付が、事業への過剰投資をさらに拡大し、バブル崩壊と不況を契機とした巨額の不良債権による銀行の破綻とともに、不況増幅の追加的要因となってきた。
 しかも、不況からすでに9年、ひきつづく超低金利政策と大規模な公共投資、莫大な公的資金の導入による銀行救済、企業減税など、空前の大がかりな大企業・大銀行救済の景気対策は、日本経済の行き詰まりをいまだに打開できぬ状況にある。
 この経済的「閉塞」状況は、国民生活を犠牲にした大企業本位の景気対策の矛盾にもよるもので、とりわけ消費税の5%への引上げの失敗が指摘される。景気対策の空振りと不況の長期化は、さらに中小業者の倒産を加速化し、大企業のリストラ・人べらし「合理化」等を促進し、失業増大の要因ともなっており、日本経済は経済的「閉塞」の悪循環からなかなか抜け出せない状況におちいっている。
 A、特徴の第2は、経済の「グローバル化」と「大競争時代」に対処するとして、大企業の国際的リストラ戦略と人べらし「合理化」攻撃が、すべての産業、すべての業種部門で、管理職をふくむすべての労働者に容赦なくかけられてきたことである。
 全産業の大企業では、内外にわたる企業の集中・合併、本社・管理間接部門の機構縮小、工場の閉鎖・統合、外部請負(アウトソーシング)の導入、不採算部門の切り捨て、持ち株会社を展望した部門ごとの分社化、系列・下請けの再編・切り捨てなどをテコに、新規学卒の雇入れ制限、技能労働者、ホワイトカラー、管理職などの正規雇用の削減、より過密な長時間労働、サービス残業をすすめてきた。
 そしてまた、人べらし「合理化」では、正規労働者にかわり、派遣社員、パート、外部委託等、非正規の不安定雇用の急速な拡大など、雇用形態の広範な多様化がすすむことになった。
 大企業の国際的リストラ戦略は、世界的な過剰蓄積を背景とした巨大多国籍企業相互のM&Aや事業連携に呼応しながらすすめられてきた。それは、「世界最適地経営」による海外生産と国内生産の抜本的な再編としてすすめられ、前述のような大々的な人べらし「合理化」をともなうものであった。
 B、特徴の第3は、アメリカに追随する「市場原理主義」による政府・財界の規制緩和政策(経済的規制緩和、社会的規制緩和)が大企業の経済的支配の強化とリストラ・人べらし「合理化」を公然と手助けしてきていることである。
 経済活動に対する国の規制の緩和・原則自由化は、市場競争を強め経済活動を活性化するという。だが、その実質は、優勝劣敗で全体として大企業の経済的支配を強める。それは、農林漁業や製造業、商業・流通、サービス業の「非効率」な中小経営の淘汰をすすめ、相対的過剰人口の大群をつくりだすとともに、これらの産業分野だけでなく、情報、バイオ関連、環境、介護など新産業分野への、大企業の進出を容易にするものである。
 社会的規制の緩和による勤労権、生存権の侵害。すなわち、職業紹介、派遣事業の「原則自由化」、女性保護規定の全面廃止、「変形」・「裁量」労働時間制の拡大など、労働法制の全面改革による勤労権の侵害は、パート、派遣、臨時、契約社員等、非正規雇用の拡大とあわせて、公然と「搾取の自由」を謳歌しようとするものである。また、「行財政改革」に名を借りた年金・医療の改悪、消費税の導入などは、憲法上の生存権の侵害にほかならず、国民生活を一挙に圧迫してきている。
 このような一連の規制緩和政策は、もちろん前出の第2の特徴、すなわち、大企業の国際的リストラ戦略と人べらし「合理化」を支え、促進する役割を果たしてきている。また、日経連の「新時代の日本的経営」も規制緩和政策に援護されながら、不安定雇用形態の拡大を柱として、雇用の流動化、成果主義の賃金個別管理、終身雇用と年功賃金の解体など、「日本的経営」の再編をすすめている。
 C、特徴の第4は、国際政治・国内経済の面で、90年代はソ連・東欧における「ソ連型社会体制」の崩壊をもってはじまり、それを機に逆にアメリカの軍事的・経済的覇権主義がいちだんと強まったが、これに対して自民党と財界主導の国内政治は、「対米協力・追随」の姿勢をいちだんと強めたことである。
 そのことは、経済面では、アメリカの「グローバル経済化」戦略への「市場原理主義」・規制緩和政策による追随、軍事・政治面では、憲法違反の「新ガイドライン」関連法の制定、有事立法や沖縄基地の恒久化への画策など、対米軍事協力の強化・軍事大国化の方向にみられ、それらは憲法改悪の策動にもつながってきた。
 D、特徴の第5は、以上にみる90年代情勢の展開を通じて、国際的リストラと人べらし「合理化」、対米追随の「市場原理主義」政策と軍事協力の強化など、政府・財界の21世紀戦略と労働者階級をはじめする勤労国民諸階層との間の矛盾は、雇用と経営、労働と生活の不安、平和・自由と民主主義の脅威など、全面にわたって激化し拡大し、そのことが労働運動や国内政治の情勢にも反映されてきたことである。
 すなわち、89年秋に結成され、10周年を迎えた階級的ナショナルセンター「全労連」は、いまや組織人員150万人に達し、社会的影響力を確実に拡大してきており、政府・財界としてもこれを「連合」にならぶナショナルセンター組織として認めざるをえなくなってきている。職場と地域ですべての労働者、労働組合、国民各層との要求と政策にもとづく「対話と共同」を組織し、たたかう労働組合の輪をひろげてきた全労連運動への期待も、労働者、国民の間で、この10年間に大きくひろがってきた。
 また、国民の要求と政策で「正論」を主張してきた日本共産党は、国政にあっても、また地方政治にあっても、無党派層をふくむ幅広い支持を獲得しつつあり、広く内外から注目を集めてきている。
 こうした情勢の新たな展開の反面、90年代末は他方にまた、「自自公」政権体制の確立や、東京・足立区長選挙、東京都知事選挙にみる新たな「反共包囲網」の形成など、政治的反動化の傾向もみられた。
(2)、21世紀初頭の情勢の展望
 労働総研のこれからの課題、とくに研究上の課題を明らかにするには、21世紀初頭が、「ソ連型社会体制」の崩壊、アメリカの経済的・軍事的覇権主義とグローバル経済化戦略、日本の90年代不況の長期化とアジア経済の低迷、「資本主義万歳」論の崩壊等、流動の90年代をへて、新たな転換による激動期を迎えることを意識しておく必要があろう。その転換と激動の局面を、国民の就業と生活、自由と民主主義の視点を重視しながら特徴づければ、つぎの諸点をあげることができよう。
 @、第1は、政府・財界による「経済戦略会議答申」「産業競争力会議」への経団連の提言など、あらためて製造業をはじめ全産業部門の「過剰設備・過剰雇用・過剰債務」、すなわち、「三つの過剰」の整理なしに「日本経済は再生しない」といい、いまや彼ら流の「過剰雇用」の切り捨て、大々的な首切り攻勢が公然と宣言され、すでに戦後最悪の失業状態は、21世紀初頭にはさらに数段の悪化が予想されることである。
 政府・財界は、膨大な公的資金を投入して、銀行のかかえた過剰貸付資本(不良債権)をひとまずは処理し、これからは、いよいよ製造業をはじめ全産業部門の産業大再編と大リストラ・人べらし「合理化」(現実資本の過剰処理)を本格的に促進とようとしている。
 A、第2は、この国内における産業大再編と大リストラ・人べらし「合理化」は、国際的な「大競争・大再編」の一環として、すなわち、アメリカ、EU、日本の大企業の世界的なM&A(企業合併)と提携、アジア諸国への新たな資本輸出と既進出資本のリストラ等を背景としていることである。国際的な資本の集中が大規模にすすむなかで、国際競争を通じた日本産業の再編がすすみ、また、あらゆる産業分野で企業の優勝劣敗をかけた、「選択と集中」「構造改革」を柱として、かってない企業のリストラ・再編、人べらし「合理化」がすすんでいる。
 B、第3は、この大産業再編と大リストラ・人べらし「合理化」にあっては、すでにみたように政府・財界の「産業再生計画」や「経済戦略会議答申」「産業競争力会議」への経団連の提言など、官民一体による設備と雇用の廃棄、国家が前面に出た産業再編、リストラの促進が強調され、法制面・政策面での大企業への全面バックアップがみられることである。
 すでに、労働法制の改悪、たとえば有料職業紹介事業の「原則自由化」は、発生する大量失業を流動化させ、労働者派遣事業のネガティブ・リスト化は大量失業を背景に非正規雇用を拡大し、資本の利益に奉仕する。女性保護規定の削除、変形労働時間制や裁量労働時間制などの規制緩和は、「合理化」・搾取強化を援護する。「過剰設備」「過剰雇用」「過剰債務」の破棄こそ「経済再生」の根幹だとする政府の「緊急雇用対策」は、リストラによる大失業の発生を前提とした失業者の「流動化」、自己訓練による能力開発、公的業務の民間委託等、財界の要求による失業の「受け皿」づくりにすぎない。
 さらに、政府・財界一体で強行制定された「産業再生法」(1999年10月施行、2002年までの時限立法)は、「産業再生」のためには、「三つの過剰」の解消が肝心だとして、大産業再編と大リストラ「合理化」、大量首切りを、さらに大々的に支援するものである。すなわち、「過剰雇用」の処理では、解雇された中高年を主な対象として、一両年をめどに国や自治体による採用や民間への事業委託で「70万人強」の雇用を確保(月給約11万円)といった、お座なりの失業の「受け皿」づくりにとどまる。
 他方、「過剰設備」「過剰債務」の解消では、大企業にたいして国の手厚い援助が約束される。「過剰設備」廃棄には、税法上の優遇措置(法人税率の切り下げ、設備・債務破棄の損金処理、連結決算・連結納税)とともに、企業の合併・再編の促進策、遊休地や工場跡地の買い取り策などがもりこまれている。
 「過剰債務の解消」とは、企業が銀行から借りている借金をいかに減らすかということである。銀行が企業の債権(貸付)の一部を放棄するかわりに株式を受け取る「債務の株式化」、そのための条件整備として、独占禁止法の弾力的運用が検討されている。巨額の公的資金の投入で金融機関は助かったのだから、“今度は金融機関が企業の面倒をみる番だ”というわけで、そして国もまた、企業の「過剰設備」や「過剰債務」の解消を手厚く援護しようというのである。
 C、第4は、「市場原理主義」と「グローバル経済化」、国際的な「大競争・大再編」を背景とした、日本産業の再編、企業の大リストラ・人べらし「合理化」は、雇用労働者の大失業(「雇用喪失」)だけでなく、製造業の中小経営や農林漁業や小売流通・サービス業を危機におとしいれ、ますます多くの中小経営者の「就業喪失」をもたらさずにおかないことである。
 もちろん、累計645兆円の赤字公債をかかえた国と地方自治体でも、「行政改革」の名のもとに、国民へのサービスを犠牲にした行政事務の統廃合、独立行政法人化や民間委託とあわせて、公務労働者の大幅な整理もすすむ。こうして、21世紀初頭には、日本は「大失業列島」となるおそれがある。
 他方、日本産業の再編は大企業と政府の主導ですすみ、大企業の経済的支配は金融、情報通信、バイオの期待が高い化学、薬品、食品等「成長産業」をはじめ、「成熟産業」の電機、自動車をふくめ、鉄鋼、石油、繊維はもちろん、新たに医療、介護、教育、環境などの分野にも拡大されようとしている。
 こうして、医療、介護、教育などの分野の営利事業化が、福祉、教育の後退につながることは重大である。とりわけ教育分野では、国立大学の独立行政法人化、「私学間競争」の激化、教員の評価制度の導入などとあいまって、研究の崩壊が懸念される。日の丸・君が代の強制による管理教育の強化、教育予算の再編は不登校の増大や学級崩壊状況への対応をさらに困難とし、教育のいっそうの荒廃が懸念される。
 D、第5は、90年代にすすんだ医療・年金改悪と消費税の導入にくわえて、以上の諸結果として、国民生活の急速な悪化が進行せざるをえないことである。医療・年金改悪、消費税にくわえて、大失業による所得の減少、介護保険負担の追加にくわえて、ひきつづく超低金利政策、大企業本位の空前の景気対策による巨額の財政支出、不良債権への公的資金の導入、加重される新「産業ビッグバン」、大リストラ「過剰設備」の廃棄に対する国家的援護、これらはすでに645兆円に達する赤字公債をさらに累積させ、その国民負担は増税と悪性インフレによって、21世紀の国民生活を著しく窮迫させずにはおかないであろう。
 E、第6は、以上を通じて政府・財界・大企業と、労働者階級を中心とする国民諸階層との間の矛盾はさらに激化し拡大せざるをえないが、それに対応して新ガイドライン(戦争協力)法、盗聴法、日の丸・君が代の法制化、憲法調査会設置法案、中央省庁再編法案、地方分権一括法案など、憲法に違反する平和と民主主義の国家的侵害が公然と広がり、反動的国家体制づくりの確立が、「自公保」連立といった強権的な政治体制のもとで急がれてきていることである。この動きは、国民の生活、自由と民主主義の侵害であるだけでなく、アジアの諸国・諸民族の不信と対立の火種ともなりかねない。
 もちろん、いまきびしさを増す21世紀初頭の情勢にあって、日本社会の革新と再生をめざす革新懇運動とともに、全労連を中心とする階級的労働運動のさらなる発展が、90年代の前進をひきつぎ強く期待される。
(3)、21世紀初頭の研究活動にあたっての基本的視点
 主として、研究上の活動にしぼっていえば、前出の「21世紀初頭の情勢の展望」に即して、「具体的な研究活動」が設定されよう。その概要は、つぎの「3、21世紀初頭における具体的な研究課題」において10数項目にわたって、それぞれ数本のテーマを基本に、「何を明らかにするのか」(問題の所在、問題点等)が示されている。したがって、ここでは、さしあたりそれらの具体的な研究課題に取り組むにあたって共有すべき基本点視点だけを提示しておく。
 @、まず、労働市場と雇用形態、賃金、労働時間、労働形態、社会保障と生活、地域政策をはじめとする各研究プロジェクト・部会の調査研究活動にあっては、それぞれ他の研究プロジェクト・部会による独自の調査研究課題との相互関連を意識し、それらトータルとしての調査研究活動の成果として労働者状態を体系的に全面的に把握することが期待されよう。
 A、なお、この相互関連をつなぐものとして、とくに大企業の資本蓄積条件の再構築、搾取強化の体系的な方法の追求(「合理化」運動)が考慮されよう。その場合、前述のこれからの情勢にてらして、「過剰雇用」の削減、解雇・失業、非正規雇用の拡大等、雇用・失業問題が今日の「合理化」の起点となっていることが重視されねばなるまい。また、各項目による労働者の状態悪化の調査研究にさいしては、内外にわたる経済・政治情勢、法制度や政策の変化との関連を意識したアプローチが期待されよう。
 B、労働者状態の個別的な問題把握にあたり、トータルな情勢変化との関連をいっそう意識したアプローチが期待されるというとき、個々の会員研究者の情勢の把握・認識の共有が期待される。この共有のためには、労働総研としても、情勢分析のための組織的・集団的研究の条件整備が求められる。
 C、今日、雇用、賃金、労働時間、過密労働、生活、環境等、労働者状態の改善には、個別の経済的要求闘争とともに、対政府・財界にむけての制度・政策要求闘争が不可避であり、それは規制緩和政策・労働力流動化政策に対抗する社会権の擁護・拡大を基本とした大企業の民主的規制、経済の民主的改革を展望することになる。
 そのさい重要なのは、経済闘争と政治闘争(制度的諸要求闘争と政治革新の闘争)の結合という問題であるが、調査研究活動による要求と政策課題の提起、その実現にむけてのたたかいのあり方という問題についても、それぞれ意識的な取り組みの強化が期待される。この点では労働総研としてはその調査研究をすすめるにあたり、とりわけ全労連との日常的な連携の強化が不可避の条件となろう。
 D、なお、最後になったが、今日の日本の労働者、国民の労働と生活の悪化については、アメリカを頂点とする国際的独占資本の「グローバル経済化」と「市場原理主義」による国際的な産業再編、リストラ・人べらし「合理化」攻撃の結果であり、その一環であることを強調しておかねばならない。その意味で、欧米、アジア諸国の労働者・勤労諸国民の状態把握とあわせて、国際労働運動の動向とそれとの連携の条件の把握もまた、労働総研としてきわめて重要な研究課題であろう。
 以上の基本的視点を射程に入れて、以下の具体的な研究課題の取り組みがすすむことを期待したい。
第3章、21世紀初頭における具体的な研究課題
 労働総研設立以降10年の研究活動、21世紀初頭の情勢の展望をふまえた2000年度を初年度とする21世紀初頭の各研究プロジェクト・部会の研究計画は、以下のとおり。
 a、プロジェクト研究
 @、地域政策研究プロジェクト
 地域政策研究プロジェクトの1998年10月の全労連・労働総研共催の第3回地域政策研究交流集会以降の活動は、10回の研究会を開催し、報告と討論を通して、地域的特徴をもってすすめられた全労連のローカルセンターの地域的課題への取り組み、全国的課題に対する地域におけるローカルセンターとしての取り組み、戦後日本の地域開発政策の推進と発生する地域諸問題に対する労働組合運動、住民運動、その他各種の地域的大衆運動の歴史的変化、バブル崩壊以降の地域経済の再生、雇用創出をめざす動向、大型店出店阻止・規制をめぐる新旧地域諸団体間の新たな対話と共同の発展、自治労連の「地方自治憲章(案)」作成の意義、新たな活力ある取り組みなど、今後の地域政策研究プロジェクトの研究活動にとって示唆に富む有益なものであった。
 21世紀は、グローバリゼイション下で推進される市場経済と規制緩和に対抗する「新しい地域の時代」といわれ、諸矛盾が累積するわが国の経済、社会、政治を大きく転換させていくためにも、地域の労働組合運動を含む広範な住民が主体となって崩壊の危機に直面している地域社会を再生させ、住民生活を守ることが不可欠な課題となっている。
 地域政策研究プロジェクトとしては、このような認識のもとに、速やかに地域学・地域社会学の研究者、労働組合関係者などを加えた正式メンバーを確認し、2000年度の定例総会以降、「21世紀初頭の研究計画」として、以下のテーマの研究、検討を進め、必要によっては前進的成果を生み出している地域の視察、聞き取りなど実情調査も行っていく。
 @現代日本社会の階級、階層構造−とくに地方、地域的特徴の研究
 A「地域社会」に関する総合的研究ー労働組合運動、住民運動の観点とグローバリゼイション、市場経済との関係重視
 B戦後日本における地域開発政策の展開と労働組合運動、住民運動の対応
 C地域における労働組合運動をはじめ農民組織、業者団体、中小企業者、その他さまざまな伝統的社会集団、新しい社会運動とその相互関係の現状把握
 D大垣市の「マイスター倶楽部」など先進的な経験と諸成果の調査研究
 E労働組合運動の今日における地域政策立案の基本的観点と支柱
 F以上の研究の過程で特別に検討を必要とされる課題
 b、研究部会
 @、賃金・最低賃金問題研究部会
 2000年以降の環境の激変のなかで、財界・多国籍大企業は資本の利益を擁護するために、公然と労働者にその犠牲を転嫁させている。それは特に解雇自由や賃金の引き下げなど、雇用・賃金問題に関して顕著である。
 このような新しい情勢のなかで、当部会としては、賃金・最低賃金問題を基軸に据えつつ、隣接分野での新しい課題をも視野に入れて研究して行くこととする。以下の領域での研究テーマを設定して行きたい。
 (1) 賃金決定機構の問題
 春闘・公務員賃金・最低賃金制の現状をみつめ、賃金水準の抑制攻撃が行われているとき、従来型の賃金決定機構の問題を理論的に総括し、新しい課題が要請されているかを検討する。具体的には、例えば、賃金要求において格差縮小をめざす賃金引き上げの意義の問題、民間準拠方式(人事院勧告)だけでない民間と公務の賃金の連動関係のあり方、国民春闘としての全国一律最低賃金制の新しい意味づけなどである。
 (2) 日本型横断賃率の検討
 雇用の流動化政策や男女賃金差別問題に対処するために、企業横断的賃率協定の意義が増加している。日本における横断賃率のあり方を日本の労働市場の現実を踏まえて検討する。
 (3) 成果主義賃金制度の実証分析
 現在、民間大企業で広範に導入されている成果主義賃金制度について、イデオロギー批判だけでなく、事例のケーススタディに基づいて事実を解明し、そこでの矛盾を明らかにする。それによって導入企業での労働者の闘いへの理論的根拠を与える。
 (4) 雇用問題と賃金問題
 a、不安定雇用と賃金問題
 派遣労働の規制緩和やパートタイム労働者、契約型労働者の増加のなかで、雇用形態と関連づけた賃金問題を検討する。
 b、ワークシェアリングと賃金問題
 失業率の増加で、労働時間短縮による雇用拡大が要求されている。賃金を引き下げない雇用拡大のあり方を欧米諸国の事例も参考にして検討する。
 c、定年延長・退職金・年金問題と賃金問題
 財界の総額人件費削減政策は退職金・企業年金にも現れている。他方で公的年金の支給開始年齢の繰り延べにより、定年延長問題も登場している。高齢者の雇用とそこでの賃金のあり方を高齢者の所得保障の観点から検討する。
 A、労働時間問題研究部会
 わが国における時短闘争は、ドイツ、フランスなど西欧諸国とくらべて立ち後れは深刻であり、それを克服するための課題は山積している。
 a、非人間的実態を告発するための調査研究の課題として、捧サービス残業、長時間労働、超過密労働、交替制・深夜労働の実態とその歴史的傾向、放その結果としての労働災害、健康破壊、過労死・過労自殺の実態とその歴史的傾向、方とくに労基法改悪以後の女性労働者の深夜労働の実態とその諸結果、朋裁量労働・変形労働・成果主義賃金などの導入と強化による1日8時間、週40時間の労働時間制の破壊現象の実態とその歴史的傾向、法わが国における有給休暇とその「消化率」、および有給休暇の過ごし方の実態とその歴史的傾向、泡それらの産業別、業種別、企業別、職種別の実態と特殊性、その歴史的傾向などがある。
 b、時短闘争を前進させるための政策研究課題として、(1)日経連による賃下げと雇用流動化をテコとした「エセ・ワークシェアリング」政策に対する批判と、それに対置したわが国における時短による、賃下げなしのワークシェアリング実現の政策課題を中心にすえ、(2)わが国特有のサービス残業を克服するための方策、(3)残業を規制し、さらに週35時間制を実現させる課題、(4)実働時間と拘束時間の問題、1日拘束8時間、週休完全2日制を実現させる課題、(5)日経連のいう正規労働者にも時間賃金制を導入しようとする問題と、わが国での労働時間と賃金を結合させる課題についての研究、(6)生産計画での余裕時間の組み込み、交代要員の配置などによって職場における1人当り作業量を規制し労働密度を軽減させる課題、(7)自由時間の拡大による人間らしい生活のあり方の研究、(8)フランス、ドイツ、イタリアなど西欧諸国におけるバカンスの実態、(9)西欧諸国におけるワークシェアリングの実態とその歴史的教訓などを追求する。
 B、労働法制研究部会
 85年に労働者派遣法の制定および男女雇用機会均等法の制定とそれに伴う労基法改正による女子保護の削減が行われ、87年には労基法改正によつて40時間労働制が定められた際に専門業務型裁量労働制が導入された。労働者派遣法は自己の利益のために労働者を指揮命令して就労させるものは労働法上の使用者としての責任を負う、という基本原則、また裁量労働制は労働は時間決めで行われるという基本原則の重大な例外である。
 98年には新たに対象業務の限定範囲がきわめて曖昧な企画業務型裁量労働制が採用され、99年には有料職業紹介と労働者派遣が原則的に承認され(ネガティブリスト化)、戦後の労働者保護法制の骨格の一角が崩壊する事態になった。
 99年以降、労働法分野の外で相次いで制定された産業再生法、民事再生法、会社分割法などは、産業のためと称して大量の整理解雇を支援・奨励する内容を含んでおり、今後、企業の再編制の進行に伴う労働者の大量解雇が危惧される。
 だが、そうした事態に対処して労働者の雇用を保障すべき労働法制・雇用法制の整備は放置されるばかりでなく、労働省の雇用法制研究会や企業組織変更に係わる労働関係法制等研究会の企業再編をフォローする報告や経団連の提言もあり、むしろ逆に、労働者保護法制の規制緩和の動きは今後も強められようとしている。
 また、国鉄などの民営化や今後の独立行政法人化によって公務員法制の堀崩しが進み、その位置づけが変化しようとしている。
 労働法制研究部会は、そのような動向の把握と法的な分析、理論的批判そして必要な問題提起を行う課題を負っている。そのような使命があるにもかかわらず、メンバーの諸事情により部会は暫く休会状態であった。その事情も近く改善されるので、早急に再組織し、部会運営を再開したい。
 C、社会保障研究部会
 「21世紀を生存権回復・確立の世紀とするために」を基調に据えて研究活動をすすめていく。
 2000年4月、大きな混乱の中で介護保険の強行実施、さらなる年金制度と医療保障制度の大改悪、そして「社会福祉基礎構造改革」立法作業と、いよいよ社会保障全構造総改悪の試みも大詰めを迎えようとしている。これによって憲法の生存権条項も、民主、平和、人権の全憲法体制堀りくずし作業の一環として、その解体がさらに進められることとなるわけである。
 このような状況の進行する中で、当研究部会は、これまで社会保障諸分野における体制側からの世紀末的改悪攻撃の進行と、それに対する民主的諸組織の側からの取り組み状況を検討してきた。
 その成果の上に立って、2000年度からは、捧さらに、このような政策下の国民生活の実態ー失業、疾病、老齢、障害、児童など、そして、基底的な貧困問題ーこれらに対応する政策、放そして、社会保障改悪に共通するイデオロギー状況の分析を進め、方人権としての社会保障の回復・確立に向けて21世紀を切り開いて行くため、国民の側からどう取り組んで行くべきか、われわれの側からの改革提言を含めて、論議、検討して行きたい。
 具体的には、現在、これまでの取り組みをふまえて、このような意図で、(別記)のような骨子での2000年度内出版を計画中で、この骨子にそっての研究作業を進めて行く予定である。
  別記
  社会保障・社会福祉「構造改革」政策と社会保障運動の課題(仮題)
   序 章 社会保障・社会福祉をめぐる問題状況と対抗の論理
   第1章 社会保障「構造改革」の問題点と社会保障理論
   第2章 現代における労働・生活問題の諸側面と社会保障・社会福祉
   第3章 社会保障・社会福祉の「構造改革」とその矛盾の深化の実際
   第4章 社会保障・社会福祉労働の実態と運動の展開
 D、青年問題研究部会
 (1) 基本的テーマ
 この1年あまり、青年、とくに新卒者の就業・失業の動向を研究討議してきた。このテーマは、今後も当研究部会の基本となる。
 とくに、討議の的になるのは、フリータの問題である。フリータを職業訓練中、モラトリアム、就職できる学力、実力をもたないに類別する報告もだされている。
 このような新しいテーマを職業別労働市場、内部労働市場、外部労働市場研究の蓄積とむすびつけ、青年の職業能力の技能的、技術的、社会的形成に焦点をあて、今後の研究討議を組織していきたい。
 この分野の研究は、たとえば、青年と労働組合の関係、組合組織化の実践問題と直接にかかわりあっている。
 (2) 学校改革と関連して
 教育改革の研究は、民主教育研究所その他の活動でもおこなわれているが、当研究部会では労働者、労働組合からどう教育改革を考え、更に政策要求を提起していくかを意識して討議をすすめたい。
 高校改革の研究は、労働者として働く青年の立場から取り組むことがもとめられている。戦後改革の未完におわった原点をふりかえり、青年失業とたたかう先進諸国の実践をとりいれ、改革の基本点を集約していきたい。経済のグローバル化を背景に、地域研究が時のテーマになっているが、高校教員は多くは地方公務員であり、地域経済のこれからと青年の就業は密接に関係している。
 東京での研究活動で忘れられやすいこの視点を、大切にしたい。
 大学改革も、とくに国公立の分野では、この問題をぬきに展開できない時点にきている。課題を消化するためには、一汗も二汗もかかなくてはなるまい。
 学生の就職問題の動向と直接に関連して、大学の変貌がすすんでいる。その序列化と多様化の実態をつかむ作業はかかせない。高等教育卒の労働者が比重を高めるなかで、IT化と深くかかわりあうこのカテゴリーの労働者の直面する問題を研究討議に取りこんでいきたい。
 (3) 労働者階級の資質と職業的誇りについて
 高度成長のある時期まで専門校卒を主体とした高卒労働者が日本のものづくりの現場をになってきた。そういう自負が労働組合運動の戦闘化と無縁でない。いまこの厚い層が縮小分解に直面している。
 教育・職業訓練の問題は、ことの技術的側面だけでなく、労働者の誇りの問題と結びついている。未開拓といえる分野だが、初発的な研究討議はすすめたい。
 (4) 研究会の構成について
 労働運動総合研究所で研究部会を組織する仕事は、そう簡単なものではない。また、組合関係シンクタンクと大学での研究にはおのずからちがいがある。その困難や研究の相関をリアルに理解することが関係者に求められている。
 研究所全体でも、個別研究部会でも、テーマにおうじて、かなり機動的で、柔軟な研究態勢を工夫していく必要があるだろう。労働組合をふくむ大衆運動の分野でほとんどふれられることのない学問という言葉の深い意味を考えることをぬきにして、研究の発展は期待できない。
 E、女性労働研究部会
 21世紀初頭の研究計画について、以下の方向ですすめることを確認した。
 21世紀初頭の特徴的動向の一つとして、すでに国際的な流れとなりつつある男女平等をめざす要求と運動の前進が予測される。
 男女雇用機会均等法の改定はその現れでもあるが、同時にそれが労働基準法の「女子保護」廃止と同時施行されるなど、相次ぐ労働法制の改定や、個別・成果主義管理の強化、公的福祉の後退など、「グローバリゼーション」に対応する財界・政府の「21世紀戦略」推進は、女性労働に多様な変化をもたらしており、平等実現の運動も新たな課題に直面している。
 当研究部会はこうした状況をふまえ、以下を中心に、女性労働に係わる国際的な動向や国内の諸理論なども視野に入れて、多角的に検討する。
 (1) 今日の女性労働の変容の実態
 技術革新の進展や「女子保護」廃止等による、労働内容、地位等の変化。
 「労働力流動化」と、女性労働の多様な不安定雇用化。
 「個別・成果主義管理」と、差別、選別の手法の再編。
 社会保障制度改悪の、家庭責任、家族への影響。
 イデオロギー状況と、意識、価値観等の変化。
 (2) 関連する財界・政府の動向、およびその内包する矛盾
 (3) 運動の状況と、展望、課題
 女性労働者の要求、運動の新たな諸特徴。とくに労働組合運動との関連など。
 F、不安定就業・雇用失業問題研究部会
 いま、日本経済がかかえている最も深刻な病は構造失業問題である。公式統計に現れた完全失業者300万人に、潜在失業者や不安定雇用労働者を加えると、失業ないし半失業状態にある人々は1000万人に達する。ホームレスの増加に象徴されるごとく、長期失業は貧困問題とも深くかかわっている。構造失業の解決なしには国民生活の安定はもとより、国民経済の再生はありえない。
 こうした構造失業をもたらしている背景と要因について科学的に分析することが、第1の研究課題である。同時に、大企業を機軸とするリストラとそれを支援する政府の政策に反対して、各地で取り組まれてきた労働者や住民の闘いを総括することも重要である。
 雇用保険の改悪法案の審議が国会で大詰めを迎えている折り、失業時の生活保障のあり方に関する研究や公的就労事業の再建に関する研究が強く求められている。新規雇用創出の焦点である介護・福祉分野での就労実態の分析も重要である。
 さらに、「エンプロイヤビリティー」論、「セーフティ・ネット」論、解雇自由化論など、財界や政府の戦略と関わりの深いイデオロギーに対する批判についても意識的に取り組む必要がある。
 これらの研究課題のすべてに取り組むことは難しいため、当研究部会の専門分野を生かして適宜分担して研究を進める。99年度に新規メンバーの補充を行ったが、他方で当研究部会出席者が限られる傾向にあるので、必要に応じてさらに補強を図りたい。
 当研究部会として加藤佑治・内山昂編著「規制緩和と雇用・失業問題」(1997年)を刊行して3年が経過した。2000年度は新たな出版計画の検討を開始する。
 G、中小企業問題研究部会
 景気の低迷や経済・産業のグローバル化の展開のもとで、中小企業がキーワードになる。政府は2001年までに、これまでの中小企業「保護政策」を打ち切り、「自助努力」と「規制緩和」による完全自由競争の方向に大転換している。そのために、「中小企業基本法」をはじめ、個別産業支援法など関係法制の見直し、廃止をすすめてきたが、下請代金支払遅延等防止法に代わる「特定中小企業契約適正化法案」の今国会上程が見送られた。ひきつづき、部会研究とともに、国会闘争との連携、日本共産党の実態調査等に協力していく。
 あわせて、大企業のリストラ競争と政府の支援策、さらには「IT革命」がすすむもとで、中小企業分野の政策研究を深め運動発展に寄与するとともに、必要な段階に研究成果をまとめていく。
 H、国際労働研究部会
 この4月、ワシントンのIMF会議の開催にさいして、世界各国から集まったNGOや市民団体の代表1万人が「経済のグローバル化」反対を叫んでデモを展開した。同時期、マレーシァで開催された「ASEANビジネス・サミット」にあてたメッセージでマハティール首相は「経済のグローバル化」にたいする規制を強調、「われわれが古い帝国主義とたたかったのは、新しい帝国主義にひざまづくためではない」とのべた。
 ここにいう「経済のグローバル化」、「新しい帝国主義」などというのは何を意味するのか。20世紀の初頭、資本主義が独占資本主義=帝国主義の段階に入ったことと対比して、「経済のグローバル化」を21世紀に向う資本主義の新たな発展段階として、その内容を分析するとともに、その内容に対応する呼び名をも確定して、そのうえで労働組合運動の国際的な共通課題を明確にする必要があるのではなかろうか。
 国際労働研究部会としては、この問題を21世紀初頭の研究課題として決定しているわけではなく、具体的な研究計画も出来てはいないか、すでに部会でこのような課題に関連した報告も始まっているので、とりあえず本部会の研究計画の一部として報告する。
 I、政治経済動向研究部会
 研究テーマ:21世紀への展望と労働運動
 当研究部会は、捧日本の労働運動をめぐる経済政治動向を、実践的な諸課題との関連でとらえて、全労連など労働組合運動情勢分析、政策や方針策定に役立てることと、放「グローバリゼーションの時代」における日本の経済・政治の大きな構造的転換を分析して、日本社会の民主的改革にむけての諸条件とそこでの労働運動の役割を明らかにすることを、自らの課題としている。
 したがって、研究者と組合幹部だけでなく職場を含む活動家と共同協力した研究活動をすすめていくことを重視する。
 「具体的な研究課題」としては、21世紀初頭が、巨大独占の新たな世界支配政策の展開をめぐるつばぜり合いのたたかいの時期となるであろうこと、そのなかで日本社会の改革をめぐる激しい攻防が展開されることになろうことを想定して、冒頭の全体テーマのもとに、以下の諸課題を追求していく。
 (1) 「動向研究四季報」の発表
 「運動に役立つ情勢分析を定期的にやってほしい」との要望が強いことから、困難ではあるが、可能なところからその要望に応えていく努力をすることとする。発表時期としては、3月、6月、9月、12月の年4回をめざし、日本経済、国際経済(アジア・欧米経済などについては国際労働研究部会との協力をも得る)、労働経済・労働運動、政治動向についてそれぞれ4〜6ページのものを「労働総研クォータリー」に反映できるよう編集委員会とも相談し、発表していきたい。
 (2) 経済・政治の構造的分析
 a)今日のリストラ問題、b)金融再編と労働運動の課題、c)財政危機と行革にどう立ち向かうか、d)アジアから見た日本経済再生の条件、e)21世紀型経済政策とはなにか、f)「IT革命」と労働者階級、g)環境問題と労働運動、h)変貌する日本の政治基盤、i)日本と欧米資本主義(社会)との比較などのテーマのもとにすすめていく。
 たとえば、単行本のイメージとして、つぎのようなことが考えられる。
  『リストラの政治経済学』
 1 激発するリストラとその社会的影響
 2 今日におけるリストラの特徴
   −日産、IBM、高見沢電機、不動信金などの事例分析を通して
 3 経営戦略の転換とコーポレイトガバナンスの変化
 4 投機資本主義の浸透・支配と国家独占資本主義の新展開
 5 アジア経済進出の新段階
 6 変容する労資関係と激変する労働者状態
 7 労働運動の反リストラ戦略
 8 現代リストラのイデオロギー
 9 日本と欧米資本主義との差異
 J、関西圏産業労働研究部会
 2000年代初頭については、以下の二つの柱で研究活動をおこなう。
 1、地域社会に現れている企業リストラクチュアリングの影響について実態研究をおこなう。
 世界的な独占の再編制にともなう企業のリストラクチュアリングは、2000年代初頭、本格的に進行すると考えられる。それは、その企業に働く労働者の労働と生活を変え、地域社会にも重大な変化をもたらす。その実態について、地域の労働組合や民主的な団体との共同をはかりながら、研究活動をおこなっていく。
 2、企業リストラクチュアリングの進行を支えている理論についての批判的検討をおこなう。
 現在の企業リストラクチュアリングは、徹底した自由主義やグローバリズムの理論によって、支えられている。こうした理論について、地域の労働運動や民主的な運動に指針を与えるような理論的批判をめざす。
 以上の点をふまえて、2000年度はつぎのような研究活動をおこないたい。
 (1)連絡をもちうる地域の労働者との連携を手がかりとして、地域の企業のリストラクチュアリングの進行状況とその労働者・市民の生活に及ぼす影響を分析する仕事に着手する。そのなかで今後の研究計画をより具体化していく。
 (2)これまでの自由主義やグローバリズムに対する批判を手がかりにしながら、理論的批判の深化をはかる。
 c、公開研究例会
 設立以降10年間に21回の公開研究例会を開催した。引き続き、常任理事会が実施に責任をもち、適宜適切なテーマを設定しこの公開研究例会を開催していく。

[U]広報・出版事業

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 (1)、3種類の機関紙誌の定期発行・内容の充実
 @、本研究所の3種類の機関紙誌である月刊「労働総研ニュース」、季刊「労働総研クォータリー」、英文・季刊「Rodo-Soken Journal」を発行目的にそい、会員にとどまらず会員外からも執筆協力をお願いし、内容の充実につとめつつ定期発行を維持していく。
 A、季刊「労働総研クォータリー」の頒布の拡大につとめる。
 (2)、研究成果の出版
 研究プロジェクト・部会の研究成果は、引き続き、出版ルートにのせて広く社会に提供・普及をはかるとともに、本研究所の存在を社会的に明らかにしていく。
 (3)、ホームページ等による広報活動
 引き続き、3種類の機関紙誌 、研究成果の紹介、事業活動等の内容を毎月更新し、個人、研究団体、労働団体、民主団体、出版社等との接触の幅を広げることにつとめていく。

[V]資料収集・提供事業

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 (1)、国内の図書・資料の収集
 引き続き、本研究所の機関紙誌等の提供等を介して、個人、研究団体、労働団体、民主団体、出版社等から、図書・資料、定期刊行物等の定期交換・収集につとめていく。 また、政府関係等の各種報告書・資料等の収集につとめていく。
 (2)、海外からの図書・資料の収集
 引き続き、ホームページ、英文・季刊「Rodo-Soken Journal」の提供等を介して、海外の研究者、研究団体、労働団体等からの図書・資料、定期刊行物等の収集につとめていく。
 (3)、会員への資料・情報提供
 特に、遠隔地在住の会員に対して、必要な資料・情報の提供等便宜をはかることにつとめる。
 (4)、図書・資料等の保管・整理
 寄贈・入手図書・資料等の保管・分類・整理等につとめていく。

[W]調査・政策交流事業

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 これまでも必要とされる課題で、兵庫県労働運動総合研究所や愛知労働問題研究所等との連携がおこなわれてきた。引き続き、本研究所の設立趣旨にもとづき、必要とされる課題に応じて他の研究団体等とも連携し労働運動の発展に寄与していく。

[X]全労連との連携の事業

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 昨年11月には全労連、12月には労働総研はそれぞれ設立10周年を迎えた。両者はそれぞれ10年の活動の蓄積をふまえ、連携をいっそう強化していくことが求められている。
 (1)、両者の協議を系統的に
 激動の情勢の展開のテンポは速く、両者の連携はこれまで以上に密接に、緻密にかつ系統的にすすめていくことが不可欠になっている。こうした状況の中で、本研究所としては両者が連携の強化のために、中長期及び当面の課題等を絶えず明確にし、それを具体化していくための協議を系統的にすすめるようにつとめていく。
 (2)、調査政策活動への協力の強化
 日本政府はこれまで連合を日本における唯一のナショナルセンターだとして、中央労働委員会の労働者側委員の選任やILO総会の労働者代表等の選出にあたって、全労連を排除する姿勢をとり続けてきた。しかし、全労連が結成以来のたたかいを通じて社会的存在感を高め、労働組合運動、民主的運動の中でいまや無視できない勢力に前進してきている現実を背景にして、ナショナルセンターとして全労連を認知せざるをえない状況が生まれている。本年5月から6月にかけて開催されたILO第88回総会には、ナショナルセンターとして全労連の代表がはじめて日本代表団の一員(労働者側オブザーバー)として正式に参加が認められ、今後の問題として、全労連からの中央労働委員会の労働者側委員の選出、政府の各種審議会への労働者側委員の選出等が課題となっている。このような状況は、全労連が労働組合運動、民主的運動の中できわめて重要な位置を占めてきていることを示すものであると同時に、全労連が高い調査政策力量をもつことが求められている。全労連はそのための努力をはじめている。
 本研究所は、全労連がナショナルセンターにふさわしく調査政策力量を高めていくための取り組みに積極的に協力していく。そのためにも、上記のように両者の協議をより密接に系統的なものにしていくことを基礎に、状況に機敏に対応していくための両者の日常的な事務局体制の確立をはかっていく。
 (3)、国際活動への協力の強化
 多国籍企業の国際・国内でのはげしい競争の中で、全労連の国際活動はきわめて重要な課題となっている。本研究所は、年次報告である全労連編「世界の労働者のたたかい−世界の労働組合運動の調査報告」の編集・発行に全面的に協力してきているが、全労連が展開する多様な国際活動にたいして、協力していく。
 (4)、その他諸活動への協力の強化
 本研究所は、全労連の運動の課題に即して協力してきた。引き続き、シンポジウム・研究交流集会の共催、「労働法制の全面改悪に反対し、働く権利とルールの確立をめざす中央連絡会」活動、「働くもののいのちと健康を守る全国センター」活動、「ナショナルミニマム各界懇談会」活動、毎年の全労連編「国民春闘白書」の編集・発行等、全労連の運動の発展・強化にとって必要な活動に協力していく。

[Y]研究所の整備・拡充の事業

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 本研究所10年の事業活動の広がりと到達点、労働組合運動の新たな発展段階をふまえ、設立趣旨に沿い、当面、2000年度を初年度として2005年度末までを目標として6年間を見通して、捧、個人会員・団体会員の拡大、放、機関誌・季刊「労働総研クォータリー」の頒布の拡大、方、研究成果の出版活動の推進、朋、研究者会員の全労連段階及び都道府県労連段階での連携の強化、法、財政基盤の強化、泡、役員・事務局体制の強化・継承等をはかっていく。
 (1)、個人会員・団体会員の拡大
 a、2005年度末までに個人会員500人以上を目指す。そのために会員の働きかけ、会員から推薦リストの提供を得る等によって拡大に積極的に取り組む。個人会員の拡大にあたっては、本研究所の手薄な専門分野、中堅・若手、女性研究者や労働組合の役職員等の拡大に留意する。
 b、団体会員の拡大をすすめる。
 (2)、機関誌・季刊「労働総研クォータリー」の頒布拡大
 機関誌・季刊「労働総研クォータリー」の頒布の拡大に積極的に取り組む。
 (3)、研究プロジェクト・部会の研究成果の出版
 研究プロジェクト・部会活動を充実させ、その研究成果を出版ルートにのせていく。こうした出版活動を通して、本研究所の存在と事業活動等を社会的に明らかにしていく。
 (4)、研究者会員の全労連段階及び都道府県労連段階での連携の強化
 全労連段階での両者の連携の強化については、上記の[X]全労連との連携の事業の項で述べた方向ですすめていくが、併せて全労連との協議を経ながら、研究者会員と都道府県労連との連携をすすめていく。全労連と共同して開催してきた「地域政策研究交流集会」等の経験も生かしつつ、すすめていく。
 (5)、財政基盤の強化
 本研究所の個人会員・団体会員の拡大、機関誌「労働総研クォータリー」の頒布の拡大、研究成果を出版のルートにのせる等、事業活動の拡大等を図りつつ、財政基盤も強化していく。
 (6)、役員・事務局体制の強化・継承
 設立10年を経た本研究所は、設立10年を総括するとともに「21世紀初頭における情勢の特徴と研究課題」を明らかにした。あわせて、設立趣旨にもとづいて、本研究所をいっそう発展させていく上での要である役員・事務局体制の強化・継承、若返り等を意識的に追求していく。

[Z]設立10周年記念事業

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 本研究所は設立10周年を迎えた。これを記念して、以下の事業を行う。
 @、機関誌・季刊「労働総研クォータリー」2000年秋季号(9月15日発行)を、特集「労働総研設立10周年の足跡」をメインに以下のような構成で編集・発行する。
 ・前書き−10年をふりかえって
 ・21世紀初頭における情勢の特徴と研究課題−労働総研10年を総括して−
 ・労働総研10年の事業活動の広がりと到達点
 ・機関誌・季刊「労働総研クォータリー」総目次
 ・機関紙「労働総研ニュース」総目次
 ・海外向け英文機関紙・季刊「Rodo-Soken Journal」総目次
 A、研究プロジェクト・部会の研究成果を以下のように、出版社から単行本として発行する。
 ・日本的労使関係研究プロジェクト編集「グローバリゼーション下の日本的労使関係と労働組合」(新日本出版社)
 ・賃金・最低賃金問題研究部会編集「今日の賃金−財界の政策の矛盾−」(新日本出版社)


[3]規約改正(案)

(現 行)
第13条 研究所に、次の役員を置く。
 (1) 理事20名以上60名以内(うち代表理事3名以内、常任理事若干名)
(改正案)
第13条 研究所に、次の役員を置く
 (1) 理事50名以上80名以内(うち代表理事3名以内、常任理事若干名)
附則
第1条 本規約は1989年12月11日より施行する。
        1993年7月24日 一部改正
        1998年7月31日 一部改正
        2000年7月28日 一部改正
(提案理由)
 研究所設立時、個人会員約40名、団体会員1であったが、3年半を経過し、個人会員約200名、団体会員65に増加した。そのために、93年度定例総会(93年7月24日)において、組織現勢にあわせて役員である理事定数の上限を「20名以上50名以内」から「20名以上60名以内」に改正した。
 設立10年を経過し、個人会員は300名を超え、団体会員も67に増加した。前回の改正の趣旨に沿い、理事定数を「50名以上80名以内」に改正する。

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