1998年4月1日(通巻97号)

目   次
巻頭言変貌するドイツの職場…平澤克彦
論 文「金融ビックバン」での国民的課題と銀行労働者のたたかい…坂本幸男
97年度第4回常任理事会報告など

変貌するドイツの職場

平澤克彦

 「就職できたのは、ゼミ生の1割程度でした」と、ベルリンの大学で非常勤講師している友人は、最近の雇用情勢について説明してくれた。
 ドイツ労使関係の研究では、しばしば労働側の規制が注目されるが、近年、職場の状況は大きく変貌するにいたっている。すでにニュースなどで知られているように、ドイツの失業率は10%を超えており、しかもパートや期限付労働など非正規雇用が増加し、なかなか正規の仕事は見つからないという。この3月に訪問した金融関係の企業では、パートの比率は全体の15%に達していた。その大半が女性であったが、こうしたパートには、1日の労働時間の短いもの、一週あたり就業日数の少ないもの、そして一年間就業し、次の年は休業するが、一年間の収入を二年間にわたって得るという形態などがあるという。
 こうしたなかで、ドイツでも、ホワイトカラーの生産性問題などから「人事考課」が問題となっている。実際この3月に、ベルリンの企業では、面接対話制度や目標管理を基軸とする「人事考課」が新たに導入されるにいったている。ドイツの「人事考課」は、明確に区別されているわけではないが、業績加給にかかわる業績考課と、人材開発に用いられる人事考課に区分することができる。電機産業では、ほとんどの大企業で業績考課が導入されているが、人事考課については、ほとんど利用されていないという。このような「人事考課」に対して組合側は、これまで一般に、導入反対の立場をとり、その導入を強く規制してきた。しかし近年では、その導入は認めるものの、その内容や利用方法などを規制するという立場に変わってきた。ドイツの職場の変化は、このような組合側の「変化」と密接に結びついているといえるだろう。
 そうだとすれば、労働側の規制の内容を明らかにするだけでなく、それを支えてきた条件などを具体的に明らかしていくことが必要であると思われる。

(会員・日本大学助教授)


「金融ビックバン」での国民的課題と
銀行労働者のたたかい

坂本幸男

 本稿の依頼を地銀連(全国地方銀行従業員組合連合会)本部を通じてお受けしたのは、2月初旬でした。銀行支援2法案(預金保険法「改正」案、金融機能安定化緊急措置法案)をめぐつて国民の関心が国会論戦・審議に集まっていた時期です。それからの事態の進展と問題点だけでも、訴えるべきこと、明らかにすべきことが山ほどある。というのが、「公的資金30兆円投入」と「日本版ビッグバン」に対する国民的課題と、私たち銀行労働者の置かれている現状だといえます。不十分な点は、課題が山積みされている中での、限られた範囲ということでご了承いただきたいと思います。
 国民の反対をよそに銀行支援2法が成立しましたが自民・社民・さきがけの与党3党による反国民的な暴挙です。◎〈住専の処理以来の公約違反〉 ◎〈破綻と「金融不安」の原因と責任を棚上げにした〉そういう点で改めて国民的な課題が明らかになったのではないでしょうか。私たち銀行労働者は、国民の立場から金融2法の成立に反対し、銀行業界に社会的・公共的役割を果たさせ、国民の信頼を回復するため奮闘することを改めて決意しているところです。
 いま国民の求めていることは、汚職・腐敗まみれの大蔵行政、政治家と官僚と癒着した金融行政の解明にあります。金融業界からの自民党への政治献金を止めさせることもいまの政治のあり方を根本的に質す問題です。銀行への様々な社会批判にさらされ、それに耐えて日々業務をこなしている銀行労働者にとっては、自らの「生き甲斐」「働きがい」を守り確立していく上でこれからの大きな闘いの課題として中心の一つになるのではないでしょうか。

1 銀行労働者のたたかいの基本方向と若干の組織現状の問題点

 最初になぜこうも一方的に、銀行産業を短期間に政府・財界の意図する方向に持っていけるのかとの問題点について労働運動の歴史的側面から触れておきます。
 日本の労働組合が戦後まもなく全国的に結成されていった時期と同じくして銀行産業にも労働組合が結成されています。「全銀連」という全国単産も結成され、日本銀行をはじめ政府系金融機関から、都市銀行、地方銀行、外資系銀行までの組合が網羅された組織で、金融政策委員に代表をたてるなど、戦後の国民経済の復興に少なからぬ役割を果たす活動を行っていました。しかし1956年「市銀連」「地銀連」と分断されたことや、1970年代の金融産業への丸抱え・分裂攻撃により、労働戦線がバラバラにされ今日に至っています。全労連加盟は地銀連、全信労(信金・信組)のみが単産加盟であり、銀行労連(第二地銀)加盟の単組と銀産労(個人加盟)が地域労連に加盟しているのが現状です。
 従って今日まで銀行産業全体として共同して有効な力の発揮が困難であったといえます。労資協調路線が圧倒的体制をしめる弱点があって、一昨年、阪和銀行に対していとも簡単に「業務停止命令」という行政処分を許したこともそうしたことの大きな原因といえます。さらに今問題になっている「金融システム・金融秩序の崩壊」、多額の不良債権をつくり出してきた原因となったバブル経済、そういう実態を知りながらたたかえなかった労働組合、労働者の置かれてきた状況が、いま改めて問われている問題でもあります。そういう点であえて付け加えると、いま「社会批判を受けるような事態を引き起こしてきた、企業倫理にはずれた経営を進めてきた、国民や、従業員にきちんとした責任を果たせないままできた」そういう経営者の多くが、労組幹部出身者で占められているという実体もあります。
 大蔵省・日銀の政策や天下りに無批判に追随してきた彼らの態度への批判が、いま労働者の中で自らの反省と共に生まれてきています。私たちの積極的な面での闘いはどうであったのか。歴史的経過を含めていえば、先に触れた分断・丸抱え攻撃の中心の一つに「銀行の社会的役割、公共性を守る」そのことに関する労働組合の方針が問われてきました。そういうことを口にする、方針として持つ集団は、企業破壊者であり、時には「反共攻撃」の有効な手段にまでなっていました。しかしこの方針が今日までのしゃにむに進められた合理化と真っ向から闘うことができた基本方針であったといえます。現にいま多くの銀行の営業方針の中に「社会貢献」「地域共感」などの表現で示されているのは、基本方針の正しさとして評価できるのではないかと思います。
 「労働組合の存在感、あり方がいまほど問われている時はない」。個人的な感想ですが、組合運動といえるものを30年以上やってきましたが、そういう思いをこんなに多くの、周りの仲間と共有できることは、いまだかってありません。「時がたてば、わかる(解決する)」。哲学めいたことを書いて恐縮ですが、私たちが今日まで長年のたたかいで先に触れた基本的なたたかいの中味では、具体的なものとして、「過当競争排除」「労働基準法を守らせる」などのたたかいで成果も上げ、「差別」とのたたかい、「思想信条を守る」闘いなどが全国的にあり困難な局面がずっとあったのですが、そういう時期でのそれぞれの思いにあったものに対して、いまほどはっきり答えがでている時はないのではないか。いまそういう思いを強くしているところです。

2 公的資金30兆円の投入と「金融ビッグバン」は、国民と経済に何をもたらすのか

 いくつかの点で現状とその関連で課題を述べたいと思います。

(1)不良債権処理は銀行業界の責任

 さて30兆円の公的資金の投入ですが、預金者保護を口実に、大銀行の国際競争力強化のためのものであることが非常にはっきりとしてきました。預金者は当然保護されるべきですが、投資家や投機というのは本質的に異なります。本来の預金者保護は「預金保険機構」のシステムで可能なものです。不良債権の処理はどうか、これも業界の責任で処理は可能です。国会審議の中でも、佐伯(前)全銀協会長、山口大蔵省銀行局長等がそのことを裏付ける発言を行っています。
 国民の皆さんは、いま超低金利で大変です。政府・経済企画庁の統計でも92年以降6年間で28兆円もの利息が目減りをしていることを示しています。消費税率のアップや医療費負担増の9兆円などと合わせると大変な額になります。日本の経済を支える消費が冷え込み消費不況が起こるのは当然です。国民生活、中小業者の営業を直撃している原因にもなっています。
 一方銀行の経営はどうかといいますと、大手主要19行の97年3月での業務純益(本業での利益)は、4兆5093億円にもなります。従業員一人当たりにすれば、2536万円、業界トップの東京三菱では、2700万円にもなっています。利益総額でのトップのトヨタの場合733万円、超優良企業といわれるソニーで374万円です。不良債権の処理は業界の責任で処理をする。そのことを明確にすることこそ社会のルールを守るだけでなく、日本経済の健全な再生の道であり、金融システムの不安を解消し国際的にも、国民にも信頼を得る方向であると思います。
 具体的に責任の取り方で歴史的にどうかという点では、過去に事例はあります。明治23年に第7銀行(資本金15万円)で13万円の横領事件がありました。当時の頭取の給料が17円から50円程度の時代で大変な額であったと思いますが、役員は責任をとって1人14,400円の拠出をして責任を果たしています。昭和2年の金融大恐慌の時には、15銀行の何人かの重役が、家屋敷、別荘など私財をなげうって責任を果たしています。当時の新聞が「重役はまずもって資材を提供して誠意を披瀝すると共に預金者の利益を擁護する道を講じている」と報道しています。この内容を「地銀連の98春闘方針の情勢」で機関紙に紹介したところ、職場で大きな反響がありました。最近でも非常に立派な処理がされている事例はあります。96年に武蔵野信用金庫の破綻がありました。王子信用金庫などが吸収処理をしていますが、そのとき不良債権処理は、信用金庫業界の総合援助資金制度で業界として責任を果たしています。これは、信金業界の幹部の皆さんが、地域金融機関としての社会的役割を果たす立場を営業方針に貫いてこられたことと、経営責任を明確にされた、そういう結果です。同時に職場には、「全信労」の皆さんが労働組合として健全な方針で活動をされていた、そういう反映も非常に大きいと思います。今後に生かすべき教訓といえます。

(2)預金者保護と公的資金の投入

 公的資金の投入に対しては、国民の皆さんからの猛反対がありました。例えば、週刊現代(3月7日)の世論調査では78%の「反対」結果です。
 現場の銀行員は、大きな顔をして、表を歩けない、渉外や窓口担当者は、いま大変な苦労をしています。山一証券の社長が破綻発表の中で「従業員には責任はございません」と絶叫した記者会見がありましたが、いま金融機関の従業員は、単に解雇という問題だけで犠牲を強いられているのではありません。国民・預金者の皆さんからの社会批判の前に日々さらされて、新たな労働強化を強いられています。「金融不安が意図的に流された」そういう意見もありますがそのことの議論は別にしても、経済の根幹をなすものとして、国民的な関心を払わなければならないことは事実です。「反対」は当然のことです。マスコミの責任もあるかと思いますが、いわゆる「不安」となる中味の問題が、ごちゃ混ぜにされています。
 簡単に整理すると、預金者保護の点での不安と金融システム「機構」としての不安の問題です。これらを論じるだけでかなりのスペースが必要だと思いますので誤解を生む心配もありますが、「預金者保護」という点での「不安」については、「預金保険機構」で十分対処できるものです。制度は、71年にできたものですが、86年に「破綻した金融機関に資金援助ができる」ように改正され、おかしくなってきた原因の一つになっています。簡単にいうと「預金者保護のための資金にプールしたもので不良債権も処理をしてしまう」というものですから、当然無理が起こります。1995年9月に出された金融制度調査会の中間報告でも「本来金融機関の破綻処理は、預金保険の発動などの公的手段を含め、金融システム内の処理と負担により行われることが大原則である」としています。従って前述(1)で「不良債権処理は銀行業界の責任」について述べましたが、このことをはっきりさせれば、直ちに解決される問題です。
 しかしそうは行かずになぜ今日のような事態を招いているのか。2つの原因があると思います。一つは、いま銀行が抱えている不良債権を生み出してきた原因、そのことを明らかにし、早く手を打たなかった。つまり木津信やコスモの時にきちんとした対応ができていなかつた。政府・大蔵省は、まだやれると思っていたのではないかと思います。それにいま国民の批判の的になっている大蔵官僚と銀行業界の癒着体質があって自浄作用がもはや働かなかった。こういう視点で見ると銀行経営者も被害者なのか、とも思わないでもありません。実際そう思っている経営者もいてほしいと思います。それなら一日も早く、本来の銀行としての「社会的、公共的役割」を明確にした銀行経営に戻すべきです。冒頭に「住専の処理以来の公約違反」だと書きましたが、それにはこういうことも含まれていると思います。
 もう一つは、橋本内閣が打ち出した6つの規制緩和の中での「日本版金融ビッグバン」の背景と目的の問題にあると思います。橋本首相が「火だるまになってでもやる」、そういう不退転の決意を述べていたことが思い出されます。山一や、北拓がつぶれるなどとは、その時点で思ってもみなかったと思います。昨年、外為法の審議の際、私も大蔵委員会の傍聴に行きました。そのとき「大手20行はつぶさない」そういっていました。なぜかというと日本の銀行業務の中で、国際業務は90%以上を20行が占めている、だから国際信用維持のため、国際競争のためつぶせないということです。当時の三塚大蔵大臣が、そういっていました。「ビッグバン」は大銀行に今以上の体力を付けさせる、そのために30兆円もの公的資金を、国民の大反対を押してでも投入する。そういう流れの中で、21行が公的資金を受けました。「横並び、つかみ取り」と批判を受けていますが、常識的に考えれば、そういう国民の批判のあることがわかっていてそういうことはやりづらいはずです。しかし、「ビッグバン」の視点は、国民的云々ではない「国際競争力強化のため大銀行の体力増強」という視点で進んでいることの証ではないでしょうか。 預金者保護を口実に公的資金の導入を、銀行労働者は、許すわけには行きません。真に国民・預金者から信頼される銀行を創るため、それに逆行する公的資金投入に反対する立場を明確にしたいと思います。

(3)貸し渋りと国民の「生活」「営業」と日本経済への影響

 民間経済調査機関などの発表で、すでに銀行の貸し渋りが行われていることは、ご承知のとうりです。上位10行だけでも97年3月から9月の間ですでに6兆円を上回る融資の回収が行われています。「貸し渋り」などとの表現は、正しくありません。よく銀行の融資態度について「日傘は貸してくれても雨が降れば傘を貸してくれない」といわれます。そんなどころではなく「土砂降りの中でさしている傘を奪い取っていく」そういう行為です。不況の中で貸し渋りの影響倒産も増え続けています。それは新たな不良債権を生む皮肉な悪循環が拡大することになります。
 橋本首相がいう「ビッグバン」の「グローバル化」の視点は、中小企業や国民に向けられたものでないことはすでに明らかです。3人の中小企業経営者がいつしょに自殺をされる、まさに悲惨としかいいようがありませんが、そんな異常な事態が起こっています。しかしそんな異常が実際には、至るとこるであるのではないか、銀行員として自戒の念に駆られ、「良心」の問われる状況にあります。「早期是正措置」「自己資本比率」の問題は、後で述べますが、もつと深刻な事態を生むのではないかと思います。98年2月末での日銀速報「貸出・資金吸収動向」によると、都銀以下第二地銀までの5業態合計の貸出は、17カ月連続の後退です。「東京都制度融資保証承諾状況(2月末)」では、都市銀行で12.3%もの減少になっています。全体でも4.6%の減少です。地銀、第二地銀、信金では増加していますが、「自己資本比率」を守ることが基本にある以上いづれ後退することになります。3月13日の経済企画庁の発表では、経済成長は、マイナス成長となり、23年ぶり、石油危機以来の事態を示しています。「東南アジアの経済問題」や先日発表のあった「地価の下落」が続くなど、いずれも「バブル経済」のつけがまだ、重くのしかかっています。私たちは、日本経済の再生、不況克服のためにもそういう貸し渋り・融資回収の方向を許すわけには行きません。

(4)銀行リストラの国民・地域社会への影響

 「横並び、つかみ取り」で公的資金を受けようとする大銀行が、競ってリストラ計画を発表しています。大蔵大臣は、銀行業界にリストラの要請をしました。「危機管理審査委員会」は、公的資金と引き替えに、リストラを要請しています。儲けを増やすこと、そのことを奨励して、国民の税金から資金を提供すること自体、変な話です。
 「地銀連」では、この問題で大蔵省と再三交渉を持っていますが、大蔵省の見解は、「労使問題には不介入、労働条件の問題は、労使間の問題」と、いっていますが、経営者サイドに立つこうした現象は、憲法、労組法からして不当なことといえます。いままで護送船団方式との批判がありました、それで自己責任体制ということがいわれるようになったのですが、いまやっていることは、21行による「日本金融連合艦隊」の結成だといえます。さて企業のリストラが、消費不況経済の中で、そのこと自体に「企業の社会的責任」が問われなければならない問題です。そういう点からも大いに批判されるべきことで、銀行業界が超低金利政策で、膨大な業務利益を上げていることとの関連でも、許されることではないと思います。本来であれば積極的な社会還元を行うべきです。
 もう一つリストラ計画に金融機関として「社会的、公共性」の立場から大きな問題があります。金融機関を見る場合根本的な問題として重要なことは、国民生活にとって重要な共通の社会インフラであることです。昨年2月、東京世田谷区で団地内の出張所を突然住友銀行が廃止をしょうとした時、周辺地域の大きな社会問題になりました。効率化や利益のためだけでこういうことは、許されるものではありません。しかしいま進められようとしている「金融ビッグバン」の流れはそういう方向です。いま提出されている大手10行の計画だけでも、大ざっぱに見て支店の廃止・統合が300店舗ぐらいあります。3分の1位を無人店舗にしようとのすさまじい計画を持っている銀行もあります。京都共栄と幸福銀行の合併では、600人の従業員、55店舗は、260人、26店舗しか幸福へは引き継がれない計画です。いま地方の商店街では、「シャッター商店街」といわれる深刻な事態が全国的に起こっています。街の中心から銀行がなくなる、地域衰退を決定的にします。昨年自己破産者が7万件を越え、前年比26%の増加といわれています。生活圏内に銀行がなくなれば、サラ金やノンバンク、高利の金融が増加することになります。現に「金融ビッグバン」の実施されたイギリスの地方都市でそういうことが起こっています。

3 銀行労働者の課題とたたかいの方向

 「暮らし」や「経済」に限られた項目でしか触れられませんでしたが、その中で銀行労働者としての当面の課題、今後の課題についても一定は述べてきました。「国民の皆さんから失われた銀行の信頼を回復する」いまの現状からすれば、私たちにとっては、とてつもない大きな課題であります。しかしそのことなしに銀行労働者の「生き甲斐」「働きがい」は、ありえませんし、国民的経済利益も守れません。
 4月から「早期是正措置」が大蔵行政指導として実施されようとしています。自己資本比率(国際比率8%、国内比率4%)の適用が現実のものとなります。簡単にいえば「8%、4%の利益を確保するか、貸出総額を押さえるか」のどちらかです。いずれにしても従業員への合理化の押しつけと、国民への犠牲の転嫁しかありません。今後、銀行の中でも特に地域金融機関(地方銀行以下の金融機関)のあり方が、様々な角度から問われることになるだろうと思います。国民・地域経済界からも具体的な要求が表面化すると思います。実際にそうならないと日本の健全な経済は、守れない、そういう点で我々の役割、指導性は、本当に重要になってくる。そういう自覚を持ちたいと思っています。大蔵省、全銀協、地銀協などとの交渉も今まで以上に重要になってきています。地銀連での新年の挨拶で、「公的資金投入反対、銀行労働者の雇用の確保、不況打開へのベアゼロを打ち破る国民春闘を」と当面の3つの課題を訴えました。未加盟を含めて職場の皆さんから共感を得ています。3月末には、改めて全国の地銀頭取宛に、「期末を控えて貸し渋りをなくし国民経済に貢献する」立場での営業方針の再確認を要請しました。銀行労働者の権利を守り、国民経済を守るため奮闘いたします。ご支援ご協力をお願いいたします。

(団体会員・地銀連中央執行委員長)


3月の研究活動

3月2日賃金・最賃問題研究会=報告・討論「女性の賃金をめぐって」
10日生計費研究プロジェクト=報告・討論「ドイツにおける最低保障の動向」
13日中小企業問題研究部会=報告・討論「金融機関と貸し渋り・強制取り立て問題について」
24〜25日労働法制研究部会=報告・討論「オムロン・パーソナル・クリエイツ(オムロン系人材派遣会社)聞き取り調査について/労働基準改正案/フランスCGT・ISERES主催“グローバリゼーションと労働法”に参加して/今後の研究計画について」
25日女性労働研究部会=報告・討論「『平成9年版国民生活白書』─働く女性─新しい社会システムを求めて─」
26日不安定就業・雇用失業問題研究部会=報告・討論「今後の部会活動について」
28日青年問題研究部会=報告・討論「財界の教育改革案について/職業資格について」

労働時間問題研究部会

「変形労働・長時間・深夜労働
    ─労働時間と『規制緩和』」刊行

 労働総研・労働時間問題研究部会はこの程、「日本の労働時間─賃下げなしのワークシェアリングと大幅時短への展望─」に引き続いて、研究成果を「変形労働・長時間・深夜労働─労働時間と『規制緩和』」のタイトルで、学習の友社から刊行した。下記のような構成となっている(205ページ・定価1800円)。

☆   ☆   ☆

序にかえて
第1章 変形労働・長時間・夜勤の実態とたたかい
郵便事業における長時間夜勤にたいする要求とたたかい
看護職員の夜勤問題と改善への課題
崩される生活といのち─私鉄・バスの職場から
トラック労働者の長時間・過密労働の実態と対策
JR職場における変形労働時間制の問題点
トヨタ・かんばん方式の過酷な交代制
第2章 90年代不況下の労働時間の弾力化
1 不況下でのリストラの進展
2 増加しつつある労働時間─90年代不況下の労働時間の特徴(1)
3 すすまぬ休暇取得率─90年代不況下の労働時間の特徴(2)
4 すすむ労働時間規制の弾力化─90年代不況下の労働時間の特徴(3)
第3章 労働日をめぐる闘争の歴史的意義
1 90年代後半の労働時間破壊攻撃の特徴
2 労働時間をめぐる労資の対決点と階級闘争の歴史
3 政府・財界の21世紀戦略と労働時間闘争の意義
第4章 ヨーロッパでの労働時間短職闘争の動向
1 週35時間労働制への新しい波
2 労働時間短縮闘争の意義と労働組合の要求綱領
3 21世紀にむけてのたたかいの前進
第5章 政府・労働者の労働時間をめぐる政策と全労働の対応
第6章 今日の労働時間制度改悪に反対するたたかいの方向
1 日経連・財界の労働時間法制改悪のねらい
2 労働法制改悪に反対するたたかいと春闘
──執筆者(〈 〉内は担当部分)──
秋葉文男 郵産労中執〈第1章T〉
桂木誠志 日本医労連中執〈第1章U〉
佐々木仁 私鉄京王帝都電鉄労働者の会〈第1章V〉
山田喜己 運輸一般副委員長〈第1章W〉
鈴木 勉 国労中執〈第1章X〉
岡 清彦 ジャーナリスト〈第1章Y〉
藤田 実 桜美林大学助教授〈第2章〉
辻岡靖仁 労働者教育協会会長〈第3章〉
小森良夫 ジャーナリスト〈第4章〉
高山博光 全労働中執〈第5章〉
西村直樹 金属労研事務室長〈第6章〉

会員からの寄贈研究報告書

柴田嘉彦著「日本の社会保障の歴史─U第二次世界大戦後の時期(1)」(日本福祉大学研究紀要第98号・第1分冊〜福祉領域抜刷・98年2月)

97年度第4回常任理事会報告

 97年度第4回常任理事会は、98年3月23日午後1時半〜5時、東京で開催。構成員20人中14人出席、他に事務局から出席した。内容は次のとおり。
  1. 研究報告・討論
     「ナショナルミニマム問題についての考え方」をテーマに黒川代表理事から報告が行われ討論を行った。
  2. 加入申請の承認について
     個人会員1人の加入申請を承認。
  3. 98年度定例総会までの諸会議の設定について
     98年度定例総会日程(7月31日)および常任理事会、理事会などの日程をそれぞれ設定した。
  4. 98年度定例総会の準備について
     98年度定例総会の準備について、会員から出されている要望事項、提出案件、定例総会の持ち方に工夫を加えることなどについて検討を行いそれぞれ具体化していくことを申し合わせた。
  5. 次期役員選出作業委員会の作業状況について
     委員会責任者から中間報告を受けた。
  6. 労働総研・全労連定期協議報告と当面の連携事業について
     3月11日に行われた両者の定期協議について報告が行われ、当面の連携事業としてすでに実施されている毎年の「地域政策研究交流集会」を充実させること、全労連から要請された委託研究「持ち株会社化の問題点─NTT分割・再結成に関連して」を受け入れることなどを確認した。
  7. 働くもののいのちと健康を守る全国センター準備会への協力について
     全国センター準備会からの要請事項に応えてていくことを確認した。
  8. その他(略)

寄贈・入手図書資料コーナー

3月の事務局日誌

3月10日「全労連編/1998国民春闘白書」合評会(全労連・労働総研編集委員参加)
11日労働総研・全労連定期協議(代表理事中心に参加・別項参照)97年度第4回企画委員会(代表理事中心に構成)
19日ナショナルミニマム懇談会世話役団体会議(宇和川)
23日97年度第4回常任理事会(別項参照)
29日建設一般・公的就労問題政策検討会(草島)