1998年7月1日(通巻100号)

目   次
巻頭言

『労働総研ニュース』100号を記念して…黒川俊雄

論 文

98春闘の賃金闘争総括に関連して………金田 豊

97年度第6回常任理事会報告など

きねん

 『労働総研ニュース』も90年4月創刊以来、この号で100号になります。研究所が設立されたのは89年12月ですから、来年99年12月に10周年を迎えることになります。現在、300名をこえる個人会員、60をこえる団体会員という多くの方々に読んでいただけるようになり、今年1月からインターネットにホームページを開設しましたからもっと多くの方々の眼に触れるようになったわけです。
 人間は切りの良い数字で何かを記念したがるものです。それは思い出を残しておくためだけでなく、記憶を新たにして未来を切り開くためでもあります。
 いま政治経済体制が行き詰まってきているなかで、「規制緩和万能」論による無謀な政策が労働者、農漁民、商工業、サービス業の自営業者や小中企業家それぞれの権利を侵害するようになっています。そこで、これらの人々が立場や思想信条の違いをこえて地域で共同行動をすすめざるをえなくなってきています。しかも既得の権利をまもるだけでなく、新たな権利を行使するために連帯する道を地域で模索し切り開いていかなければならなくなってきています。そうしなければ、停滞する労働運動も飛躍に転換することができなくなってくるでしょう。そういう意味で、この『ニュース』の巻頭言などで数多くの方々が提言してこられたことを熟読玩味して生かしていき、全労連との共催で10月9〜10日に北海道で開く第3回地域政策研究交流集会に最大限の力を集中していくことが重要だと思います。
 「完全失業率」が今年の4月以降4%をこえて増大してきているとき、いまこそ政府・自民党の言う「産業構造転換・雇用対策」でなく、地域で住民の要求充足をめざして社会保障・福祉、環境および従来型公共事業などを改革して本当の意味の産業構造転換を「地方自治の本旨」にそってすすめていく必要があります。従来型公共事業よりも社会保障のほうが経済効果・就業増加の効果が大きいことを「産業連関表」で実証する研究も公にされてきています。(自治体問題研究所『社会保障の経済効果は公共事業より大きい』98年4月刊など参照)。

(代表理事・慶応大学名誉教授)


98春闘の賃金闘争総括に関連して

金田 豊

(1)

 98春闘では、全労連を中心に、総対話と共同が、全国各段階で積極的に取り組まれました。全労連の98年度運動方針案でも「運動の新たな活気をつくりだし『流れを変える』橋頭堡を築きあげてきている」と述べているように、2・26全国統一行動、3・8中央大集会をはじめ運動を大きく前進させ、これによって政府と財界がたくらんだ労働法制改悪も通常国会での成立を断念させ、当初かたくなに拒否していた所得税減税も実施させるなど成果をあげました。この過程では、連合も職場からの声を無視できずに、労働法制改悪反対や所得税減税では大衆行動を組織し、メーデーでもはじめてデモ行進を組織するなどの変化を示しました。
 しかし、賃金闘争では日経連調べで、主要企業2.62%、8,293円と最低の賃上げ率となり、金融・商社はじめベア・ゼロも増え、能力主義の人事考課による賃金の個別決定への分断も進みました。中小企業ではさらに低く、日経連集計で2.43%、6,130円と格差拡大です。そこで、この賃上げの後退と共同による運動の前進との関連、賃金闘争の課題を検討してみます。

(2)

 日経連は、5月14日の第51回定時総会の労働情勢報告で、98春闘結果の特徴について次の6点をあげています。
 (1)厳しい経営環境の中で雇用維持を重視した交渉により、過去最低となったこと。
 (2)横並びを排し、各社の業績や生産性に応じた自己責任型の賃金決定がなされたこと。
 (3)総額人件費管理が重視され、賃金、一時金、時短はトレードオフの関係にあるとした交渉が行われたこと。
 (4)鉄鋼で毎年の労使交渉の中身の重点化を図る複数年協定が行われたこと。
 (5)電機連合の総ベア方式の要求に対して、経営側は「総ベア方式は定昇相当分を既得権化するもの」として要求を退け、従来方式で解決したこと。
 (6)人事・賃金制度を従来の年功序列型から成果主義に改める動きが強まったこと。
 春闘結果をこのようにとらえたうえで、日経連根本会長は、春闘について、「労使双方が情報を共有化し、お互いの学習効果を開陳しながら、賃金のみならず労働に関する万般の事項について話し合いをすすめる場として“春闘”は国際的にも評価されている貴重なシステムであると考える」と述べています。(第51回定時総会会長挨拶、日経連タイムス98・5・28)。春闘は闘争としてでなく、共有された情報による学習・協議の場とされ、社会の安定帯としての労使関係、労使の相互信頼による協調路線は世界に誇り得る一種の文化財として世界に発信しうるものと位置づけ、財界の21世紀戦略の具体化としてのブルバード・プランの実行の年と宣言しました。
 資本の側の思わく通りに押え込んだ賃上げ結果の数値や主要企業に於ける能力・業績主義賃金決定システムの導入で、団体交渉による春闘賃上げから人事考課での個別管理による賃金改定だけにするというところも見られるようにはなりましたが、それによって賃金の停滞や低下が生活破壊につながることになるだけに、職場労働者の不満が、大企業のなかでも、犠牲をおしつけられる中小・下請でも増大せざるを得ず、日経連がいう世界に誇り得る労資関係とは違った状況が、いろいろな場面で生じはじめていることに注目しないわけにはいきません。
 労資協調体制による職場管理が築かれてきた大企業でもそうですが、それよりさらに差別されて、低額回答を押し付けられ、格差拡大と経営破綻の危険に直面させられている地域下請中小では、賃金闘争の取り組み方への変化が深く進みはじめていることがみられます。

(3)

 まず、労資協調体制が強められてきた大企業で、結果としては低額回答で集約されることにはなりましたが、そこに至る経過には従来と違った変化がみられています。
 例えば、スズキ自動車では、3月17日に7,300円の回答について拡大戦術委員会はこれを拒否して、さらに交渉をすすめるということになり、最終的には7,950円ということになったのですが、それでも最終決定機関である労組支部委員会では不満が多く、あと50円あげて8,000円にと夜中の12時まで紛糾する事態が続いてやっと決ったということです。このように、労資協調路線の組合が、企業側の低額回答を受け入れようとするのに対して、職場段階ではこれに反対の態度をとり否決するというところがかなりみられるようになったと指摘されています。
 基本給での賃上げではなかなか経営者側の一発回答を変えられなくても、総枠人件費抑制でかけられてくる手当や福祉厚生費の切り下げなどでは、職場の声で提案を撤回させたり修正させたりするところも出ています。
 例えば、安川電機では、春闘のなかで会社から、家族手当カットの提案(配偶者のうち年収103万円以上の者について5年間でゼロにする)がありましたが、職場集会でふだんあまり発言したことのない人からも、この提案が通ったら、ますます生活が苦しくなってやっていけないと発言があるなど、多くの職場から反対の声があがって、会社側も提案を撤回しました。
 人員削減と業績・成果主義がつよまるなかで増えている不払い残業・サービス残業をやめさせようと活動家が取り組みをすすめたら、会社側もその職場の労働者に約15万円の残業代を支払うことになった地方銀行の例とか、サービス残業だけはやめさせよう、働いた分の賃金をもらうのは当然と共産党支部が訴え、一人の女性がそれにこたえて実際の残業時間をすべて記録して提出したところ、それが認められて、1カ月で10万円の残業手当が支給されただけでなく、本社から人事担当者と労組委員長が来て、実態の聞き取り調査もして人手不足の実態が明らかにされ人員が一人増員されたある損保の職場の例なども報告されています。
 能力・業積主義の新人事制度が導入され、能力開発につとめ努力して成果をあげれば報われる個性尊重の賃金だと会社側が宣伝してきたのに、実際は賃金の抑制、一方的査定、格差の拡大と競争激化による職場の状態の悪化に、不満が増大しており、例えば、新人事制度が導入されたある製薬会社では、自覚的活動家グループが行ったアンケート調査で、新人事制度がいいという回答は僅か3.4%で、よくないとするものが、62.5%と圧倒的多数だったことも報告されていますが、とくに賃金の低い青年層で能力・業績主義での賃金増加の期待が裏切られて行くことに対する不満が生じてきています。98春闘での低額受諾提案に、職場段階で反対の意思表示をするところが、研究部門や技術部門、本社関係で生じてきているのも、裁量制や目標管理による能力主義賃金制度がこれらの職場で強化されていることと結びついていると言えるでしょう。
 そうした職場の変化は、労資協調で低額回答に同調したJC(金属労協)の春闘統括にも影響を与えています。
 要求基準7,000円は、純ベアによる実質賃金の維持向上という点で、ぎりぎりの要求だったが、純ベアにおける実質賃金維持を団体交渉における労使の接点とすることができず、JC共闘全体として1%近いベアを獲得したものの、消費税率引き上げ分をクリアできず、実質賃金を維持することができなかったとした上で、今後の課題について、『賃金処遇制度としては、あくまでライフサイクルに対応する必要生計費のミニマムを確保したうえで、専門能力を重視する「複線型賃金・処遇制度」を提唱』し、その導入に際しては「労使の十分な協議と合意のうえで勤労者生活の安定と安心をまず第一に追求していくことが、ひいてはマクロ経済の安定的な発展にもつながることになる」としています。そして、「さらに、年令ごとの標準生計費を踏まえた社会的なミニマムの賃金水準の確立をめざしていくことが不可欠です」と述べています。ここでは、専門能力を重視する複線型賃金・処遇制度」をめざす点で、企業側の能力・業績反映型賃金決定システムの構築と符合する方向を持っていますが、その前提条件に年令別・ライフサイクルに対応する必要生計費のミニマムを賃金のミニマムとして確保することを置いていることは、生活破壊の進行するなかで、人間らしい生活への働く者のねがいを賃金要求設定で無視することができなくなっていることの反映です。もちろん、そのミニマム水準をどこに設定するかで資本家側のコスト削減に同調すするものとなる要因も含んではいますが、生計費を基準とすることを賃金の取り組みの基礎においたことは見のがせません。年令ごとのライフサイクルに応じた生計費の増加は、年令とともに上るシステムを賃金にとって不可欠のものとし、これを賃上げは別の権利として確保しようとすれば、成果主義で、賃金を生活らか切りはなし、定昇制度を否定する日経連の賃金改革と対立せざるを得ません。「定期昇給(相当)分ならびに賃金カーブ維持分さえも否定する経営側の動きもあるだけに、労働組合として、個別銘柄別賃上げ方式の考え方をより徹底し、純ベア方式からさらに絶対額での取り組みに展開していくことが課題であるといえます」と、JC総括は今後の課題を提起し、日経連は、先に見たように、「純ベア方式は定昇相当分を既得権化するもの」として反対するといった対立が、98年春闘では生じてきました。個別銘柄別賃上げ方式は、年功賃金から職能給や職務給への移行で賃金決定が人事考課で個別労働者を分断し格差がひろがるのに対応したものとして取り上げられてたものでしたが、賃金抑制と能力主義による格差拡大、雇用の流動化政策が賃金ダウンと生活破壊を深刻化するなかで、生計費対応と流動化に対する水準維持のための標準者賃金の社会的基準形成の側面が重視されるようになってきました。
 こうして、労資協調路線の能力主義と同調する賃金政策のなかにも矛盾を生じ、それと資本家側の賃金政策との矛盾もひろがらざるを得なくなっています。日経連根本会長の「世界に誇り得る労使の相互信頼による協調路線」の強調も現実には賃金をめぐってもさまざまな矛盾を露呈しはじめたことが、98春闘の特徴であり、そこに総対話と共同の展開への新たな条件をつくるものともなるのです。

(4)

 98春闘の特徴の一つは、日経連調査で最低となった主要企業の賃上げ(2.62%8,293円)を、さらに下回って中小企業の賃上げが2.43%6,130円と低く抑えられ、そのなかでも規模の小さい企業ほど低く、100人未満の企業では2.29%、5,665円(7月1日集計)に抑えられたことです。そのうえ、賃上げ回答ゼロのところも多く、もともと賃金水準の低い上に、こうした賃上げが低いのですから賃金格差はますます拡ってきました。
 大企業の進出で市場を奪われ、生産拠点の海外移転と逆輸入の競争激化、下請単価の切り下げと下請系列の選別再編はじめ倒産廃業が最高に増大する経営危機の中におかれた中小零細企業で、賃金・労働条件改善をどう闘ったらよいのかが、この春闘のなかで問われることになり、総対話と共同の取り組みと合わせて、新たな取り組みがはじめられていることが、98春闘結果を見る上で重要な点となります。
 中小の企業内だけをみて闘おうとしても、展望が見出せない、中小企業の危機をもたらしている仕組み、大企業の横暴や政府の大企業本位の政策をみることが必要だし、それには産業別組織や地域の統一行動・共同行動に結集しなければ前進できないとする認識がひろがってきました。取り組みのなかで、それは地域経済振興の課題と結びつき、自治体の対策を求め、中小企業の経営安定のために中小企業者とも共同できる取り組みとして、新たな労使関係をつくる契機にもなっています。
 全労連全国一般は、すでに96年秋から中小企業を訪問し「企業実態と要望調査」「中小企業と地域経済を守る賛同署名」の運動を進め、さらに大店法廃止反対の闘いと結合して商店街を重点に、また証券、ゴムなど厳しい業界を対象にした訪問活動を各地で進め、その地域の実態分析の上にたって「中小企業振興条例の制度」「魅力ある商店街づくり」をめざす政策づくりにすすむところも出てきており、2年間の実践を土台に「まちづくり、ものづくりの運動」へと発展させたいとしています。
 運輸一般でも、98春闘で、(1)トラックの適正な運賃・料金収受に関する請願、(2)軽油取引税暫定増税分の延長措置に反対する請願の2つの署名運動を行い、1217企業・団体から署名がよせられ、3月9日には国会議員への要請行動、通産省・運輸省交渉を行ないました。東京地本では、「銀行の貸し渋り実態調査を行い、資金繰りに困り、経営難におちいっている実態を示して、運輸省等へも申し入れました。関西の生コン労働者は、上部組織も運動路線も違う5労組(運輸一般、生コン産労、連帯労組、全港湾、CSG連合)の共同行動で新しい局面をひらき、18年ぶりに、「大阪・兵庫生コン経営者会」の84社との集団交渉を実現させ、要求、交渉、戦術、妥協にいたる統一したたたかいを前進させました。この背景には、無秩序な価格競争により50社以上が倒産廃業に追いこまれた過去の苦い経験から、業界の過当競争防止が労使の共通の認識になっており、運輸一般関西生コン支部では、価格競争が業界を混乱させ、労働条件を悪化させているだけでなく、“安かろう悪かろう”という生コンの品質にもかかわることを建造物調査から明らかにして社会的に問題を追及してきたとりくみがあります。
 3月18日、24日の2回の集団交渉では不況による需要低迷、先行き不透明を理由にゼロ回答だったのに抗議して、25日から3日間のストを5労組とも実施し、4月2日賃上げ8,000円、一時金、福利厚生資金(昨年実績)など3項目についても妥協しました。
 運輸一般でも、5月6日時点で交渉単位707のうち未回答が300をかぞえ、回答平均も約4,000円で前年比マイナス1,000円と厳しい状況でしたが、共同の闘いのひろがりのなかで、134組織31.6%と約3分の1が前年実績以上の回答を引き出していると報告されています。
 JMIUも、「大企業の横暴に反対し、中小企業と雇用、地域経済を守る要請署名」に取り組み、これを通産省や関係省庁、経営者団体への申し入れ行動と結びつけていきました。すでに96年12月にはゼネコンによる建設資材の買いたたきについての通産省交渉を通じて、「代金の設定については、施行条件等を反映した合理的なものとするとともに、見積り及び協議を行なう等の適正な手順によること」という通達を引きだし、また、下請二法の改善・活用についての通産省交渉では、親会社からの一方的な単価の決定(協議の実態のないもの)は買いたたきになること、経営者からの申告が基本だが、労働組合からのものでも相談にのり、内容によって対応するなどの回答をひきだしており、これらが契機となってある精密機器大手からの30%もの下請単価切り下げの強要を告発し、是正させた経験もありました。
 こうした経験も生かして、独占大企業本位の姿勢でねじまげられた運用となり、法制度違反が放置されている状況を、中小業者も含めた地域・業種・産業別の共同のとりくみとして職場の具体的事実を明らかにして追及していくことでただし、一定の成果をあげていくことができることを教訓としています。
 こうして、98春闘では、経営が苦しいからと企業の中にとじこもるのでなく、企業の経営に対する調査分析も深めて、問題点をつかみながら、地域・業種・産業別の対話と共同、統一行動に参加し「外に打って出る」とりくみを前進させることで、前進し、3.19の地本の激励団を迎えた地域リレースト・激励の統一行動も、昨年の二地方7コースから、東京、埼玉、神奈川、長野、京浜の五地方12コースに拡大させ、中小企業の回答が全般的に低額に抑え込まれるなかでも地域からの共同と統一行動に結集することで、回答を引きあげ、中小の闘いの新たな前進への手がかりを引き出しています。
 これらの中小企業産業の闘いに見られるように、賃上げはなお、大企業の横暴の圧力で低く抑えられ、コスト削減体制に引き込まれてはいるものの、闘いの内容は新たな攻勢への方向を創り出しているのです。しかし、これらの闘いを大きく発展させるには、独占大企業に中小企業賃金の抑圧を許す要因となっいている中小企業の極度に低い組織率(100人未満は1.6%)と労資協定による社会的規制力の欠如、法定最低賃金の低さと違反野放しなどへの対処が必要なことですが、春闘共闘の各組織の98春闘の経過と今後の取り組みの方針をみても、この点が重視されるようになっています。全労連の98年度運動方針案では「賃金闘争を前進させるため、すべての労働者を視野に入れた『最低要求』を練り上げ、労働力のダンピングを許さない労働組合の共同と国民世論の支持拡大を重視する」とし、労働者・国民生活の下支えとしての、全国一律最賃制とこれを基調としたナショナルミニマムの確立にむけての国民的合意形成を追求しつつ、現に強められているあらゆる組合と賃金・所得の引下げと格差拡大に反撃するため初任給引上げや年令別最低保障、パートや不安定雇用労働者の賃上げの取り組みの強化、企業内最賃の確立のとりくみを産別規模にひろげ、あらゆる組合との共同を追求して法定産別最賃を展望すること、地域包括最賃引上げと結合しながら「○○地域から○○万円以下の労働者をなくす要求」をかかげ、すべての労働者を視野に入れた運動と共同を追求することを掲げています。
 JMIUの99年度運動方針案でも、98春闘で部分的にみられた賃金闘争の前進をより拡げていくためには、圧倒的多数の未組織労働者や単独組合への影響を考えると、地域で目に見える賃金闘争の流れをつくることはどうしても必要だとし、最賃制のたたかいと結合した「地域から○○万円以下をなくす」地域の賃金闘争の組織化が課題であることを強調しています。
 中小企業の危機を乗り切るために、緊急融資や官公需の中小企業向け発注の拡大などが求められていますが、そのなかで、賃金・労働条件の悪化を食いとめるように、官公需発注の際の最低限度の工賃を自治体として確定させて、それを地域のミニマムとして、民主的規制の基準づくりを地域的にできないかなど、中小企業の危機打開の緊急政策を労働者の賃上げ、生活を守る視点から提起していくことについての大阪労連の検討なども報告されていますが、それが地域経済振興のなかに組みこまれてとりくまれるようになれば、自治体も含めて労働者と中小企業者との共同を一層拡大するものとなるでしょう。
 こうした取り組みが進むことによって、“未組織の組織化や臨時パートなど不安定雇用労働者の賃金・労働条件引き上げをかちとる条件がひろがってきて、98春闘のなかで進みはじめたこの課題での成果をより確固たるものとし、それが賃金闘争への共同をひろげ、賃金水準の全般的引き上げの条件をつくるという循環を生むことになってくるでしょう。

(5)

 98春闘での日経連を中心とするコスト削減・企業競争強化への賃金闘争と賃金破壊の攻撃は表面では成功しているように見えても、その内部で矛盾を拡大し、総対話と共同のテーマをひろげ、それによって賃金闘争を大企業の横暴の民主的規制と地域経済の国民生活本位の再建と結びついて再生していく方向が、産業別・地域からの取り組みとして具体的につみあげられるようになったことが見逃せない点です。

(労働総研理事)


6月の研究活動

6月1日 国際労働研究部会=報告・討論/国際労働情勢について
     賃金・最賃問題研究部会=報告・討論/財界の能力主義賃金の展開と矛盾
  3日 中小企業問題研究部会=報告・討論/労働総研編「豊かな国民生活のために─産業空洞化に抗して」の出版計画の概要
     全労連からの委託研究「持ち株会社化の問題点─NTT分割・再編成に関連して」第3回=持ち株会社化の諸問題、持ち株会社の労使関係など
  16日 生計費研究プロジェクト=報告・討論/税制における最低生活費と国際比較
  17日 社会保障研究部会=報告・討論/社会福祉事業法等「改正」の意味するもの
  18日 女性労働研究部会=報告・討論/年金問題について
  21日 労働法制研究部会=報告・討論/@日本における雇用形態、A労働基準法改正の動きと法案の問題点、B労働者派遣法改正の動きについて、C98年度研究会計画・出版計画
  22日 青年問題研究部会=報告・討論/職業資格について

寄贈・入手図書資料コーナー


97年度第6回常任理事会報告

 97年度第6回常任理事会は、6月19日、東京で開催。内容は次のとおり。

 1.労働総研・全労連共催「第3回地域政策研究交流集会」のもち方の件

 寺間常任理事(全労連行革・労働法制対策局長)から全労連案について報告があり協議した。引き続き双方で内容をつめながら準備をすすめていくことを申し合わせた。

 2.98年度定例総会提出案件の件

 (1)経過報告、(2)97年度会計報告、(3)98年度事業計画(案)、(4)98年度予算(案)、(5)規約改正(案)、(6)役員選出構想について協議し確認した。

 3.98年度定例総会のもち方の件

 全体の時間が短時間であるので、討論の重点を主として(1)調査研究事業及び(2)役員・事務局体制の強化におくこと、そして定例総会後、懇談会を行うことを申し合わせた。

 4.97年度第1回理事会のもち方の件(略)

 5.定例総会及び理事会の任務分担の件(略)

 6.その他


97年度第1回理事会報告

 97年度第1回理事会は、6月27日、午後1時半〜4時半、東京で開催。成立条件を満していることを確認して開会した。大江代表理事の開会あいさつののち、黒川代表理事が議長となり、98年度定例総会への提出案件の討議を行った。
 (1)97年度経過報告(文書提案)、(2)97年度決算報告、(3)97年度監査報告、(4)当期剰余金処分(案)、(5)98年度事業計画(案)、(6)98年度予算(案)、(7)規約改正(案)、(8)98〜99年度役員選出構想について討議した。若干の補強を行うことと、規約改正(案)の提案理由を明記することなどを申し合わせた。戸木田代表理事が閉会あいさつを行い終了した。


6月の事務局日誌

5月31日〜6月1日 働くもののいのちと健康を守る全国センター準備会主催「シンポジウム」と「活動家養成講座」(西村会員)
6月13日 北海道医労連医療研究集会(宇和川)
  16日 全日本年金者組合第10回定期大会へメッセージ
  17日 97年度監査(山口・元野両監事)
  19日 97年度第6回企画委員会、97年度第6回常任理事会(別紙参照)
  20日 交運研第8回総会へメッセージ
  21日 東京ガス職場革新懇学習会(草島)
  22日 第3回地域政策研究交流集会打合せ(黒川代表理事、草島常任理事、芹沢会員)
  27日 97年度第1回理事会(別紙参照)