労働運動総合研究所(「労働総研」)の設立にあたって

 私たちは、去る12月11日、労働運動の必要に応えるとともに国民生活の充実向上に資することを目的として、労働運動総合研究所(「労働総研」)を設立いたしました。「労働総研」は、この目的に即して理論研究をおこない、また労働運動の前進に実践的に役立つ政策立案のための調査研究、資料・情報の提供などをおこなうことになります。

 今日、労働運動をめぐる社会的諸条件は、内外にわたりめまぐるしい変化がみられ、また複雑な様相をみせております。労働者・労働組合は、「情報化」、「サービス経済化」、「国際化」、「高齢化」などの構造的変化に直面しているばかりか、政府・独占資本の「経済構造調整」政策や軍拡「行革」路線を背景とした、きびしい「合理化」攻撃にさらされています。他方に、多国籍化した巨大企業の横暴な蓄積運動はとどまるところを知らない状況にあります。

 今日の労働運動には、このような複雑かつ激変する社会経済情勢にたいして、的確な要求と政策課題を提起し、果敢に行動の統一をすすめることが、強く求められています。そこで私たちは、今こそこの運動の必要に応え、理論的・実践的に役立つ調査研究機関の設立を計るべきだと考え、その準備を具体的にすすめてまいりました。

 新しく設立された「労働総研」は、新しいナショナルセンター「全労連」との密接な協力・共同のもとに、民主的学者・研究者の結集と協力をえるとともに、既存の民主的調査研究諸機関の協力・共同をもすすめ、所期の目的の達成をはかりたいと思っております。

 だが、「労働総研」の基礎を固め、所期の目的をめざすためには、なによりも本研究所の趣旨と目的に賛同いただける労働組合、民主的団体・機関、研究者、活動家に、できるだけ多数会員として加盟していただくことをお願いしなければなりません。最後に、とくにこのことをお願いし、以上をもって研究所設立のご挨拶といたします。

1989年12月
労働運動総合研究所代表理事
黒 川 俊 雄
戸木田 嘉 久


労働運動総合研究所設立趣意書

 日本の労働運動は、いま重要な転機を迎えている。戦後日本資本主義と安保体制の矛盾が表面化し、長年の自民党政権が激しく動揺しているなかで、労働組合運動の新しいナショナルセンター・全国労働組合総連合が結成された。全国的規模でも産業レベル・地域レベルでも、労働運動が本格的に構築され、前進を開始しつつある。

 支配層がこの運動の前進に手をこまねいて見過ごすことはあり得ない。財界・自民党政府・「連合」などの勢力は、従来にも増してあらゆる手段と社会的な力を動員し、立ち向かってくるであろう。運動、組織、イデオロギーの全面にわたるその攻撃を軽視するわけにはいかない。

 しかし、今日における日本労働運動の前進は必然である。いまや多数の国民は、自民党政治が労働者・国民の生活と権利を根底から脅かしていることを、自覚するようになってきている。また、「連合」が既存のすべてのナショナルセンターを吸収合併するという事態のもとで、新しいナショナルセンター・全国労働組合総連合は、独占資本の政策に対抗して労働者・国民の生活と権利をまもることのできる、唯一の大衆的労働運動のセンターとなる。さらに、新しい運動の中心になっているのは、激しい反共攻撃をはねかえして着実な前進をかちとってきた労働者・労働組合であり、わが国労働運動の積極的伝統を受け継いでいる潮流である。

 とはいえ、今日の労働運動をめぐる社会的諸条件は、国内においても国際的にも大きく変化しつつある。労働者・労働組合は、「情報化」、「サービス経済化」、「国際化」、「高齢化」などの構造的変化に直面し、「経済構造調整」、「行革」などの政策によってかってない「合理化」攻撃にさらされている。労働組合運動がその主要な相手としているのは、いまや多国籍化した巨大企業である。それらの巨大企業は、アメリカ独占資本と連携・癒着しつつ、海外進出や輸出拡大をてこに、わが国の労働者と他の先進国および途上国の労働者とを互いに競争させ、労働・生活条件の切り下げをはかってきている。今日の労働運動は、これらの変化やそれにともなう運動課題に的確に対応しつつ、前進しなければならない。しかし、その道はけっして平坦なものではないであろう。

 以上の情勢のなかで、労働運動の必要に応え、その前進に理論的実践的に役立つような調査研究所の設立が、今日切実に求められている。この研究所は、新しいナショナルセンター・全国労働組合総連合との緊密な協力・共同のもとに、運動の発展に積極的に寄与する調査研究・政策活動をすすめるためのものである。また、それは労働運動にかかわる全国各地のさまざまな分野の民主的研究者・研究諸団体などに、労働運動との協力・共同の場を提供するものでありたい。

 本研究所は、これらの目的をめざす団体・個人の自主的な共同事業として設立されるものである。

1989年12月11日


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