2020春闘提言
働くルールの確立、最賃引き上げなどで国民生活改善を

2020年1月20日 労働運動総合研究所
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◆ 政府・与党は、株価上昇、企業収益拡大、有効求人倍率上昇などをアベノミクスの成果と誇っているが、これは一部の数字を誇張したものである。

◆ 安倍政権下で企業関連指標は改善しているが、経常利益の増加に比べて売上高の伸びは鈍い。日本を代表する大企業で、業績黒字の下でも大規模なリストラを強行しているところが少なくない。有効求人倍率の上昇も、求職者数の減少によるところが大きく、求人数の多い業種では低賃金、長時間労働など労働条件が悪いために離職率が高く、これが求人倍率を高める要因ともなっている。

◆ 賃金や消費関連指標を見ると、安倍政権は国民生活の改善には失敗していると言わざるを得ない。日本を安定的な成長軌道に乗せるためには、大幅賃上げや最低賃金引き上げ、労働時間の短縮が不可欠である。

◆ 大企業優遇のアベノミクスの下で、地方経済が疲弊している。地方経済を活性化するためには、地方経済を担っている中小企業の役割が重要であり、最低賃金や地場賃金引き上げが必要である。最賃引き上げのため、社会保険料負担軽減などの中小企業支援策の拡充が不可欠である。

◆ 安倍政権下で悪化した勤労者の生活水準を安倍内閣発足前に戻すために必要な賃上げ額を試算したところ、2万6千円という数字が得られた。

◆ 安倍内閣が進める「働き方改革」では、長時間労働の温存、不安定雇用の拡大、賃金低下圧力などが強まることが懸念される。本提言では、2020春闘の課題として、「働くルールの確立」(法令遵守)、「非正規雇用の正規化」、「最低賃金の1,500円以上への引き上げ」、「賃金要求2万5千円の実現」などを提案している。これに要する財源は60.1兆円であるが、それは2018年度内部留保額692.4兆円の8.7%に過ぎない。「働くルールの確立」に限れば、必要原資は13.7兆円で、17年度から18年度の内部留保積み増し分の55%ほどで実現できる。労働条件の維持・向上、国民生活改善のために内部留保を活用することは待ったなしの課題であり、それは日本経済の安定的な成長にも資するものである。