2019春闘提言
賃上げ、労働条件の改善こそ経済回復の道

2019年1月16日 労働運動総合研究所
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◆ 安倍首相は、折に触れて「景気は着実に回復している」と言い、“アベノミクス”の成果を強調しているが、安倍内閣6年間の平均GDP成長率は、民主党政権時代を下回っている。

◆ Gセブン7か国の経済成長率を比較すると、日本は下から3番目と低く、唯一、実質賃金がマイナスである。国際的にもアベノミクスの失敗は明らかである。

◆ とりあえず、安倍政権発足時まで生活を戻し、維持するだけで、7.16%、2万3044円の賃上げが必要になる。

◆ 格差拡大、貧困化が進む中で、各国は最低賃金の引き上げに努力しており、アメリカは、2018年に主要な州の最低賃金が時給10ドル(1132円)を超える。カナダ、イギリス、ドイツ、フランスも1200〜1300円に引き上げられ、2019年には、韓国が日本を上回る。

◆ 公務部門に、国と地方合わせて72.1万人(公務員全体の23.8%)の非正規労働者が働き、その多くは時給1000円以下、年収200万円未満である。政府は、民間企業の賃上げを言う前に、まず足元の労働者の労働条件を改善すべきである。

◆ 2018年6月に強行採決された「働き方改革関連法案」に含まれる「高度プロフェッショナル制度」は、政府・経団連がいよいよ労働時間規制の本丸に手を付けようするものであり、職場での阻止が重要である。

◆ 賃金の引き上げや労働条件の改善を行えば、企業の労務コストが上昇するが、やがて家計消費需要の増加を通じて企業にプラスとなって跳ね返ってくる。

◆ 労働総研が提起している労働者のための「働き方改革」(働くルールの確立)、非正規労働者の正規化、最低賃金の1500円への引き上げおよび2万5000円の賃上げを実施すると、59.5兆円の財源が必要になるが、それによって付加価値(≒GDP)が34.8兆円増加し、税収も6.35兆円の増収となる。GDPの増加34.8兆円は、2016年度のGDPの6.5%に相当するから、第2次安倍内閣発足後、平均1.14%であった経済成長率が6倍近くに加速されることになる。

◆ 2017年度に内部留保が667.3兆円に達した。従業員1人あたりでみると、全体で1581万円、資本金規模1千万円未満の企業でも214万円あり、財源は十分である。

◆ 賃上げおよび労働条件の改善は、労働者だけではなく、日本経済にとっても必要なのであり、それを実現するのは、労働組合の社会的責任である。