2017春闘提言
労働者のたたかいこそ展望を切り開く力

 ――安倍内閣の「働き方改革」と労働組合の社会的責任――

2017年1月17日 労働運動総合研究所
(全文→PDF)

◆ 安倍内閣が発足した2012年と2015年を比べると、株価や一部大企業の利益は上昇したものの、日本経済の安定成長もデフレ脱却も出来ず、労働者の生活は、一層悪化した。労働者の生活を安倍内閣誕生前の生活水準に戻すだけで2万円以上の賃上げが必要である。

◆ 安倍首相は、「働き方改革」と称して「同一労働同一賃金」、「長時間労働の是正」を掲げているが、政府・財界主導の「働き方改革実現会議」に任せておいたのでは、「同一労働同一賃金」が「同一労働同一低賃金」になり、「長時間労働の是正」は、金銭保証による解雇の自由化や「ホワイトカラー・エグゼンプション」の強要になりかねない。

◆ 同一労働同一賃金の前提として、まず、「これ以下で働かせてはならない」最低賃金をしっかり確立しておくことが必要である。仮に、時給1500円に引き上げたとしても、1か月21.7万円であり、単身者世帯の家計費がかろうじて賄われるにすぎず、決して日本の企業が支払えない金額ではない。

◆ 長時間労働の是正のためにまず実現すべきは、違法なサービス残業の根絶、年休の完全収得、週休2日制の完全実施による「働くルールの確立」である。

◆ 2万円の賃上げによって、家計消費需要が8.3兆円拡大し、国内生産が15.0兆円、付加価値(≒GDP)が7.1兆円増加する。それに伴って、新たな雇用が93.2万人必要になり、税収も国、地方合わせて1.4兆円の増収となる。最低賃金の引き上げ、非正規雇用者の正規化および「働くルールの確立」も、同様に国内生産の誘発等を通じて、日本経済を活性化する。

◆ 2015年度末の企業の内部留保は578.8兆円であり、しかも1年間に35.7兆円も増加している。財源は十分すぎるほどある

◆ 1人平均従業員賞与・給与および経常利益に対する企業税の比率が賃金ピーク時の1997年から変わらなかったとすると、この間の企業負担が318.9兆円増加する。内部留保の急増のほとんどは、従業員の犠牲と企業減税によりもたらされたと言える。

◆ 賃上げ・労働条件の改善は、客観的にみて、日本経済に必要な喫緊の課題であり、その実現は、労働組合の社会的責任である。他方、従業員の生活を保障し、社会が必要とする経費を負担することは、企業の社会的責任である。