2016春闘提言
「アベノミクス」を止め、政治・経済の転換を

 ――内部留保のこれ以上のため込みを止めれば、月5.9万円の賃上げが可能

2016年1月20日 
労働運動総合研究所
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◆ 安倍政権は、発足以来大胆な金融緩和、機動的な財政出動、規制緩和を「3本の矢」 とする「アベノミクス」によって経済成長戦略を進めてきたが、大企業や一部株主の利益が拡大したものの賃金はほとんど上がらず、設備投資も低迷して内部留保がさらに22.4%も増加した。デフレからの脱却も出来ず、名目経済成長率3%という政策目標の破綻が明らかになりつつある。

◆ 当研究所(労働総研)がかねてから主張してきた内部留保の活用による賃金・労働条件の改善が広く理解されるようになり、安倍首相や麻生財務相も「経済財政諮問会議」や「官民対話」の場で内部留保を活用した賃上げや国内設備投資の努力を経済界に要請した。政府・財界の思惑はともかく、客観的に見て、2016春闘には有利な風が吹いていると言える。

◆ 「アベノミクス」以降悪化した生活をその前まで戻し、流れを反転させるためには、6.13%、1万9224円の賃上げが必要であるが、蓄積された内部留保を取り崩すまでもなく、これ以上内部留保を増やさない経営に転換するだけで月5.9万円の賃上げが可能になる。もし2万円の賃上げであれば必要な原資はその3分の1であり、3分の2は設備投資や株式配当に回すことが出来る。

◆ 2013〜15年春闘の賃上げはほとんど中小企業に波及していない。労働者の圧倒的多数は未組織の中小企業に働いており、全体の底上げのためには、最低賃金の引き上げと働くルールの確立による労働条件の改善が極めて重要である。そのために必要な原資は25.83兆円であり、2014年度の内部留保額543.1兆円(全規模)の4.76%にすぎない。

◆ 賃上げ、労働条件の改善は企業に負担増をもたらすが、回りまわって企業の生産活動を活発にし、GDPや税収を増やす。産業連関分析によりその大きさを計測したところ、生活防衛に必要なベースアップと最低賃金の引き上げ、働くルールの確立および非正規の正規化によって、GDPが20.4兆円、税収が3.52兆円増加することが分かった。

◆ 2016春闘のもう一つの課題は消費税である。消費税は景気が悪くても、収入が減っても、失業しても確実に税金を取られる最悪の税制である。法人税を増税するとともに、大企業にまともな税金を支払わせることによって消費税を廃止すべきである。

◆ 安倍政権および大企業経営者と対決して生活改善を勝ち取り、さらに「安全保障関連法」廃止、憲法改悪反対などで広範に結集する多くの国民と力を合わせて「アベノミクス」を止め、政治・経済の転換をはかることは、労働組合の社会的任務である。