2015春闘提言
目先の利益ばかり追求する経営を改めさせ大幅賃上げを!

−内部留保をこれ以上増やさないだけで月11万円以上の賃上げが可能−

2015年1月7日
労働運動総合研究所
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◆ 当研究所(労働総研)は、かねてから溜まりすぎた内部留保を賃金・労働条件の改善に活用することが日本経済発展のカギであると主張してきた。近年、その主張が広く理解されるようになり、安倍総理も国会で「しっかりと(内部留保を)人材に充ててもらいたい」と答弁するに至った。しかし、内部留保の活用はいっこうに進まず、2013年度末には、GDPを27.8兆円も上回る509.2兆円に達した。

◆ 現在も内部留保は依然として増え続けており、1年間に42.8兆円も増加した。過去に蓄積された内部留保を取り崩さなくても、この原資を活用すれば、役員給与および株主配当を同率で引き上げたとして、1ヵ月11万円以上の賃上げが可能である。

◆ 内部留保は、税金、株主配当、役員給与等を全て支払った後の利益の蓄積であるが、本来、株主や従業員に配分されるべきものであり、多額の積み上がりは、資本主義であっても正常な経済の姿とは言えない。

◆ 2014年の賃金上昇率は1.4%であり、消費税増税分3%の影響(日銀推計によると2.0%)がカバーされていない。物価上昇と税・社会保険等の負担増から生活を防衛するためには、2015春闘において、少なくとも6.0%、1万8千円以上の賃上げが必要である。

◆ 日本には、残念ながらサービス残業や過密・長時間労働、低い年休取得率など、先進国と言えない恥ずかしい労働の実態がある。また、近年の非正規社員の増大がさらなる労働条件の悪化を招いている。これらの改善を目指すたたかいは、いま、とりわけ重要になっている。

◆ 賃上げ、労働条件の改善は企業に負担増をもたらすが、家計消費需要の拡大によって国内生産が誘発され、回りまわって企業の生産活動を活発にする。また、GDPや税収を増やす。産業連関分析により、その大きさを計測したところ、生活防衛に必要な最低限のベースアップと最低賃金の引き上げ、働くルールの確立および非正規の正規化によって、GDPが24.3兆円、税収が4.2兆円増えることが分かった。

◆ いくら首相が要請しても、経営者が率先して自社の賃金を上げることはない。鍵を握るのは労働者のたたかいである。2015春闘は、生活改善だけではなく、本格的なデフレ脱却、経済成長をめざすたたかいであり、労働組合の責任が問われる春闘と言える。