14春闘提言・内部留保の積み上げをやめ、大幅賃上げを

――これ以上増やさないだけで9.4%の賃上げが可能――

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2014年2月
労働運動総合研究所(労働総研)

 ◆当研究所(労働総研)は、かねてから内部留保の急激な増加が日本経済をデフレに陥らせた大きな原因であることを指摘し、溜まりすぎた内部留保を賃金・労働条件の改善および震災復興や赤字国債の削減等に活用すべきであると主張してきた。
 最近、その主張が広く理解されるようになり、安倍総理が経団連に対して「内部留保を溜めこむのではなく賃上げを」と要請するにいたった。

 ◆内部留保は、税金、株主配当、役員給与等を全て支払った後の利益の蓄積であるが、これまでの内部留保の異常なまでの積み増しをふまえれば、これ以上積み上げる必要はない。内部留保の巨額の積み上がりは資本主義であっても正常な経済の姿とはいえない。

 ◆2012年度末の内部留保は481.2兆円であり、長期不況の中にもかかわらず、後半の2000〜2012年度に184.6兆円も増加した。年平均15.4兆円の積み増しである。これ以上の積み上げをやめ、今後、内部留保に振り向けていた15.4兆円を賃金原資にして従業員に回すと、たとえ株主および成果を上げた役員にも同じ割合で還元したとしても、1ヵ月2万1355円、9.4%の賃上げが可能になる。つまり、現在の内部留保を取り崩さなくとも、これ以上増えないように経営を改めるだけで1カ月2万1355円の賃上げを継続して行うことができるのである。もちろん大企業と中小企業には相当の格差があるが、資本金1億円未満の企業でも、9088円、4.4%の賃上げが可能である。

 ◆内部留保活用による賃上げの難易度(容易度)を業種別に分析したところ、パルプ・紙・紙加工品製造業、化学工業、窯業・土石製品製造業、一般機械器具製造業、電気機械製造業、自動車・同部品製造業、その他の製造業、鉱業・砂利・採石業、電気業および不動産業の10業種は十分な内部留保を持っており、率先して賃上げを行うべきである。

 ◆消費税の増税に加えて社会保険料の引き上げ、震災復興のための所得税・住民税の増税等があり、家計を守るためには消費税3%増税の段階で4%、5%増税の段階では6%の賃上げが必要と試算される。財源は十分にあるのだから、労働組合は思い切った要求をすべきであろう。

 ◆しかし、政府から賃上げを要請されたとしても、経営者は「日本全体の賃金が上昇して内需が旺盛になってほしいが、自社の賃金は上げずに競争を有利にしたい」と考えるはずであり、企業別の交渉には限界がある。企業別の交渉を前進させるためにも、産別闘争への結集を強化し、全労働者の統一した要求と行動が重要である。