労働総研「提言・ディーセントワークの実現へ

 ――暴走する新自由主義との対抗戦略」発表にあたって

2013年4月25日 労働運動総合研究所


 1 労働総研は、2008年度総会で20周年記念事業として研究所プロジェクト「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」を推進することを決め、研究所の総力をあげて取り組んできた。このプロジェクトの目的は、新自由主義的構造改革路線によってすすめられた“雇用破壊”“社会保障破壊”のもとで、貧困と格差が増大し、労働者・国民の生きる権利=生存権が脅かされ、「デフレ不況」にみられる経済危機が深刻化する今日の状況をどう打開するのか、その課題を具体的に明らかにし、われわれがめざす社会像とその実現の道筋を明らかにすることであった。

 2 今回、本プロジェクトの最終報告としてまとめられた「提言・ディーセントワークの実現を――暴走する新自由主義との対抗戦略」は、「私たちの労働と生活を、日本国憲法とILO(国際労働機関)が提起するディーセントワーク(人間らしい働きがいのある仕事と生活)に近づけ」るための政策課題を明らかにしている。本提言は、単なる政策提言ではなく、労働者と労働組合が、自らの切実な要求を実現するたたかいを強めるなかで、21世紀の第1四半世紀(2025年頃)を目途に、提言の内容を実現しようという、たたかう労働組合・潮流への呼びかけでもある。

 3 提言は、雇用と社会保障の2つが基軸になっている。第1部は、雇用・賃金、労働時間など「雇用関連分野」、第2部は「社会保障関連分野」で、それぞれの改革の基本的視点と方向を提示している。その特徴は、雇用、賃金、労働時間、社会保障など各分野で提起されている課題が羅列的に提起されているのではなく、それぞれの課題が相互に関連・補完しながら、「人間的な労働と生活」を保障する力になることを明らかにしていることである。たとえば、安定した雇用を保障するためには、雇用をめぐる働くルールの確立だけではなく、労働時間をめぐるルールを確立し、労働時間を短縮することが雇用を創出することになること、あるいは、安定した雇用と賃金を引き上げることが社会保障の財源を確立するためにも重要な課題になっていることなど、「人間的な労働と生活」を実現することが日本経済の国民的な再生につながることが立体的に明らかにされている。「人間的な労働と生活」の実現とめざすべき社会像が一体となって提起されているのである。

 4 提言全体の概要は、下記・概念図のとおりである。

概念図

提言全文は、『〔提言〕ディーセントワークの実現へ―暴走する新自由主義との対抗戦略』として新日本出版社より刊行しています。