「提言・電機産業の大リストラから日本経済と国民生活を守るために」の発表にあたって

2013年1月 労働運動総合研究所

 労働総研は2013年1月30日、「提言・電機産業の大リストラから日本経済と国民生活を守るために」(全文・PDF)を発表した。労働総研として、電機産業の大リストラについて重視したのは、このリストラが労働者と国民経済に大きな禍をもたらすと考えたからである。
 電機の大リストラは、日本の産業基盤をなす電機産業を根底から破壊し、わが国製造業の衰退を決定的なものとする危険をはらんでいる。労働者には失業の増大、所得減少、労働市場の悪化がもたらされ、電機大企業に働く13万人のリストラにとどまらず、下請・関連企業に働く155万人もの就業者が生計の場を失う恐れがある。それは、地域経済はもとより、日本経済にも深刻な影響を与える。
 提言のポイントは、以下の3つである。

【電機産業衰退の真の要因はどこにあるのか】
 日本の電機産業の衰退には4つの構造的要因がある。(1)目先の利益だけを追求し、「リストラによる業績改善」を口実にした労働者犠牲の新自由主義的なアメリカ的経営の導入、(2)リストラによる生産の空洞化と生産技術やノウハウの海外流出、(3)アメリカの通商圧力と対米追随の経済政策のもとでのアメリカ資本の支配力の増大、(4)企業のリストラを容認し、企業の海外進出を支持する労使一体の労働組合の責任。

【電機産業の困難打開のための正しい“処方箋”はなにか】
 電機産業の困難を打開する“処方箋”は、(1)人間=従業員を大切にする経営への転換、(2)独創的で革新的な技術・製品開発と、消費者の生活と文化に根差した需要とを結びつけていく生産現場の構築、(3)外資による日本電機産業支配からの脱却と自主的発展、(4)大企業の社会的責任の追及と民主的規制、それを進める労働運動と住民運動の「共同」の前進、労働組合の労働者の権利擁護の取り組みの発展――にこそ求められる。

【電機産業の大リストラをやめさせる政策】
 提言の具体的施策は2部構成になっている。提言1は「リストラ・産業空洞化を許さず、雇用・地域経済を守る」。大企業の横暴なリストラをやめさせるために、現行法を活用し、雇用維持のための努力を義務づけ、その責任をはたさせると同時に、EU諸国で具体化されている「集団的整理解雇規制法」の制定を要求。あわせて、人権を無視した違法・脱法のリストラを阻止するために、雇用と人権を守る解雇規制法の制定を要求している。提言2は、「電機産業の展望は人と技術を大切にしてこそ切り開かれる」。(1)モノづくりを大切にし、日本ブランドの技術開発を推進するための研究・開発体制の構築、(2)労働者が安心してモノづくりと技術開発に従事できる労働環境の保障、(3)自然エネルギーの活用で「原発ゼロ」の日本に貢献する技術開発の先頭に電機産業が立つことの重要性を強調している。また、国内の雇用を守らず、海外に移転する企業に対する研究開発減税の停止、補助金支給の対象外にすることなどの具体的規制策も提起している。