【消費税増税による日本経済と雇用への影響についての試算】

消費税10%で、GDP2.5%低下、雇用100万人以上減少

(全文→PDF)

2012年2月20日 労働総研(労働運動総合研究所)

【消費税5%から10%への引き上げの影響について産業連関表を用いて試算】
 野田民主党政権は、「社会保障と税の一体改革」を、「際限なく先送りできるテーマではない。改革に不退転の決意で臨む」として、消費税を現行の5%から10%に引き上げようとしている。労働総研は、消費税の5%引き上げが日本経済と雇用にどのような影響を及ぼすことになるかについて、総務省から公表されている最新の「産業連関表」を利用して、定量的に明らかにした。
 なお、計算の前提として、次の2つの仮定をおいている。(1)消費税は、理論通りに実施されるものとし、益税や脱税等はなく、どの段階においてもスムーズに価格転嫁される。(2)消費税によって税収が増えるが、政府支出は増えないものとする。なぜなら、消費税を社会福祉に使うといっても、668兆円もの公債残高(2011年度末)がある中では、浮いた社会福祉費は借金返済にまわるだけで、政府消費が増えるはずはないからである。

【試算結果――日本経済を“奈落の底”につき落とす】
 日本経済への影響は、きわめて衝撃的なものになった。試算の結果は、第1表のとおりである。消費税の5%から10%への増税は、家計消費需要を13兆9180億円(2010年の家計消費支出278兆3510億円の5%)減少させる効果を持つ。それによって国内生産額が21兆2643億円、付加価値額が12兆2046億円減少し、GDPは2.53%減少することになる。その結果、労働量が、就業者ベースで157.5万人分、雇用者ベースでは114.9万人分失われることになる。それにともない、国・地方合わせて税収が2兆1660億円減少する。

第1表 消費税増税によるダメージ
実質家計消費支出の減少
139,180億円
国内生産の減少
212,643億円
付加価値(垂fDP)の減少
122,046億円
労働量の減少(就業者)
157.5万人
   〃    (雇用者)
114.9万人
税収(国・地方)の減少
21,660億円

【消費税増税をやめ、内需主導の経済成長こそ求められている】
 いま、求められているのは、全力を挙げた震災復興ならびに労働者・国民の生活向上を通じて、内需主導の力強い経済成長をめざすことである。それに逆行する消費税の増税は、日本経済の再生の道を閉ざし、日本経済を“奈落の底”に突き落とす結果になりかねない。