私が太良町へUターンしようときめたあと、最初の難関は土地の入手でした。そのあと、農業委員会の農地転用手続き、佐賀銀行太良支店を窓口とする住宅金融公庫の融資手続き、工事を引き受けてくれる業者の選定と建築の遂行---このような面倒な手続きを金沢に住みながら一年がかりで進めるのは、大変骨の折れることでした。
さいわい、これまでの経験から役所を相手にすることには慣れていたこと、信頼の置ける設計士さんに恵まれたこと、従兄弟が建設会社を経営していたこと、頼りにできる親戚が太良町にいたことなど好条件に恵まれ、6/9付け記事に書いたような家を新築することが出来ました。
この経験を通じて、とくに、遠方に家を作ることの大変さを実感しました。そして、この問題を解決すれば、太良町で家を新築する人が増える可能性もあると思いました。そのことについて、考えたことを紹介したいと思います。町の分譲地に申しこもうとしたが----
実は、最初から現在の場所に決めたわけではありません。
鹿島市の不動産屋に鹿島市内や太良町内の土地を見せてもらいました。太良町が大浦地区・野崎に分譲地を造成し、募集中だということで現地を見に行きました。有明海がよくみえる丘の上に分譲地が造成され、100坪で約400万円と金沢の地価からすれば夢のような安さでした。
「ここにしよう」と町役場に行ったら、応募資格は「町内在住者で40才以下の者」と限定されていました。町長にもあってこの制限をはずしたらと提案したのですが、「若者の定住対策」という趣旨は変わりませんでした。分譲地はあきらめて、さらに根気良くさがし、現在の場所にたどりついたというわけです。若い世代がどんどん町を離れ、人口が減少している町の現状から(1999年で転入258名に対して転出369名、100名以上の転出オーバー)、なんとか若者の町内定住をはかろう、そのためには格安の分譲地も提供しようという町の気持ちは良くわかります。
しかし、若者たちが所得を得る場、雇用の場はどうか。率直にいって、太良町も近くの鹿島市も不況と「構造改革」による地元産業・在来産業の衰退のなかで厳しい状況です。
「工場誘致〜雇用創出〜若者定住」という従来から考えられた方式とは別の地域振興策は考えられないのか-----課題はここにあると思います。私は、その一つは6/9付け記事でふれましたが多良岳産材のような地元の資源を活用して新しい産業を地元から起こしていくことだと思います。もう一つ、あります。それは、高齢化の進行を地域振興策として逆に利用することです。その一番の目のつけどころは、高度成長の時代、都市に集団就職して行った町内出身者が定年期、リタイヤする時期をむかえていることだと思います。これを、太良町としては最大に活用すべきだと思います。高度成長期、都市へ集団就職した町内出身者がリタイヤの時期をむかえている
「太良町史」にこんなことが書いてありました。
「高度成長期太良町からも多数の中学校卒業者が中京、近畿方面に集団就職した。これを激励するため町でははじめて1960年3月、多良中、大浦中の県外就職者を多良公民館にあつめて壮行会を開催した」(中巻 「学校教育編」)。わたしは、1956年3月に多良中学校を卒業したのですが、高度成長が始まったころで高校に進学したものをふくめて大量に都市に就職先を求めました。ちなみに1960年代はじめころといえば太良町の人口がピークにあったころで卒業生の数もピークに達していたころでしょう。1960年3月中学校卒業者は現在56才、そろそろ自分の老後を考える時期です。
私自身もUターン組の一人ですが、私の近所にも若い時期に大都市にいっていて数年前に太良町に戻ってきた方がいます。
太良町出身者でも都市に長く住んでいれば、その地方の人を結婚相手に選ぶ、子供たちははじめからその地方の住民として育つなど、その土地を簡単に離れることが出来ない事情が出てくるのは当然です。しかし、その一方で、中高年者を直撃するリストラ、住みにくくなった都市環境、自然愛好とカントリーライフ志向の増大などで老後を地方で暮そうという人が増えていることも事実です。
多良中学校と大浦中学校の卒業生でそろそろリタイヤを迎える人を100人ぐらい抽出して、老後の定住についてのアンケート調査をしてみたらどうでしょうか。
福祉主導型の地域経済への転換を
私の提案に対して、「若者でないとダメだ」「高齢者では労働力にならない」「町が年よりだけになる」などという声があるかもしれません。
若者が就職できる職場が町内や近隣にあればそれにこした事はありません。しかし、定年を迎えた人々をうけいれることは町の負担を増やすことになるのでしょうか。逆です。発想を転換して、これが新しい需要を生み出し、雇用拡大の源になるということに目をつけることが大切だと思います。
都市でサラリーマンを40年つとめた人が、定年で退職し、太良町へ家を新築して奥さんと2人で転入してきたと考えましょう。本人は当然厚生年金を受給し、奥さんも、専業主婦であったら国民年金を受給することになります。退職金もあるでしょう。
土地を購入し、家を建てます。そのお金が太良町へ落ちてきます。多良岳産材をつかい、地元の業者に発注すれば町内へ落ちるお金の割合はうんと大きくなります。まず、この事で町内の建設業関係者に仕事を増やす効果があります。よそからお金を持ってくるわけですから、太良町としては所得の純増になります。
つぎに、日常生活にお金をつかいます。食料品や衣料品その他の買い物に町内の商店やスーパーにいけば、町内の商店の売上がふえます。それは、商店主の収入の増加、スーパーの雇用の増加に結びつきます。
高齢者ですから病気をすることもあるし、介護保険のお世話になる時期も来ます。医療、保健、福祉、介護サービスの需要の増大が医療機関や福祉・介護施設の拡充を必要とし、新しい雇用の増大をもたらします。この数年の間に、町内にも高齢者のための福祉施設がいくつか出来ましたが、そこでは、若い、男女が新たに雇用され、働いていることからもわかるでしょう。
こんなふうにして、1年間に5世帯のUターンがあれば、5軒の家が立ちます。1世帯の一年間の消費を300万円とすれば、年間1500万円商店やスーパーの売上が増える事になります。医療や福祉関係のサービス需要が増え、ヘルパーさんや看護婦さんの雇用増につながって行きます。いま、求められている経済成長の方式は、かってのような「工場誘致」方式でもなく、現に自民党政権がやっているような公共事業依存の地域経済ではありません。むしろ、そのような方式からの転換が求められているのです。
私が石川県にいたころ、福祉への投資は土木部門の公共事業よりも経済効果・雇用効果は大きいことを石川県の産業連関表に基づいて明らかにし、話題になったことがありますが、佐賀県や太良町でもおそらく同じだと思います。私は、太良町が一日も早く「地域資源活用型」の地域経済、「福祉主導型」の地域経済に転換すべきだと思いますが、そのきっかけの一つはここにあると確信します。もちろん、外から人を呼び込むために町の施策を考えるのではありません。それでは、かっての「工場誘致型」となにも変わりません。大切なことは、現在町に住んでいる町民、とくに高齢者に住みやすい町づくりを進めることです。町民同志の暖かさと気配りがゆきとどいた町、福祉がゆきとどいた町、買い物や交通や役所の用事が便利な町、災害や犯罪の心配のない町、高い水準の文化や情報を享受できる町----こんな町づくりをすすめてこそ、町民が町を誇りにし、「太良はよかとこ。ぜひ、かえってこい」と都市にいる親戚や友人達にすすめることができると思います。
新しい智恵と文化をもってくる
太良町へUターンする人達はいろいろなものをもってきます。物を作る技術、各種の商品についての知識、パソコンを操作する技術、会社経営や経理のノウハウ、法律や行政の実務知識、いろいろなことを企画する能力。また、音楽、美術、文学、演劇など文化的な素養。これらが太良町の新しい町づくりに大きく貢献することは間違いないと思います。若いころ太良町をでて行った人達が、「ふるさとのためになにか尽くしたい」と思っている気持ちを最大限に生かすことが大切だと思います。
「支援チーム」をつくってゆきとどいた援助を
最初に書きましたが、わたしが苦労したのは、長年太良町をはなれていて土地さがしに苦労したこと、金沢に住みながらいろいろな手続きを進めたことです。このわずらわしさと困難から、せっかくその気持ちはありながらあきらめてしまう人もあるのではないでしょうか。
そこで、わたしは、町役場の担当部門、民間の不動産業者、銀行関係者、設計事務所、建設業関係者など土地取得と住宅建設、融資にかかわる人達で支援チームを作ることを提案したいと思います。そうすれば、土地の取得、農地法や建築基準法など役所の手続き、住宅金融公庫の融資、設計、業者の選定、施工などを遠方にいながら安心して進めることができると思います。多良中、大浦中卒業生へのPR
対象者へのPRは、多良中学校、大浦中学校の卒業生名簿を利用すれば難しくありません。パンフレットを郵送することができます。 太良町へのUターンが結果的に出来なかったにしても、都市にいる町内出身者との結びつきを保つことは太良町にとって大きくプラスすると思います。サッカーのように太良町の「サポーター」を全国的に組織したらどうでしょうか。そのひとつとして、5月の連休やお盆の時期に太良町へ帰省した町内出身者との懇親会なども開いたらいいと思います。また、東京や大阪で太良町出身者と懇親会をもつのもいいと思います。また、インターネットを利用した全国へのPR方法もあります。
太良町在住の方で私の提案に賛同する方があれば、勉強会も開いて、実行に移してみたいと思います。ご連絡ください。