![]()
私は、以前から、信用保証協会が毎月発行する「保証月報」を注意深く見ることにしています。信用保証協会の保証債務という限られた範疇ですが、地域経済の動きをつかむことが出来ます。
佐賀県信用保証協会の「保証月報」10月号を入手しましたので、これを見ながら、気がついたことをメモしてみたいと思います。不況の深刻化を反映---新規保証は減り代位弁済が増えた4〜9月期
まず、2001年4月から9月までの6ヶ月間の総括表は次のとおりです。
(金額の単位は100万円)
(佐賀県信用保証協会「保証月報」2001/10月号)項 目 2001/4〜9月 対前年同月比 件 数 金 額 件 数 金 額 保証申込(本年度中) 3,826 30,832 80.6% 64.0% 申込取消 469 4,532 115.8% 122.8% 保証承諾(本年度中) 3,482 27,379 80.6% 64.0% 償 還 3,543 38,722 90.5% 88.1% 保証債務残高 27,529 191,863 99.6% 96.5% 代位弁済(元金) 366 3,514 109.9% 123.2% この表は、今年の春以降急激に県内の景気が悪化してきたことを語っています。次のような特徴があります。
- 今年度にはいってから保証申込も保証承諾も件数で81%、金額で64%と急激に減少していることです。
- 保証申込件数は減っているのに、「申込取消」の件数がふえています。私が、石川県にいたころ、「銀行の了解がえられない」などの理由で、保証申込そのものを受け付けないということがあって民主商工会の皆さんといっしょに石川県信用保証協会と交渉したことが何度もありました。保証を申しこんだけれども「申込取消」という形で取り下げた件数が増えているのではないかと気になります。
- 保証債務残高も償還もともに減っています。しかし、保証債務残高の減少率以上に償還が減っているのが気になります。景気の悪化とともに償還がとどこっている業者が多くなっているのではないでしょうか。
- 代位弁済は昨年に比べて、件数も金額もふえています。これは、県内の11月までの倒産件数がすでに昨年の倒産件数をこえたということと一致しています。
県内の主要産業すべてで代位弁済がふえる
次に、産業別の資料を見てみましょう。
(金額の単位は100万円)
(佐賀県信用保証協会「保証月報」2001/10月号業 種 2001/4〜9月の
保証承諾保証債務残高(A) 2001/4〜10月の
代位弁済額(B)代位
弁済率
(B/A)件数 金 額 昨年
同期比件数 金 額 昨年
同期比件数 金 額 昨年
同期比製造業 509 4,140 56.2% 4,500 34,693 94.5% 32 316 46.7% 0.91% 農林漁業 4 20 59.2% 38 149 107.7% 1 2 - 1.61% 鉱業 8 157 72.6% 54 1,026 93.1% 2 16 - 1.54% 建設業 1,077 9,561 66.8% 7,055 52,263 95.5% 114 1,210 137.0% 2.32% 卸売業 260 2,923 62.8% 1,957 18,576 97.7% 20 400 888.0% 2.16% 小売業 789 4,778 57.4% 6,672 38,845 95.3% 129 831 115.5% 2.14% 飲食業 268 1,223 77.3% 2,325 9,305 96.8% 28 108 100.8% 1.16% 運送倉庫業 103 1,254 86.5% 825 8,756 99.0% 5 59 75.3% 0.68% サービス業 400 2,746 60.5% 3,621 24,159 100.2% 30 468 129.0% 1.94% 不動産業 46 528 78.6% 361 3,787 105.0% 5 136 2,448.0% 3.59% その他 18 50 139.7% 121 305 127.1% 0 0 - 0.00% 合 計 3,482 27,379 63.4% 27,529 191,863 96.5% 366 3,547 123.1% 1.85% 製造業の内部でどうなっているのか、主な業種について見てみます。
製造業のなかでの主な業種の詳細 (金額の単位は100万円)
(佐賀県信用保証協会「保証月報」2001/10月号業 種 2001/4〜9月の
保証承諾保証債務残高(A) 2001/4〜10月の
代位弁済額(B)代位
弁済率
(B/A)件数 金 額 昨年
同期比件数 金 額 昨年
同期比件数 金 額 昨年
同期比食品業 110 888 50.0% 786 6,818 97.8% 1 4 41.1% 0.06% 繊維品 19 165 33.7% 221 1,775 89.1% 0 0 0.0% 0.00% 木材・木製品 21 146 35.6% 232 1,735 87.7% 4 31 729.3% 1.77% 家具・建具 21 125 34.2% 241 1,688 86.5% 1 16 13.0% 0.92% 窯業 84 742 69.6% 842 6,662 94.2% 10 188 74.6% 2.83% 機械 45 486 55.0% 285 3,426 95.2% 0 0 - 0.00% 電気機器 20 289 144.5% 174 1,521 99.9% 0 0 - 0.00% 金属 27 249 55.6% 305 2,600 95.5% 1 1 24.6% 0.04% 産業別・業種別の表から気がつくのは次のような点です。
- 製造業の2001/4〜9月期の保証承諾が昨年同期比56.2%で、全産業平均の昨年同期比63.4%にくらべて低いことにまず気がつきます。新規の融資申込が激減するほど長期の不況ですでに体力を消耗しているのでしょうか。
- 製造業のなかで、「電気機器」業が昨年同期に比べて144.5%と新規の保証承諾を増やしています。これは、今年になってからIT関係の生産が急激に落ち込んだことと関係しているのではないかと思います。
- 建設業、卸売業、小売業、飲食店、サービス業、不動産業では、代位弁済額が昨年同期を越えています。製造業が落ちこんだあとを、建設業、商業・サービス業でカバーするといわれていましたが、それらの産業も長期にわたる消費購買力の低下のなかで持ちこたえることが出来なくなったことをあらわしているのではないかと思います。
地場産業、観光地域での深刻な状況
全市町村を紹介する表の掲載は割愛しますが、気がついた主な点を紹介します。
- 有田町、伊万里市など窯業を主な地場産業とする地域の代位弁済額が昨年同期に比べて格段に高くなっています。有田町の場合、代位弁済件数は38件、代位弁済額は412百万円、昨年同期比297.6%です。伊万里市はそれぞれ、29件、296百万円、264.5%です。とくに、有田町の「代弁率」(代位弁済額を保証債務残高で除した率)は、4.09%という高さになっています。この地域で倒産旋風が吹き荒れていることがわかります。
- 次に目に付くのは、武雄市、嬉野町など温泉と観光の町です。武雄市の場合、代位弁済件数25件、代位弁済金額187百万円、昨年同期比485.8%です。嬉野町の場合はそれぞれ、13件、414百万円、1600.7%です。とくに、嬉野町の代弁率7.70%というのは、大型の倒産に見まわれていることを語っています。
金融機関種類別のまとめ
金融機関の種類別にまとめたのが次の表です。
(佐賀県信用保証協会「保証月報」2001/10月号
(金額の単位は100万円) 金融機関の
種類2001/4〜9月の
保証承諾保証債務残高(A) 2001/4〜10月の
代位弁済額(B)代位
弁済率
(B/A)件数 金 額 昨年
同期比1件平均
(万円)件数 金 額 昨年
同期比件数 金 額 昨年
同期比都市銀行 13 237 101.9% 1,823 145 1,612 72.6% 1 130 157.0% 8.64% 地方銀行 2,021 16,281 64.7% 806 15,146 109,917 98.6% 166 1,688 113.3% 1.54% 第2地銀 563 4,436 60.6% 788 4,099 29,788 95.6% 88 841 210.1% 2.82% 信用金庫 595 4,638 65.3% 779 5,317 32,725 93.8% 78 646 106.2% 1.97% 信用組合 276 1,542 54.7% 559 2,474 12,805 93.4% 30 211 84.9% 1.65% 政府系 14 246 43.2% 1,756 347 4,968 91.8% 3 32 63.5% 0.64% 農協組合 0 0 - 0 1 47 - 0 0 - - 合 計 3,482 27,379 63.4% 786 27,529 191,863 96.5% 366 3,5447 123.2% 1.85% 金融機関にとって信用保証協会の保証付きの債権は、融資先が倒産しても信用保証協会が代位弁済してくれる優良な債権です。
数年前のことですが、「貸し渋り対策」として全体で20兆円枠の「特別保証」が実施されたことがあります。このとき、金融機関が既往の融資を「特別保証」がついた融資に切り替えるということが全国的におこり、問題になったことがあります。
こういう点を頭に入れながら、金融機関の種類別の表を見ると気になることがいくつかあります。
- まず、代位弁済額の前年同期比をみると、第2地銀関係が突出していることが気になります。全体の平均で123.2%ですが第2地銀は210.1%とダントツです。また、代位弁済した件数の保証債務残高のある件数に対する割合---代位弁済件数比率といったらいいでしょう---は、全体の平均では1.33%ですが、第2地銀の場合は2.15%です。第2地銀が融資していた中小企業の倒産率が高かったのか、金融庁の指導による「不良債権の最終処理」が第2地銀で急速に進んだ結果なのか、ここのところが気になります。
- 金融機関の種類別の2001/4〜9月期の保証承諾件数を保証債務残高のある件数と比較してみました。地銀13.3%、第2地銀13.7%、信用金庫11.2%、信用組合11.2%です。全体として、昨年同期にくらべて新規の保証承諾は減っていますが、その中でも、経営規模の小さい信用金庫・信用組合の方が新規の保証承諾の割合を減らしています。なぜなのか、気になるところです。
この表では、保証承諾1件あたりの金額を計算してあります。
この表を見ると、信用保証協会の保証という枠のなかですが、都市銀行→地銀→第2地銀→信用金庫→信用組合という順に1件平均の保証承諾額(金融機関の融資額)が並んでいるのに気がつきます。
地域の中小企業、零細企業のなかで信用金庫・信用組合が存在する意味がここにあるような気がします。そんな役割を果たしている信用金庫・信用組合を金融庁が杓子定規の検査によって全国各地で破綻に追いこんで入ることは本当に許せないことです。自治体と金融機関の出捐金、負担金の増額で県信用保証協会の基盤強化を
朝日新聞が九州・山口の信用保証協会の代位弁済が過去最高になったと報道していました。(11/18付け)。代位弁済が増えてきたことで、各県の信用保証協会が「保証渋り」することが危惧されます。
しかし、考えてみれば、こんな未曾有の不況の時、しかも、政府が先頭に立って「不良債権の最終処理」---企業にとっては倒産---を推進しているときです。代位弁済が増えてきたのは、ある意味では無理からぬことだと思います。
「代位弁済がふえたから」と保証しぶりをするようになったら融資で救える中小企業もつぶしてしまうことになるのではないでしょうか。私は、こういうときだからこそ、県信用保証協会の財政基盤を強化し、中小企業の支えとすべきだと思います。とくに、金融機関は、信用保証協会の保証のついた債券は優良な債権とみなされること、仮に融資先から回収できなくとも信用保証協会が代位弁済してくれること(2001/4月から9月までの間に35億円余)を考えたらその負担金はもっと引き上げてしかるべきでないかと思います。県や市町村の出捐金を増やすべきことも当然です。
各県の信用保証協会が保険をかける先である「中小企業信用保険公庫」の財政基盤も政府の責任で強化すべきです。
以上