評論・佐賀と太良

90年代大型化していった公共事業

佐賀県内の公共事業@

2001年11月7日補足

 6/20付けの記事「最近の佐賀県経済の悪化、県民の暮しについての資料」で「県内でも公共事業の大型化、中小規模の公共事業への大手ゼネコンの割りこみで中小規模の建設業が受注機会をせばめ、低単価で下請けを余儀なくされているのではないか」と書きました。
 そのことを検証するため調査してみました。資料不足のため十分ではありませんが、明らかになったことを順次紹介していきたいと思います。 


第1章 大型化し、雇用効果を低下させてきた県内公共事業

 規模が大きくなれば雇用労働者がへる公共事業

 総務省統計局が毎年発行している「日本の統計」に公共事業についての興味深い統計が載っています。
 その一つは、公共事業の規模別の雇用効果についての統計です。この表によると、公共事業の規模が大きくなるほど工事費100万円あたりの雇用労働者数は少なくなっています。  

総工事費評価額規模別の雇用効果(1999年度)
工事規模の区分(千円) 工事一件の平均評価額(1000円) 総工事費100万円あたり労働者数(人)
1,000 〜 4,999 2,516 21
5,000 〜 9,999 7,253 19
10,000 〜49,999 25,853 16
50,000 〜 99,999 71,157 14
100,000 〜 499,999 194,331 11
500,000以上  1,370,672 10
(「日本の統計(2001年版)」)

総工事費評価額とは
建設業者が工事を請け負った時点での総工事費で@請負契約額、A直営工事額、B発注機関から無償で材料を支給された場合その材料の評価額の三つの合計。着工時点での金額で、実際にかかった工事費ではない。
 

 国全体として公共事業が大型化

 次の表は、国、都道府県、市町村、公団等をふくめた公共事業の規模別推移をそれぞれ件数と金額(着工総工事費評価額)についてまとめたものです。「500万円〜1000万円未満」などとあるのは、一件あたりの工事費が500万円以上・1000万円未満の工事という意味です。これによると、件数、金額ともに1000万円以下の小規模な公共事業は減り、1億円以上の大型のものが増えていることがわかります。

全国の公共事業の規模別推移(件数)
年度 合  計 100万円 〜 500万円未満 500万円 〜 1000万円未満 1000万円 〜 5,000万円未満 5,000万円 〜 1億円未満 1億円 〜 5億円未満 5億円以上
件数 件数 件数 件数 件数 件数 件数
1994年度 423,267 125,032 29.5% 69,429 16.4% 163,079 38.5% 37,392 8.8% 24,630 5.8% 3,703 0.9%
1995年度 404,603 106,101 26.3% 60,431 15.6% 164,814 40.8% 40,314 10.0% 28,167 7.0% 4,177 1.0%
1996年度 311,201 79,669 26.6% 43,825 14,1% 124,110 39.9% 34,813 11.2% 24,895 8.0% 3,848 1.2%
1997年度 310,525 87,316 28.1% 44,473 14.3% 115,346 37.1% 35,345 11,4% 24,296 7.8% 3,749 1.2%
1998年度 299,206 75,721 25.3% 38,536 12.0% 115,475 38.6% 39,042 13.0% 26,751 8.9% 3,682 1.2%
1999年度 290,472 77,381 26.6% 39,892 13.7% 108,449 37.3% 36,040 12.4% 25,360 8.7% 3,350 1.2%
(国土交通省「建設統計月報」より作成)

全国の公共事業の規模別推移(金額・単位10億円)
年度 合  計 100万円 〜 500万円未満 500万円 〜 1000万円未満 500万円 〜 1000万円未満 1,000万円 〜 5,000万円未満 1億円 〜 5億円未満 5億円以上
金額 金額 金額 金額 金額 金額 金額
1992年度 18,325 392 2.1% 599 3.3% 4,443 24.2% 2,595 14.2% 4,627 25.2% 5,669 30.9%
1993年度 19,758 431 2.2% 634 3.2% 4,988 25.2% 3,065 15.5% 5,403 27.3% 5,236 26.5%
1994年度 17,556 331 1.9% 507 2.9% 4,053 23.1% 2,638 15.0% 4,740 27.0% 5,284 30.1%
1995年度 19,216 376 1.4% 441 2.3% 4,239 22.1% 2,881 15.0% 5,518 28.7% 5,861 30.5%
1996年度 16,327 204 1.3% 321 2.0% 3,200 19.6% 2,486 15.2% 4,925 30.2% 5,190 31.8%
1997年度 15,877 222 1.4% 322 2.0% 2,952 18.6% 2,522 15.9% 4,775 30.1% 5,083 32.0%
1998年度 16,604 193 1.2% 282 1.7% 3,009 18.1% 2,763 16.8% 5,233 31.5% 5,097 30.7%
1999年度 15,372 195 1.3% 289 1.9% 2,804 18.2% 2,565 16.7% 4,928 32.1% 4,592 29.9%
(国土交通省「建設統計月報」より作成)

 その結果、公共事業の雇用効果はどうなったでしょうか。工事一件あたりの平均工事費は大きくなり、工事費100万円あたりの労働者数は年ごとにへっています。

全国の公共事業件数と雇用効果
年度 工事件数 労働者就業予定数(1000人> 工事一件の平均評価額(1000円) 総工事費100万円あたり労働者数(人)
1990 504,330 296,756 28,958 20
1994 423,269 288,339 41,476 16
1995 404,003 300,250 47,565 16
1996 311,201 245,676 52,460 15
1998 299,206 197,534 55,493 12
1999 290,472 195,264 52,922 13
(「日本の統計」)

労働者就業予定数とは
公共事業の積算で人件費として見積もられた労働者数。実際に雇用された労働者数ではない。

 この表は、一件あたりの規模が大きくなってきたこと、公共事業100万円あたりの労働者数は急激に減少してきたことを示しています。その結果、国全体として公共事業費が急激に増えた1990年代前半も雇用はさほど多くは増えていません。公共事業費の増加がとまった90年代後半は雇用全体が急激に減少しています。自民党政府が「景気対策」と称して大型プロジェクト中心の公共事業をふやしたが景気回復につながらなかった要因の一つはここにあります。

 佐賀県でも公共事業の大型化・雇用効果減少が

 佐賀県はどうなっているのでしょうか。総務省統計局編の「日本の統計」各年版をもとに作成したのが次の表です。

佐賀県内の公共事業の規模と雇用効果の推移
年度 工事件数 請負契約高(億円) 労働者就業予定数(1000人) 工事一件の平均評価額(1000円) 総工事費100万円あたり労働者数(人)
1990 8,425 1,341 3,549 15,944 26
1992 9,160 1,814 4,020 19,805 22
1993 11,163 2,193 4,542 19,642 21
1994 7,691 1,977 3,867 25,720 20
1995 6,819 2,090 4,013 30,668 19
1996 4,804 1,516 2,698 31,563 18
1997 4,647 1,682 2,369 36,200 14
1998 4,745 1,666 2,459 35,134 15
1999 4,585 1,596 2,367 34,798 15
(「日本の統計」)

 この表から次のことがわかります。

  • 佐賀県でも1990年代半ばから公共事業一件あたりの規模が大きくなり、公共事業費100万円あたりの労働者数が急激に減少していることです。
  • これにともなって、公共事業全体が雇用する労働者数も急激に減少していることです。とくに、1996年から99年の推移を見ると、建設産業での雇用の悪化が公共事業費の削減でなく公共事業の大型化によることがわかります。
     1996年から99年にかけて請負額には大きな変動はありませんが一件あたりの工事規模が大きくなり、それにしたがって工事費100万円あたりの労働者数が18人から15人に減少しています。その結果、佐賀県全体で公共事業での雇用労働者数(見積もり)が延べ33万人分も減少したのです。これは、年間250日就労するとして約1300人の雇用削減に相当します。
  • 工事件数も急激に減少していることです。これは、建設業者間の競争の激化、中小建設業者の分野へのゼネコン、大手の進出をあいまって中小建設業者に大きな苦しみを与えました。(これについては、次の項でふれたいと思います)

 どうして公共事業の規模が大きくなったのか

 なぜ、公共事業一件あたりの規模が大きくなったのでしょうか
  1990年代にはいってから、全国いたるところで巨大プロジェクトがおこなわれましたが、佐賀県でも同様のことがおこなわれました。そこで、ダム建設、佐賀空港建設、吉野ケ里歴史公園整備という三つの大型プロジェクトが県の各年度の普通建設事業費(いわゆる公共事業費)のなかでどれほどの割合をしめているか調べ、その推移を県内公共事業一件あたりの金額などと比べてみました。なお、ここに出ている数字は県予算に計上された金額で、国、市町村分は含まれていません。

佐賀県の大型プロジェクトの推移

年 度 県普通建設事業費 3つのプロジェクト 小計 B/A 県内全公共事業平均
A
(億円)
ダム建設
(億円)
佐賀空港
(億円)
吉野ケ里歴史公園
(億円)
B
(億円)
一件あたり工事費(1000円) 100万円あたり労働者数(人)
1993年 208,449 5,500 4,527 150 10,177 4.9% 19,642 21
1994年 215,444 5,851 5,413 330 11,594 5.5% 25,720 20
1995年 202,679 5,053 5,582 1,879 12,514 6.2% 30,668 19
1996年 181,509 6,454 7,485 2,210 16,149 8.9% 31,563 18
1997年 175,315 7,210 7,798 3,384 18,392 10.5% 36,200 14
1998年 190,226 15,177 0 2,483 17,660 9.3% 35,134 15
1999年 172,329 11,411 0 0 11,411 6.6% 34,798 15
(「佐賀県・土木行政概要」)

ダム建設は
公共事業のうち「ダム対策事業費」、単独事業のうちの「ダム対策事業計」を算入
佐賀空港は
公共事業のうち「空港建設事業費」、単独事業のうち「空港建設事業」を算入
吉野ケ里歴史公園は
公共事業のうち「吉野ケ里歴史公園整備費」を算入

 この表をみると、ダム建設、佐賀空港、吉野ケ里歴史公園という三つのプロジェクト関係費が県の普通建設事業費にしめる割合の推移と県内の全公共事業の一件あたり規模と工事費100万円あたり労働者数の推移がぴたりと一致しています。
 この時期に行われた大型公共事業の典型として三つのプロジェクトの名前をあげましたが、1990年代半ば以降、このような大型プロジェクトが県内でもあいついでおこなわれたことが公共事業費の規模を全体として大型化し、工事費100万円あたりの労働者数を減少させていった最大の要因ではないでしょうか。
 (吉野ケ里歴史公園は大型プロジェクトの例としてとりあげたもので、事業そのものの評価とは関係ありません)

  

以下、次ページにつづく


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