佐賀銀行の2001年度中間決算についての資料が11月28日に発表されました。
銀行・金融業務は私にとって畑違いの分野で、不十分なことは承知していますが、決算資料を見ながら小泉内閣の「不良債権の早期最終処理」の政策のもとで、佐賀銀行では「不良債権」の処理がどのように行われているのか、それが地域経済にどのような影響を与えているのか調べてみたいと思います。佐賀銀行の今期の出発点
まず、佐賀銀行は今期(2001年4月からの期)をどのような状況で出発したのでしょうか。
2001年3月期の決算では、いわゆる「不良債権」(金融再生法にもとづく「開示債権」で@破産厚生債権およびこれに準ずる債権、A危険債権、B要管理債権の三種類を含む)は、総額94,781百万円で、債権総額の7.19%を占めていました。
佐賀銀行は中期経営計画(2001.4.1から発足)では、3年間で約230億円の不良債権処理を計画していました。「不良債権処理」問題ではここであげた金融再生法にもとづく分類の他に、金融庁の「金融検査マニュアル」にもとづく債権分類(自己査定)があります。この二つを対照してみると、次のとおりになるのではないかと思います。
佐賀銀行の債権分類<2001年9月末現在 単位は100万円) (佐賀銀行2001年度中間決算資料による)
金融検査マニュアルにもとづく債権分類(自己査定) 金融再生法開示債権 分類 金額 構成比 分類 金額 構成比 正常債権 921,262 69.8% 正常債権 1,192,301 90.3% 要注意債権 309,656 23.4% 要管理債権 38,616 2.9% 不良債権
128,229 9.7% 最終処理対象債権
89,613
6.8% 破綻懸念先債権 53,611 4.1% 危険債権 53,611 4.1% 破綻先・実質破綻先債権 36,002 2.7% 破産厚生債権およびこれに準ずる債権 36,002 2.7% 債権合計 1,320,531 100.0% 債権合計 1,320,531 100.0% 新聞などでよく見る「不良債権」というのは、「金融再生法」」にもとづくもので、「要管理債権」、「危険債権」、「破産厚生債権およびこれに準ずる債権」の合計をさします。
一方、金融マニュアルにもとづく債権分類は、金融機関の経営に直結した分類で、「破綻先債権」、「実質破綻先債権」、「破綻懸念先債権」の3種類を「最終処理対象」としています。佐賀銀行の決算資料では、これに、「要注意先債権」を加えて「不良債権・問題債権」とよんでいますが、佐賀銀行の債権全体の30.2%を占めています。3年計画を1年で達成するほど急ピッチで行われた不良債権処理
2001年9月末までの半年間で、佐賀銀行が実際に行った不良債権処理額は24,476百万円です。
「中間決算短信」では「今年度下期でさらに40億円程度の処理を行い、これによって中期経営計画で想定した3年間合計の不良債権処理額約230億円程度の大部分が前倒しで処理されるものと考えます」と述べています。
当初の3年計画を1年で達成する急ピッチで不良債権処理をおこなっています。
24,476百万円という処理額を要因別にみると次のようになっています。
処 理 要 因 金額(億円) イ、債権の判定厳格化(判定区分の変更)によるもの 128 ロ、業績悪化によるもの 71 ハ、引当率の引き上げによるもの 36 ニ、担保価値の下落によるもの 9 合 計 244 この表を見ると、「業績悪化によるもの」と「担保価値の下落によるもの」(その原因自体不況によるものだと思いますが)は、合計80億円で全体の32.8%にすぎません。残りの67.2%は、政策的な要因です。
「債権の判定厳格化(判定区分の変更)」は、これまで「要注意債権」と判定されていたものを「破綻懸念債権」とよりきびしく判定しなおすことです。
これについて、佐賀銀行の決算資料は「より厳しい判定や早急な処理に対する要請が強まってきています」と小泉内閣・金融庁の強力な「指導」があったことを示唆しています。
「引当率の引き上げ」は、金融庁の「金融検査マニュアル」によるものです。
金融庁が決定した金融検査に対する業務方針である「金融検査マニュアル」は、貸し倒れリスクに応じた引当金を積むように指導しています。
「債権の判定厳密化(判定区分の変更)」で、「破綻懸念債権」など貸し倒れリスクの高い債権が増えれば増えるほど、引当金の積み増しをしなければなりません。この結果、数十億円にのぼる新たな引当金の積み増しを求められた全国の信金・信組の中には、資金の捻出が出来ず破綻に追い込まれるケースが相次いでいます。
佐賀銀行は、従来82.0%であった「破綻懸念先債権」に対する個別貸倒引当金の引当率を96.4%に引き上げています。
この結果、 佐賀銀行の「個別貸倒引当金」は、2001年3月末で28,012百万円でしたが、2001年9月末には、45,863百万円にふくれあがっています。金融庁の「指針」によって、半年間で17,851百万円の引当金の積み増しを余儀なくされたわけです。
これが、主な原因となって佐賀銀行は、2001年9月の中間決算は赤字決算になっています。「債権の判定厳密化」「引当率の引き上げ」はいずれも、小泉内閣の「不良債権早期処理」の方針によるものです。
また、「大手銀行における不良債権の最終処理を急ぐ動きが私どもの融資先に及ぼす影響についても留意する必要が出てまいりました」と不良債権の最終処理を急ぐ大手銀行の動向にも影響されたことを決算資料は述べています。
金融庁の「特別検査」など直接的には大手銀行を対象とした施策が、大手銀行の行動を通じてたちどころに地方銀行に影響を及ぼしていることはこのことからも明らかです。急ピッチで進む佐賀銀行の不良債権最終処理
以上のべた「不良債権処理額」は、佐賀銀行が不良債権を損金として処理した金額のことです。
小泉内閣が要求している「最終処理」とは、不良債権を決算書(貸借対照表=バランスシート)から落とすことです。
方法としては、@法的処理、A債権放棄、B整理回収機構(RCC)などへの売却のいずれかの方法をとることになります。 佐賀銀行の場合、2001年4月から9月末までの半年間の最終処理額は、7,257百万円になっています。債権放棄はなく、ほとんどが「債券売却等」で処理しています。
昨年1年間の最終処理額は8,070百万円ですから、その9割を半年で達成したことになります。「最終処理」も急ピッチで進んでいるわけです。「最終処理」以上に増えた新規の「不良債権」
佐賀銀行の2001年3月末の不良債権額は94,781百万円でした。
4月から9月末までの間に7,257百万円の最終処理をしたのですから、不良債権額は減っているはずです。
ところが、2001年9月末で不良債券額は逆に128,230百万円にふえています。これは、この間に39,308百万円の不良債権が新たに増えたからです。
これを、2001年3月末との対比で見てみたいと思います。
佐賀銀行の全債権中にしめる「不良債権」の割合ががわずか半年の間に7.2%から9.7%へと2.5ポイントも高くなっています。
佐賀銀行の債権分類の推移(A) 金融再生法開示債権にもとづく分類による。単位は100万円 (佐賀銀行決算資料より)
分類 2001年3月末 2001年9月末 金額 構成比 金額 構成比 正常債権 1,223,898 92.8% 1,192,301 90.3% 要管理債権 34,887 2.6% 不良債権 94,781 7.2% 38,616 2.9% 不良債権 128,229 9.7% 危険債権 26,664 2.0% 53,611 4.1% 破産厚生債権およびこれに準ずる債権 33,229 2.5% 36,002 2.7% 債権合計 1,318,679 100.0% 1,320,531 100.0% 佐賀銀行自身が貸出・債権をどのようにどのように処理しようとしているのかをズバリ示しているのが、金融検査マニュアルにもとづく債権分類・自己査定といわれる次の表です。
佐賀銀行の債権分類の推移(B) 金融検査マニュアルにもとづく債権分類による。単位は100万円 (佐賀銀行決算資料より)
分類 2001年3月末 2001年9月末 金額 構成比 金額 構成比 正常債権 951,246 72.1% 921,262 69.8% 要注意先債権 307,540 23.3% 309,656 23.4% 破綻懸念先債権 26,664 2.0% 最終処理対象債権 59,883 4.5% 53,611 4.1% 最終処理対象債権 89,613 6.8% 破綻先・実質破綻先債権 33,229 2.5% 36,002 2.7% 債権合計 1,318,679 100.0% 1,320,531 100.0% この表では、「破綻債権」、「実質破綻債権」、「破綻懸念先債権」をあわせて「最終処理対象債権」としています。前にも触れましたが、@法的整理、A債権放棄、B整理回収機構などへの売却のいずれかの方法によって「最終処理」の対象となるものです。
最終処理対象債権は、この半年間で、約300億円もふえています。
「より厳しい判定や早急な処理にたいする要請がつよまって」(佐賀銀行決算書)きたなかで、「要注意先債権」のなかから「破綻懸念先債権」へ判定しなおす作業がおこなわれたのです。
10/26付けの「朝日新聞」は、栃木県の足利銀行に対する金融庁の検査の模様を書いています。
「金融庁の検査が入ったのは5月中旬。1ヶ月以上にわたる検査の結果、金融庁は不良債権処理の大幅な上積みを求めた。関係者によると『要注意先 』などに区分されていた融資先のうち赤字が続いているような場合、『要管理先 』や『破綻懸念先 』に移して引当金を積み増しするよう厳しく指導されたという」。
同じような光景が佐賀銀行でもあったのではないかと想像されます。
竹中平蔵経済財政担当相は、10月21日のテレビ番組で「不良債権のあぶり出しをしっかりやるべきだ」と語っています。
このような「あぶりだし」が「不良債権」を次から次へと生み出しているのではないでしょうか。佐賀銀行の不良債権最終処理と佐賀県経済の関係
佐賀銀行のこのような不良債権処理、とくに金融庁の指針による判定区分の変更や貸し倒れ引当金の積み増しが県内の経済に大きな影響を与えていることは間違いありません。
佐賀銀行の決算資料では、佐賀銀行は2000年度中に8,070百万円、2001年度4月〜9月期には、7,257百万円の不良債権を「最終処理」をしたと報告されています。佐賀銀行の貸出しはもちろん県内だけに限られていず、個人向けの貸出しもありますが、70〜80億円の債権の最終処理とはどれくらいの規模でしょうか。
佐賀県信用保証協会の「保証月報」によれば、佐賀銀行の一件あたりの保証債務残高は平均683万円、今年に入っての新規の保証承諾額は平均757万円です。企業の場合1社で何件もの借り入れしている場合がほとんどだということを前提にしても、70〜80億円の債権というのは1000件前後の貸出しに相当します。
ちなみに、佐賀県信用保証協会の代位弁済が多くなったということが新聞でも報道されていましたが、今年4月から9月末までの間に県信用保証協会がおこなった代位弁済は全部あわせて、366件、金額にして3,547百万円です。この倍ほどの規模だと見ていいのではないでしょうか。今年に入ってからの県内の企業倒産は(負債額1000万円以上)は、11月で136件、すでに昨年1年間の135件を上回っています。これは、この10年間で最悪の数字です。
136件の倒産と佐賀銀行の「最終処理」がどのように関係しているかは個別的にはわかりませんが、銀行の「不良債権最終処理」が日本中で中小企業の倒産やリストラを促進していることは、新聞でも報道されているとおりです。佐賀県内でも同じ状況ではないでしょうか。不良債権最終処理の強要はやめるべきだ
小泉内閣の政策によって「不良債権」が増やされていること、金融機関が引当金の積みましを押しつけられていることが佐賀銀行の2001年9月決算資料で明らかになりました。
引き当て金の積み増しは、それが原因で佐賀銀行が9月期を赤字決算したように銀行の経営にとって大きな重荷になっています。この重荷から逃れるためにも佐賀銀行は「最終処理」を急ぐと思われます。
小泉内閣の「改革工程表」では、「今後、2〜3年以内に不良債権を最終処理し、遅くとも3年後には正常化」といっているように、「不良債権の最終処理」は、これから本格化しようとしています。これまで以上に中小企業の倒産を急増させ、リストラ促進を通じて、失業を一層増やすことは明らかです。
佐賀銀行の「最終処理対象債権」は2001年9月末現在で900億円近くになります。
900億円近くの「最終処理対象債権」を3年間で最終処理するということは、これまでの数倍のスピードで最終処理をするということです。
これが、県内でどれほどの倒産と失業を生み出すか、想像を絶するものがあります。
小泉内閣の間違った政策はすぐに改めるべきです。
以上
- 追記
- 12/28のニュースで、石川銀行が破綻申請したことが報道されていました。金融庁の検査で引当金の大幅な積み増しを求めれらていたようだと報道されています。
石川銀行は、私が石川県にいたときなじみだった銀行です。銀行、信金・信組が次々とつぶされて行く小泉内閣・金融庁のやり方に心から怒りを覚えます。
県内の地元金融機関を守っていかねばと思います。(12/29)