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2024年杉並区議会第一回定例会 予算特別委員会 意見開陳(山田耕平) |
(1)はじめに 日本共産党杉並区議団を代表して、令和6年度・杉並区各会計予算と付託議案に対する意見を述べます。 ・1月1日に発生した能登半島地震を受けた対策強化、物価高騰等の区民と取り巻く状況 2024年1月1日、能登半島地震が発生しました。 杉並区の来年度予算編成において、能登半島地震を受け、住民の命とくらしを守る震災対策の抜本強化と対策の総点検が求められています。 また、長引く物価高騰は、住民生活と区内事業者の営業に重くのしかかっています。物価高騰から住民生活を守るための対策も、喫緊の課題です。 ・予算審査の姿勢と予算案に対する賛否 こうした社会情勢のもと、岸本区政の来年度予算が震災対策の抜本強化や、長引く物価高騰から住民の命と生活、営業を守る予算となっているか、自治体の責務である福祉の増進に力を入れた予算になっているか、前区政の歪みを正し住民参画の区政運営を進める予算となっているか、が問われています。我が党区議団は、これらの視点に立って来年度予算案の審査を進めてきました。 その結果、議案第23号 令和6年度 杉並区 一般会計予算については賛成。 議案第24号〜26号 令和6年度 国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療の各事業会計予算については反対します。 以下、主な理由を述べます。 (2)理由① 震災対策、防災対策 第1に、震災対策、防災対策についてです。 能登半島地震では、改めて耐震化と不燃化の取り組みの重要性が明らかになると同時に、避難所の生活環境が国際的にも遅れていること、救援物資が速やかに被災者に届かないこと等が課題となりました。 ・耐震化・不燃化の促進・感震ブレーカーの設置促進 そうしたもと、特定緊急輸送道路 沿道建築物の耐震改修助成に加え、一般緊急輸送道路沿道の建築物にも助成を拡充しました。また、「不燃化特区における防災まちづくりの取り組み」では不燃化特区の老朽建築の建て替え工事費用の助成制度の導入も重要です。 感震ブレーカーの無料設置対象数を1,000 世帯から1,500 世帯に拡充し、継続することも重要です。 ・災害備蓄品の充実 震災救援所等の災害備蓄品についても拡充する予算が計上されています。避難所生活におけるプライベート空間を確保するための間仕切りや断水の長期化に備えてのトイレ用収便袋を追加配備し、備蓄品の充実を図ります。また、太陽光発電設備のない震災救援所への大容量可搬型蓄電池の配備を6 年度中に完了することも重要です。 党区議団が、再三に亘り設置を求めてきたエレベーター内の備蓄ボックス設置について、前区政では進みませんでしたが、この度、予算化されたことを歓迎します。 ・避難所での子どもの居場所確保、心のケア対策 避難所等での子どもの居場所の確保及び、被災した子どもの心のケア対策についての検討を進めることを求めました。区は、国や他自治体の具体的な取り組み状況も注視しながら研究する、とのことでした。速やかな検討を求めるものです。 (3)理由② 物価高騰対策 第2に、物価高騰対策についてです。この間、省エネ家電の買い替え助成等、社会課題の解決策と景気対策の双方に効果がある事業が展開されていくことは重要と考えます。一方、一部物価高騰対策が継続されないものもあります。区長は「時宜を捉えて対応する」とのことですが、長引く物価高騰から区民のいのちと暮らし、営業を守る対策を講じるよう求めます。 ・プレミアム付商品券の継続的実施 特に、物価高騰対策として、23区では、プレミアム付商品券の複数年度、継続的な取り組みや商品券と共にデジタル化による実績も増えています。区はプレミアム付商品券事業等の継続的な実施については、他自治体の類似事業の実績を踏まえ今後研究を重ねていくとしましたが、速やかに実施するよう求めます。 (4)理由③ 他区に後れを取っていた住民生活支援、福祉施策の前向きの変化について 第3に、住民生活への支援や住民福祉の向上に関わり、これまで杉並区が他区に後れを取っていた取り組みが前に進み始めています。この点については重要であり、これまでの財政調整基金への過度の積み立てを改めて、区民生活に振り向けることを求めておきます。 ・給食費無償化の来年度継続と対象拡大 来年度も学校給食費の無償化を継続し、これまでの区立小・中・特別支援学校に在籍する児童・生徒に加えて、新たに国立・私立等に通う児童生徒、不登校児童・生徒等にも対象を増やして実施することが示されました。私費会計から公会計への切替えについても、早急に対応するための準備が開始されることは重要です。長引く物価高騰により多くの子育て世帯の負担軽減が求められており、政府への無償化の決断を促す上でも、今後も給食費無償化を継続するよう求めるものです。 ・学校トイレの洋式化 杉並区が他区と比較しても大きく遅れていたのが、学校トイレの洋式化です。洋式化率は23区比較で23番目。杉並区の洋式化は到達点とともに、努力が不十分なレベルであったことは、前区政の頃から再三に亘り、指摘してきました。岸本区政のもとで、5年間で100%の配置を目指す方針が示されたことを歓迎します。 ・就学援助の対象拡大について 就学援助の対象拡大について。前区政下では、2013年度から就学援助の認定基準額の引下げが段階的に行われ、多くの子育て世帯が援助制度から除外されました。今年度、岸本区政のもとで、就学援助の認定基準額を生活保護基準の1.2倍から1.3倍へと引き上げられたことは重要です。 ただし、前区政下での基準引き下げを戻し、2012年からの物価上昇分を加味すると、生活保護基準の1.5倍程度まで引き上げることが必要です。認定基準の引き上げについて、今後の申請・認定状況等を考慮しながら、引き続き検討する、としています。さらなる引き上げを求めます。 ・高齢者の補聴器購入費助成の継続 23区中17区で実施・実施検討されていた高齢者補聴器購入費助成が杉並区でも開始されました。多くの高齢者の利用が進み歓迎の声が寄せられています。区が、今後も制度周知に力を入れるとともに、補聴器相談医の確保や認定補聴器技能者によるアフターケア等の充実に努めるとしていることは重要です。今後、聴力検査の実施や補聴器認定技能者の増員の手立て、補聴器相談医の支援など、さらなる拡充を検討することを求めます。 質疑では、都の包括補助の積極活用を求めました。他の福祉用具の活用も含め、今後検討することを求めるものです。 ・地域包括支援センターの支援について 介護保険運営協議会での指摘、各ケア24の運営事業者との定期的な意見交換などを通して、ケア24の業務量に応じた体制整備を図るため、運営事業者への財政支援が示されました。専門人材の確保・定着につなげる上で重要なことです。今回の支援に留まらず、さらなる支援を求めるものです。 ・放課後等デイサービス事業者への支援、移動支援事業 放課後等デイサービス事業者への支援については、事業者からは、区内での開設に向けたインセンティブになる等と歓迎されています。引き続き、事業所開設に向けた支援を求めます。 来年度、移動支援事業を見直してから3年が経過します。見直しにあたり、通所利用や身障等級による制限等、持ち越しとなっていた課題の解消も含め検討を進めることを求めます。 ・生活保護制度について、周知ポスター作成と扶養照会の意向尊重 生活保護制度について、岸本区政のもとで申請者の意向を尊重した扶養照会の対応が行われており、扶養照会件数が減少しています。また、生活保護を必要とする方が申請できるよう周知に努め、来年度からは、生活にお困りの方が、躊躇なく福祉事務所にご相談いただけるよう、生活保護制度を広く周知するポスターの作成を予定されていることは重要です。 ・住宅施策について、家賃助成制度の早期実施を 住宅施策においては、23区中19区で様々な家賃助成を実施していますが、前区政のもと杉並区では実施されてきませんでした。杉並区においては公共住宅の供給が他区と比較しても低位となっている現状もあり、低廉な住宅の確保の必要性は高いです。来年度中の実施に向けて検討が進められているとのことですが、物価高騰が深刻な時だからこそ、速やかな実施を求めます。 ・ジェンダー平等について 杉並区のジェンダー平等に関する取組についてです。来年度、会計年度任用職員の報酬限度額の引き上げや23区初の生理休暇の有給化が示されました。全職員の41%を占める会計年度任用職員のうち85%が女性です。杉並区が男女の賃金格差の是正、同一労働・同一賃金の実現に向けて、前進していくことを期待します。また、区立小中学校トイレへの生理用品配置に続き、来年度は区役所本庁舎を含む3カ所の区立施設トイレに生理用品が配備されます。社会構造の不均衡が、「生理の貧困」を含め、多くの女性やマイノリティを苦しめています。今後、防災等あらゆる分野でジェンダー平等の実現に向けて積極的に取り組むことを求めます。 また、パートナーシップ制度への事実婚導入の検討が進み、6月には男女共同参画における意識と生活の実態調査がはじまることも重要です。 (5)理由④ 前区政の歪みを正し、住民参加のまちづくりを 第4に、前区政で進められた諸課題を解消し、住民参加のまちづくりを進めることについてです。前区政から継続している課題については、引き続き、住民との対話を通じて、見直しに向けた取組を求めるものです。 ・区立施設使用料について 前区政での施設使用料の改定を受け、杉並区の施設使用料は、周辺区と比べ1.5倍、2倍も高い事態となっています。区長は区立施設の使用料について「区民が気軽にいつでも使える」「利用しやすい料金設定にする」との考え方に基づき、今後の使用料の見直しが示されていることは重要と考えます。長引く物価高騰により、住民生活が苦しい時こそ、使用料を引き下げ、区民の様々な活動を保障していくことが求められています。速やかな利用料引き下げを求めるものです。 ・区立施設マネジメント計画について 区立施設マネジメント計画・旧区立施設再編整備計画について。区が、これまでの再編計画の取り組み手法の問題を明らかにし、今後は住民との協議により地域の区立施設のあり方を検討することを示したことは、住民自治のまちづくりを進める上で重要な観点です。住民参画のもとでの計画策定プロセスを徹底することを求めるものです。既に施設再編が実施された地域において、住民参画のもとで、地域の施設のあり方を検討することを求めます。 ・児童館について 児童館については、これからの杉並区において子どもの居場所の核となるものです。子どもの居場所づくりの検討の中で、これ以上減らすことのないよう、直営での児童館配置を守りつつ、これまでの再編による配置の不均衡を是正するアウトリーチ型等の対応を求めます。子ども子育てプラザ等においても、乳幼児に限らず、小学生から18歳までの子ども達を含めた支援を求めておきます。これら検討を進める上で、子ども達の声をしっかりと聴取し、計画に反映することが必要です。 ・ゆうゆう館について ゆうゆう館についてです。高齢者にとって、家庭や職場と異なる地域の「第三の居場所」を確保し、高齢者が生きがい活動をするための拠点の配置が必要です。その点で、重要な役割を果たしてきたのがゆうゆう館です。今後、施設利用者や地域住民等と共に、高齢者の拠点としての施設のあり方を検討するよう求めます。 ・阿佐ヶ谷駅北東地域問題について 阿佐ヶ谷駅北東地域のまちづくりについてです。 前区政のもと、地域住民や学校関係者に十分な説明がなされないまま、不透明な経過で土地の交換が行われ、杉一小の移転が区・地権者・病院の三者で計画されてきました。岸本区政のもと、これまでの経緯と現状を住民と区で共有し、意見交換をする場が設けられました。その中で情報開示が進んだことは重要な変化と感じています。 しかし、一定程度計画が進められているなか、住民と問題を共有し、課題解決に十分な時間をかけられない状況となっていたこと等、様々な制約のもとで現行計画を継続せざるを得なかったことに対して、住民の不安や懸念の声が寄せられています。この間の経緯を踏まえ、引き続き、住民の声に寄り添った対応を求めるものです。 杉一小が150年に亘り築いてきた文化や地域と密着した学校運営を保障し、安全な学校環境を確保することを求めると共に、A街区については、タワーマンションや大型商業施設の整備を進めず、地域住民との粘り強い対話を通して、地域に望まれ、多くの区民のための公共的・恒久的な建物を建てることが必要と考えます。 なお、他会派委員の質疑において、阿佐ヶ谷北東への商業施設に関する言及で、我が党区議団に触れている個所については、過去の資料を見れば、その点は明らかだと思います。 また、上保・前議員による発言にも触れられていましたが、これは党区議団の見解では無く、本人も誤りを認めています。本人確認のもと、令和2年時に、議会の場で不適切な発言である旨、党区議団の見解を示しているものです。 ・都市計画道路問題について 都市計画道路について。前区政によって進められた都市計画道路は、これまでも地域に様々な問題を発生させています。来年度開始予定のデザイン会議において、その地域で生活する住民が、どのような環境や地域のまちづくりを求めているのか、現在の課題解決に向け、活発に議論できる場にすることが求められます。これまでの住民の声が反映されない都市計画道路の進め方を改めると共に、現状の道路計画は固定的に見るのではなく、住民との対話による変更、修正、見直しなども視野に検討を進めることを求めておきます。 ・善福寺川調節地の課題とグリーンインフラを活用した雨水流出抑制対策の検討 善福寺川上流調節池整備に関して、住民の不安や懸念の声が寄せられています。住民意見を十分に留意し、地域住民や公園利用者などを対象とした説明の機会の確保、情報の開示等が必要です。特に、外環道工事や全国各地で相次ぐ事故でも明らかな通り、住宅街でのシールド工事の危険性も指摘されており、不安が払しょくされない状況で工事を進めることのないよう求めます。区として、住民も含めた、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」の実現を目指し、グリーンインフラを活用した雨水流出抑制対策を徹底することを求めます。 ・職員の倫理規定について 職員の倫理規定の取り組みについてです。杉並区職員の倫理規定については、その取り組みが他区に比べて遅れています。前区長によるコロナ緊急事態宣言発出中の区長専用車での他県への移動、ゴルフ場での飲食、宿泊が大きな問題となり、その際に同行した区幹部職員が指定管理者選定中の候補者とゴルフを行った問題は、区職員の倫理規定の不備として大きな課題となっていました。 今後、倫理にかかわる規定を服務規程の中で定め、詳細については別途指針を設けること、また、新年度の第2回定例会で報告できるよう制定することが、表明されました。 職員倫理に対する区の姿勢が前進していると評価するものです。あらためて、実効性のある内容となることを求めておきます。 (6)国保会計予算、後期高齢者医療会計予算への反対の理由 ・国民健康保険事業会計予算について 次に、各特別会計に対して意見を述べます。まず、国民健康保険事業会計です。 来年度、ひとり当たり国保料を18万2171円から1万3848円へ引き上げ、19万6019円とする条例改定が提案されました。過去最高の値上げ幅です。 値上げの要因は、国保加入者の減少、医療の高度化、高齢化など医療給付の増加のほかに、東京都の納付金算定方法の変更、国の激変緩和措置の終了によるものです。東京都は、財政責任の責任主体として中心的な役割を担うとされながら、値上げ抑制のための財政投入を行わないだけでなく、国保運営方針の改定で、区市町村が行っている法定外繰入を年度目標まで示して迫ることは許されません。 今回の大幅値上げという事態に対し、区長会としては激変緩和措置を延長し、杉並区としては介護納付金分所得割率を据え置くなど、負担軽減のために一定の努力を行ったことは評価するものです。しかしながら、物価高騰のもと、過去最大の大幅値上げを被保険者に強いることは容認できず、議案第31号と本事業会計には反対します。なお、質疑でも指摘しましたが、区長会を通じて要望書を提出するだけの従来の取り組みでは、国や都を動かすことができません。取り組みのあり方の再検討を求めます。 ・介護保険事業会計予算について 次に、介護保険事業会計についてです。 第9期計画における介護保険料は、基準月額で200円の引き上げとなります。第8期の保険料は第7期を据え置きとしたため、第9期での大幅な値上げも懸念される中、準備基金を最大限取り崩し、負担軽減に取り組んだ姿勢は重要と考えます。さらに、保険料段階も17段階として、高額所得者への負担割を増やしていることも必要な対応と考えます。一方、一部で低所得世帯でも保険料が引きあがる状況もあり、さらには、生計困難者に対する区独自の保険料減額制度を見直す等の問題があります。負担軽減のために一定の努力を行ったことは評価するものですが、物価高騰のもと、低所得世帯に対する負担増は問題があるため、本事業会計と議案第14号には反対します。 ・後期高齢者医療保険事業会計予算について 次に、後期高齢者医療保険事業会計についてです。 来年度からの2年間の保険料について、ひとり当たり年間10万4842円から6514円値上げし、11万1356円とする条例改定が東京後期高齢者医療広域連合議会で可決されました。制度開始以降、最大の値上げ額となります。 大幅値上げの要因は、75歳以上の後期高齢者の人口と医療費が増えれば増えるほど保険料引き上げに跳ね返るという制度上の問題に加え、岸田政権による出産育児一時金の拡充の財源の一部を新たに後期高齢者に負担させることや、後期高齢者医療制度での財源構成に占める後期高齢者負担率を、今年度11.72%から来期は12.67%に引き上げるなど、後期高齢者に負担増を押しつける政策によるものです。 年金削減や異常な物価高騰が、高齢者のくらしを脅かしているもとで、保険料の値上げを行うことは認められず、本事業会計には反対します。 なお、議案第29号については、保険料負担抑制のための特別対策を来年度、再来年度も継続するものであるため賛成します。 (7)おわりに その他、予算特別委員会の付託議案については、賛成とします。 以上、各会計予算に対する意見の開陳を終わります。多くの資料を調製していただいた職員のみなさんに心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。 以上 |
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