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10.9.13 一般質問原稿��
小中一貫教育と学校統廃合について
(↓クリック後、この日の一般質問の最後、４番目です。)
【
http://www.gikai.city.suginami.tokyo.jp/vod/22-03/220913.htm
】
次に小中一貫教育と学校統廃合についてお聞きします。
2004年、今から6年前の冬、突然、朝日新聞に杉並区の小中一貫教育の記事が載りました。それは新泉小、和泉小、和泉中の三校で、校舎は別々のままですが小中一貫教育を行うということと、その目玉として「学び科」という授業を行うというものでした。なんとその授業のカリキュラムは三菱総研に1200万円を払って作成してもらうとあります。
驚いたのはこれほどの問題にもかかわらず、現場や多くの保護者が知らされていなかったということでした。さらには５か月後の４月には実施するといいますからこの強引さには、現場教師にも保護者にも不信が募りました。 当時、説明会に参加した保護者からは
「なんで４月実施にこだわるのか。もうちょっと考える期間をおいたほうがいいんじゃないか」
「正直言って何が何だかわからない」
など批判が相次ぎました。当時の校長はこうした保護者の声に“小中一貫教育のモデル校として区からたくさんの支援がある”とか、“私は都立西校に赴任していたので西校の先生を呼んで講師してもらうことだってできる。”など、およそ小中一貫教育とは関係のないセールスを行うのみでした。そんな校長でさえ、「短い時間でやるのはたしかに不安がある」と答えてしまう有様。山田区長のトップダウンがいかに現場に混乱をもたらしてきたかよくわかる事例ではないでしょうか。この日の説明会はなんと5時間に及びました。
さて、小中一貫教育とはいったい何か。区は当初その説明として、「9年間を一貫した教育によって、確かな学力と基礎的な体力を見につけ」るといってきました。ぶつ切りとなった小学校６年間と中学校３年間が連携した一つの流れをつくれば、教育の様々な問題が解決するというのです。そんな和泉地域の小中一貫教育も今年で発表から6年目。現在、目標は達成できたでしょうか。現場や地域の声など、実態を調査してきました。
まず結果として最大の特徴は、小中一貫教育といいながら小学校児童の三分の二が学校選択制の下、違う学校に行ってしまうという事実であります。これでは一貫教育も何もあったものじゃありません。区内初の小中一貫教育であり、金も労力もかけた教育改革を施してなお、なぜ子どもたちは集まらないのか。
当初、マスコミを騒がせた三菱総研の「学び科」。和泉地域小中一貫教育の目玉でした。当時の授業の内容を現地で聞くと、それは新入社員が行う企業研修のようなものだったそうです。コミュニケーションスキルの訓練であったり、ジェスチャークイズや10年後、20年後の自分を想像して発表する表現訓練であったりと様々です。楽しいものもあったそうですが、中学生は自分に関係のないものなどはやる気が出ず、これはどうかと首をかしげるような課題もあったとそうで、３年目の終わりには見直しが図られ、現在は「学び科」という独立した教科はなくなっているとのことです。
和泉地域では早くから小学校の英語教育が取り入れられ、小中一貫の利点を生かした9年間にわたる英語力の向上が期待されていました。しかし実態は、率直に言って小学校での英語授業が中学において成果をあげているとはいえず、一部には英語が嫌いになって中学校に入ってくる子もいるとか。
小中一貫の成果は率直に言って出ていないということを指摘せざるを得ません。
教師の多忙化が深刻です。とくに小中一貫教育では中学校の先生が小学校で授業するということが多くなります。小中の連携と簡単に言いますが、ある教師は専科の授業を中一から中三まで全ての学年分つくりながら、週に２回は小学校に行き、二時間の授業をする。さらには事前の打ち合わせも小学校の先生としなければならない…どれだけ大変で、むしろ自分の学校の授業をおろそかにせざるを得ないかという実態を区教委は認識すべきです。杉並では、昨年の12月からなんと5名の現職死が相次いでいますが、その一人が和泉中の教諭でした。大変なストレスのなか働いていたということを同僚職員が口にしています。困難な児童生徒が増える中、少ない教師が小中一貫で手を煩わされ、さらに子どもたちに目をかけることが困難になっています。
さて、先に発表された計画では、いよいよ杉並区初となる施設一体型の小中一貫校を和泉地域につくるとしています。いままでは校舎が別の小中一貫教育でしたが、計画が実施されれば小学生と中学生が一緒の校舎で過ごすこととなります。ここまでやれば小中一貫のよさが出てくると多くの方が思うかもしれません。しかし、施設一体型の小中一貫教育を進めている品川ではそう上手くはいかない実態が見えてきます。
品川の施設一体型では小学校６年生たちから、“最高学年である”という意識が薄れているとの指摘があります。９年生なのだからと、６年生の卒業式はなく、教室で卒業証書が渡されるだけです。運動会は心も体もまったく違う小学校一年生と中学校３年生が一緒に行うのですから、時間が長くなるだけで迫力が低下したと保護者から声が出ています。
杉並の小中一貫に携わった先生も指摘しています。中一ギャップを埋めるとよく言われるが、そのギャップの中には埋めてはいけないものもあるといいます。小学校から上がってくる子達と中学校の先生がすでに顔見知りなわけですが、一見いいことかと思いきや、新中学生の顔に緊張感がなくなったというのです。“さあ、これから中学生だ”というやる気がむしろ失われ、最初からだらけた状態になっているといいます。先生と新入生が顔見知りであるということはいいことだと私は思いますが、単純にはいかない教育現場の実態があるのだそうです。小中の連携さえとれればすべて上手くいくという机上の理論と実際とではこうもかけ離れているのです。
さて、小中一貫教育のいきつく先は何なのか、品川の例から見てみましょう。品川では７年前から小中一貫教育を実施。施設一体型の小中一貫校は４年前にできています。杉並と同じように学校選択制がしかれるなか、学校間競争の推進役を担ってきました。ある一貫校では「教育基本構想」というものをもっているのですが、要は学校目標ですが、そこには「各クラス1名以上の日比谷高校レベル合格を目指す」と掲げられており、HPには卒業生の「高校別合格者数」を掲載。どれだけ多くの生徒を有名校に合格させられるかが重要課題です。夏休みに行われる「勉強合宿」には驚きます。これは3泊4日かけて行われる合宿ですが、当初プログラムには、朝9時から食事と入浴を除いて、なんと深夜12時まで勉強時間となっていたのです。この合宿は授業扱いなので不参加は欠席扱い。しかし自己負担で19000円です。わが党区議団の指摘で、さすがに夜9時までの勉強時間になりましたが、学校間競争のために子どもを駆り立てるその本質は変わりません。
こうした激しい競争教育についていけなさそうと感じたり、小一から制服があるため「経済的に厳しいから」という理由で、自分の地域の学校に通わせられないという親もいるそうです。これを公教育と呼べますか。
こうした中で、杉並と同様、やはり職員が疲労困憊し、現職の40代の先生が昨年２人なくなっています。先月は教育委員会の学務課長が死亡する事態。当の改革を押し付けてきた教育長自身が体調を崩し、半年ほど休職したこともあるそうです。
さて、おききします。
＜質問＞
小中一貫教育は「中一ギャップ」を解消するどころか、小中学校の運営に多大な労苦をもたらし、教師や児童生徒にさらなる問題を引き起こしているのが実態です。また競争教育に拍車をかけていくことも他区の例を見て明らかですが、区はこうした実態をどのようにとらえているのか、お答えください。
さて、和泉地域で行われようとしている施設一体型の小中一貫教育については多くの説明会が開催されてきました。だいたい一月に一回のペースです。一見、丁寧な説明を行っているように聞こえますが、実態は逆です。PTAの役員とはいえ、普通の保護者が一月一回のペースで学校の将来の決断を迫られるのです。学校選択制の下で児童生徒の減少をそのまま放置するのか、それとも区内初となる施設一体型の小中一貫校開設で他校との競争に勝つのか。などと迫られるストレスはたまったものじゃありません。私が参加した協議会では保護者から「いったい同じ話をいつまでやるのか、とにかくもうやってしまおう」とか「三校が生き残るためにはこれしかない」といった発言もありました。いったい保護者に学校の生き残りをかけさせる教育とは何なのか。
高円寺ではさらに大規模な計画が押し付けられようとしています。説明会では小学校４校、中学校２校の計６校を施設一体型と施設隣接型の小中一貫校２校に減らしてしまう一案まで出されたのです。高円寺南地域から一つの学校もなくなるという事態です。それだけに説明会も念入りに行われています。昨年７回、今年に入ってからはすでに１０回。杉八小の関係者においてはなんと１１回も説明会あるいは協議会が行われているのです。PTAなど関係者のストレスはいかばかりか。和泉地域の小中一貫校建設では新泉小の一校がなくなりますが、高円寺ではこのままだと３校の校舎が地域からなくなることとなります。説明会では地域関係者に学校の跡地利用の話を区はしています。むしろ、一貫教育の理念についてなどどこ吹く風で、跡地利用の話をちらつかせた統廃合の議論が主になっているのです。前山田区政は借金ゼロ政策や減税自治体構想を進める中で新たに福祉施設の用地を取得することを拒み、そのしわ寄せとして学校用地が狙われたのです。品川でも施設一体型の小中一貫教育校設置は学校統廃合が目的で闇雲に進められているのが現状です。そこでお聞きします。
＜質問＞
小中一貫教育は現在、その目的が学校統廃合にあると指摘せざるを得ません。理念も道理もなく、小中一貫と統廃合を現場に押し付けるやり方は改めるべきと考えるがいかがか、お答えください。
答弁
教育改革担当部長（渡辺均）
私からは、原田議員の小中一貫教育と学校適正配置に関するご質問にお答えします。
まず、小中一貫教育でございますが、小中一貫教育は、これまで小中学校間に存在する指導観や学力観などの違いを取り除き、義務教育九年間を通して人間形成を図っていくことを大きなねらいとしております。
現在、小中学校の教員がお互いに出向いて授業を行ったり、小学生が中学校生活を体験することなどを通して相互理解を深めているところであり、ご指摘のような競争教育を進めるものではございません。
次に、学校適正配置との関係についてのお尋ねですが、小中一貫教育は、先ほどのねらいを達成するために、区立小中学校全校で推進することとしているものであり、学校適正配置を目的としているものではございません。
今後も、子どもたちにとって望ましい教育環境を整えていくために、学校適正配置及び小中一貫教育の取り組みを進めてまいります。
私からは以上でございます。
再質問
小中一貫教育についてお聞きします。
九年間を通して、お互いの理解、小学校、中学校の理解を深めていると。私の議会質問を聞いていたのかというような答弁ですが、まさにそれが六年目を迎えて全くなっていないということなんです。私が出席した協議会では、校長先生が、あと五年で施設一体型の小中一貫をつくる、五年もあるというふうに感じるかもしれないが、たった五年でこの問題を解消できるか不安もあると、校長先生自身が言うほどなんです。そのことをちゃんと区は認識しないといけないんじゃないでしょうか。
改めて、区は、この小中一貫について問題が全くないと考えているのか。いささか現場からそういう問題があるという指摘があるということを認識しているのかどうか、しっかりと答弁してください。
小中一貫教育は学校統廃合の目的ではないと言っていますけれども、お金がないからやらざるを得ないとか、跡地利用について皆さんで考えましょうと、説明会で言っているでしょう。そういう話し方が、そもそも小中一貫教育の理念なんかはどこかに吹き飛んで、学校統廃合のためにやっているとしか思えないという声が出ているんです。改めて区の答弁を求めたいと思います。
再答弁
教育改革担当部長（渡辺均）
原田議員の再度のご質問にお答えします。
小中一貫教育の関係で、他区の事例のお話がございましたけれども、私ども教育委員会のほうでは、各学校に対して、あれをやれとかこれをやれとかいうような話ではなくて、あくまでもそれぞれの学校の置かれている地域の状況あるいは学校の特色を生かして学校づくりを行っていくということで進めていることでございます。
また、適正配置の関係でございますけれども、説明会の中で、跡地をどうするとか、あるいはお金がないというような話し方はしてはございません。あくまでもいい学校をつくりたい、あるいは新しい学校をつくっていこうというようなことで話し合いを進めてございますので、これからもそういうような丁寧な話し合いを進めていきたいと考えてございます。
私からは以上でございます。
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