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質問・発言

●江尻加那県議の予算特別委員会質問 2017年12月19日(火) 第4定例会

1.福祉・医療行政について
 (1)国民健康保険制度の都道府県化における県の役割と国保税の負担軽減
 (2)県立リハビリテーションセンター廃止措置と高次脳機能障害者への支援
 (3)介護保険制度における生活援助の役割と第7期介護保険料改定のあり方
 (4)重症心身障害児・者への支援と地域包括ケア
2.東海第2原発の再稼働問題について
 (1)広域避難計画の抜本的見直し
 (2)使用済核燃料への対応
 (3)県独自の検証作業と県民意見の反映


日本共産党の江尻加那です。通告に従い、知事および関係部長に質問いたします。

1.福祉・医療行政について
(1) 国民健康保険制度の都道府県化における県の役割と国保税の負担軽減

はじめに、国民健康保険制度の改定についてです。
これまで各市町村で運営していた国民健康保険の財政を、来年度から県全体の運営へと移行させます。目的は「制度の安定」だと国は説明しています。
しかし、開始直前になってはっきりしてきたのは、私たちが懸念していた通り、多くの市町村で国保税がさらに引き上げられようとしていることです。
来年度できる県の国民健康保険特別会計は約3千億円の予算規模となり、加入者は約43万世帯、70数万人の健康に関わる県下最大の保険財政を県が担うことになります。
そこでまず、県の役割について、国から求められる役割、市町村に対して果たすべき役割、さらに県民から求められる役割の3点について、知事の所見を伺います。

【大井川知事】
今般の、国保改革におきまして、県は財政運営の責任主体となる一方、市町村は地域住民と身近な関係の中で、資格管理や保険給付、保険料率の決定、賦課・徴収などを引き続き担うという、役割分担がなされました。
こうした役割分担の下、国から県に法的に求められているのは、財政運営の責任主体として、安定的な財政運営や、効率的な事業運営を確保するなど、国保運営の中心的な役割を担うことでございます。
具体的には、県内統一の方針となる国保運営方針の策定、市町村から徴収する国保事業費納付金や、市町村が保険料率を検討する際に参考とする標準保険料率を算定するほか、市町村が給付に要する費用を交付することが求められております。
こうした法的な役割を踏まえ、市町村に対して果たすべき役割としまして、事務負担の軽減を図るため、国保運営の方針に基づき、市町村が担う事務の効率化、標準化、広域化を推進することが1つであると考えております。
加えて、県は、市町村の国保財政に直接影響を与える国保事業費納付金を算定しますことから、市町村との十分な協議を行い、これを踏まえて、公平な算定を行う、なども求められているものと考えております。
また、県民の皆様に対しましては、国保の財政運営の責任主体として、これからも皆様が安心して医療を受けられるよう、将来に亘り健全で安定的な国保運営を行っていくことが、私ども県の使命であると認識しております。

都道府県化の最大の目的は国の社会福祉、所謂医療給付費の抑制削減です。ですから、県が、どの役割に軸足を置いて国保を運営するかによって、制度は大きく変わります。
とりわけ県民の切実な声、国保税の負担があまりにも重すぎるという声にこたえ、高い国保税を軽減すべきです。
国保加入者の平均年所得は本県で約65万円。これにかかる国保税は約8万4千円と、所得に対し13%もの負担です。それが来年度、県が示した仮算定で、さらに33市町村で引き上げになるとされます。どうして国保税が高いのか。
資料1をご覧ください。
県内市町村の国保の歳入に対して、どれだけ国庫支出金が入ってきたのか、その割合を示しましたが、どんどん減らされ、その結果として県民が払う国保税の負担が上がり続けています。明らかです。今回の制度改定に伴って、国は3,400億円負担を増やすとしていますが、全国知事会が国に求めたのは1兆円の国庫拡充でした。まったく不十分です。
引き続き、国に負担拡充を強く求めていくこと。あわせて、県の財政支出を増やして県民の国保税や市町村の負担を引下げるべきと考えますが、所見を伺います。

【大井川知事】
拡充される公費約3,400億円のうち、平成30年度には約1,700億円が投入されます。 
一方で、少子高齢化の進展により、国保の被保険者数は年々減少するとともに、医療費が高い高齢者の割合が増加しております。
加えて、医療技術の進歩に伴い、医療費が増えていることなどもありまして、被保険者の1人当たりの保険給付費は増加しております。
こうした状況において、被保険者が保険料負担の軽減を実感するためには、さらなる公費の拡充が求められております。
国民健康保険制度は、本来、保険料と法定の公費をもって運営されるべきものであります。
国保財政の健全な運営を図りつつ、保険料負担の軽減を図るためには、県が一般財源を投入して行うのではなく、国において、更なる財政基盤の強化を含む制度の設計を行うべきであると考えております。
国民皆保険を支える国保が、将来に亘り持続可能な制度となるよう、引き続き全国知事会等と連携しながら、国に強く働きかけてまいります。

(2) 県立リハビリセンター廃止措置と高次脳機能障害者への支援
更なる公費の負担拡充が必要だというなかで、どうして県は入らないのか。いま県内市町村が一般会計から繰り入れ80億円を超える規模でおこなっています。もう市町村だけでは負担しきれないという声も伺っております。
ぜひ国と同時に県が財政運営の責任者として国保運営の負担軽減に取組んでいただきたいと考えます。
次に、県立リハビリテーションセンターの廃止と、高次脳機能障害者への支援について、知事に伺います。
来年3月に、笠間市友部にあるセンターを廃止する条例案が今定例会に提出されています。センターで行ってきた理学療法や作業療法などの機能訓練リハビリは、民間12カ所の事業所で引き継がれると伺いました。
一方、機能訓練以外の生活訓練や、入所を伴うリハビリは、今後どのように保障されるのか伺います。

【大井川知事】
生活訓練サービスにつきましては、本年12月1日時点で、県内各地域で66の民間事業所などがサービスを提供できる体制となっております。
特に高次脳機能障害者の方への支援につきましては、これらの事業所を対象とした研修会等を引き続き行うことにより、現在サービスを受けている方への支援が低下することがないよう努めてまいります。
また、入所を希望する方への支援につきましては、県立リハビリテーションセンターの入所希望者のほとんどは、自宅が遠く、通うのが困難な方でしたので、身近な場所でサービスが受けられるようになれば、入所を必要とするのは特殊なケースに限定されると考えます。
しかしながら、入所を希望する方に対しましては、機能訓練サービス事業所や生活訓練サービス事業所に併設した入所施設のほか、県内に190カ所あるグループホームの活用も可能ですので、市町村や相談支援事業所等とも連携しながら、障害のある方が希望するサービスを受けられるよう支援してまいります。

先日、高次脳機能障害の家族会の方とお話ししました。
脳卒中や交通事故などで脳に損傷を負って外科治療を受け、やっとの思いで急性期を乗りきって退院したのち、家に帰ってから「家族と会話がなりたたない」、「少し前のことも覚えていない」、「突然キレて怒り出す」など、教員だった夫、弁護士だった息子、元気だった家族の予想もできない変わりように、本人も家族も困惑し、追い詰められます。それを支えてきたのが県立リハビリセンターであり、家族会の活動です。「高次脳機能障害の診断書を書く医師を見つけるのにも苦労している」「身体の機能訓練だけでは不十分で、生活訓練がどうしても必要だ」と訴えています。
県は今後、阿見町の県立医療大学内に支援拠点を移すとしていますが、県北・県央地域に対応する支援窓口を分室のような形でこの地域にも残すべきと考えますが、知事の所見を伺います。

【大井川知事】
まず、高次脳機能障害者の方からの相談は、現状でも、約8割が電話でのご相談であり、直接相談に訪れる方は1割弱となっております。
また、支援拠点業務の一環として、つくば市、水戸市、神栖市で毎月行われております「脳損傷友の会」の地区集会に、相談支援を担当する支援コーディネーターが訪問し、当事者やご家族の方から直接ご相談をいただいております。
来年4月から医療大学内に支援拠点が移転された後も、同様の取り組みを行い、支援拠点以外でも、直接ご相談を受けられる機会を設け、「脳損傷友の会」や関係者の皆様からご意見を伺いながら、今後とも、支援の充実に努めてまいります。

いまの知事のご答弁では、県立リハビリセンターが廃止とされた後も、高次脳機能障害者ご本人と、家族に対する今の支援、リハビリ、入所を伴うリハビリも含めて、決してサービスは低下しない。そういうことをご本人・ご家族に県として責任をもって言える体制にあるということなのでしょうか。再度お答えください。

【大井川知事】
はい、そのとおりでございます。

今後、県の取り組みが注視されると思います。
この広い茨城県ですから、阿見に1か所の窓口では県全体をくまなく支援するには限界があることも予想されます。家族会も県南と県北でそれぞれ活動しているのも、こうした事情からです。これまで県が積み重ねてきた高次脳機能障害。この障害の特徴、特異性を本当に理解し、民間の事業所が支援を行えるよう、県のこれからの本当の役割が問われます。
これまでも、県立施設だった児童養護施設友部みどり学園や、障害者施設の内原厚生園、そして、水戸市にあったこども福祉医療センターと、次々と県立施設を廃止して民間に切り替え、委ねてきました。公的責任が後退しています。セイフティーネットという県の役割を再度認識し直して知事には取り組んで頂きたいと思います。

(3) 介護保険制度における生活援助の役割と第7期介護保険料改定のあり方
次に、介護保険制度について、保健福祉部長に質問いたします。
高齢化がすすむ中、一人暮らしや認知症などの高齢者がどれくらい増えているのか、まず本県の状況を伺います。

【保健福祉部長】
まず、県内における一人暮らしの高齢者数ですが、平成27年の国勢調査による65歳以上の単独世帯数が10万117世帯となっており、前回調査である平成22年の7万5,363世帯から増加をしております。
また、認知症高齢者数につきましては、厚生労働省の報告書によりますと、平成24年時点で、全国の高齢者の認知症有病率は15%と推計されており、この割合をもとに算出いたしますと、平成24年の本県の認知症高齢者数は10万5千人となります。
さらに、厚生労働省では、団塊の世代の方がすべて75歳以上となる2025年には、全国の高齢者の約20%が認知症になると推計しており、本県にあてはめますと、およそ17万人に達するものと見込まれているところです。

1人暮らしの高齢者も認知症の方もこの間増え、今後も増えていくことは明らかです。
これをお聞きしたのは、そうした高齢者を支える在宅介護サービスを、国がまた切り下げようとしているからです。
私は先日、認知症の母親と2人で暮らす男性宅に伺いました。「トイレを失敗するのにオムツを外してしまい、布団を7枚もダメにした。カッとなって酷い言葉を吐くこともある。要介護2なので施設に入れず、ショートステイでつないでいる。なぜ、必要な介護を奪うのか」と訴えていました。
国は、できるだけ病院や施設に入れず在宅でと言いながら、来年度に向けた改定で、認知症や一人暮らしの高齢者に対する生活援助を制限するとしています。食事作りや買い物、洗濯などのヘルパーを、月31回以上利用することを財務省が問題視して、それ以上の場合は市町村にチェックさせるというものです。これは、介護給付費を抑える目的です。
しかし、こうした制限は、高齢者が地域で暮らしていくという方向にまったく逆行します。県として、国に制限撤回を求めるべきであり、仮にこうした援助が制限されたら高齢者にどんな影響が及ぶのか、考えを伺います。

【保健福祉部長】
平成30年4月の介護保険改定におきまして、ケアマネージャーが、通常よりかけ離れた回数の生活援助中心型の訪問介護ケアプランに位置付ける場合には、市町村に届け出ることとする検討がなされていると承知しております。これは訪問回数の多いケアプランについて、利用者の自立支援、重度化防止や、あるいは地域支援の有効活用等の観点から、市町村が確認をし、是正を促していくものでございまして、支援を必要とする高齢者の利用回数を一律機会的に制限するものではないと認識しております。このため、支援を必要とする県内の高齢者につきましては、制度が改正された後も、引き続き、必要な生活支援サービスを受けるものができる、と考えておるところでございます。

私が知っている男性の方でも、朝と夜、食事の援助も含めてヘルパーさんに来ていただいて、なんとかアパートで独り暮らしをしているがいらっしゃいます。
そうすると単純に月60回、国がケアマネージャーに届け出を義務付ける。このこと自体が
抑制へとつながってしまうのではないかと危惧しております。
今後こうしたサービスの制限、国が一律に行わないか、現場でしっかりとチェックしていただきたいと思います。
そして介護サービス制限の一方で、介護保険料は値上げの一方です。3年ごとの改定により、来年度、県内すべての市町村でまた引き上げが予想されると伺いました。本県の基準額は現在、月額平均5,200円。これが6,000円を超えようとしています。
介護給付費に対する国の負担は、今回の改定でも4分の1のままで見直されません。引き上げが必要です。また、低所得者に対して、市町村独自の保険料減免を県内14自治体が実施していますが、最も所得の低い第一段階の高齢者が本県ではどのくらいいるのか。県としても市町村と一体となって保険料の負担軽減、減免に取り組むべきと考え、所見を伺います。

【保健福祉部長】
国の負担割合につきまして、介護保険制度を持続可能とするために、被保険者や地方の負担増につながらないよう、国が十分な財政措置を講じることを、県としても国に対してこれまで要望してきたところでございます。
県内における所得段階が第一段階の方につきましては、県内でおよそ13万人おりまして、高齢者に占める割合は約16%となっております。
第一段階の方は、平成26年から29年の3年間で約5,600人増加いたしまして、高齢者に占める割合は0.7%減少をしております。
保険料の減免につきましては、制度上、保険者である市町村において検討されるべきものと考えておりまして、これにつきまして県としての独自の保険料減免を行うことは考えておりません。

このままですと、4月以降の介護保険料、多くの市町村で値上げが予想されます。
所得の一番低い第一段階、13万人おります。年間80万円以下の所得だという方です。
年金が減額される一方、天引きされる介護保険料、そして先程の国保税、手元に残る生活費に充てる年金がますます減っていく状況に対して、県としてもしっかり取り組んでいただきたいと思います。

(4) 重症心身障害児・者への支援と地域包括ケア
次に、重症心身障害児・者への支援と地域包括ケアについて質問します。
水戸市内に住む重症心身障害のお子さんをもつ母親から相談を受けました。19歳の娘さんは生まれつきの全盲で、重度の知的障害とてんかんがあります。発作などで緊急入院が必要となった場合、対応できる医療機関を探すのに大変苦労しています。また、娘さんは今年の春に盲学校を卒業して以降、昼間出かけられる通所施設も見つけられていません。
下には5歳になる弟さんもいて、保育園や幼稚園探しにも苦労しました。
このような場合、家族が自ら支援策を探し、それぞれの制度について個別に手続きを行うのは大変困難です。行政が窓口になって、家族を支えるための包括的な支援が求められます。
そこで、今回のような、18歳以上の重症心身障害者に対する医療や福祉の支援に、どのような具体的対応ができるのか、茨城型地域包括ケアの視点も合わせて伺います。

【保健福祉部長】
重症心身障害児・者への支援と地域包括ケアについてお答えいたします。
県では、高齢者や障害者、難病患者など、さまざまな要援護者に対して、各種専門制度を活用した支援を基本としつつも、制度の狭間となるケースや、世帯単位で複数分野の課題が絡み合っており、「ファミリーケア」が必要となるケースなどに対し、地域資源を活用しながら隙間のない支援を行う「茨城型地域包括ケアシステム」の構築を推進しているところです。
システムの構築に向けた第一段階として、市町村には、例えば新たにワンストップ型の相談窓口を設置したり、主たる要援護者を所管する部署が中心となって、関係する部署や医療・福祉関係機関等の連携体制を構築するなど、包括的な相談対応体制を整備することが求められます。
ご質問のようなケースでは、まず市町村の福祉担当窓口にご相談いただき、そこを中心に包括的に対応していくことが考えられます。
福祉的ケアに関しましては、障害福祉サービスの利用を希望するご本人やご家族が、市町村に申請していただき、指定相談支援事業所が最適なサービスを組み合わせた利用計画を作成し、その計画に基づいた利用調整が行われることになります。
重症心身障害の方につきましては、医療的なケアが必要な割合が高いことから、利用できる施設が限られており、また、急変時にはその状態に応じて適切に対応する必要があります。
このようなことから、県では市町村と連携し、施設や医療機関の情報を提供するほか、必要な助言を行うことなどにより、適切なサービスにつながるよう支援をしているところです。
重症心身障害児・者に対するケアを円滑に進めるためには、地域の医療・福祉関係者が連携し、包括的かつ継続的な医療・福祉サービスを提供していくことが重要となりますので、今後、茨城型地域包括ケアシステムの構築をさらに推進し、地域の関係者の顔の見える関係づくりをしっかりと支援してまいります。

とくに苦労しているのが、病院探しです。
娘さんは以前、県立こども福祉医療センターにかかっていました。センターが廃止される時、「今度は民間の大きな病院ができ、18歳を過ぎても大丈夫」と聞かされました。しかし、いま入院は受入れられていません。この病院に対する補助金を、県は当初の2億5千万円から3年目に1億円までに減らしました。不採算となる政策医療に対する県の責任を後退させています。
娘さんはその後、県立こども病院に何度か入院してきましたが、こども病院も原則18歳までです。今日のやりとりをご家族は聞いています。「この病院なら大丈夫」と言える医療機関を示せないのか。再度、お答えください。

【保健福祉部長】
繰り返しになりますけれども、重症心身障害者に対するケアを円滑に進めるためには、地域の医療・福祉関係者が連携をして、包括的かつ継続的な医療・福祉サービスを提供していくことが重要となります。
医療機関の紹介等も含め、茨城型地域包括ケアシステムの構築をさらに推進しまして、地域の医療・福祉関係者がそれぞれ顔が見えて、相談のしやすい関係づくりを県としてもしっかりと支援してまいりたいと考えております。

今後きちんと繋がるのかどうか、わたしは茨城県の役割がそこで見えてくるのではないかと思っています。
医療的ケア児や重症心身障害児など子ども達への支援に、今、光が少しずつあたり始めたように感じます。その子たちが19歳、20歳と大人へと成長していく段階に応じて、切れ目ない支援を行っていけるよう、県の更なる取り組みを求め、次の質問に移ります。

2.東海第2原発の再稼働問題について
(1)広域避難計画の抜本的見直し

東海第2原発の再稼働問題について、知事に質問いたします。
日本原子力発電(株)は、東海第2原発の運転を、あと20年延長させる申請を原子力規制委員会に提出しました。福島第一原発と同じ沸騰水型では初めてのことです。
県は、過酷事故を前提に、30km圏内96万人を、県内に40万人、県外に56万人避難させる計画を策定しました。これを基に、いま、市町村はそれぞれ協議を進めています。
しかし、その大本の県計画をつくった橋本前知事は、最後になって「避難の実効性が確保できない」と断言しました。それを裏付けるように、14市町村一つも避難計画が策定できておらず、肝心の東海村さえ未だ策定出来ていません。
大井川知事は、「実効性が確保できない」という前知事の判断を肯定するのか、否定するのか。その上で、抜本的な計画の見直しが必要だと考えますが、所見を伺います。

【大井川知事】
原子力災害発生時の避難は、まずもって住民の方々の生命や身体を保護することが第一であり、福島第1原子力発電所の事故でも明らかとなったように、避難先が予め決められていないと避難先を転々することとなり、移動距離が長く、生命に危険を及ぼす恐れがあります。
こうしたことから、広域避難計画では、避難先を予め確保することとし、避難先の調整にあたりましては、1人あたりの面積について、他県の例も参考にしながら2平方メートルとすること、避難先は、避難者の移動中の負担軽減のため、可能な限り県内又は隣接県に確保すること、行政サービスが分断されないよう、避難先が複数の市町村となる場合は、避難先市町村が一体的にまとまるようにすること、といった基本的な方針のもと、各市町村の学校等の体育館や公民館などの収容能力をもとに、県内外の避難先市町村の割振りを行ったところでございます。
これに基づき、避難元市町村では、地域のコミュニティを分断しないよう、可能な限り避難地区毎に同一自治体とするなど調整を行っているところです。
また、避難に際して必要となる食糧や毛布をはじめとする必要物資につきましては、県や避難元市町村が備蓄する物資を活用しますほか、不足する場合は国や避難先市町村に要請して迅速に確保することにより、生活環境の整備を図っていくこととしております。
しかしながら、避難所における生活は、環境の変化による住民の心身の機能低下を招き、また、避難所の多くが学校の体育館であり学校教育への支障も来すことなどから、避難所での避難期間は長くても1か月程度が目安と考えております。
この間に、国や避難元市町村とも連携し、ホテルや旅館等への移動、応急仮設住宅の迅速な提供、公営住宅、賃貸住宅等の活用やあっせんを行うことで避難所での避難期間を可能な限り短くし、住民の方々が少しでも安心して避難できる環境を提供してまいります。

もう少し具他的に伺います。
例えば、水戸市民27万人のうち、4万人がつくば市避難となっています。4万人の根拠は、つくば市内の避難所の床面積を1人2平方メートルで割った数字です。2平方メートルといえば畳約1帖分。つまり、800平方メートルの学校体育館に400人入れる計算です。寒さ暑さの対策もない、シャワーもない、トイレは足りない、こんな場所に1ヵ月避難するという県の計画です。
私は、つくば市の危機管理課に話を伺いに行ってきました。2平方メートルでは通路が取れない、荷物は置けない、救援物資の置き場や炊き出しスペースもないと、つくば市では福島事故の時の避難の受け入れ、常総水害の時の経験をもとに、有効面積は7割とし、それを1人3平方メートルでと計算。その結果、最大でも1万5千人しか受け入れられないと話しています。4万人という県の数字は机上の空論です。
これは、水戸市とつくば市に限らず、96万人すべてにあてはまる問題です。4万人が実際には1万5千人なら、県内40万人の避難は実際には15万人しか確保できないことになります。見直しが必要だと知事は感じないでしょうか。

【大井川知事】
1人あたりの面積については、国において目安となる面積の特段の定めはありませんが、避難所は一時的な体制を前提とし、他県の例も参考にしながら必要となる居住スペースを確保することとしたものでございます。なお、応急仮設住宅の迅速た提供、公営住宅、賃貸住宅等の活用やあっせんを行うことにより、避難所での避難期間を可能な限り短くしてまいりたいと思っております。

避難をする県民に、子どもやお年寄りに、過酷な避難をせよ、というのがいまの県の計画ではないでしょうか。
つくば市長は「再稼働で事故を起こしたら、市民を守れないし、避難者の対応もしきれない。そういうリスクは取れない」と再稼働反対の姿勢を示しました。知事の責任はもっと大きく重いものです。住民避難ひとつ見ても、東海第2原発は廃炉にすべきだと考えます。

(2)使用済核燃料への対応
しかし、再稼働しなくても大きなリスクがあるのが原発です。そこに核燃料があるかぎり危険性は消えません。 
資料2をご覧ください。
東海第2原発にある核燃料を示したものです。原子炉建屋の高い位置に燃料プールがあり、そこに、使用済燃料が1,250体、再稼働時に使用するものが764体、使っていない新燃料が188体で計2,202体。許容量は2,250体ですから、現在ほぼ満杯です。
さらに敷地内の貯蔵施設にある乾式キャスクには、使用済燃料が915体入っています。あとは空のキャスク2基の他、今後7基つくるとしています。
仮に再稼働させた場合、増える使用済燃料をあと何年貯蔵できると聞いているのか伺います。

【大井川知事】
東海第2発電所に貯蔵されている使用済燃料につきましては、使用済燃料貯蔵プールに燃料集合体として1,250体、乾式貯蔵施設に915体、合計2,165体貯蔵されており、貯蔵容量2,523体に占める割合は8割を超えております。
仮に、東海第2発電所が再稼働した場合は、事業者の試算によりますと、約5年の運転により、貯蔵割合が96%となり、概ね設備容量に達するとの見通しが示されております。

あと貯蔵できるのは約5年。事業者が県にそう答えたということです。
20年の運転延長をしながら、使用済燃料が敷地内では後5年しか貯蔵できない。矛盾すると感じないでしょうか。

【大井川知事】
東海第2発電所において貯蔵されている使用済燃料につきましては、今後は、発電所敷地内に加え、青森県むつ市に建設中の乾式貯蔵施設において貯蔵する計画となっておりますことから、当面の使用済燃料の貯蔵能力は確保されているものと承知しております。

むつ市の貯蔵施設はまだ稼働できておりません。そしてその貯蔵施設から最終的に運ばれる六ケ所再処理工場は、放射性廃液をガラス固化する工程での深刻な不具合をはじめ、度重なる故障など度重なる困難により操業開始を20回以上延期して、いまだに本格稼働が見通せません。仮に国や原電が言うように青森での施設が稼働できても、最終的な高レベル廃棄物、地下深くに埋めるという地層処分もまったく展望が示せていません。

(3)県独自の検証作業と県民意見の反映
そこで最後に、県独自の検証と県民意見の反映について伺います。
県の原子力安全対策委員会での科学的・技術的な原子炉の安全対策だけでなく、事故が起きた時の被害の大きさや地域経済への影響、避難計画の実効性、自治体財政への影響など、県の検証にはこれまで以上に関心が高まります。
委員会の開催日時をもっと早く県民に知らせ、原子力規制委員会のようにネット中継し、議事録は1週間以内に公表するなど、県民への情報提供を広げる必要があると考えます。
こうした県の検証作業をどう進めていくのか、所見を伺います。

【大井川知事】
東海第2発電所の再稼働問題につきましては、県民の安心・安全の観点から慎重に判断してまいりたいと考えており、これまでも述べてまいりましたとおり、施設の安全性や原子力防災体制の構築を図りながら、これらの情報を県民に適切に提供した上で、県民の声にしっかりと耳を傾けていくことが大変重要であると認識しております。
このため、施設の安全性については、県原子力安全対策委員会において県独自の検証作業を進めておりますほか、原子力防災体制については、国や県、関係市町村等で構成する東海第2地域原子力防災協議会作業部会において、様々な課題について徹底した検討を行っているところであり、その実効性についても、訓練や外部の専門家からなる原子力災害対策検討部会などを活用しながら、しっかりと検証してまいりたいと考えております。
また、原発の位置づけや使用済燃料対策といった国のエネルギー政策に関わる問題や、再稼働の有無に伴う地域経済への様々な影響などにつきましても、再稼働問題を議論する上での重要な視点であり、また、県民の関心も高いところと考えられますことから、県といたしましては、必要な情報把握を適切に進め、県民に情報提供するとともに、県民の声にしっかりと耳を傾けてまいりたいと考えております。

先日、原子力規制委員会の判断に待ったをかけたのが広島高等裁判所です。伊方原発に対する火山の影響を重視し、「原発の立地は不適切」と規制委員会の適合判断を「不合理」としました。問題となったのは、130km離れた阿蘇山からの火砕(かさい)流です。
対して、東海第2原発では、影響を及ぼし得る那須岳など13の火山があるとされますが、規制委員会の審議は極めて不十分と言わざるを得ません。
本来なら、司法に頼らず、行政や政治が廃炉を政策決定すべきです。日本原電は経営を優先し、国は再稼働を優先する以上、安全最優先で判断できるのは自治体です。
知事は、県民意見をどのような方法で反映させるのか。それは来年行うのか。2年も3年も先の話ではないと思いますが、再度お示しください。

【大井川知事】
今後の再稼働申請、それから安全規制の申請の結果を見ながら、慎重に私共の検証作業を進めたうえで、時期を慎重に図りながら、県民意見を慎重に聴取していきたいと考えております。

最後に確認の質問ですが、住民避難の実効性が確保されなければ、再稼働はあり得ない。いかがですか。

【大井川知事】
実効性のある避難計画を作るべく、努力していきたいと思っております。

水戸市内のある小学校で原発事故の避難訓練が行われました。参加した男の子は、感想をこう言いました。「原発がなければ、原発事故は起きないと思いました」。 
この子どもたちの、県民の声に応えていただきたいと思います。


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