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協同組合報vol.180
2018年4月号

声をかけ、話を聞くことを大事にして

健友会 やまと診療所 松本 亜矢子

 やまと診療所は中野区の西側に位置し、JR中央線の高円寺駅が最寄りとなります。基本は内科中心ですが、家庭医がいることで、ワクチン予防接種の2ヵ月の小児から100歳近い方まで利用してもらっている診療所です。また、日本語学校が近くにあるため、外国人の方も時々見えたりします。

 最近では診療所の前の道路拡張工事が行われ、昔ながらのお惣菜屋さんや、雑貨屋さんが店を閉じたり、住宅の取り壊し等で、街並みが少し変化しつつあります。

●突然の別れ

 Aさんは慢性疾患はなく、健診で診療所を利用するくらいの方でした。突然夫を亡くし、その後から抑うつ状態となり、動悸、胸部圧迫感、不眠等を訴え来院しました。次の日もまた次の日も、食事が摂れないということで診療所に見えました。抗不安薬も処方されたのですが、身体的な症状の訴えが続き、本人の希望もあり、検査をしながら原因の消去を行っていきました。やはりこれといった原因はないため、精神科の受診を勧めることとなりました。

●専門への受診

 精神科を受診してからは、診療所へは顔を出さなくなりましたが、2ヵ月がたったある日、ふと顔を出して「やっぱりここの先生に診てもらおうと思って…」と話すAさんの表情は曇りがちでした。待合室では聞かれたくないこともあるだろうと考え、待合室を出て片隅に寄り、話を聞き始めました。すると、Aさんは「精神科に受診して、薬を出してもらったが、体に合わず、電話で相談したけど、『直接診察しないと変更できない』と言われた」と、涙目になりながら話し始めました。

 そのころの身体的な症状の一つに、寝汗をかくことがあり、そのことも精神科の医師に相談したのですが、本人の心配をしてくれるどころか、軽くあしらわれ、さらに落ち込んだそうです。気持ちが晴れるどころか、ますます気持ちが重くなって…そんなとき、「娘から、もう一度診療所の先生のところに相談に行ってみたら?と言われて来てみたの…」と、心の内を話してくれました。そして、亡くなった夫も、「先生はよく話を聞いてくれた」と娘さんに言っていたことを思い出したそうです。

●診療所への信頼

 その日から「眠れない、寝汗が出る、昨日聞きたいことがあったのに、聞くのを忘れてしまって…また来ちゃった。馬鹿みたいでしょ」などと言いながら連日のように受診しています。診察が終わり待合にいるときに、私のほうから、「先生が外来に出ていない日でも、ここに来て安心するならいつでも来ていいですよ」と声をかけると、「そうなんですよ、診療所に来ると安心するの」と笑みもこぼれるようになりました。何気ない会話の中で、夫とよく映画に行ったことや出かけたときの話もするようになり、いい思い出としてお話ができていると思います。

 大切な家族を亡くし、残された人の悲しみは計り知れないものがあると思います。Aさんはもちろん、他の患者さんに対しても、外来中の少しの合間をみて、気にかけて、声をかけること、話を聞いて共感することをこれからもしていきたいです。

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