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協同組合報vol.178
2018年1月号

インフォメーション2

転居が変える高齢者の健康

中野共立病院 医学生室 牧野 大志

 昨年8月末〜9月にかけて、健友会の有志職員と、つながりのある医系学生(医学生・看護学生・薬学生・リハ学生)が、「転居(引っ越し)が高齢者に与える健康への影響」を調べようと、高齢者へのインタビュー活動にとりくみました。指揮をとったのは理事長の伊藤浩一医師。90代女性の患者が40数年間住み慣れた住居から立ち退きを請求され、裁判で意見書を書いてほしいと依頼されたことから、研究の発想が生まれました。

●入居者20人から転居の経験を聞く

イラスト 今回の調査では、健友会が相談契約をしているサービス付高齢者住宅(2016年開設)に行き、入居者20人からそれぞれ1〜2時間ほどのお時間の協力をいただいて、これまでの人生や転居の経験を対面で聞き取りました。平均年齢84歳。要介護3の方からまだ現役でバリバリ仕事中の方まで、さまざまなタイプの入居者のお話を聞きました。

 独居の入居者のうち3人に2人が、過去に配偶者の介護と死別を経験し、その多くは子や他の親族には自分の介護負担をかけたくないとの思いから施設入居をしていました。 

●転居による影響は

 転居の影響は、転居前後の身体的、精神的、社会的変化について尋ねることで考察しました。転居後、「転倒・不眠・頻尿などで体力の衰えを感じるようになった」「部屋も狭くなり、『これから待っているのは死だけ』との思いが脳裏をよぎるようになった」「友人と会えなくなり、うつ傾向や虚無感・孤独感が増した」などのエピソードが多く聞かれました。

 一方、施設入居をきっかけに家族関係がより深まったり、趣味などの新しい社会関係ができたことで幸福感が増したという人も少なくありませんでした。

 要介護度が高く行動範囲の狭くなってしまう高齢者ほど、転居が社会関係をがらっと変え、心身の健康にさまざまな影響を及ぼしている傾向が見られました。 

●どんな社会的資源が必要か

 聞き取り参加者からは、「戦争体験が大きな位置を占める高齢者の人生そのものを聞くことができ、良い経験になった」「今回の結果から、高齢者が前向きに過ごすためにどんな社会的資源があればいいのか考えたい」などの感想がでました。サ高住利用者は比較的経済的な心配の少ない高所得(資産)層であるため、中〜低所得(資産)層の高齢者からも調査を行いたいという意見も。

 実行委員会では昨年11月に調査の報告会を行い、現在文章化の作業を行っています。

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