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協同組合報vol.174
2017年12月号

認知症にまつわるエピソ−ド

農大通り診療所 師長 竹村 枝美子

 長生きできる時代となり、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になるといわれています。外来や往診での認知症にまつわるエピソ−ドを紹介します。

 外来では、月に何回も受診しては「薬がない」と言う人、同じことを繰り返す人、次回の約束を忘れている人など、気になるときは家族に連絡したり、独居の人には、地域包括支援センタ−へ連絡して関わりを持ってもらったりして対応しています。

●日に何度も電話をかけてくるAさん

イラスト 独居女性のAさん、81歳。2年前、外来が中断がちになり、地域包括支援センターに相談し、脳のMRI検査と介護保険導入の手続きを依頼しました。紹介した専門外来でアルツハイマ−型認知症と診断され、抗認知症薬が開始になりました。同時に訪問診療を開始しました。

 Aさんは、一人暮らしの不安や、めまい症状の訴え、物取られ妄想、義理の息子への不信感、金銭管理への不安などから、たびたび警察へ電話をかけます。ケアマネジャーへは「食べるものがない、買い物に行けない」と電話、診療所へは「先生いる? めまいがするの、私の病気は何? 治らないんでしょう?」と、日に何度となく電話がかかってきます。傾聴し対応していますが、今のところホ−ム入居は望んでおらず、後見人制度の利用も行政に相談しているものの進んでいません。

 Aさんの生活がより安定し、今の生活が少しでも長く続けられるよう、在宅介護・訪問看護・医療とチ−ムで支えています。

●長期入院後にグループホームに戻ったBさん

 グル−プホ−ム入居5年の女性Bさん、87歳。今年8月に転倒し右大腿骨骨折、手術を行い、胃潰瘍による下血を合併し、1ヵ月半入院しました。家族の強い希望でホ−ムへ戻りましたが、全く食べられず、スタッフも困り、娘さんも長期海外のため、帰国するまでの間、点滴を施行することにしました。しかし、ホームではスタッフも足りず付きっきりもできないため、特別指示書で訪問看護に皮下注射をお願いしました。

 娘さんが帰国され、現状を話しました。娘さんは「母は、呆けたら積極的な延命治療は望んでいないと言っていたので最後までホ−ムで」と希望されました。皮下注射だけでは限界があることを伝え、施設側もこれ以上の医療行為がなければ、最後まで看る覚悟をされました。娘さんにも、毎日とは行かなくても、食事介助や好みの差し入れなど協力をお願いしました。

 一時は、施設看取りも近いのではと頭をよぎったのですが、週2回の皮下注射を継続し、家族の協力もあり、また、スタッフの日々の努力の甲斐もあって、Bさんは細々とではありますが経口摂取ができるようになり、皮下注射も離脱できました。娘さんと一緒にいるときのBさんの笑顔がとても印象的で、家族の協力なしには回復もなかったのではないか、家族にとっても最後になるかもしれない母との貴重な時間なのではないかと思っています。 

 誰にでも訪れる老後…安心して認知症になってもいい社会であって欲しいと願っています。

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