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協同組合報vol.106
2012年1月号

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トピックス インタビュー

“その人らしく…”を追求して10年

〜特別養護老人ホーム「葛飾やすらぎの郷」〜

出席者
中山美千代さん(社会福祉法人すこやか福祉会 葛飾やすらぎの郷 施設長)
村井 重士さん(        同          葛飾やすらぎの郷 事務長)
・インタビュアー 北原恵美子社会福祉法人東京さくら福祉会 常務理事)

 すこやか福祉会は日本でもトップクラスの介護事業を展開しています。その実践を学ぶために、同福祉会の代表格ともいうべき「やすらぎの郷」に伺いました。

地域になくてはならない施設として

10周年記念祝賀会の職員によるロックソーラン節
10周年記念祝賀会の職員によるロックソーラン節

北原● 「住み慣れた地域で暮らし続けたい」と願う高齢者が増え続けていますが、それを実現するためには、医療だけではなく、介護・住まい・地域福祉の充実が必要です。そこで今日は、介護・福祉の分野で先進的に取り組んでおられる「すこやか福祉会」の「葛飾やすらぎの郷」の実践をお聞きしたいと思います。(東都協議会全体の事業所数

 「やすらぎの郷」は去年9月に10周年を迎えました。祝賀会に私も参加させていただきましたが、大盛況でしたね。特に地域の方が大勢参加されていて、「私もここに入りたいと思う」「職員教育が行き届いているよね」というような会話が聞こえてきました。地域に密着している様子が伝わってくる祝賀会でした。

中山● 入居者のご家族や地域の方々など大勢の方に来ていただき、本当に嬉しかったですね。「やすらぎ」を退職した職員や退所されたご家族の懐かしい顔もたくさん見受けられました。そして、心配したことや嬉しかったこと、一緒に作り上げてきたことなどが思い出され、本当にたくさんの歴史が私たちの力になっているのだということを再確認しました。

村井● この地域には共栄自治会という自治会があって、「やすらぎの郷」も入会して、日頃の清掃や消防訓練などの行事に参加したり、葛飾商業高校の運動会に呼ばれて参加したりしています。

 「地域に開かれた施設づくり」と言いますが、こちらが「開いていますよ」と言っても入ってきてくれるわけではありませんから、こちらから参加してつながりをつくってきました。ボランティアの方も大勢来てくださっています。

 それから、「すこやか福祉会を支援する会」という会があって、要望や意見をお聞きしたり、憩いの場のコーヒーコーナーを担当してくださったり、年に1回のバザーも主催してくださっています。

ショートステイ、デイサービスを併設

北原● 施設の全体を簡単に教えていただけますか。

村井● 3階建てで、1階が通所介護事業所、2階3階が住まいになっています。80床が特養、16床がショートステイです。

北原● ショートステイ、デイサービスが併設されているのがいいですね。デイサービスに来た方がそのままお泊まりもする、お泊りデイの方はいらっしゃいますか?

中山●お泊りデイサービスはやっていません。自由に使えるサービスがあることは助かると思いますが、尊重された生活が保障できる環境、職員体制の整備、それを維持できる介護報酬は必要と思います。

 ショートステイ、デイサービスの併設は強みですね。いつも通いなれた施設、見慣れた顔の職員もいるため利用者も安心ですし、昼の様子だけでなく夜間の状況も家族と情報を共有でき、デイサービス、ショートステイとの連携ができることなどは利用者、家族の安心につながります。職員もたくさんの情報を得ることができます。

職員32人全員常勤

北原● 職員は何人いらっしゃいますか?

中山● 2階3階とも15人+介護責任者1人、計32人で、全員常勤です。あとは非常勤を流動的に配置しています。また、清掃、洗濯は完全に委託していて、介護職は介護の業務に専念できる環境をつくっています。施設によっては、掃除や洗濯を介護職が兼ねて人件費を抑える方法をとっている所もあるようですが、私たちは「介護の専門性を活かす」ということを重視しています。

北原● ほぼ100%常勤ということは、介護の質が違いますよね。

中山● そうだと思います。常勤で採用すると、退職率は低いですね。比較すると中途採用は退職率が高いです。

 ただ、3対1では厳しいですから、3対1をどう変えていくか、それに見合った報酬がもらえるようにどう変えていくかが大きな課題です。人を介護するには人手が多くなければ十分なことはできないということを実感しています。

経営は厳しい

左から北原さん、村井さん、中山さん。後ろはスタッフのメンバー(やすらぎの郷にて)
左から北原さん、村井さん、中山さん。後ろはスタッフのメンバー(やすらぎの郷にて)

北原● 経営面はどうでしょうか。

村井● じつは経営は厳しくて、12月末の時点で600万円の赤字です。やはり大きいのはベッドの稼働率ですね。入院されたりお亡くなりになったりで、時々ベッドが空いてしまう。空いたベッドはショートステイで活用しようと、待機者の方にお電話するんですが、その待機者の方自体が減ってきている現状です。待機者の方を増やす経営努力をしなければならないと思っています。

中山● 昨年、葛飾区に「ショートステイを減らしてほしい。これでは経営が成り立ちません」と要望しましたが、担当者に「葛飾区の住民に限定しなくてもいいわけですから、広域にショートステイの営業努力をしてください」と言われて。私たちもショートステイの空き情報を定期的に出したりして、努力はしているんですが経営は厳しい状況です。

 今年度の経営が厳しいのは、入院が非常に多いからです。12月初めの頃は毎日10人入院です。80人中10人ですから、経営が成り立っていきません。ショートステイもどんなに頑張ったとしても、全部ベッドが埋まるわけではないし、待機者も減っています。

 じつは10月〜12月の3ヵ月で12人が退所されています。そうなると、次に入っていただく方を探さなければいけません。待機者の方にお電話をするんですが、これがなかなかつながらなくて。つながったとしても、すでに他に入所されていたり、お亡くなりになっていたりで、1日50件ぐらい電話をして、つながって書類を送らせていただくのは2人か3人ですね。こういう仕組みがいいか悪いかは別にして、これが特養の厳しい現状です。

北原● グループホームもそうですが、入院があってもすぐ空きベッドを活用するということはできませんから、施設というのは結構大変ですね。

東都協議会の介護・福祉事業所の数
特別養護老人ホーム 1施設 老人保健施設 1施設
通所リハビリ 3事業所 通所介護 11事業所
訪問介護 18事業所 訪問入浴 1事業所
グループホーム 8事業所 小規模多機能型居宅介護 4事業所
認知症対応型通所介護 2事業所 地域包括支援センター 3事業所
居宅介護支援事業所 15事業所 訪問看護ステーション 11事業所
その他
 福祉用具貸与、高齢者住宅、介護福祉専門学校、保育園、学童保育クラブ


「最期はここで死にたい」

北原● 3ヵ月で10人の方が亡くなられたということですが、看取りはどのくらいありますか?

中山● 3分の2はここでお亡くなりになります。ドクター体制としては、すべての利用者のカルテが四ツ木診療所にあり、四ツ木がホームケア診療所と連携をとって、夜間亡くなった場合も来てもらえる体制をとっています。

北原● 看取りについて、ご家族と日頃から話し合って、了解をとっていらっしゃるんでしょうね。

中山● 看取りの基本的な考え方を入所のときにお聞きし、要望書を書いていただきます。その後もサービス担当者会議で、同じように看取りについてお聞きしています。ただ、「最期はやすらぎの郷で死にたい」とあっても、救命処置はしてほしい、救命は病院で受けたいとおっしゃる方もいますので、看取りの経過段階を私たちが理解し、整合性をどうとるかが重要になります。

北原● 最期はここで自然に看取ってもらいたいという思いがあっても、いざ近くなると気持ちが変わってくるということがありますからね。それでトラブルになったりすることもあるようですが、「やすらぎの郷」ではトラブルはないですか。

中山● 迷われるのが普通ですよね。何回か入退院を繰り返す過程の中で、「最期までどう生活していったらいいか」というところは、ご家族にここでの生活の様子をお話しすることもあります。特に胃ろうを作る判断をするときとか、入院が長期化してもなかなか良くならないときとか。24時間365日一緒に生活しているのは私たち介護現場の職員ですから、病院の倫理委員会で話し合いをするときも、私たちの意見を参考にしていただいています。

 病院の倫理委員会で話し合ったあるケースでは、肺炎で入院され、点滴しても入らないし、口から食べられないし、胃ろうも作れないという状態で、「どうしなくてもいいから、『やすらぎ』に1日でも早く帰してくれ」というご本人の希望でここに帰ってこられました。笑顔も見られ、ご家族も夜は泊まられて、3日目に亡くなりました。

 最期はここで死にたいと希望される方がたくさんいらっしゃいます。病院で亡くなっても、ここに戻ってきて、ここから出棺する場合もあります。

北原● 最期までその人に寄り添っていくということですね。

職員を育てる

運動会でパン食い競争
運動会でパン食い競争

北原● 職員を育てるという点では、どんなことを心がけていらっしゃいますか。

中山● 事例検討は各事業部で毎月のように行われています。職員研修も計画立案し実施しています。初めは、実施することが目的だったかもしれませんが、少しずつ向上していっています。新卒は入職前研修を3月に必ずやります。あとは事業部によってそれぞれ研修を設けています。共通の部分については、協議会の中に教育研修機関があり、現場に沿って何が必要なのかということは、毎年研修委員会が企画して、全員対象でやっています。

 講師も今までは役職など決まった人がやっていましたが、今は介護職みずからが講師になってやっています。

北原● 「アンダー35」という、協議会独自の会がありますね。

村井● 35歳以下の青年職員が中心となって、横のつながりをつくり、自主的に活動を行っています。学習会や国会研修等にも取り組んでいます。

北原● 体系的な教育システムはさすがです。しかも計画的に昼間に組み込み、必ず参加するようにしていますね。

中山● どの研修に出たか、個人評価のところでチェックしていますので、それを異動するときに持っていきます。基準にのっとって、全部個人ファイルになっていて、どの研修をいつ受けたか、一覧になっています。

 「やすらぎの郷」は研修機関という役割もになっています。他の事業所の責任者は、「やすらぎ」から異動した人も多いですね。ただ介護職の管理者ということでは、「やすらぎ」も介護職員が管理者になるようにするのが急務の課題です。理事会もオブザーバーには入っていますが、理事にはまだ誰もなっていませんので、ここもこれからの課題です。介護職がきちんと自分の意見をもち発言するということが大事だと思います。

北原● では、最後にひとことずつお願いします。

中山● この仕事は大変だなと思う半面、利用者の方が、毎日の食事もそうですし、コンサートやクリスマス会などの行事のときも、とても喜んでくださって、「ここに来て良かった」と言ってくださるときは、「ここで働いてきてよかったな」と思います。利用者さんの生きる姿を見せていただいて、学ぶこともいっぱいあります。誰でも安心して最期まで自分の住みたいところで、自分らしく暮らしたい。この願いをかなえるために、もっと個別性を出した支援ができるよう努力していきたいと思います。もちろん、安定したケイエイで……。

村井● 冒頭にもありますが、「葛飾やすらぎの郷」は、開設して10年を超えました。この間社会情勢の変化や介護保険の改定等、私たちを取り巻く環境が大きく変わってきています。そのような中でも私たちが大切にしている「住み慣れたまちで生活ができる」ように、職員全員で取り組んでいく必要があると考えています。

 また、施設設備の老朽化や故障が多くなってきています。金額も大きくなるため、計画的な営繕を行っていきたいと考えています。いつまでも、地域の人たちにとって必要とされる施設であり続けられるように、今まで以上に努力をしていきたいと思います。

北原● 地域の方たちに支えられ、ご利用者、ご家族に寄り添う介護を実践されているとあらためて感じました。4月の介護報酬改定は厳しいものになりそうですが、理念を忘れずがんばっていきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

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