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協同組合報vol.103
2011年10月号

インフォメーション2

インタビュー 診療所で電子カルテがスタートしました

おおくぼ戸山診療所 所長 星野啓一さん


●なぜ診療所に?

 ――この9月から、おおくぼ戸山診療所で電子カルテがスタートしました。導入のきっかけは何でしょうか?

電子カルテ
電子カルテ

星野◆ 東京民医連の病院で電子カルテが導入されていないのは、じつは東京勤医会だけです。PACSという画像保存システムは、東葛、代々木の2病院に導入されており、内視鏡、X線、CTなどの画像はすべて電子化されています。診療所では「おおくぼ戸山」と「野田南部」に入っています。しかし、電子カルテはまだでした。

 なぜ病院より診療所に先に導入するのかというと、診療所は病院に比べて規模が小さいですから、病院のように会議を何日も経ずとも、所長と師長と事務長の3役で決めれば動いていきます。それに、診療所は外来業務ですから、カルテの出し入れ、伝票がなくなるメリットは一番実感できます。

 病院はそう簡単ではありません。外来、入退院、病棟など業務が複雑ですし、看護師さんの看護記録もありますから、電子カルテの完成度が高くないとうまく稼働しません。

 そこで、パイロットケースとして「おおくぼ戸山」で導入し、実際に使う中で問題点を整理し、他の診療所にも展開していく。さらに、ノウハウを蓄積したうえで病院でも導入していこうと理事会で決まったわけです。

 病院でも使いやすいシステムを意識して、20種類以上に実際に触って、カルテを決定しました。

●どんなメリットがある?

 ――電子カルテにはどんなメリットがありますか?

「電子カルテ導入にあたって、20種類以上に実際に触って検討しました」と語る星野所長星野◆ スタートして1ヵ月半ですので、試行段階ですが、まず「もの」に縛られなくなります。カルテの出し入れがなくなるメリットは、外来ではもちろん、患者さんから問い合わせがあったときにも実感しています。これまでは事務にカルテを出してもらい、折り返し電話をするという2段階の応対でしたが、今は端末をたたけば、すぐにカルテが現れますから、それを見ながら応対できます。

 それから、モニター上でカルテを開き、必要な情報を確認したり記載したりすることが容易になりますから、各職種のカルテの共有化、情報の共有化が進みます。

 ――往診でもメリットはありますか?

星野◆ はい。ノートパソコン一つで、何人もの患者さんのカルテを持ち出せますから。今までは定期薬処方箋を事前に打ち出してもらっていました。往診先で痛み止めが欲しい、浣腸が欲しいとなった場合は、紙に書いて、それを渡していました。電子カルテなら、その場でカルテのオーダー修正をして、それをプリンターで印刷して渡すことができます。

 今はまだ紙カルテも持参していますが、法人のパイロットケースという役目がありますので、どういう方法が一番いいか、企業のSEさんに往診に同行してもらいながら、システムを構築してきました。できれば多くの往診患者カルテを持ち出し、往診途中で呼ばれても対応できるようなシステムを作りたいと考えています。

●患者さんにはどんなメリットが?

電子カルテを使いながら診療
電子カルテを使いながら診療

 ――患者さんにとってのメリットはどういうところにありますか?

星野◆ 患者さん本人をまるごと診る、その家庭やご家族をまるごと診る。そして、病気を治すというより見つけていく。それが診療所の役割です。ですから、データの蓄積がとても大事になってきます。

 例えば、乳児検診で診たお子さんのワクチンの接種をしたり、小学校の入学検診をやったり、中学・高校時代に病気や怪我を診たりしながら、お子さんの成長に寄り添っていく。やがて成人して、結婚して、お子さんが生まれ、そのお子さんも診ていく……。これが診療所の面白さであり醍醐味ですが、紙カルテだと、20年間のカルテを保管するということは不可能です。電子カルテならば、何十年前のカルテでも、データが壊れさえしなければちゃんと見ることができて、いつワクチンを打ったか、副作用があったかなどもわかります。家族の情報もアクセスしやすくなります。お母さんにはどんな病気があり、おじいちゃんは何が原因で亡くなったかといったことまで出せるようになると、診療所の医療の質はぐんと向上します。

 ただし、今回導入された電子カルテは病院用のカルテを進化させたものですので、カルテから家族も見えるというような機能がなく、そこは歯がゆいところです。家族のカルテもすぐに見ることができるというのが、電子化のメリットになりますから、そういうニーズを電子カルテの供給側に発信していきたいと思っています。

 ――患者さんの数はどのくらいでしょうか?

星野◆ 私の外来では半日で40〜50人の患者さんを診ます。非常勤医師の日もありますので、月にするとのべ1,200人ほどになります。

●これからの構想は?

  ――これから、どんなことをやっていきたいと考えていらっしゃいますか?

星野◆ ゆくゆくは代々木病院とサテライトの診療所、東葛病院とサテライトの診療所ぐらいは同じ電子カルテシステムでデータが共有できるようになればいいなと思っています。これは技術的には可能ですが、カルテは最重要の個人情報のため、セキュリティの問題をクリアしないと実行できません。これは今後の法人全体の課題になってきます。

 私は東葛病院で呼吸器の専門医として勤務したあと、「おおくぼ戸山」の所長になって3年目になります。患者さんが悪くなると病院にお願いするわけですが、診療所から見ると、病院に入ったあと、患者さんやご家族にどんな説明がされるのか、どのような方針が立つのか、不安に思うことも多いんです。代々木病院との関係では、週1回当直をやっていますので、そのときに患者さんを回ったりカルテを見てコメントしたりできますが、他の病院にお願いした場合は何もできません。患者さんと長く関わっている診療所の医師が病院の医療に対しても何らかのコメントができると、病院も在宅での情報が得られ、診療所の医師も診療に関わっている満足感が得られ、患者さんのメリットにもつながります。

 つまり、こうした情報共有をどう構築するかです。病院が電子カルテになれば、「もの」に縛られませんから、紹介元の医師が参照したり記述したりできるような「オープンカルテ」も構築できるようになります。セキュリティの問題は、紹介元の医師に紹介患者のカルテへのアクセス権だけを与えるというふうにすれば、解決できます。

 これからは診療所の側も、患者さんに継続して責任をもつというスタイルを持たなければ、選ばれる診療所にならないと思っています。

 ――ありがとうございました。

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