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あたらしい綱領と民医連のはなし
東京民医連事務局長 千坂 和彦 さん
新入職員研修のトップに東京民医連事務局長・千坂和彦さんの記念講演が行われました。紙面の都合上、講演後半の「民医連が社会保障を前進させた取り組み」を要約して紹介します。
民医連は「民医連綱領」に基づいて、患者さんに寄り添う医療・介護活動を日々行っています。と同時に、様々な困難を抱えている方々への支援活動、相談活動に力を入れ、理不尽な制度そのものを変えるたたかいにも取り組んでいます。その中のいくつかを紹介したいと思います。
1. 患者、利用者になれない方々への支援活動
3月12日の東京新聞1面トップに「受診遅れ33人死亡」という大見出しが載りました。これは、民医連が調査結果をもとに行った記者会見を報じたものです。
日本は国民皆保険ですから、すべての人が保険証を持っていることになっています。ところが実際には、生活が苦しくて保険料が払えない方たちがいて、滞納すると、有効期間3ヵ月の短期保険証に変更され、さらに滞納が続くと資格証明書となり、窓口でいったん全額を払わなければならなくなります。そうなると、風邪で受診しても、1万円ぐらいかかる。資格証明書、あるいは保険証がないと、よほどのことがない限り受診しなくなります。そうした状況が背景にあり、手遅れで死亡された方が民医連の調査で全国に少なくとも33人いることが判明しました。
「関東水俣大検診」を実施後、都庁で記者会見を行う
この会見は大反響を呼び、山梨日日新聞、沖縄タイムズ、しんぶん赤旗、共同通信、韓国のハンギョレ新聞などに掲載され、テレビ朝日でも取り上げられました。
民医連の全国調査は今回で3回目です。皆保険の国であるにもかかわらず、こういった悲惨な現実があること、民医連は「いのちは平等」の旗を掲げて、こういう制度を変えさせる運動をすすめていることを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。
2.水俣病和解合意に大きな力を発揮
3月30日付読売新聞1面トップに「水俣病和解合意」「被害者救済決着へ」という記事が載りました。この水俣病和解合意にも民医連が大きな力を発揮しました。
この間の取り組みを簡単に説明しますと、加害企業チッソの責任を免罪する水俣病特別措置法が、反対する多くの患者さんの声に背を向け、去年7月に成立しました。それに対して、水俣大検診実行委員会は20年ぶりに熊本水俣を中心に、約1,000人の検診を実施しました。この検診に全国から医師100人をはじめ700人の民医連職員が参加し、大きな力を発揮しました。さらに今年の2月7日には関東水俣大検診を中野共立診療所で実施し、49人が受診し46人が水俣病の症状ありと判定されました。東京民医連からは医師6人を含む約100人の職員が参加し、マスコミ各社で大きく報道されました。
こうした運動が世論と国の対応を一気に変え、和解内容を大きく改善させたのです。何も行動しなかったなら、狭い範囲の患者さんしか救えなかっただろうと思います。
3.リハビリ日数制限のたたかい
2006年4月の診療報酬改定で、リハビリの日数制限が打ち出されました。全国のリハビリ関係者が怒り、リハ学会の重鎮である道面教授が撤回闘争の先頭に立ちました。リハビリ中だった免疫学の多田富雄先生(*4月21日死去。編集部)が車椅子で「リハビリ患者見殺しは酷い――弱者は死ねと言わんばかりだ」と抗議行動に立ち上がり、新聞やテレビで報道されました。こうした運動の盛り上がりによって、診療報酬としては異例ですが3ヵ月で再改定を実現しました。
署名は1ヵ月で42万筆、最終的には50万筆になりました。この運動を最初にやろうと言ったのは誰か知らない人が多いと思いますが、じつは代々木病院のリハビリ室の職員です。この制度はおかしい、何とかしたいという熱意から出発し、私たちは様々なルートを使って、運動をつくりあげていきました。「お上が決めたことだから」とあきらめるのではなく、「おかしい」と思ったら声をあげていく。これが民医連です。
4.「後期高齢者医療制度はいますぐ廃止!」の運動
民医連は「後期高齢者医療制度はいますぐ廃止せよ!」と、全国で運動を盛り上げてきました。マスコミでも大きく取り上げられ、運動は大きく広がって、政権交代もあって、廃止法案が参議院で可決されました。ただし、3年後に廃止すると言いだしていますから、「4・3集会」のようないますぐ廃止という運動を盛り上げていく必要があります。
5.派遣村
民医連から多くの職員がボランティアで「派遣村」にかけつけました。村民は500人に膨れ上がり、1月4日には二百数十人が受診しました。健康状態がものすごく悪くて、受診された6割の方に何らかの症状がありました。
派遣社員はリストラされると社員寮から追い出され、仕事と同時に住む所もなくなって路頭に迷うという酷い仕組みです。ヨーロッパでは社会保障が厚くすぐにこういうことは起きません。日本の派遣村は貧困問題を可視化すると共に、世界に衝撃を与えました。
派遣村の大きな成果の一つは、住居がなくとも生活保護がとれることになったことです。それまでは、住居を定めないと生活保護がとれませんでした。派遣村の運動によって生活保護を取得し、救われた人が大勢います。しかし全て解決したわけではなく、今後の運動が大事です。私たち民医連は、貧困をなくし、誰もが人間らしく生きられる世の中をつくっていくために、力を尽くしていきたいと思っています。
6.地域に出ていく運動
冒頭でも言いましたが、私たちは様々な困難を抱えている方々への支援活動、相談活動に力を入れています。写真は、大田区の大田病院の若手医師が「ただいま無料の『労働・生活・健康』街頭相談実施中」という張り紙をして、街頭相談活動を行っているところです。もう1枚は、健友会理事長の高津先生が街頭に立って呼びかけている写真です。
このほかにも、ネットカフェ訪問、地域訪問活動、中断患者さんの訪問活動など、地域に出ていく運動を積極的に行っています。なぜこういうことをやるのかというと、地域に出れば、患者さんや利用者さん、そこに住む人々の実態、苦難が見えるからです。逆の言い方をすれば、病院や事業所の中だけではわからない、地域に出ていってさまざまな活動をやらなければ見えてこないものがあるということです。
先頭に立って街頭相談活動に取り組む大田病院の
若手医師たち
「医療介護でお困りのことはありませんか」と街頭で
呼びかける高津健友会理事長
さいごに
私の話を聞いて、「これから自分の仕事に慣れるだけで不安なのに、社会保障の改善だとか平和の問題だとか、やれるんだろうか?」と不安になった方がいらっしゃるかもしれません。心配ありません。皆さんの先輩にも同じような心境で入職してきた人が大勢いますが、数年で立派な民医連職員としてがんばっています。
「民医連綱領」については、これから1年間学習運動をやりますから、詳しい内容は今後の学ぶ機会を活用してください。「綱領」にありますように、民医連は一貫して弱い者の立場で技術も発揮し運動もしてきました。そのことが現在の大きな発展につながっています。
いま、私たちは時代の転換点に立っています。皆さんの力で民医連の医療・介護・福祉を発展させてください。そのことが日本全体の社会保障を大きく変えていくことになります。私たちも皆さんと一緒にがんばっていきます。ともに奮闘しましょう。(拍手)