受審の意義
病院機能評価・講評
――東葛病院は今年11月18日から20日の3日間にわたって、病院機能評価の再審査を受審しました。まず3日間のスケジュールをお教えください。
【大谷】7人のサーベイヤー(評価調査官)が初日、領域別に書類を確認し、2日目は合同面接、ケアプロセスの病棟訪問4ヵ所、領域別面接、領域別訪問、3日目に再訪問、講評、というスケジュールでした。サーベイヤーは医師二人、看護師二人、事務職3人でした。
――スケジュールをお聞きしただけで、大がかりな審査であることがわかります。それだけの手間と時間をかけて受審する意義はどんなところにあるのでしょうか?
大谷洋子さん
【大谷】そもそも臨床研修指定病院は、病院機能評価を受けていないと認められません。最初に受審したのは2003年10月でしたので、今回は6年ぶりになります。前回のバージョン4は、医療機関の役割や機能を中立的な立場で評価し、その結果明らかになった問題点を改善することで、より質の高い医療サービスの提供に役立てるというものでした。今回はバージョン6に上がって、より具体的にポイントが絞られてきています。特に社会的にも期待が高まっている「医療の質・安全性の向上」の位置づけが強化されています。バージョン4は577項目ありましたが、今回の6は352+療養病棟27項目でした。
どんな審査かというと、簡単に言えば、どういう体制をとって、どういう基準を持っていて、その基準がきちんと運用されているかどうかをみるわけです。前回の受審の際に、東葛病院では基準をきちんと作りました。でも、基準とか手順というのは、自分がやりやすいように、いつの間にか変わっていることがあります。たとえば看護分野における感染の基準では、「一処置、一エプロン」という基準になっているにもかかわらず、現場ではエプロンがつけっぱなしになっていたりしました。「我流」や「あいまいさ」に陥ることが医療事故、ヒアリハットに発展するわけで、そこを克服するためには、きちんと基準に戻らないといけないし、基準の見直しを行わなければならないと改めて思いました。
「自己満足」も戒めなければいけません。病院機能評価は、まず自己評価を行ってから、訪問審査を受けるという課程を経るわけですが、それによって、問題点が把握できるととともに改善への方向性が明確になります。このことが医療サービスの向上につながるわけで、これが受審の最大のメリットといえます。各病棟が自己評価の採点をしましたが、看護部は自己評価が高かったですね(笑)。今の日本における医療機関のスタンダードとは何か。そこから改めて評価・改善することがいかに大切であるか、実際に受審してみて改めて実感しました。
――審査結果はいつ出ますか?
【大谷】12月中に中間評価があります。
今回、訪問審査の講評で厳しい講評がありませんでしたから、ひとまず胸をなでおろしています。講評の中で厳しい指摘を受けると、保留になると言われておりましたので。いくつかの改善点についての見通しもありますので、大きなことにはならないだろうと思っています。
ケアプロセスが最大の難関
すっきりと整頓された機能評価受審前の東葛病院内部
――準備が大変だったでしょうね。
【大谷】前回は初めての受審でしたので、残業代が大幅に増えましたが、今回は前月とほとんど変わりませんでした。本来ならば、少なくとも半年前に模擬審査をといわれていますが、模擬審査をやったのは11月2日で、本格的な取り組みはそれ以降になりました。ですから、実質は2週間ちょっとというところです。もちろん、副総看護師長の二人が機能評価事務局員になって、7月頃から必要書類などはどんどん進めてもらいました。
東葛病院は7対1看護の実現、DPC導入が今年度の最大の課題であり、それを考えると、この日程は妥当な線かなと思っています。なにしろ去年は大幅な赤字を出しましたので、今年は出せないという不退転の決意で臨んでいますから、日常の医療活動はきちんとやると。そして、受審に向けてポイントを絞って、全職員が集中して動きました。それが残業代に反映されているのではないかと思います。
――具体的にはどんな準備を?
【大谷】看護部はケアプロセスに始まり、ケアプロセスに終わったという印象です。なぜかというと、ケアプロセスが最大の難関といわれているからです。なにしろ病院の基準、手順、ガイドラインが現場で適切に運用されているかを問われるわけですからね。評価機構にケアプロセスが導入されて以降は、病院の幹部職員だけで受審するのは不可能になったといわれています。
ケアプロセスは模擬審査を含めると、全体で3回練習を行いました。1回目は3階病棟で行いましたが、行動制限「抑制」のところなどで不十分な点があり、再度、今度は師長たちほぼ全員が見学する中で行い、全体のイメージをつかんでもらいました。
ケアプロセスの中でさらに大きな難関は、「医師の指示だしから指示受け施行のプロセスがわかりやすく、安全管理上問題がない」というものですが、看護師の指示受け機能が今のオーダリングシステムにはありません。これをオーダリング上可能にするためには投資額600万円ということでしたので、断念せざるをえず、紙運用にしようと決定しました。そして、病棟における指示だし、指示受け、実施の流れを確定するために何時間も話し合い一覧を作成しました。
また実施の流れを一覧表にして、現場に徹底させ、実際に実施を可能にしていくのは大変なエネルギーを必要としました。一つでもC評価がついたら、保留になってしまうのが機能評価の大変なところです。何もしなければここでC評価がつくというのが当初からわかっていましたので、そこを実際にどう運用させ、C評価をとらないようにする、bにするということが一番苦労した点です。現場で運用するということは、全ての看護師がそれを実施できなければいけないということですから。
オーダリングと紙運用というところでかなり工夫をして本番に臨みました。最終的には注射と内服をリアルタイムに看護師が確認できないことに対して、「そのようなシステムに改善することをおすすめします」という表現でした。最終的にはそこだけで済んだということで、どうやればいいかの見通しはついています。
最後まで緻密に審査
東葛地域のプレ看護介護活動交流集会(11月28日)
――3日目の再訪問では、どんな指摘を受けましたか?
【大谷】3日目は「がけっぷちの領域をみていく」といわれていますが、サーベイヤーがC評価にするかどうかを迷う項目について再度確認する作業が行われました。
注目されたのは、感染性廃棄物(使用済みの注射の針、おむつ、処置後の器具など)の保管の仕方でした。それが「一時保管と見えなくもない」という評価になったわけです。感染性廃棄物は一時保管が禁止されていて、一時保管ととらえられるとC評価になります。
それでも講評は「見方によっては一時保管ととらえられるので、改善をしてください」という表現で、見直せば大丈夫ということでした。
7対1看護の安定的な維持のために
――話は変わりますが、今年は7対1看護の実現で奮闘されましたね。
【大谷】去年、一般病棟の7対1を実現する計画だったのですが、社会保険事務局から「実労働時間が8時間でなければ算定できない」という指導があり、勤医会は3交代で申し送りも含めて8時間15分の算定をしていましたので、できませんでした。一日15分が140人分となると約7人が足りません。急には体制が整いませんでした。それが去年の11月でした。
でも、やっぱり7対1を取得しないと東葛病院本体を黒字にしていくのは難しいので、可能なかぎり東葛病院に看護師を集中させようと、法人あげての取り組みを始めました。今年の新人看護師は全員、東葛病院に集中させました。さらに、パートや中途入職者、産休明け・育休明け、近隣の診療所やステーションから異動した人たちもすべて病棟配属としました。労働組合にも提起し、「1日の労働時間を8時間に変更し、その代わり休日を1日減らし、減らす分は夜勤手当に上乗せする」ということで合意を得ました。
今年6月実績で7月から実施しましたが、今もぎりぎりで維持しているのが現状です。7対1看護の安定的な維持のためには、まず看護師さんを増やすしかありません。とはいえ、東葛病院に新卒を全員入れるということは、代々木病院もみさと協立病院も本当はとても苦しいことなんです。新人が入ってこそ病院は活性化していくわけですから。よく英断をしていただいたと感謝しています。訪問看護ステーションも欠員を補充しないまま頑張ってもらっています。
――他にはどんな取り組みをしていますか?
【大谷】看護の質をあげていくという点では、認定看護師を増やしていきたいと思っています。認定看護師は現在勤医会全体で皮膚・排泄ケアが一人だけですが、今、緩和ケアの養成所に二人行っています。
もちろん、認定看護師が活躍するためには、現場の看護実践が土台となりますので、そこも大事にしていきたいと思っています。
――最後に、東葛病院看護部の来年度の抱負をお願いします。
【大谷】7対1看護の安定的な維持が最優先です。安定的にできるようになれば業務がもう少し改善できると思います。来年度は勤医会全体で17人+αの新卒看護師が入ってくる予定です。引き続き看護師獲得に力を入れる必要があります。
また、院内助産所を立ちあげる計画中です。場所さえ決まればスタートできますが、これが苦戦です。産科は休止しましたが、ノウハウはありますので、院内助産所から始めたいと思っています。来年は新しい医療構想を作りあげる年であり、その中に産科が入ってくるとなると、院内助産所をやりながら少しずつ拡大していくことが大切です。産科分野があると、若い人が来院するようになって、患者層も変わっていきます。人が生まれるところから亡くなるまでを視野に入れて活動するという意味では、欠かせない分野です。出産から小児、緩和ケアまで可能になれば、地域に求められる、かなりトータルにみることのできる病院になります。
最後に、「働けない」「生活していけない」という、わが国の格差の拡大は深刻です。近代看護の創設者であるナイチンゲールは制度政策について、患者のためにものすごくたたかった人でした。私たちも時代の転換点に患者のために主体的にたたかえる看護集団でありたいと思います。