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協同組合報vol.75
2009年6月号

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トピックス(2) 対談

代々木病院みさと協立病院の「医療経営構造の転換」を語る

みさと協立病院 院長 生田 利夫さん
 代々木病院 事務長  大葉 清隆さん

みさと協立病院の転換

【大葉】今日は、みさと協立病院と代々木病院の医療経営構造の転換について議論し、今後の中小病院の方向や課題を模索したいと思います。最初に、みさと協立病院について生田先生からお願いします。

生田さん
生田さん

【生田】これまでの経過を簡単に説明しますと、元々は精神120、老人120の240床の病院だったのですが、医療法で、02年に一般病床で行くか療養病床で行くかの選択を迫られたとき、老人病床120床を療養病床に変えました。そのときに精神科120床を60床に減らして床面積を確保しました。階をまたがる病棟ができて使いづらい構造でした。

 ところが06年の診療報酬改定で、療養病床に医療区分が導入され、区分1の患者さんは診療報酬が切り下げられることになった。そこで二つの療養病棟の一つを障害者施設病棟に変更し、医療区分1とされる脳卒中の後遺症や認知症で動けない患者さんに移っていただきました。

大葉さん
大葉さん

【大葉】医療区分1と2、3の間には診療報酬上の大きな差がありますから、区分1が多いと、経営的に厳しくなります。

【生田】区分2、3の方を受け入れて経営的な面も考えながら、地域の需要に積極的に応えていくためには、これからは高齢者の地域生活を支援する医療機能を持たなければいけないということで、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハビリ病棟)の開設を見越して、07年6月、療養と障害者施設の2病棟を、療養2病棟、障害者施設を1病棟という3病棟体制に切り替えました。そして今年の3月に回復期リハビリ病棟を立ち上げました。

 現在の病床内訳は次のようになっています。

 回復期リハ42床、障害者施設40床、医療療養38床、介護療養0。療養病棟は、3月で全部医療にしました。

【大葉】療養病床は06年に大きな改定があって、厳しくなりましたが、それでも日本の療養病院は黒字が基調です。

【生田】民医連の調査でも、医療区分2、3で運営していれば黒字になっている所がほとんどです。

【大葉】少し行き過ぎた療養病床を否定する傾向があったように思いますが、私個人としては、これからまた療養病床を選択する時代が来るかもしれないという予感はあります。

【生田】06年の診療報酬改定前は、施設入所待機で落ち着いた病状の方の入院する病棟でした。これからは、急性期の一般病棟から病状不安定な患者さんを受け入れられるように、療養病棟での求められる医療内容が変化しているという認識が必要になっています。

図1、図2代々木病院の回復期リハビリ病棟の実践

【大葉】代々木病院はこの数年間で様々な転換を行ってきましたので、細かなことは省きます。常に基本にあった問題意識は、渋谷区のあの地域で98床の一般病床は多すぎるという認識です。

 98床を維持するには、ある程度、無理をして急性期疾患を集めなければなりませんが、周りには日本に名だたる高機能病院がひしめいており、そこに対抗してやっていくのは大変厳しい。病床数98しかないのに、医療機器なり技術なりマンパワーなりを維持するのにはあまりにも中途半端な形態です。地域のニーズとアンマッチもあったかと思います。

 そういう中でどういう転換をやってきたかというと、一番大きな転換は2年前に回復期リハビリ病棟49床を立ち上げたことです。当初は他院からの患者さんは多くは集まらないだろうという観測もありましたが、実際には、98%ぐらいが近隣の病院からの紹介の患者さんで構成されています。一見不利だと考えていた環境が実は有利に働いたのです。

 大病院はDPCという制度もあり、常に患者の早期退院を迫られるわけです。在宅に帰る調整やリハビリを充分に提供できないしくみの中にあります。そこで、代々木病院が大病院からの退院のあとを受けて、きちんとしたリハビリテーションを提供するという役割がマッチしたわけです。リハビリテーションを積極的に提供して在宅復帰を支援する――そこに私たちの果たすべき役割があると改めて痛感しています。

 回復期リハビリ病棟の平均在院日数は86日、全国の平均が72日ですので、やや長い。疾患区分は、08年度は脳血管疾患が58%、整形疾患が42%、廃用症候群は0%でした。立ち上げ前の予測よりも脳血管疾患の患者さんが多く紹介されています。

 在宅復帰率は80%以上というところまで到達しています。全国平均が50%以下なので有意な差があります。住み慣れた家に帰る支援に貢献できているのだと思います。

 では患者さんがどの地区に帰っていっているかというと、新宿区や渋谷区、中野区、港区、世田谷区、目黒区、太田区などが圧倒的に多い。これは東京民医連の西南ブロックの地域とぴったりと符号するんですね。代々木病院は地域との結びつきが弱いと言われてきましたが、西南ブロックでの存在感や役割をしっかりと担っているわけです。

 しかも、退院後は20%の方が代々木病院や外苑診療所とつながっており、新しい患者さんの入り口に回復期リハビリ病棟がなっていることも鮮明になってきました。

 図1は生田先生が作られた図で、図2は私が手を加えた図です。DPC病院から私たちの病院が患者さんを受け入れて、その患者さんが診療所や外来に結びつき、全体が広がっていくという構図がようやくでき始めたところです。

【生田】70〜80年代は大学病院や公的病院は救急をあまり受けませんでしたので、代々木病院など民医連の中小病院が救急患者を受け入れて、その方たちが外来患者に結びつくという構図でした。患者さんも若い人が多い時代でした。

 それが現在は、高齢者が増えて、急性期治療が終わっても、すぐには退院できないので、回復期リハという役割で地域に貢献するという機能が、地域の中小病院に求められています。

【大葉】この2年間の実践で、それが明瞭になってきました。

7月から障害者病棟が稼動

【大葉】では、回復期リハビリ病棟以外の二つの一般病棟をどうするかということですが、一つを障害者施設病棟に変えるという決断をし、7月から本稼動します。

 回復期リハビリ病棟では診療報酬は包括払い制なので、透析患者さんを受け入れにくいなどの問題がありました。それが障害者病棟であれば、透析患者さんの脳血管疾患後のリハビリテーション目的入院にも対応できるのです。23区内にはこうした対応ができる病院がほとんどありません。

 現在、一般病棟の平均在院日数は2週間ぐらいですが、障害者病棟には在院日数のしばりがありませんので、60日から90日かけてゆっくりとしたケアを提供できます。さらに在宅に帰るための様々な調整も可能になります。

 そして、この5月から代々木病院では外科の手術を中止しました。都内の中小病院が外科を維持するのはいろいろな面で困難であること、また勤医会は東葛病院をセンター病院と位置づけて力を集中させることを決定したことが中止の理由です(P2〜5トピックス参照)。一般病棟の今後の役割は在宅支援を担う一般病棟という規定をしています。

【生田】23区で慢性期の病床は本当に不足しています。大学病院や公的医療機関はどうしても専門領域を中心とした高機能の病院として成り立っていますので、介護施設もリハビリ施設も足りないというのが都心の問題点です。23区での民医連の役割は、不足しているリハビリのニーズにどう応えていくかにあると思います。

 また、ALSや人工呼吸器をつけた方など医療依存度の高い方たちの在宅生活をどう支えるかも大きな課題です。ご家族が疲れたときにレスパイト入院できる、あるいはショートステイのできる医療機関はごく限られています。そういう方たちが安心して在宅生活を送るためにも、障害者施設がショートステイなどの役割を担っていく病棟になるのかなと思っています。

やりがいも展望もある

リハビリ訓練(代々木病院)
リハビリ訓練(代々木病院)

【大葉】慢性期や回復期のケア、リハビリテーションという大事な部分にどう脚光を浴びさせるか、集団としてのモチベーションをどのようにあげるのか、という点についても議論が必要かなと思います。価値観として、慢性期や回復期のケアを低く見てしまう傾向がないだろうか。慢性期や回復期のやりがいを育成レベルで考えていく必要があると思います。

【生田】看護師も医師も技術志向に流れるところがありますが、全身を管理するのに必要な技術レベルというのは専門性ではなく、実際に急性期後の全身管理をしつつレベルアップをはかっていくということが必要ではないかと、最近特に思っています。

 みさと協立病院の回復期リハビリ病棟は、他の医療機関からはあまり喜ばれない廃用症候群の方々を受けています。先日入院された95歳の方は脱水症状を起こして食事を受けつけなくなりました。急性期の病院で胃ろうを勧められましたが、家族はやりたくないということでうちに入院されました。すると、何のことはない、ご飯をすぐに食べられて、点滴をはずしてリハビリをやれるまでに回復したんです。急性期の病院では高齢の患者さんに寄り添った対応は難しく、“食べないから点滴”となりがちです。十分なケアを受けていないケースがここのところ随分見受けられます。急性期を終えたら、できるだけ早くこちらに移していただいたほうが、じつは幸せな患者さんがたくさんいるということを感じます。病気がよくならないということで急性期で1ヵ月以上いると、点滴で心不全になっていたりするなど、かえって悪くしているんじゃないかなと思うことがけっこうあるんです。

【大葉】他院から回復期リハビリ病棟に来られた方の中には、重大な貧血があったり、癌や重要な疾患が隠れていて、すぐに一般病棟に移さなければいけないケースもあります。

【生田】急性期の病院は2週間で何とか退院させようと動くわけで、DPCではその疾患以外の余分な治療をすると持ち出しになるということもあって、じつはやらないほうに傾く傾向があります。それから、大きな病院になればなるほど縦割りで、脳外科グループ、心臓グループなどと分かれていて、内科との連携があまりスムーズではないということもある。

【大葉】そういう意味では、私たちのところで総合的にみていくということは、やりがいも展望もあるということですね。

【生田】そうですね。これまではリハビリというと一定病状が落ち着いて、温泉のある病院に行ってゆっくりやると。スタッフはあまり医学的なレベルが高くなくてもいいだろうという認識でした。でも今は、けっこう早い時期に病状が落ち着かなくとも受けて、急性期医療の場で見落としたリスクを管理しつつリハビリを進めていくことが必要になってきていますので、狭い専門ではなく、全身をみていく医療が求められます。全身管理をしていくという点では急性期とは質の違う医療が求められているわけで、そこで質の高い仕事をしようと思えば、いくらでも努力できることがあるし、やりがいや展望もあります。

病棟を単位にしたチーム形成をいかに作るか

リハビリ訓練(代々木病院)
リハビリ訓練(代々木病院)

【大葉】それでは、今後の課題に移ります。代々木病院では今、病棟を単位にしたチーム形成をどのように発展させるのかということが大きな課題になっているように思えます。病棟の転換が進んで、形が変わってきていますので、チームのあり方についても新しい段階に入らなければいけない。初台リハビリテーション病院では、職場は病棟であると、看護師も薬剤師もセラピストも病棟に所属しているんだよという視点でやっていますね。

【生田】回復期リハでは日本で一番進んでいる病院ですね。

【大葉】それをすべて真似するということではなく、チームの形成については次の段階を目指さないといけないということです。障害者病棟は一般病棟からの転換になるので、運営基準や対象疾患の変更、頭の切り替えなどはこれからの課題です。2年前の回復期リハビリ病棟のときは療養病棟からの転換でしたので、頭を180度切り替えなくても、それまでの延長線上で対応できた部分もありました。今後の運営をどうしていくのか、引き続く議論が大切です。管理部はその点で適切なリーダーシップを発揮する責任があります。

 もう一つは、患者さんの退院後の生活をどう見るかという視点で言えば、介護福祉士、ケアワーカーはその分野で高い専門性を持っています。そのことを他職種も理解をして、この方たちのチーム内での位置づけをより明確にする必要があると思います。

【生田】病棟機能の中で、介護職がどういう役割を担っていくかは療養病棟でも回復期リハビリ病棟でも求められてきています。介護福祉士だけでなく、セラピストも含めた病棟の中のチーム医療をどう考えるか。薬剤師も栄養士も病棟を職場として責任を負っていく配置が必要になってきています。薬剤師については病棟配置を達成しつつありますので、次は栄養士です。患者さんが食事を食べたかどうか、体重が増えたか、じかに栄養士がベッドサイドに行って、患者さんを見て栄養管理をする。

 そういうことも含めた病棟の治療集団として介護、セラピスト、薬剤師、栄養士という職種と、社会資源を利用して在宅に帰すケースワーカーがチームとして病棟を運営していくような体制を早くつくらなければいけないと思います。

【大葉】民医連では中小病院の「ポジショニング」がテーマになっています。今日の議論はそれに接近したように思います。法人内では、東葛病院が臨床研修指定病院・DPC病院として前進と強化がすすめられています。3病院がそれぞれの機能と役割を今後も鮮明にして、地域の中での存在感を輝かせていくことが求められているのでしょう。代々木病院としては、在宅を支援する役割をさらに重視していきたいと考えています。

【生田】高齢者の地域生活をどういうかたちで医療が援助できるかが、求められる時代となってきています。高齢者の医療では、急性期医療よりも、在宅を支えられる診療所と「療養病棟」や「回復期リハビリ病棟」など、慢性期の病床との連携の強化が重要になってきます。慢性期病床での医療の質を向上させるみさと協立病院の取り組みにも注目してください。

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