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協同組合報vol.71
2009年2月号

もう一度行ってみたいキューバ

〜キューバ・聞きかじりの旅〜
東京勤医会 二戸 幸子
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アメイヘイラス総合病院の病棟で。左端が私

 マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「Sicko」の中でキューバの医療制度が注目されました。それをみて、キューバに行ってみたいなという気持ちを抱いていたとき、全日本民医連で「キューバの医療実践を学ぶ旅」の企画がだされ飛びついてしまいました。

 2008年1月17日から8日間の旅でしたが、往復で約4日かかり、カナダ経路で1泊、正味3日間半ぐらいしかありませんでした。キューバをちょっとかじってきた程度ですが、想像以上のカルチャーショックと、もう一度行ってみたいという複雑な気持ちにかられました。

 ☆☆☆

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「シッコ」に登場したアメイ
ヘイラス総合病院

 本や講演会で予備知識は多少入れたつもりでしたが、考えていた以上に物質的に貧しい、第三世界の現実が突き付けられました。シャワーからはお湯が出ず、停電も結構起きていました。エネルギーが不足というより、インフラストラクチャーが追いつかないようです。

 アメリカによる経済封鎖の損失は外貨で7000億ドル以上、かつ90年代のソビエト崩壊による再度の経済的危機。そうした厳しい中で、医療と教育は誰にでも保障され、第三世界の中でダントツの水準を保っています。

 一方、世界規模で考えてみると、なんと格差のある地球なんだろうと強く感じました。国連総会では対キューバ経済制裁をただちに解除するよう採択されています。アメリカ・オバマ政権が「今後変わるのかどうか?」と、保健省のレクチャーでも笑顔で話題にしていました。

 ☆☆☆

 保健省のレクチャーを受け、様々な医療関係機関を見学しました。見学先は以下です。ポリクリニコ診療所、ファミリードクター診療所、フィンライワクチン研究所、ラテンアメリカ医学校、キューバ諸国民友好協会、眼科病院、伝染病研究所、エンリケカブレラ総合教育病院(ベッド数475床、出産4352人、働いている人2163人<医師420人、看護師800人>)など。

 また「Sicko」の中で描かれていたアメイヘイラス総合病院に突撃訪問しました。アポをとっていなかったのですが、どうしてもという気持ちで自由時間に行ってみました。見学はできませんでしたが、ありったけの名刺と英語と片言のスペイン語、ジェスチャーで事務長室と16階の病棟まで侵入! 息を切らしながら階段で上がった16階では、気さくな看護師が写真撮影に応じてくれました。

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 駆け足の訪問でしたので、雰囲気と感性での受け取りでしかありませんが、キューバ医療のいくつかのポリシーを感じることができました。

(1) 物より人

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小学校の前で子どもたちと

 貧しい資源・財源の中で優先するのは人の価値にかかわることにお金を使うこと。通訳の方がキューバは「物より人」とよく明言していました。キューバの旧市街は世界遺産に登録されており、回収工事があちこち行われていましたが、これより先に回収工事に手をつけたのは、病院、診療所、学校だったとか。

 キューバは二重通貨制であり、国民が使うペソ通貨は、旅行者が使う通貨(兌換(だかん)ペソ)の25分の1の価値しかなく、兌換ペソを手にする人と持たざる人との格差が問題となり経済政策が議論されているところです。経済の自由化が進めば所得格差が生じるのは避けられませんが、キューバが目指しているのは「公正な社会」の実現であり、まだまだ“小金持ち“程度の格差です。

 どんなに経済的に苦境に立たされても、「憲法で国民の健康は保障されている」と言い切る保健省の役人を、日本の厚労省の役人にも見習ってほしいものです。

(2) 治療より予防

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診療所で実習する看護学生たち

 ポリクリニク診療所、ファミリードクター診療所などは設備的には決して整備されているとは言えない状況ですが、ファミリードクターがすべての国民をカバーし、医師が患者や住民のところに出向いて予防的観点で健康管理を行っているということです。「貧しいから病気になる前に予防する」が重視されます。

 国民の命と健康を守るのは国の責任で、ワクチン研究所などは国家的に事業を行っています。ジフテリア、百日咳、はしか、風疹、破傷風はほとんど国内で問題になっていないとのこと。キューバと同じ第三世界の人々のためにもワクチン開発は重要だといいます。(製薬会社はそうした安いワクチンはもうからないので作りません)

(3) 医療における国際主義

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レクチャーしてくれた看護師

 ラテンアメリカ医学校に見学に行きました。1998年、中米を襲ったハリケーン災害のときに災害支援を行い、それをきっかけに各国の医師養成をキューバが無料で行うことが始まりました。

 28ヵ国に毎年1500名の医師を送り出しています。ハバナから車で30分ほどの海岸沿いに建つ国際色豊かな医学校では、各国の学生たちが学んでいました。民医連からも送り出したい気持ちになりました。国際組織にも認められていて、ここを卒業したら自国に帰って仕事をしているそうです。

 また、貧しくて病院に行けずに視力を失った人へ手を差し伸べる『奇跡の計画』(すでに100万人が視力回復、2016年までに600万人を治療する計画)が実行されているそうです。開発国にとって深刻な視力の問題を、国際連帯と貧しい国への援助として取り組んでいるキューバの度量に感服です。

(4) 若手の活躍

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医学校の前に広がる海。ここで学び、未来を語り合う
学生たちの格好の散策コースだ

 レクチャーしてくださる方が若くてびっくり! ワクチン研究所でレクチャーされていたリカルド氏は29歳、やはり20代と思われる眼科病院のフンドラさんは、へそ出しファッション。一応大使館を通して医療視察に来ているVIP扱い(?)の訪問団なのですが、さわやかな若手の活躍にエネルギーを感じました。

 看護師の状況は、まだ家族看護に支えられているのが現実のようです。家族とのつながりが深いせいなのか、外来受診の患者さんのほとんどは家族がそばについていました。入院でも家族の介護が大きいようです。

 今年キューバは革命50周年を迎えました。100年に一度という経済不況の中で、資本主義はどの方向へ行くのか、社会主義の小さな国はどうなるのか。人間の知恵と良心が試されるキューバの国づくりの、5年後、10年後をもう一度この目で見てみたいという思いにかられながら帰国しました。

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