8月8日、厚生労働省は「穿刺器具に関する調査結果」を施設名とともに公表しました。調査対象となった医療機関10万9569施設中、2万2559施設が器具を使い、その52%、1万1749施設において使い回しがありました。ただし、針を交換していないところは2件だけでした。
対策として、厚労省は「添付文書を十分に読み、正しい使い方をするよう関係各所に改めて注意喚起し」「採血器具の見直しまでは考えていない」としています。
通知や添付文書の改訂で対応しようとすることは、間違いです。再発防止には、行政の適切な対応を望みます。
● 説明文書は見落とされる
マスコミは、「器具の添付文書で使い回しを禁じていた」と医療機関の責任を追及しています。「添付文書」は、厚労省の指導でメーカーが作成した文書です。しかし、その内容は不十分で、現場では重視されていません。
医療従事者がほしい情報は、(1)その製品の特徴を簡潔にまとめ、(2)他の薬剤・器具とはどのように使い分けられるか、(3)有用性・安全性情報が重要度の順に整理され、(4)誤解なく短時間で読める、文書です。危険性情報については発生頻度、重篤度、根拠となる文献が必要です。
現実の添付文書は、表現が回りくどく、可能性があるだけの危険性まで列挙され、企業が責任逃れのために作成したように見えます。
治療法のガイドラインになる添付文書へ、改善を望みます。
● 発生源に手をつけない、労力のムダ
危険性がわかった製品は国が規制し、メーカーに製品の改良をさせることが、根本的な解決策です。インスリンの注入器は、JISで安全性・性能を規定されました。今回の器具もその方法にならうべきです。
針を取り替えなくても再使用できる製品は、本質的に危険です。注意や教育で事故を避けることはできません。
今回の事件では、事後調査と安全策の通知で多大な労力を費やしました。この方法で、再発を防ぐことはムリでしょう。ヒトは間違いを犯すものです。
● ムダな通知を減らしてください
通知が医療機関に届かなかったことが指摘されています。しかし、産経新聞の取材に、ある県の担当者は「年間何百通もの通知がくる。どれが重要で、重要でないか判断がつきにくいこともある」と話しています。
現場まで届かないのは、重要度がわからないためです。根拠ある内容の文書は、きちんと伝わります。念のために伝えるという情報は、文書でなくインターネットに公開し、本当に重要な情報のみを紙で伝えてほしいものです。
● 参考サイト
1. 厚生労働省:微量採血のための穿刺器具の取扱いに関する調査結果について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/08/h0807-2.html
2. 微量採血のための穿刺器具(針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの)の取扱いに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/08/dl/h0807-2c.pdf
3. 楽園はこちら側: 不正解が多すぎる問題は不適切(微量採血器具問題)
http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_4b26.html