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協同組合報vol.62
2008年5月号

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トピックス 報告

地域で今何が起きているのか?!

〜健友会第1回全職員会議から〜

写真 4月30日(水)の午後2時から、「地域で今何が起きているのか?!」というテーマで健友会の2008年度第1回全職員会議が開催されました。この会議は、健友会の今年度の基本方針で強調された「地域の中で起こっている問題にしっかり目を向けた医療介護活動をすすめる」ことの具体化として開催されたものです。

 今回の会議にはこれまでになかった特徴があります。それは、地域の中で日々活動している方々の「現場からの実態レポート」であることです。また、医療介護だけにとどまらない視野も意識し、報告者が5人という欲張った企画になりました。会場の東京土建中野支部会館には総勢71人が集まり、切実な報告に聴き入りました。

 それでは、5人の方々の報告を要約して紹介しましょう。(一部、質疑応答での発言も加えました。)

[報告1] 杉並区の高齢者の概要と助け合いネットワークの取り組みについて
   杉並区老人会会長 小林 公人氏

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小林氏

 杉並区の総人口は約53万人、うち65歳以上の高齢者は9万7000人です。内訳は高齢者単身3万人、高齢者夫婦のみ3万3000人、その他子どもと同居など3万3000人。それぞれ3万人ずつという形になっています。こうした高齢者を地域でどう見守っていくかが大きな課題になっています。

 国保加入者は約20万人、うち4月から後期高齢者医療制度に約4万3000人が移行しました。

 一般には老人クラブと言いますが、杉並では「いきいきクラブ」と呼んでいます。全国老人クラブ連合会には12万6000クラブがあり、800万人が加入しています。杉並では85クラブ、7800人が加入。高齢者人口約10万人からするとまだ少なすぎます。

 私の所属する高井戸の「高寿会」は会員127人です。いきいきクラブは、全老連の全国3大運動((1)健康をすすめる運動、(2)在宅を支える友愛活動、(3)全国一斉奉仕活動)を柱に活動しています。

 友愛活動とは、地域の寝たきり・一人暮らし・認知症・虚弱・高齢者世帯で支援を必要とする60歳以上の会員及び最寄りの居住者に対して、おおむね8人以上の支援チームを組み、毎月回数を決めて、話し相手、日常生活援助、安否確認などを行うものです。07年度の実績では、杉並では85クラブのうち80クラブがこの運動を実施しており、対象者は1369人です。

 もう一つ、杉並には行政が立ち上げた「地域のたすけあいネットワーク」というものがあります。主な活動は「地域の目」として日常の見守り活動、「地域の手」として災害時の支援活動、です。私たちいきいきクラブが携わっているのは「地域の目」のほうで、内容は友愛活動とほぼ同じです。杉並には、地域包括支援センター「ケア24」が20ヵ所あって、その「ケア24」ごとに民生委員と安心協力員が組織され、活動を行っています。

 事例を三つ紹介します。一つは、高寿会の会費を集めに行ったところ、夫が持病の悪化で2階から動けなくなっていたケースです。夫婦とも80代、妻は夫の世話で倒れる寸前でした。介護保険の知識がないことがわかり、「ケア24」に同道して相談に行き、介護認定を受けました。今は安定し、訪問介護を受けています。

 二つ目は、都営住宅に住んでいた一人暮らしの80代女性のケースです。職業婦人だったため、年金が高額で貯金もあり、生活には困っていませんでしたが、軽度の認知症になり、訪問販売で商品を次々に購入、推定700万円ぐらい失いました。区や警察とも相談しましたが、24時間見張るわけにもいきませんので、「ケア24高井戸」の所長が骨折ってくれて、浴風会の中の第3南陽園に入居することができました。

 三つ目は、80代男性、身寄りなし。理容業をやっていましたが、高齢のため客が激減、貯金も底をつき、家賃も払えない状況になりました。福祉事務所へ同道して実態を話し、生活保護の受給が決まりました。また、大家さんと交渉して家賃を住宅扶助の範囲内に下げてもらい、そのまま住み続けられることになりました。

 いずれのケースも高寿会の友愛活動の対象者になっていただき、見守りを続けています。

[報告2] 建設業界の状況について
   東京土建中野支部書記次長 奈良 統一氏

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奈良氏

 主に次の3点について報告したいと思います。

1. 建設業界の状況

 建設産業は裾野の広い産業で、日本の労働人口の1割強を占めるといわれています。中野区でも7000人ほどが建設関連で、東京土建中野支部は5500人を組織、東京全体では13万人の組合員がいます。

 今、ダンピング受注が横行し、大手ゼネコン・住宅メーカーによる「市場破壊」が進んでいます。資本力にものを言わせて、非常に安い値段で仕事を請け負う。安く請け負ったしわ寄せは、その現場で働く下受け業者、労働者に行きます。

 私たちは毎年大手44社ほどを相手に交渉していますが、たとえば、ある25階建ての現場では仮設トイレが1階にしかない。休み時間はトイレに行くだけで消えてしまいます。また、ある企業は、現場の駐車場に車を止めているにもかかわらず、駐車場代を月に2万も3万も差し引く。資材を運ぶエレベーター代まで差し引く所もあります。こうしたことが日常的に行われているのです。

 賃金はどんどん右肩下がりで、1日フルで働いても経費を引かれると8000円とかになってしまう。ピザの配達のアルバイトをする組合員もいます。

 それから、建築確認という行政の手続きがありますが、耐震強度の偽装事件を発端に、審査事務の強化が行われていて、建築確認がおりず、新築着工件数が激減しています。前年比で半分に減った月もあり、これがまた私たちの仕事の減少に拍車をかけているのです。

 こうした中で倒産が増え、2007年度の中小企業の倒産は2割増しと帝国データバンクの報告にあります。

2、命の綱「建設国保」

 こちらも今、正念場に立たされています。建設労働者は「けがと弁当は手前持ち」と言われ、無権利でした。戦後、健康保険の適用を求めて闘い、1953年、政府に日雇労働者健康保険法の制定を認めさせました。ところが1970年、それが廃止されることになり、仲間たちが団結して「土建国保組合」をつくりました。

 ところが今、高齢化が進んでいて、後期高齢者医療制度が実施されると、地方では75歳以下の人はわずかしか残らないという建設組合もあり、組織の存亡にかかわる問題となっています。

3、アスベスト被害救済・根絶に向けて

 輸入されたアスベストの9割が建設産業で使われたといわれます。建設労働者は発がん性などの危険性を全く知らされないまま、マスクも付けずに働いていたのです。5月16日に国と製造企業を相手取り東京地裁に提訴、200人以上の原告団が組織されています。中野支部からも7人の被害者あるいは遺族が参加しています。

 アスベストは発症が数十年後になるケースもある「静かな時限爆弾」といわれます。今後数十万人に及ぶと推定される被害者の救済に道をひらく闘いをこれからもやっていきたい。皆さん医療従事者のご支援をよろしくお願いします。

[報告3] 社会保障制度と現在の地域の状況
   中野生活と健康を守る会会長 天野 忠一氏

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天野氏

 都営住宅約520世帯の自治会の副会長もやっています。守る会は今、生活保護の老齢加算加算廃止に反対する裁判を闘っています。東京は3月に結審し、6月に全国で初めての判決が出ます。

 少しずれた話になるかもしれませんが、小泉内閣以来、高齢者医療、社会福祉の切り捨てが進む中で、つくづく思うのは、皆さんの大先輩である後藤マンさん、我伊野徳治さん、関光甫さんなど、健友会の先輩たちがどんな闘いをしてきたかということっです。それは健友会の50年史に書かれていますが、今、こんなに世の中が悪くなってくると、あの厳しい50年代がまた来るんじゃないかという危機感を抱かざるを得ません。

 先日もある人から生活の相談を受けました。34歳で前科1犯、刑務所を出所したものの、両足の具合が悪くなって松葉杖をついています。ケースワーカーは就労できるだろうからと「就労支援センターに入れる」と言っていると。「とても働けない、どうしたらいいか」という相談です。私はまず、「憲法25条を学んでほしい。生存権を守る闘いがあなたには必要なんだ」と30分かけて説明しました。そして、ケースワーカーにこうかけあったらいいと話し、一人で交渉に行かせました。「闘うのはあなたなんだから」と、私は同道しませんでした。

 今度はアパートを借りたいということになりましたが、「所持金が1000円ちょっとしかない」と。春用の衣服が必要になって買ったそうです。「その領収書を持ってケースワーカーに言えば、お金が出るから」と教えました。「簡単に出た」と喜んでいました。彼は連休明けにアパートに引っ越すことになっています。

 請け負わない、相談者を前面に出して闘う。そうやって健友会の先輩たちは闘ってきたのです。健友会の闘いは全国的に有名で、その中で先輩たちが守る会をつくってきたわけですが、そういう闘いが今、本当に必要だと改めて思います。

 団地の守る会の会員は29人、守る会新聞の読者が43人、毎月第3火曜日に食事会を兼ねて班会を開いています。少ない月で16人、多いときは23人ぐらい集まります。食事をしたあと、私のほうで報告をして、そのあとは全部学習会です。

 うちの団地では年に1回は孤独死が起きます。みんなに訴えているのは、「新聞が2部3部溜まったら教えてね」ということ。弁当の配達を受けている人は、「弁当が朝から晩まで出ていたら連絡してね」と。仲間と力を合わせて、孤立させない、孤独死をさせない取り組みをさらにすすめていきたいと思います。

[報告4] 今、学校で何が起きているか 〜格差・貧困がすすむ中で〜
   東京都教職員組合中野支部 菊池 恒美氏

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菊池氏

 今、学校で何が起きているか、いくつか報告します。

1、教師の悩み

 私は2年前に定年退職しましたが、仲間の中には「もう持たない」と言って定年を待たずにやめた人が少なからずいます。何が問題で中途退職の決意をするか。子どもたちと心が通じ合わなくなってしまったというのが一番多い理由です。マスコミでも「モンスターペアレンツ」とか子どもたちが人間として育っていないとか、様々言われていますが、たしかにそういう事実もある。たとえば、ケータイを学校に持ってくると、だいたいは取り上げて、保護者の方にお返しします。なかなか取りに来てくれず、やっと来ていただいたら、「何日間、学校に置かれた。その間の使用料はどうしてくれるんだ」とおっしゃる親御さんがいます。現象としてはそういうことがありますが、もっと深いところで見ていかなければいけないと私は思っています。

2、急速に進む格差

 「就学援助を希望しますか」という紙が全家庭に配られます。私の学校のあるクラスでは「希望する」家庭が4割になりました。中野は就学援助がそんなに多い地域ではなかったんですが、それだけ生活が大変になっているということです。高校進学をめざす場合に都立しか受けないという子も増えています。

3、強引にすすめられる「教育改革」

 今、学校では様々なものが押し付けられています。20年ぐらい前に言われたのが“立つな、しゃべるな、チェックせよ”という「新学力観」です。先生は子どもの前に立つな、後ろにいろ。しゃべるな、教えろ、子どもたちが何をするか見ていろ。できる・できないは個性であって、手を出すことではない、という学力観です。

 跳び箱を跳べないのはその子の個性だから、他の面でその子を見なさいと。算数ができないのもその子の個性、できるのも個性。勉強のできる子はどんどん伸ばしなさい、できない子はできないなりにやればいいんだと。

 「できん者はできんままでいい、せめて実直さを養え」と言ったのは、教育課程審議会の会長だった三浦朱門さんです。それに続けて、「戦後50年、日本の学校では底辺の底上げに力を費やしてきた。これからはそういう無駄はやめて、伸びる子を伸ばすことに力を注ぐ」と。

 先生から大事にされていない、自分は学校の余計者と思ったら、子どもは荒れます。荒れないように「道徳」で押さえ込もうということですが、これは大失敗に終わったというのは本人たちも認めています。

4、どうたたかうか

 職員室でも、自由に話し合える関係をつくっていかなければいけないと、今、切に考えています。

 憲法26条は教育について述べています。「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と。「その能力に応じて」という部分を私たちは、「その子に合ったやり方で」と解釈をしています。勉強の遅い子どもは遅いのに合ったやり方で教育を受ける権利を有していると。

 組合では、行き届いた教育を、どの子も大切にする学校づくり、というスローガンを掲げています。これからも、皆さんと連帯して運動を進めていきたいと思います。

[報告5] 沼診友の会活動の中で体験したこと
   ぬましん友の会会長 桃田 数重氏

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桃田氏

 私は6年前に脳梗塞で倒れ、中野共立病院で命を救われ、今も人工透析でお世話になっています。

 今、地域に入ってみますと、深刻な事態が起きていることがわかります。一度生活に行き詰まると、悲惨な状態に陥ってしまう。具体的な事例で報告しますと、一つは、印刷業が不況で倒産、生活が深刻になったケースです。夫はうつ病になって家に閉じこもってしまった。妻がアルバイトで夜遅くまで働いていますが、収入は少ないです。31歳の息子は障害者です。妻は「このまま深刻な状態が続けば、主人が息子に手をかけてしまうんじゃないか。家に置いたまま働きに出るのが心配だ」と悩んでいます。

 友の会、障害者団体、沼診が連携して、まず息子を親から分離独立させ、障害者のグループホームに入れようということになりました。分離して単身世帯になり、生活保護を受けることができました。息子のことが解決して、一歩前に進むことができました。

 二つ目は30代の若い夫婦のケースです。中華料理店で働いていた夫が、中国のギョーザ問題で店員と争いになり、逮捕、拘留されてしまった。アパートに行ってみますと、3歳の子どもがいて、奥さんは妊娠8ヵ月。「生活できない。どうすれば」と涙ながらに訴えます。さあ、どうしたらいいか。家で家族とも相談すると、長男の息子が教会に相談に行ってくれました。牧師が「いのちを消してはならない」と呼びかけてくれ、近所の主婦が集まって、子どもの面倒をみたり、お産の手伝いをしたりしてくれることになりました。

 生活面は共産党区議に頼んで生活保護を受けられることになり、赤ちゃんも無事生まれました。ところが出産1週間後、奥さんがストレスと疲労が重なって、深夜腹痛を起こし、腸の癒着で手術が必要、1ヵ月入院ということになり、また難問が出てきています。

 三つ目は一人暮らしの88歳の女性です。片目が見えず、耳も遠くなっていますが、腰を曲げながら台所に立って、懸命に食事を作ります。独立心が旺盛で、スーパーの特売日に「一度家に帰って変装して、一人2本限りの牛乳を3本買った」と喜んでいます。生活費を切り詰め、1円でも安いスーパーを見つけては腰が痛いのに歩き回る。これが高齢者の生活の現実です。「腰が痛くて眠れない。整形外科に連れていってほしい」と言うので、車椅子を借りて連れていきました。病院で最初は息子と思われたようです。ボランティアだとわかって驚き、「うちにもそういうボランティアがいれば助かるんだけど」と言っていました。

 一人暮らしの高齢者が歩けなくなったときに絶望することは何か。地域との交流が切れてしまうことです。これがうつ病の引き金になり、その先は孤独死です。一人ぼっちの高齢者を支える「人のぬくもりの連帯」、地域ネットワークがどうしても必要です。

 沼診の地域は、約1350世帯の高齢者が生活していて、70歳以上の一人暮らしが320世帯にのぼります。友の会は「いのちの友達づくり」が原点だと思います。私も努力していきますが、健友会職員の皆さんも、友の会と力を合わせて、2本のレールでしっかり電車を走らせてほしい。短時間でもいいですから地域に入って、ぬくもりの声をかけていただきたいと思います。

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