やっと外来受診につながりインスリン導入ができた
東葛病院付属診療所 菅野秀美
年々、患者数が増している糖尿病ですが、最近では中学校、高校の学校検診で尿糖を指摘され受診につながる若年者も増えています。
●中学生の時から指摘される
藤原太郎さん(仮名)は、中学校の時から検診で「尿糖が出ている」と指摘され続けてきましたが、受診せずにいました。今回、風邪症状で受診され、採血の結果、血糖は500台、HbA1c 15、尿にはケトン体が出ていました。すぐに入院治療を勧めましたが、藤原さんは長い期間高血糖で過ごしてこられ、自覚症状がほとんどないためか、入院は拒否されました。
一緒に来院した母親にも入院治療が必要な状態であることを説明しましたが、母親も入院は拒否されました。母親にも糖尿病があり、インスリンを自己注射しておられます。
話を聞いていくと、入院できない理由は経済的な問題でした。
藤原さんの父親は、派遣社員。家賃、学費、生活費を出してしまうと家計にまったく余裕がなく、入院どころではない状況のようです。生活保護を受けていた時期もあるとのことでした。
●血糖はさらに上昇、でも入院を拒否
2度目の外来受診でも血糖は700弱と高値でしたが、入院はやはり拒否。ちょうど春休みに入る頃だったので春休みを利用しての入院を勧めましたが、頷いてはくれませんでした。3度目の外来受診はなかなか来院してもらえませんでした。何度も自宅に電話をしても出てもらえません。何度目かに、やっとお話ができても、本人の気持ちが病院に向かわず、母親が勧めても受診を拒んだりと、いい関係がつくれず頭を悩ませていました。
●学校の先生の協力も得て
このまま高血糖を放置していいはずがありません。何とか治療に結びつけようと、学校の担任と養護教諭の先生に、今の藤原さんの身体の状態をわかってもらい、協力を得ることにしました。
学校の担任と養護教諭の先生の働きかけもあり、4月に3度目の受診で母親と一緒に来院された藤原さん。血糖は変わらず高いまま。このままでは何も変わらないからと、医師と相談し外来でのインスリン導入を始めることになりました。これは、母親の強い希望でもありました。入院してのインスリン導入のメリット、外来導入でのデメリットを話しましたが、「自分も経済的に余裕がなくて入院せずに外来でインスリンを始めたのだから大丈夫」と、簡単に思っていらっしゃるようでした。まだお互いに信頼関係が築けておらず、不安だらけの開始でした。
●頼れる存在でありたい
外来でインスリンを導入するにあたって、
・1週間は連日通ってもらうこと
・今後は定期通院が必要になり、経済的な問題があっても中断しないこと(相談にはのる)
この二つを約束してもらい、連日のスケジュールを組みました。
現在、中断することなく4日目のインスリン指導が終わりました。昼食前に毎日来院してもらい、実際に自分で血糖を測定してからインスリン自己注射をします。この調子だとマスターできそうで、私もとてもうれしいです。
藤原さんは人見知りが強く、いつも俯いています。自分の気持ちを伝えることがなく、いつも母親が代弁している感じなのですが、連日決まった看護師と顔を合わせることで徐々に慣れてきているようです。少しずつ話もできるようになり、時には笑顔も見られます。
これから注射の手技に慣れてきたらインスリン量や回数の調整に入りますが、入院での導入と違って血糖の日内変動に沿った微調整ができません。学校生活との兼ね合いや、低血糖の心配など不安要素はたくさんありますが、今後もっと信頼関係を深め、不安なときや体調が悪いときに悩みを言えるような頼れる存在でありたいと思います。
● お断り: 個人を特定できないように、脚色をしています