救急センターの役割
東葛病院 救急外来 看護師長 佐々木千加子
救急センターには一晩で30数人から50人くらいの救急患者さんが受診されます。小児から高齢者まで、病気も症状も様々です。2007年9月から2階病棟10床が開設され、救急患者さんの入院に対応しています。
●在宅酸素療法を受けて
80歳男性のOさんは、50代の娘さんと二人で暮らしています。娘さんは、てんかんの既往があることと精紳発達遅延があります。生活していく上では、あまり支障にはなりませんが、いろいろと難しいことになると考えが及ばないことがあります。Oさんは、慢性呼吸不全状態で在宅酸素療法を受けています。
在宅酸素療法を受けるにあたって、医師からOさんと娘さんには、何度となく注意しなければいけないことや絶対必要な治療であるということは説明されていました。ですが、きちんと理解するということは難しいことです。日常的には救急センターと往診で管理、フォローしていました。救急センターを受診されるときには、できる限り酸素をしていただくように声かけをしていきました。
● 「息苦しい」と何度も来院
病院から約5分のところにある自宅から、「息苦しい」という訴えで昼夜問わず娘さんと何回も来院されました。自宅に酸素ボンベがあるのですが、「息苦しい」と言いながら酸素を付けずに来院されることがほとんどです。肩で息をしている状況でも、酸素も吸わずに歩いて来院されます。それでもOさんはまだ大丈夫と感じていらっしゃるようです。
いつも使わない酸素を使うときは、苦しさがいつもより増しているときなのです。ですが、手の指先で測る酸素飽和度は下がらず97%といい状態を示しているのがほとんどです。胸の聴診をすると多少の喘鳴が聞かれますが、吸入をすれば苦しさも治まり帰宅が可能になります。
そのような状況が何回も続き、救急センターの医師・看護師ともOさん親娘のことを知らない人はいないくらい有名人になっています。もちろん、救急隊員の方も知っています。
ある朝方、いつものように「息苦しい」と訴えて娘さんと共に歩いて来院されました。やはり、酸素はしていません。酸素飽和度を測ってみましたがとてもいい状態でした。ただ数日前から、かぜっぽいとは言っていました。診察、吸入し帰宅となりました。
夕方、娘さんが病院から帰宅すると、Oさんが倒れているところを発見。心肺停止状態で運ばれてきました。誰もが耳を疑いました。意識もなく、すぐに挿管されレスピレーターにつながれ3階病棟に入院となりました。心臓は回復したのですが、今後意識が戻ることは厳しいだろうと医師から娘さんに話されました。
他に身内もなく、誰にも相談・連絡するところもない一人になった娘さんをどのように支えたらよいかと考えました。心配そうにしている娘さんを自宅に一人帰すわけにもいかず、2階病棟にいったん入院していただくことになりました。Oさんの今後の回復状況にもよりますが、日を改めて娘さんには施設入所なども検討していく必要があるのではないかと話し合っています。
● それぞれの「思い」に沿った病棟に
救急センターは、いろいろな病気の人や症状を訴える患者さんが多く来院されます。病状や症状だけではなく家族の「思い」を傾聴することによって、見えてくる人間関係や思いがあると感じています。それは治療に直結するものではないにしても、患者さんや家族の方が医療者に求めていることは把握できると思います。2階病棟はほとんどの場合、一晩だけの緊急入院病棟です。他の一般病棟とは違い一定期間患者さんにかかわることはありませんが、家族の「思い」に沿った病棟なのではないかと感じています。実際に、2階病棟に入院された患者さんの家族からは「ありがとう・よかった」という言葉が聞かれています。
今回のOさんの事例は、そんな思いを改めて感じさせてくれたと思います。未だにOさんの意識は戻ってはいませんが、毎日のように来院している娘さんと救急センターのスタッフが状況を報告しあって頑張っている姿を見て、救急センターや往診部門と連携しながら娘さんを支えていきたいと思います。