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協同組合報vol.58

 このケースは、著しい幻覚妄想状態の中、暴力的な言動により警察の介入も度重なり、当院の精神科外来を経由して入院に至ったケースである。男性は70歳半ば、要介護4、妄想性障害、レビー小体病と診断。入院後は薬物療法で症状は緩和し次のステップを考える時期にきていた。

 カンファレンスを重ねる中、本人の帰宅要求も考慮し“ダメでもともと。介護サービスを使って家でどこまでできるかやってみよう”と様々な職種が関わり、いわば病院全体での取り組みが始まった。

 退院後は、毎日のデイケアとヘルパー、訪問看護の24時間体制で彼の在宅生活を支えた。火災防止のため、ガスを使用できない中で、ヘルパーさんの電熱器を利用した手料理に彼は感涙していた。また、以前から交流のあった近所の人は、家に招いたり散歩に連れ出してくれた。しかし、決まったパターンにしか対応できず、すぐに混乱してしまう彼にとって、親切心から行う近隣の人々の行動も刺激となり、夜間せん妄や徘徊などの行動へと繋がり、訪問看護の緊急対応や警察の保護を受けることとなった。

 結局、10日から2週間程度の在宅生活を3回試みたが行動障害が高じ、本人も一人暮らしの限界を感じ、これ以上の在宅生活の継続は困難となり、入院したまま施設入所を待機することになった。

 当初、在宅を試みたときに彼は「皆さんにこんなにお世話になってありがたい」と何度も涙を流していた。破綻することは予測されていたが、本人の望む生活への実現に向け皆でチャレンジしたことは、本人の尊厳を重視した認知症ケアの取り組みであり、大変意義のあるものであった。(みさと協立病院 大平てる子)

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