12月15〜16日の2日間にわたって、「協同組合 医療と福祉」の主催による「2008年度予算検討合宿」が行われました。「医療と福祉」に加盟する7組合員((医財)東京勤労者医療会、(株)外苑企画商事、(医社)はたがや協立会、(社福)東京さくら福祉会、(有)ふれあいサポート、(医社)健友会、(株)東京医療問題研究所)から、事務長・看護師長をはじめとする事業所責任者延べ140人が参加、会場の晴海グランドホテルは熱い論議の場となりました。
今年のテーマは「存続可能な医療経営構造を作り上げ展望を切り開こう」。1日目の全体会は以下の内容で行い、2日目は分科会に分かれて議論を深めました。
<1日目の全体会の内容>
・挨拶 鈴木篤東京勤医会理事長
・予算大綱(案) 東京勤医会 千坂和彦専務理事
・予算大綱(案) 健友会 吉田希以子専務理事
・健診事業の取り組みについて 日向正美(東京勤医会保健予防担当副部長)
・講演「東京勤医会経営調査と08年度予算編成の課題」室田弘(全日本民医連経営部会部長)
・税務調査対応について 坂根利幸公認会計士
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鈴木理事長
今回の大きな特徴は全日本民医連経営部会部長の室田弘さんに講演をお願いしたことです。東京勤医会は、3病院を中心にした医療構造の転換に迫られており、目下、構想を論議、検討しているところです。この構想を練り上げていくにあたり、全国的な視野で異なる視点からの意見をいただきたいということで、全日本民医連に調査をお願いしました。その結果を室田さんにお話しいただきました。
また、08年4月から始まる特定健診、特定保健指導への対応として、勤医会は健診部門の抜本的強化と「健診センター構想」を視野に入れた取り組みを進めます。その報告を保健予防担当副部長の日向さんが行いました。
開会のあいさつの中で、鈴木理事長は「勤医会は合同以来の大きな負債を抱えており、代々木病院の建て替えでまた負債を抱え、大変厳しい状況です。健友会も頑張ってはいますが、軌道に乗せるにはまだこれからです。次の対応をどうするか。人員、退職金問題、技術問題などを直視しながら、私たちに求められているものは何かということを見ていく必要があります」と訴えました。
全体会の報告はそれぞれ非常に中身の濃い内容となりました。全部を紹介したいところですが、紙面の関係でできませんので、勤医会と健友会の予算大綱、室田さんの講演をそれぞれ抜粋してお届けします。
08年度予算大綱(案)と予算編成に向けた問題提起
東京勤医会専務理事 千坂和彦
08年度予算大綱で、どうしてもやり抜かなければならない課題は三つです。
1.一番の問題は、08年診療報酬改定で障害者病棟での加算(障害者施設等入院基本料・特殊疾患入院施設管理加算)が実質的にはずされる見通しであることから、全体で約2億円の減収になること。これを3病院の病棟を中心にした構造転換で何としても乗り切っていかなければいけない。
2.「週40時間、週休2日制、年間1950時間」の実施と「確定給付企業年金」の導入を成功させる。
3.特定協力借入金30億円の満期を乗り越える資金管理。
千坂さん
勤医会は3病院の収益規模が大きく、その中でも入院収益の比重が重く、全収益の約5割を占めます。したがって、3病院の病棟の構造転換が決定的です。08年度予算編成ではここに最大の力を投入して、それぞれの病院が成り立つ構造を目指さなければいけません。
みさと協立病院の病床選択は、現段階では今の障害者病棟1、療養病棟2のままで行く、中身で工夫するという方向を管理部で決定しています。ぜひ結果を出していただきたい。
代々木病院は、構造転換プロジェクトの中間答申(案)がまだまとまっていませんが、どのような選択をしても、黒字構造の構築はなかなか困難だということが明らかになっています。医療内容の“選択と集中”を明確にする時期に来ています。課題である外科手術、救急医療、管理型臨床研修については、プロジェクトの中間答申(案)が出た段階で法人として論議し、結論を出していきたいと思います。また健友会との協議も平行して行います。
全体会が始まる直前の会場
08年度予算編成でもっとも困難なのは東葛病院です。急性期医療の強化、7対1看護基準の導入を08年度早期にめざす、外科強化に向けた取り組み、2階救急病棟の稼働率引き上げを急ぐ、障害者病床の転換をどうするか、など課題は山積しています。
いずれにしても、法人として、08年度から中期的見通しにつながるような3病院に対する方針提起を行う時期に来ています。また、「東葛病院本館増改築を中心にした中期計画」を09年度以降の数年間の目標として掲げ、医療構想、医師・看護師等の人材育成、経営計画・資金計画を立てていくことが必要な時期です。
08年度予算大綱(案)
健友会専務理事 吉田希以子
吉田さん
08年度予算を作成するにあたってどういう構えでやるか。医療情勢が大変厳しい中で、各事業所の管理者は奮闘しています。しかし、先日、労働組合と40時間問題で交渉したときのことですが、ある職員から、「この間の健友会の経営の厳しさは本当によくわかる。一緒に何とかしていきたいと考えている。でも、事務長さんたちの目の色が変わっていますか」という大変厳しい指摘をいただきました。そこが重要なことだと思っています。
理事会と事業所管理部の役割は決定的だと思います。事業所管理者が私達の経営改善に確信をもって、どう方針を提起し、全職員を巻き込んでいくのか。健友会としてはここを重視してすすめていきたい。そういう中で、展望が開ける経営構造に転換をする、全事業所で利益を出して、健友会全体で1億の経常利益を確保したいと考えています。
07年度を振り返り、11月までの到達を見てみます。中野共立病院が今年2月に立ち上がり、職員は大奮闘しました。その結果、事業収益が予算を超過しました。しかし、病院以外の予算未達が大変大きい。病院の赤字を他の事業所で補うという予算になっていたのですが、結果として大変大きな未達です。このまま推移すれば、大幅な赤字になります。
すべての事業所で改善を進めていく必要があります。どう収益を増やすのかということを日常業務の中で全職員が考え、担っていく。ここの検討がまだまだ不十分だと思います。この具体化、意思統一が重要です。
全職員で予算論議をしましょう。まず現状認識をしっかりやって、もう一度見直しをしましょう。予算というのは単に数字の羅列ではありません。裏づけのある生きた数字を予算に反映させていただきたい。そして何よりも、友の会に依拠した共同の取り組みを進めていきましょう。
[講演]
東京勤医会経営調査と08年度予算編成の課題
全日本民医連経営部会部長 室田 弘
室田さん
10月17日に勤医会本部、東葛病院、代々木病院の3チームに分かれて、調査をさせていただきました。その結果を報告させていただきます。
1.法人本部の調査について
(1)法人機能について
中期構想が未定とのことですが、今日の厳しい経営環境のもとでは、中長期構想の確立が急務と思われます。
(2)共同組織について
理事会の構成で共同組織の方が47人中3人とのこと、共同組織の参加が少ないように見受けられます。それから、友の会の会員がここ数年、1万5000人前後で増えていないとのこと。勤医会の歴史の古さ、あるいは経営規模から考えて、脆弱ではないでしょうか。友の会と一緒になってまちづくりを進めていく、そういう中心的な役割を担う存在であることを考えたとき、量、質ともにもっと増やしていく必要があると思います。
私のいた北海道の道東勤医協は、人口35万人ぐらいのエリアですが、その中に友の会の会員さんが4万5000人います。人口の1割を超える会員が存在し、理事会総勢25人の中に友の会の理事が10人参加しています。
(3)医療経営構造転換の課題
戦略方針そのものは適切な判断と思います。
感じたことはマンパワーの不整備です。現状の医師、看護師体制の中で2病院での急性期医療の展開は、困難を同時に背負い込んでいる印象があります。重点をしっかりと定めることが求められています。例えば、2病院で臨床研修管理型を取得していますが、それに関わるコストの負担と、それを守り抜くための医師の疲弊ということもあるのではないか。東葛病院の病床稼動を全面展開することと合わせて7対1看護を早急に取得することが必要ではないか。
この間の民医連の300床以上の病院はほとんどがDPC取得、7対1看護、急性期加算の取得ということで挑戦をして経営改善をはかってきています。そういう意味では、東葛病院は全日本民医連の中では見られない構造ではないか。逆に言えば、自分たちの持っている力を集中することによって、プラスにとらえなおすこともできるのではないかと思います。
代々木病院については、中野共立病院との機能分担をはかってきたと伺いましたが、機能分担の見直しを検討していただく必要があると思います。東京民医連の200床以下の病院が軒並み経営困難化しています。代々木が抱えている経営構造転換の課題は東京民医連の病院群の在り方と共通する課題だと改めて感じた次第です。
2.代々木病院の調査について
外来診療を見直す必要を感じました。医師集団全体でどういうふうに再構成をするのか議論が必要です。もう一度、病院の持っている力、役割、地域の中でのポジショニングということを医師集団の中でしっかり議論をしていただいて、再構築に向けて検討を進めていただきたい。救急車の受け入れも、急性アルコール中毒と過換気症候群が半分を占め、入院につながる救急患者が少ないとのこと。地域での位置づけは、軽症救急の受け入れ病院との見極めがされていると思います。
経営の問題では、赤字が減らない構造になっているようですが、これをどうとらえるか。赤字の要因をはっきりさせることが「対策の出発」です。お聞きしますと、「外来患者が減っている」「医師体制が大変」など様々な問題点が出されましたが、その中で、今手をつけなければならない最大の問題は何なのか。これを管理部の共通の認識にして、どんなことがあっても克服する。全力をあげて「成功体験」をつくらなければ、職員はなかなか管理部を信頼してくれません。
3.東葛病院の調査について
リニューアル構想について。急性期医療の強化、病床フル稼働を目指す方向で検討されていますが、ぜひこの方向で目指していただきたいと思います。地域の医療要求が高く、外来患者も増加傾向を維持しているとのこと、これは大きな財産です。
リニューアルにあたっての課題は看護師さんの問題です。東葛看護学校の08年卒の勤医会入職予定は2割にとどまっているとのこと、極めて少ないと指摘せざるをえません。工夫・改善が必要と思いました。
収支構造については、民医連の300床以上の病院と比較すると、日当円が低く、8割強です。原因は急性期病棟でも7対1看護基準が取得できていないことなど、診療報酬で有利な部分にシフトできていないことがあげられるのではないかと思います。
(「08年度予算編成の課題」については紙面の関係で割愛させていただきます。編集部)