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協同組合報vol.55

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CINEMA この1本

映画「シッコ」を見て

アメリカ医療の悲惨な現実と日本への教訓

新松戸診療所 所長  三浦聡雄

写真 「華氏九一一」で有名なマイケル・ムーア監督の映画「シッコ」が話題を呼んでいる。筆者も、この映画を見て、好評なのももっともと納得した。職員や友の会の皆さんに広く見ていただくよう推薦したい。

学医療の知識・技術や設備では世界最高でありながら、公的な国民健康保険制度の無いアメリカの医療には驚くほど悲惨な現実がある。約5千万人の無保険者がいて、毎年1万8千人が治療を受けられずに亡くなっている。

 民間医療保険は、決して公的国民皆保険の代わりはできない。民間医療保険会社は利益を上げることを第一にしている。まず、元気な人を加入させ、病気がちの人を排除する。そして、加入者がいざ病気になって治療を受けようとすると、あれこれとめちゃくちゃな難くせをつけて支払いを拒否する。

 今の病状とは無関係の、昔の軽い病気を理由に支払いを拒否される女性。支払い能力が無いという理由で、入院中の病院から一人でタクシーに乗せられ、公共支援施設の前で強制的に降ろされる老人。

 映画は、アメリカ医療の深刻な病状とその背景にある政治・社会の闇を、鋭く、わかりやすく告発している。

メリカの救急医療を描いた人気テレビドラマ「ER」でも、ニューヨーク黒人街の無医村状況をテーマにしたものがあった。送られてくる患者のお粗末な治療ぶりに怒った主人公の医師たちが、犯人の医師をつきとめると、無資格のまじめな若者であった。よく聞いてみると、そのスラム街の貧しい住人は、高額を要求する正規の医者にはかかれない。ニセ医者の若者に頼る以外の方法は無いのだった。事情のわかった主人公の医師たちは、不法行為と知りつつ、あえてこのニセ医者の若者を教育し援助するのだった。

れに比べて、日本の国民皆保険制度は、「命は平等。だれでも、いつでも、どこでも必要な医療を受けられる」ことを目標にしてきた。いろいろ問題はあっても、平均寿命や乳児死亡率など、世界でトップの成果をあげてきた。

 しかしながら、この十数年、政府は必要な予算も惜しみ、強引に医療費削減を進め、日本型医療制度の良さを壊してきた。とくに、小泉・安倍政権は、アメリカ型の格差社会の方向へ、金持ちを優遇し、貧乏人と病者・障害者・高齢者などの弱者切捨てを進めてきた。

 健康保険料を納められず保険証を取り上げられる人や受診時自己負担が払えない人が増え、病気が重くても医者にかかれず孤独死する人が増えている。生活保護を受けられず餓死する人も出た。産科や救急医療などの現場は予算不足・人手不足と過労で疲弊し、医療事故を恐れて、患者の受け入れを拒否する所も増えた。都会でも事実上の無医地区・無医時間帯が広がっている。

 このままでは、「シッコ」の世界は、近い将来の日本の姿である。これ以上間違った政治を続けさせてはならない。

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