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協同組合報vol.55

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この人に聞きたい(34)

「潜在看護師さんの復職支援セミナー」で再就職の後押し

東京勤医会看護部長
斉藤和子さん

 今年9月に、二戸幸子さんからバトンを受けて看護部長に就任した斉藤さんは、去年からの看護師確保大運動をもう一回り大きな運動にしていかなければ、と意気込む。確保は一定の成果があがっているが、一方で育成システムが“ザル”では辞めていく人が出てしまう。入職者を増やしつつ、厚くて温かい“土鍋”のような育成をしようと、勤医会看護部は様々な取り組みを進めている。看護師確保の状況(特に9月に行われた「復職セミナー」の取り組みを中心に)と育成の2点について語ってもらった。

写真病院こぞって看護師獲得競争へ

 ――去年から看護師の獲得競争が激しくなって、看護師不足の問題がマスコミでも大きく取り上げられています。今、看護師の実態はどうなっていますか?

★06年4月の診療報酬改定で診療報酬が3・16%ダウンする中で、唯一プラスになったのが新設された看護師配置基準でした。「入院基本料」の区分が変更され、看護師一人に対する入院患者数「15人」「13人」「10人」の従来の3区分に加え、「7人」が新設され、この「7対1」看護が診療報酬上評価されることになったのです。今回の「10対1」は旧来の「2対1」のことで、これまではこれが一番良い看護基準で、勤医会はそこまでも行っていなくて「2・5対1」でした。他の診療報酬が全部下がりましたから、病院はこぞって「7対1看護を取ろう」と看護師獲得に血眼になったわけです。

 厚労省としては、「7対1」は大学病院や大病院で取得してもらいたかったようですが、経営的な問題がありますから、実際には中小病院の取得も多かった。思惑がはずれた厚労省は、「7対1」を取得する病院をしぼろうとしています。特定機能病院とか救急加算を取っている、小児救急の加算を取っているなど条件をつけようとしているのです。来年4月の改定でどう出てくるか……。

 こうしてこの間、「7対1」取得の病院が1年間で3倍になりました。もちろん手厚い看護配置は私たちが長年求めてきたことですから、いいことなんですが、看護師が条件のいい大病院に集中して、中小病院はこれまでに増して確保が難しくなっています。

「セミナー」で復職希望者の不安を取り除く

 ――去年は団地でのビラ撒き、駅頭宣伝、紹介活動など、勤医会では「看護師ふやして」の大運動を繰り広げましたね。

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静脈注射を行っている現役看護師の実践を見学中のセミナー参加者。静脈注射は「血管君」というモデルを腕に巻きつけ血管に刺したと同じ感覚が得られる実習道具を使用

★「大きな団地には絶対看護師がいるよ!」と、光が丘団地でビラ撒きをしたときは、雨にふられてびしょびしょでした。世田谷行動では今度は炎天下で、汗を拭き吹きでした。ティッシュに「看護師募集」の紙を入れて、患者さんや駅頭で配ったり。看護師確保は法人全体の課題という位置づけで去年、「看護師確保推進本部」を法人の力で立ち上げてもらい、「これでもか、これでもか」と行動を起こしてきたのです。

 新しい取り組みとして、9月30日、日曜日1日かけて、「潜在看護師さんの復職支援セミナー」を開催しました。初回は、“潜在看護師”(資格を持っているけれども出産や育児などで現場を離れている看護師)が都心より多いかと思われる東葛・三郷地域でということで、東葛看護専門学校の実習室をお借りしました。

 全国には潜在看護師が55万人いるといわれ、この間の獲得の取り組みの中で5万人が復職したそうです。「看護師が復職するにあたって一番の不安は何だろう」と実行委員会で検討を重ね、実技のメインを救急対応と注射(採血、静脈・点滴注射、輸液の取り扱い)の2本立てにし、実際に最新の器具類を使って実技をやってもらいました。

 講義では、最新の医療・看護情勢、安全・安心の医療・看護の取り組み、の二つを話しました。勤医会看護をより理解してもらえるよう、毎年発行している看護部年報「With」(写真)も配りました。

 参加者は17名で、30代と40代前半の人が多かったです。参加者からは「4年家庭にいたので、仕事についていけるか不安。最新の技術を学べて良かった」「下の子が幼稚園に入ったので、復帰を考えている。セミナーで現場の雰囲気をつかむことができた」など、前向きな感想が寄せられました。復職したい人の不安を少しでも取り除き、再就職の後押しをしていく――セミナーの役割は大きいと実感しました。

「丁寧に」「育ちあう」をモットーに

 ――一方で、やめない対策も重要だということですね。

★そうです。子どもを産み育てながら働き続けられる環境をつくっていくことが大事で、そのために、労働条件を整備するとともに、何でも言い合える職場環境づくりをめざしてきています。もう一つは、「その人のテンポに合わせて、丁寧に育てる」ことを大事にしています。看護協会の調査によると、入職して1年目に退職する人が、04年度05年度ともに9・3%、人数にして400人です。これは看護学校10校分に当たります。せっかく看護師資格を取ったのに、1年目でやめたら、本人にとっても看護界にとっても大きな損失です。勤医会では、丁寧に育てることが効を奏しているようで、この数年、卒1の退職者ゼロ(進学など特別な事情は除く)という素晴らしい記録を更新中です。

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救急蘇生法の実技で心臓マッサージと気道確保。気道確保している方がセミナー参加者

 新人の中には、患者さんとのコミュニケーションがうまくとれない人もいます。患者さんがあれこれ話す、どこで口をはさんでいいかわからず、ずっと聞く。患者さんは聞いてもらっているから、さらに話す……ということで、6人の患者さんを順番に回って与えられた仕事をするのに1時間も2時間もかかってしまう。コミュニケーションの取り方というのは教えてできるものではないので、そういう場合は他の人よりも何倍も時間をかけて先輩が一緒に連れて回って、教えるようにします。ある意味、看護技術を教えるよりも難しいことなんです。

 1年目を2回やった看護師もいます。普通なら「看護師に向いてない」と言われるところでしょうが、本人が「頑張りたい」と言いますので、長い目で見て成長させてあげたいと思っています。成長の仕方は人それぞれですから。

 これは中途入職者にも言えることです。手が足りない所に入ってもらうので、「経験があるんでしょ」とつい即戦力を求めてしまいがちですが、相手に求めるだけでなく、この人はどのレベルにあって何ができるかを見極めて、きちんと教えることが大事です。

 看護集団が全体で育っていくためには、病棟師長、外来師長、訪問看護ステーションの所長など、現場の師長がどう育つかが大きなポイントになりますので、中間管理職の研修も丁寧にやっています。

 勤医会看護は「丁寧に」「育ちあう」をモットーに、患者さんに寄り添い、患者さんの苦しみを理解し、患者さんにとって何がいい看護かを追求していく看護集団をめざしていきたいと思います。

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