協同組合医療と福祉 ゆたかな医療・介護・福祉をこのまちに medical&welfare
HOME BACK

協同組合報vol.54

「あのー、はじめてなんですが……」の電話から

新松戸メンタルクリニック 本間 ともみ

 「あのー、はじめてなんですが、今日診てもらえますか?」

 「ごめんなさい、始めての方は予約になります。今からですと3〜4週先になりますが……」

 電話の向こうで

 ・無言になってしまう人

 ・「何とかなりませんか」と再度頼む人

 ・「それでもいいので予約してください」と言う人

 ・「わかりました」とあっさり電話を切る人

・病状を話し始める人

 等さまざまです。

●何とか要望に応えたい

 新松戸メンタルクリニックへ、1日に数件受診相談の電話があります。中でも「今日、やっと仕事を休んで電話をしているんですが、ダメですか?」と言う人には「ほんとうにごめんなさい」という気持ちでいっぱいになります。

 電話の声のトーンやしゃべり方、微妙な雰囲気を感じ取りながら、住まいや職場を聞き、管轄の健康センター(保健所)に相談するように伝えたり、受診相談の内容によっては、みさと協立病院を紹介したりしています。

 また、受診相談の内容によって「緊急性が高い」と判断した場合には、長谷川所長と相談し、診療の空き時間を使って予約を早めるなどの工夫をしていますが、それでも要望に応えられる数には限りがあります。

 Aさんは57歳の男性です。1年前会社が倒産し、ノイローゼになり、近くの内科医から抗うつ剤が処方されていました。妻に「もうだめだ」と言い、何事にもマイナス思考になっておられる状況が続いていました。そのような状況の方でも予約日は1ヶ月待ちになります。

 予約日の数日前に、妻から「入浴も洗髪もしないで髭も伸び放題。薬も飲んでいないことがわかった」と連絡がありました。「入浴できていなくても構わないし、気にしなくてもいいです。予約日には絶対クリニックへ連れてきてください」と伝え、来れるかどうか気になりましたが、その日を待ちました。

 当日、痩せ気味で顔色が悪く、うつむき加減で妻に付き添われ通院してこられました。アルコール依存症、うつ病と診断され内服薬が開始となり、治療につながりました。ほっと一安心しました。

 53歳の女性のBさんは、夜間診療時間帯の窓口へ中学1年の娘さんと一緒にお見えになりました。最近、仕事でいやなことがあり多量飲酒となり、他院で眠剤等をもらっていたようです。予約制で1週間後であることを話すと「じゃあ帰ろう」と出て行こうとされます。娘さんが「だめだよ、予約していこう」と説得し、1週間後の予約となりました。すぐ診てあげられるといいんだが…と思いながら。

 当日は連絡もなくお見えになりませんでした。どうされているのか悔やまれてなりません。本人と医療者が同じスタートラインに立って治療が始まるのですが、Bさんは同じスタートラインに立てるかどうか大変気になります。中学1年の娘さんのことも気になります。

●医療宣言の実現のために

 私たちのクリニックには、不安障害、適応障害、発達障害やボーダーラインパーソナリティの方、中には「話し相手」を求めて受診を希望される方なども多くを占めています。それだけメンタルクリニックへの敷居が低くなり、かかりやすくなっている一方で、本当は医療に結びつくべき患者を見逃しているのではないかと気になりながら、業務や電話対応に追われるのが現状です。

 特に受診相談の電話対応では、相談の内容が複雑だったり、時間をかけて聴くほうが良いと判断したときには、ゆっくり話が聴ける時間帯にかけ直していただいたり、勤めのある方や学生の方の場合は受診できる時間帯をきき、医師を決めるなど細かい対応を心がけています。

 一方、そのような対応をすれば、長谷川所長への患者さんの片寄りがおこり、再来診療もいっぱいになりパンク寸前になっています。

 また、1ヶ月も予約が先になると、予約当日に連絡なくキャンセルになることもあり、この問題にも何か手立てを検討していかなければなりません。

 日々、メンタルクリニック受診の需要が増えている現在、個々の医療機関の努力だけではその要求に応えるには限りがありますが、私たちの医療宣言である「こころに重い障害を持ったひとも、ちょっと心が疲れた人も気軽に立ち寄れてホッとできる診療所を目指します」の実現には、工夫や努力だけでなく、医師をはじめとするスタッフの複数化や規模の拡大を含めた検討が必要になっているのかもしれません。

Copyright(c)2003 medical & welfare All rights reserved.