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協同組合報vol.52

「実践と自流」を訪ねて
(6)

平和電気株式会社


新しい技術を身につけ、求められる会社へ

●創業50年

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滝川さん

 今回は「医療と福祉」がお世話になっている平和電気株式会社を訪問することになった。地下鉄東西線早稲田駅から徒歩1分、ビル2階の2部屋を使って、電機設備事業と情報通信事業を展開する。

 「来年50周年を迎えるんですが、ずっと賃貸でね。『なんで自社ビル持ってないの?』と言われるんですよ」

 去年、3代目社長に就任した滝川広行さんはそう言いつつも、自社ビルに固執しているわけでもなさそうな屈託のない表情をしている。営利第一の企業とは何かが違うようだ。

 中小企業が半世紀という時の荒波をくぐって生き続けてくるには、相当の苦労があったにちがいない。まず50年の変遷を簡単に説明してもらった。

 創業は1958年、初代社長は建設省(当時)に勤務していたがレッドパージで退職、電気屋だったことを生かして電気会社を起業した。「電気を通じて平和に貢献したい」という思いを込めて、社名を「平和電気」にしたという。滝川さんは続ける。

 「これまでに危機が3回ありました。1回目は64〜65年、東京オリンピックによる受注増で建設ラッシュとなり、取引先の建設会社が倒産、不渡りをつかまされたんです。やめていく人も出ましたが、会社を続けることが大切ということで頑張ったようです」

 2回目は1980年だったが、このときの危機はバブル到来で解消される。バブル時は電気工事を中心に総売上高7億円と最高を記録する。ところがバブルが崩壊、建設業界は大打撃を受け、平和電気も96〜99年にかけて3回目の危機となった。ゼネコンの下請けでやっていたビルの電気工事の仕事が取れなくなり、売上が半減したのだ。この危機は日本経済全体が低迷する中で起きたもので、1社の企業努力だけで何とかなるというようなものではなかった。

●「経営戦略」と「経営理念」を打ち出す

 この危機をどうすれば乗り越えられるか。1999年、2代目社長のもとで「平和電気再生プロジェクト」を立ち上げ、半年にわたって議論を重ねた。激しいやりとりもあったそうだが、その議論を経て2000年、「経営戦略」と「経営理念」を打ち出した。

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名称 平和電気株式会社
所在地 東京都新宿区早稲田町7−1
資本金 1,000万円
営業種目 電気設備・OA・情報通信設備及び附帯設備の設計、施行及び保守管理
(1)電気設備事業部
(2)情報通信事業部

 その最後に「経営理念のまとめ」として3点を掲げている。要約すると、(1)民主的な団体、法人、企業と地域社会に仕事を通じて貢献する、(2)専門的な技術を身につけ提供する、(3)全員参加型の民主的な経営を基本とする。

 危機の中で社員全員が議論に参加し、平和電気のアイデンティティが確立されたのだ。

 バブル崩壊と前後するように台頭してきたのがIT産業である。IT事業進出に遅れをとった企業は、大企業といえども“負け組”になってしまう、浮沈の激しい時代となった。こうした中で平和電気は大きく舵を切る。

 「15、6年前まではビルの電気工事が主体で、7割が電気工事、3割が情報通信という割合でした。それが2000年ごろから逆転しはじめて、現在は7割が情報通信分野になっています」

 元日立製作所に勤めていた滝川さんは、退職して民主団体の役員となって日夜社会変革のための活動に取り組み、20年前に平和電気に就職、情報通信分野の拡大に努めてきた。滝川さん自身、民主団体がかさむ通信経費にいかに苦しんでいるか、肌で知っていたのだ。

 労働組合も他の団体も業者もそれぞれ全国に組織を広げている。全国の運動をすすめ、連携をはかっていくには、情報通信にたよらざるをえない。「当時の連絡は文書と電話とファックスでした。全国に電話をかけファックスを流すわけですから、運動をすすめようと思えば思うほど、通信にお金がかかるんです」

 そこで、ある全国規模の業者団体にはインターネットを使ったIPファックスを提案、莫大な経費がかかっていたファックス代は無料になった。本部と支部の両方に同じ機種を入れる必要があるから初期費用はかかるが、経費が無料になるため、元はすぐに取れる。しかも、時間が大幅に短縮される。たとえばB4の連絡文書を全国の各支部に送るのに、それまでは夜中を使って6時間ぐらいかかっていたのが、IPファックスだと、いつでも一斉に送ることができて20秒ほどで済む。NTTのFネットなど大企業のシステムを使うこともできるが、1枚いくらとコストがかかる。

 また、ある組合連合会には1P電話を提案し、「通信費が3割も減った」と喜ばれているそうだ。

●技術を磨くための努力

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電子カルテ用のインフラ整備をした後、稼動直前のシステムチェック(長野県飯田市の健和会にて)

 「ITという技術の変遷の激しい分野でうちみたいな中小企業が生き残っていくには、大手に負けない技術を磨いていくことと、顧客の立場でメーカーに相対することが大事だと思います。新しい技術の習得のためにはできうる限りの努力をしています」

 たとえば、光ファイバーがまだ走りだった10年前ごろから、光ファイバーのLAN工事への挑戦を開始した。当初は大手メーカーから技術者を派遣してもらい、その元で学びながら技術を習得したそうだ。「代々木病院の本館と東館の地下に光ファイバーが通っていますが、あのLAN配線工事もそうやったんです。技術者を派遣してもらうと正直、採算は合いませんが、『技術を学んで、次からはうちでやるぞ!』という意気込みでやりました」。こうして光ファイバーのLAN工事の技術を持つ会社がまだまだ少ない中で、平和電気はそれができる会社になった。

 VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)という言葉を知っているだろうか。データ通信の拠点間接続サービスのことだ。以前は各拠点間に専用線を導入して通信していた。東京勤医会も、本部と代々木、東葛、みさとの各拠点が専用線でつながっていた。それが最近ではインターネットを利用したVPNが登場し、専用線を使うよりももっと低コストになった。IPファックスと同じように初期費用はかかるが、経費は無料になるのだ。平和電気の提案で「医療と福祉」もインターネットVPNを取り入れており、このシステムによって経費削減はもちろんのこと、経理業務が格段にスピードアップした。

 「VPNをマスターするのも苦労しました。どこも教えてくれませんから、まず会社と私の自宅をつないで実験してみました。うまく行かないのは何が悪いのか、メーカーの人に来てもらって、ああだこうだと調べて技術を確立していったんです」

 情報量は今後もどんどん増えていくことは明らかだ。これまでは、情報量が増えれば費用も増えていた。平和電気は、電話や情報通信の技術を使って、便利に、しかも経費削減になるよう努力を積み重ねている。

●求められる会社に

 民医連の院所で電子カルテを導入する場合、システムを大手企業に依頼すると、インフラ整備もまとめてお任せする形になって、高価なものになる場合がある。「他の会社ではできないから」と言われ、システム会社の言いなりになってしまうのだ。

 最近、滝川さんは長野県によく出張する。

 「長野民医連の光ファイバーのLAN工事や電子カルテのインフラ整備で出張しているんです。システムそのものは大手に任せるしかありませんが、インフラ整備や配線工事はうちでできます」

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データ復旧作業

 民医連や労働組合、民主団体など非営利協同をめざす団体が情報化社会の中で遅れを取らないためには、大企業の独占状態に甘んじず、選択肢を二つ三つ持って、選ぶことでコストダウンにつなげることが大事なのだ。「そうでないと、情報化社会における格差が広がってきて、民衆運動はますます厳しい闘いを迫られることになります」。情報格差に警鐘を鳴らす滝川さんの言葉は重い。

 平和電気は、システム管理のサポート面でも役に立ちたいと考えている。たとえば、電子カルテを導入したものの、運営がうまくいかないという場合がある。運営できる人が限られているからだ。

 「パソコン1台の操作ならば簡単にできるようになりました。でも、それが10台20台50台と集まったとき、セキュリティ対策等をどう管理していくか。誰でも管理できるというわけにはいきませんので、担当者がいて、我々がサポートさせていただき、担当者が変わっても仕組みが継続していけるようにしたい。わが社の新たな段階として、ものを売る会社ではなく、メンテナンス契約、サポート契約を進めていくことをめざしたいと考えています」

 パソコンのデータが壊れてしまって青くなった経験のある人はよく理解できることだが、データ復旧作業を業者に頼むと、予想外の高額を提示される。大切な健診データが壊れて、業者に頼んだら、50万円かかると言われ、二度青くなったという職員もいる。しかも、必ず救えるという保障はない。こういう場合、平和電気とメンテナンス契約を結んでいれば、すぐにかけつけてもらえる。

 情報通信はますます高度になり、複雑になっていくだろう。「仕事を通して民主団体に貢献し、求められる会社を目指す」という経営理念を持つ平和電気のような専門家集団は、頼もしい限りだ。



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