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協同組合報vol.50

(4)

協働 公認会計士共同事務所


「非営利・協同」の組織の方々と協力共同して
人が人を大切にする社会を

●公認会計士の仕事

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坂根さん

 この「『実践と自流』を訪ねて」のコーナーでは、3回にわたって民医連の事業協同組合を紹介してきた。この辺でちょっと目先を変えて、ということで、今回は「医療と福祉」の顧問をお願いしている公認会計士事務所を訪問することになった。

 「協働」は通称であり、業界登録している正式名称は「協働公認会計士共同事務所」という。事務所はJR飯田橋駅徒歩2分、駅前の外堀通りに面したビルの4階にある。

 普通の人々からすると、公認会計士は遠い存在であり、どんな仕事をしているのか、ほとんど知らない。そこでまず、一般論から教えてもらおう。「協働」のスタッフは、公認会計士が坂根利幸さん、根本守さんの二人、常勤事務局が4人、パートの事務局が3人という構成だ。今回、取材に応じてくれた坂根さんはこう説明する。

 「公認会計士が存在する目的は証券取引法です。これは市場における証券が円滑に流通するための法律であり、円滑に流通するには証券を発行する会社の財務内容が正しいことが前提になります。それが正しいかどうかをチェックするために公認会計士制度が生まれたのです。従って、本来の会計士の資格の意味は監査にあります」

 なるほど、監査が重要な柱であることがわかった。証券を発行する企業といえば上場企業だ。日本に公認会計士は約2万人(うち4千〜5千人がインターン)おり、その半数が大企業の監査の仕事をしているという。

 では残りの半数はどんな仕事をしているのだろう。「会計士の資格を取ると、自動的に税理士の資格も取れます。半数の人たちは税務を中心にした仕事をしていて、頼まれれば監査の仕事もするという方法をとっています」と坂根さん。

 ところで、一時期マスコミをにぎわせた「中央青山監査法人」だが、仕事の仕方の是非はさておき、その規模の巨大さには驚いた。

 「日本に大きな監査法人は、あずさ、新日本、トーマツと三つあります。四つだったんですが、中央青山が解散したので、三つになった。一つの監査法人には何千人という会計士が所属していて、この三つでほとんどの上場企業の監査を行っているんです」

 小さな監査法人はたくさんあるそうだが、大きなものは四つと前から決まっているそうだ。どうして? 「アメリカが四つだからです。国際的に連携しているから、日本もそういう系列になる。一部上場の企業は海外での企業活動も大きいから、そうなるんです」

 企業活動がグローバルになればなるほど、監査法人もグローバル化するというわけだ。坂根さんも根本さんも、あずさ監査法人に所属して経験を積み、坂根さんは1980年に独立した。

●労働者の立場に立って数字を考える

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スタッフたち。仕事で飛び回っているため、全員がそろうことは滅多にないそうだ

 坂根さんが民医連と出会ったのは1983年、山梨勤医協の倒産のときだった。そこに関わっていた弁護士の一人が大学の同期で、彼からの依頼だった。その直後、今度は東葛病院が倒産状態となり、当初は関わっていなかったが、87年の長期再建計画作成の前から関わることになった。当時は大口債券者との話し合いがまとまらず、銀行とリース会社から別館(当時)の競売申し立てをされ、「医療の灯を消すな!」と「東葛病院の医療を守る会」が結成されるなど、事態がめまぐるしく変化する時期だった。

 「東葛病院の再建計画は大変でした。山梨は医療の歴史があるけど、東葛にはないからね。四苦八苦しながら再建計画を作りました」

 民医連の病院の倒産という事態は、それまでの民医連運動のあり方を根本から再検討せざるを得ない契機になった。その中で生まれた一つが89年にできた「民医連統一会計基準」であり、坂根さんも基準作りに尽力した一人である。

 「それまでは会計データの作成の仕方がバラバラで、経営を判断するにしても比較検討ができなかったんです。87年頃から『統一基準が必要だ』と言い始めて議論が始まりました。統一会計基準が使われるようになって、県連や全日本で経営の検討ができるようになり、医療経営構造の転換という実践もできるようになりました」

 こうして民医連との関わりが深まる一方、労働組合からの相談も多くなっていった。総評解体、労働戦線再編の流れの中で「労働組合も財政や会計を管理する必要がある」という認識が生まれ、さまざまな労働組合が相談に来るようになったのだ。今では全労連系の労働組合のほとんどから依頼を受けているという。先日も地方の民医連の労働組合から「労働組合のサイドから経営を判断してもらいたい」という相談があったそうだ。

 「数字をどう見るかという話ができる会計士はおおぜいいますが、数字をどう考えるか、しかも労働者の立場に立って数字を考えるというところまで踏み込んで話せる会計士はほとんどいません」

 こうして民医連や労働組合、社会福祉法人といった「非営利・協同」の組織、またはそう成りたいと願う組織や人々からの依頼が多くなっていった。それを収入別で見ると、民医連が6割、労働組合が2割、その他が2割となるそうだ。

●「協働」という名称に込めたもの

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スペイン・ビルバオ空港にて、到着の遅れた荷物を待っているところ。右端が坂根さん、隣が根本さん(写真は2005年スペイン・モンドラゴン取材の旅のときのもの)

 1998年、それまで「坂根・根本・○○」と個人名を連結していた事務所名を「協働」に変更した。この名称は、スペイン・モンドラゴンの「協同労働」という実践からとった。当時の坂根さんの思いは1冊の本にこう書かれている。民医連職員と共にモンドラゴンを取材してまとめた『共生社会と協同労働――スペイン非営利協同の実験』(石塚秀雄・坂根利幸監修、2000年)である。坂根さんにとっては3度目となるモンドラゴン訪問だった(その後2005年に4回目の取材に出かけた)。

 <我が住む世界は、巨大独占資本に凌駕され、新興電脳資本に食べ尽くされてしまうのか。それとも少しでも「人間らしく」その尊厳を護りつつ生きていける世界があるのであろうか。

 その解答を見出すべく、この30年間探し続けている自分がいる。人間を疎外し、労働を差別し孤立化させる「資本の論理」が支配する世界にはあまり深入りせずに、「人が人を思い」、「労働の尊厳を大切にし」、「差別のない」、「心と想い」をかきたてられる世界へ、いつの間にか引き寄せられている自分がいる。今風に言えば、「非営利・協同」の世界だった。(略)……バスク・モンドラゴン協同組合群は、私にとっては、「働く」ということへの認識理解の革命をもたらした」

 「協働」という名称に込められた思いが伝わってくる。

 「協働」のスタッフに目を移すと、スタッフたちはクライアントの方たちと協力共同して働くとともに、スタッフ間の協力共同も大事にする。特に資格をめざす事務局員へのサポートは惜しまない。簿記学校に通う場合は費用の大半を事務所で負担するし、公認会計士を受験する人には、常勤であっても毎日出社しなくていい体制をつくる。坂根さんの一文にある「労働の尊厳を大切にし、人が人を思う働き方」を少しでも実践しようと努力しているのだ。

●「非営利・協同」をどう発展させていくか

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モンドラゴンの本部建物正面

 坂根さんは、頼まれれば、労使の団交に出席して説明することもあるという。避けたいのが普通だろうが、坂根さんは「揉め事」の中に躊躇なく飛び込み、解決策を探る。「そんなに嫌じゃないんだよ、揉める青春だったから」と笑う。「父親の影響ではない」と言い切るが、お父上は労働組合の闘士で、60年安保のときの総評の法対部長だったそうだ。

 「思春期の頃はそういう環境が嫌でね。自分で大事にしているのは、大学1年の頃のあの感覚だね」

 「あの感覚」とは、早稲田大学の授業料値上げ反対闘争にあけくれた時期の感覚のことだ。「行列のできる法律相談所」でおなじみの弁護士の丸山和也氏、『突破者』の作家、宮崎学氏とは同級生で、3人で早稲田の学生運動に没入していた時期があったそうだ。

 「でも、活動家になりたかったわけじゃない。いろいろな理由があって、2年が終わると休学して簿記学校に通いました。闘士にはならなかったけれど、その当時の時代の空気が自身の生き方に影響していることは確かです」

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モンドラゴン本部内で説明を受けているところ

 今、医療法人、公益法人、生協法人など「非営利・協同」の組織の法律がどんどん変わってきている。また去年は保険業法が改悪され、それまでは「特定」として除外されていた共済が行政指導の対象とされ、存続できない事態が生まれている。民医連の共済も例外ではない。

 「これは、アメリカの金融資本が『共済をつぶせ』と言っているためです。共済をつぶして保険商品を売り込みたいわけです。農協共済、全労災など大きな共済を民間の生保・損保と同じ位置にするのがねらいです。こうして保険や金融機関から巨大なマネーを集めて市場で使おうというわけです。共済問題でうちは今大変です」

 こうしてますますマネー経済は加速し、富の集中が進み、格差社会が広がるという構図だ。先日のNHKの「クローズアップ現代」は「アメリカのワーキングプア」を取り上げ、アメリカの所得上位者5%がアメリカの富のじつに6割を独占していると報じた。日本も確実にそこに向かっている。

 その対抗軸としての「非営利・協同」をどう発展させていくか。「協働」に求められる役割はますます大きくなっている。

名称 協働 公認会計士共同事務所
所在地 東京都新宿区揚場1-3 グロリアビル4階
主な取引先 公益法人、各種の協同組合、医療法人、社会福祉法人、労働組合など


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