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協同組合報vol.49

看護NOW(第22回)

ぎりぎりの中での夫婦愛

ほんまち訪問看護ステーション 菊地 泰子

 ほんまち訪問看護ステーションとYご夫妻とのお付き合いは、2000年5月、訪問看護とケアプラン依頼の電話から始まりました。それまでは夫が妻のSさんを一人で介護しており、Sさんは多発性脳梗塞で代々木病院の外来へ、介助で通院していました。Sさんの介護が徐々に大変になってきつつあった頃の2000年4月、介護保険が開始されました。主治医からの勧めで介護保険を申請し、訪問看護を利用しながら在宅介護を継続しようと考えていました。Sさんは、認知症の進行と下肢筋力の低下で、日常生活動作が不自由になり、コミュニケーションもとりにくく、夫だけの介護では負担が重く、早速訪問看護を開始しました。

●介護者の夫にがんが見つかった……

 Sさんは、加齢と共に病状も少しずつ進行していきましたが、介護保険のサービス(通所リハ、ショートステイ、療養型病棟など)を利用しながら、比較的安定した状態で介護は続きました。しかし、昨年4月に腹部大動脈瘤の後腹膜内破裂による出血性のショックで都立病院に緊急入院。手術はせず保存的に経過をみることになりましたが、危篤の宣告を受け、夫も子どもさんたちも、もう家には帰れない、といったんは覚悟されました。それが幸いにも、徐々に快方へ向かい、食事も開始でき病状が安定したため、代々木病院へ転院することができました。
 その後も病状は安定しているため、代々木病院からも「転院か施設か自宅か相談しましょう」と言われ、夫は「家でみるのは自信がない」と話していました。悩んでいたところ、今度は夫に大腸がんが見つかり、代々木病院で手術を受けました。経過は順調で退院できることになりましたが、悩みは妻の介護のことでした。
 Sさんの腹部大動脈瘤はかなり大きいため、施設入所はできず、転院も限られた病院でしか受けてもらえず、その病院も差額ベッド料など入院費の負担が大きく、長期に払い続けることはできません。「自信がない」と言っていた在宅介護を選択するほかはなく、夫の「何があってもいい。覚悟はできている」の決断で、退院に向けての調整が始まりました。

●妻を最後まで看取りたい

 夫は「いままで介護をしてきたが、自分だけが大変だったわけではない。妻の実家の家業を継ぎ仕事一筋で頑張れたのも妻の支えがあってのこと、妻に感謝して介護してきた。妻を最後まで看取らなければ自分は安心して死ねない」と話していました。手術後の夫の病状も心配なため、それまでの親子関係から協力を拒んでいた子ども達にも援助を依頼しました。はたがや協立診療所の往診と訪問入浴、訪問介護、訪問看護、福祉用具、配食などのサービスを利用したケアプランを立て、今年1月、Sさんは8ヶ月ぶりに我が家へ帰られました。
 介護保険だけでは在宅での介護はまかないきれず、自費(7万6700円)で補いながらのスタートでした。介護にかかる費用は、介護保険と合わせると10万円を超えます。その他に、おむつ代や配食サービスの代金・医療費などを合わせると、入院費より少ないといってもかなりの負担になりました。費用を減らせば、家族の負担が増えるという矛盾……(社会保障ではないですね)。

●最後は夫の腕に抱かれて

 一方、Sさんは認知症が進行しているものの、住み慣れた自宅に帰ったことを感じ取り、日々表情が生き生きと変化し、食事も会話も増え、時々訪問するヘルパーさんに「こんにちは」、訪問看護師に「○○さん」と名前を呼んでくれるようになりました。私たちも、Sさんの変化を嬉しそうに話してくれる夫と一緒に、その変化を喜びあうことができ、「家に帰れてよかったですね」と話していましたが、3月21日朝、動脈瘤の破裂で突然亡くなられました。最後は夫の腕に抱かれて息を引き取られました。
 夫はこう話してくれました。「覚悟はしていたので、後悔はありません。やることはやったという満足感です。家に帰れて良かった。それも、自分の腕で最後を看取れて本当によかった」「介護をしながらのこの数年、仕事で決済ができなくて大変な時が3回あった。でも差額ベッドのない代々木病院の療養病棟に入院させてもらい本当に助けられた。こうやって最後まで、妻をみることができたのもそのおかげです」
 夫婦のありようは様々ですが、Yさんご夫婦から、「苦楽を共に生きた夫婦の歴史」の上に築かれた愛情を感じ、その二人を最後まで東京勤労者医療会のグループで支えることができて良かったと思っています。室料差額を徴収しないという民医連の実践が、Yさんご夫婦の愛情と生活を守ることができ、その意味の重要性をあらためて実感することができました。


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