円滑な手続きによって一命をとりとめたKさん
健友会 天沼診療所 宮澤和美
ある日の、診療受付終了間際のこと、1週間前から食欲不振で、市販薬を飲んでも咳が続き、改善しないと来診されたKさん。
3、4日前から動けず、かなりつらい様子であったが、近所に住んでいるため何とか歩いてきたとのことだった。
●自宅で倒れ救急搬送
胸のレントゲン、採血、喀痰検査等を行い、翌々日に再診するよう話したが、来診せず、気になったため何度も電話を入れてみた。しかし通じず、入院でもされたのかと以降フォローせずそのままとなってしまった。
初診日から8日後、Kさんの二人の娘さんが当診を訪ねてきた。長女の方は岐阜から、次女は静岡から上京してきたとのことである。驚いたことに次女は、以前当診の外来患者さんで、結婚で静岡のO市へ転居されたことは知っていたが、まさかこのような形で再会するとは思ってもみなかった。
この間の経過を尋ねると、Kさんは5日前から連絡がとれず、昨日、同僚に自宅で倒れているところを発見され、救急搬送されたという。
搬入時、急性硬膜下血腫、肺炎、脱水の状態だった。搬送先の病院より、当診を来診したときの状況を教えてほしいとのことで、遠方より上京した二人の娘さんが、Kさんの自宅から当診の診察券を見つけ、次女が当診の患者であったため、すぐにこちらへ問い合わせに来たということである。
いろいろと話をしているうちに、Kさんは多額の借金を抱え、清掃の仕事はしていたが、かなり生活苦の状況だった。現在ICUに入院しているが、入院費や負債のことを考えると一体どこに相談したらいいか途方に暮れているという。
●「何でも相談・実施中」の看板を高く掲げて
事務長とも相談し、すぐに区議に連絡をとり、その日のうちに生活保護申請等の手続きをする運びとなった。後日、その後の経過を次女に電話で問い合わせたところ、1ヶ月半位入院していたが、現在は退院し転居され、一人暮らしをしているという。なんと倒れているところを発見したのは、同僚だけでなくサラ金の取立て屋も一緒だったらしいが、生保を申請したため、破産申立もすぐに受理され、負債に悩まされることもなくなったという。入院中に生保となったため、入院費用の負担もかからずにすんだ。次女は「本当に助かりました」と喜んでいた。
娘さんもそれぞれの生活があるため、同居できないが、一応自立して生活できるレベルまで回復したので安心したとのことである。また、言語に少し障害が残ってはいるが、今では何とか電話のやりとりができるまでになったそうだ。
当診受診翌日も、体調不良の身体をおして仕事に行ったとのことだが、限界まで働かなくてはならなかったKさんの状況を考えると本当に気の毒である。わたしたちも初診患者ということで、電話が不通だったときに訪問していれば、入院するような事態に至らなかったかもしれないと思うと、もっとこうしたら…という反省が残る。しかし、結果的には実生活の部分まで介入したことにより、現在までは仕事から解放され、自立した生活ができているということでよかったと思う。Kさんには、これからは自分の命を大切に精一杯生きていってほしいと心から願うばかりである。
景気は回復したと政府は宣伝しているが、私たちの近辺ではカツカツの生活を強いられ、医療さえも満足に受けられない患者さんが地域にたくさんいる実態が明らかになっている。「何でも相談・実施中」の看板を、もっと高く掲げていく必要があると強く感じた。
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