命を救った古い診察券
東葛病院5西病棟 看護師長 松尾 芳
困難事例を毎月提出していますが、このケースも、あのケースもと、毎月色々な問題を背景に持つ患者さんが病棟に入院してきます。
先日、紹介外来から一人の患者さんが入院されました。都内在住の75歳女性、生活保護を受けて一人で暮らしているAさんでした。右下肢動脈塞栓症で右足は真っ黒、意識はもうろうとしているという状態でした。
Aさんと連絡が取れずに心配していたたった一人の家族、72歳の弟さんが、自宅を訪室したところ、トイレで正座のまま便器によりかかって倒れた状態で発見されました。右下肢はまっ黒で正座の状態でまったく足が伸びなかったとのことです。20時間は経過していたのではないかということでした。
● 日本の医療はどうなってしまったの?
家族はすぐに救急車を呼び、下肢を伸ばしてもらうために、近くの整形外科で途中下車してもらい、その後救急病院に搬送されました。
都内の救急病院で3週間治療し手術が必要な状況と判断され、転院を進められました。救急病院からは、「宇都宮の病院に転院して治療したい」と言われたそうです。
しかし、唯一の家族である弟さんは千葉県四街道に住んでおり、そんな遠い所に転院しても見舞いにも行けないと思い断りましたが、病院からは、「それなら家族で転院先を探すように」と言われました。
困り果てた家族は、それでもなんとかしなければと思い、紹介状をもち病院を7件もあたりましたが、全部断られてしまいました。そのうえ、現在入院している病院からは、1日に何度も「転院先が決まったのか」との確認の電話があり、弟さんは「いったい日本の医療はどうなっているんだ」と強く不満を感じたそうです。
●電話1本でOK
困った家族は本人の持ち物から代々木病院の古い診察券を見つけ、代々木病院のケースワーカーに相談をされました。そこから東葛病院に紹介され、電話相談だけで入院が決まり、すぐに運ばれ入院となりました。右下肢の壊疽は進行していてとても危険な状態で、その日のうちに手術になりました
●私たちに求められているものは?
金曜日の夕方からの緊急手術になりスタッフの疲れもピークでした。スタッフの愚痴も出ました。「転院なのになんで?」「こんな時間に?」「だれが入院箋きったの?」「院長?」などなど。
しかし、弟さんは「ほんとうに助かりました」と深く頭を下げられました。その感謝の言葉に、自分たちの医療や看護の位置を確認したように思います。いつも困難ケースばかりで時には愚痴も出ますが、私達の医療は何を求められているのかを考え直す事例でした。
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