医療構想の議論を進めている
――今日はオープンが近づいてきた新中野共立病院の医療構想を中心にお聞きしたいと思います。まず建物の進捗状況から教えてください。
★建物は鉄骨が完成して(写真)、これから床や壁の内装に取りかかります。年内には完成できるでしょう。オープンは来年2月です。
職員については、病院を閉鎖して一気に現地建て替えをやるということで、東京勤医会をはじめとする東京民医連の各法人に80名の職員を受け入れていただきました。その職員との話し合いもほぼ終わり、来年からの方向性がだいたい出ました。看護師さんのところは絶対的な不足という別の問題がありますが。
どういう病院にするのかという医療構想については、医療構想事務局が今年7月に構想案を出し、それに基づいて議論を進めているところです。
基本的には、内科の総合的な医療をこの地域に根ざしてやっていこうということです。プライマリーケアを大切にした「あなたの専門医」的な病院ですね。それから、診療所の医療活動を支え、在宅医療を支援する病院にしたい。また、民医連の各法人との連携をさらに強めて、お互いに成長し展望を切り開いていけるような病院にしたいと考えています。
中野共立病院はそれまでの134床から110床(一般病床55、療養病床55)になります。中小病院がさらに縮小するわけですが、代々木病院との連携、機能分担を進めてきており、代々木150床、中野共立110床、合計すれば260床になります。この260床の病院を地域の方にどう使っていただくかということを考えながら、新しい病院を運営していきたいと思っています。
大きくぶち上げるような「花火」は何もありませんし、現実は大変厳しいです。この間の厚労省の医療政策のもとで、特に中小病院つぶしがターゲットになっていて、これからの医療に中小病院は要らないという攻撃が進んできています。一方、お金がなければ医者にかかれないという状況にもなってきています。こうした厳しい中での建て替え、オープンですから、覚悟をもって取りかからなければいけません。
とはいえ、厚労省の思惑はともかく、中小病院に求められているものは本当にないのだろうか……。高齢者が増えているのに、高齢者が身近で入院してきちんとした医療を受けられる病院は少ないという現実があるのです。そう考えると、高齢者に頼られる病院というのは、今後ますます希少価値になってくるはずで、そこに挑戦していきたいと思っているのです。
高齢者の暮らしを支える病院に
――「在宅医療を支援する病院にしたい」ということですが、もう少し具体的に説明してください。
★健友会は病院が一つで診療所が九つという、民医連の中でも特殊な形態の法人です。この九つの診療所が往診している在宅の患者さんだけでも400人弱いらっしゃいます。元々在宅の裾野が広いという特徴を持っているのです。
診療所を中心に在宅で一生懸命に治療しているわけですが、患者さんの具合が悪くなって入院が必要になる場合もあります。具合が悪いときにはいつでも気軽に入院できる、差額ベッド代が要らないからお金の心配をしなくてもいい。そういう病院が近くにあれば、安心できます。そういう在宅バックアップ機能を提供したいと思っています。
脳疾患、心臓疾患など急性期の重い病気はどこの病院でも一時的には引き受けてくれます。しかし、高齢者の虚弱状態のような症状を丁寧にみてくれる病院は少ない。たとえば、お年寄りが夏場にちょっとお腹をこわして、1日2日食べられなかったとします。それだけで高齢者というのは命の危険にさらされることだってあるのです。そういう方が一時的に入院し、体力が回復したら自宅に帰る。つまり、高齢者の臓器だけをみるのではなく、高齢者の暮らしを支えていくような医療をやっていきたいと考えているのです。
病床は一般病床と療養病床を55床ずつと考えていますが、一般病床も厚労省の政策誘導の中で、どういう形が可能かということが変わってくるだろうし、療養病床、いわゆる慢性期の病床も、療養病床廃止あるいは削減の動きになってきていますから、どういうことになるか固定的に決めるわけにはいきません。「必要なときにはいつでも入院でき、治療と同時にリハビリテーションをして、回復したら在宅に帰る」ということで、二つの病床をうまく使いながら、時代の中でいろいろ変化させながらやっていきたい。
高齢者の医療ということになると、臓器別の診断能力だけでなく、高齢者を全人格的にみる医学的・医療的な目というものが必要になります。高齢者をきちんと治療できる、リハビリの機能も高めていかなければいけないとなると、もっともっと議論して深めていかなければいけません。
そういう意味では、厚労省の病院政策とは逆行する方向を打ち出していくことになります。高齢者をきちんとみる病院が本当に必要だということは現場の人たちはみんな感じていますが、厚労省の政策誘導の中で「それは無理だ」と、ちょっと負けてしまっている。それに負けないでやっていくには、かなりの気合と政策が必要です。
総合的なネットワークを
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| リハビリ室のレイアウト図 |
――そうすると、端的に言うと、高齢者のための病院ということでしょうか?
★高齢者のための、と言い切ってしまうと語弊があるかもしれません。高齢者のための病院というと、私たち自身も、ややランクが落ちて、行き場のない人たちの最後の場所というふうに思ってしまう。その認識からまず変えていかなければいけないとは思っていますが。現実には入院患者さんのうち高齢者が7〜8割になるでしょうから、高齢者の医療をきちんとできる病院という位置づけでいいと思います。
今後ますます病院の機能分担が進み、大病院や大学病院は1週間〜2週間で集中的な治療を行って退院させるということになって、高齢者の特性に応じた医療をきちんとやる病院はさらに少なくなっていくと思います。そういう病院がなくて悩んでいる開業医の先生も大勢いらっしゃるので、中野区の医師会からも期待されています。
――建て替え前は二次救急医療機関として届け出ていましたが、救急医療についてはどうお考えですか?
★救急告示だけで、二次救急医療機関としては届け出ません。民医連ではこれまでは中小病院といっても救急救命を含めた急性期対応ができることが前提みたいなところがありましたが、医師も含めて頭の切り替えが必要です。
患者さんをトータルにみて、リハビリを行って在宅に帰すということになれば、医療のあり方も今まで以上にチームワーク医療が求められます。診療所や訪問看護ステーション、介護の事業所と病院とが一体となって総合的なネットワークを作っていく必要があります。厚労省が言っているのは、病院というのは一時的に治療する所だと、家に帰るための調整機関は病院ではないと。だんだんとそうなってきている中で存在感を発揮するには、その一体感を強く打ち出していくことだと思っています。
実践を通して闘いを挑んでいく
――そういう病院があったらさぞかし心強いだろうと思いますが、経営的にはいかがでしょうか?
★そこは今みんなで悩んでいるところで、厳しいことは厳しいです。出発のところでは診療所群に支えてもらうという面も必要になってくるかと思います。
病院が高齢者に対する正確な診断と退院後の生活までの方針をきちんと立てられるかどうかということと、家に帰すためには診療所群が在宅医療の水準を上げていかないといけません。その相互の力が高まれば、病棟も回転して、切り開いていける道が出てくるのではないかと思っています。
患者さんが入院する、回復して家に帰る――この流れができれば、救急医療をあてにする医療とは違う形で合理的に運営できるのではないかと。これは期待ですが。
在宅医療の水準という点では、一つには、この4月から24時間在宅支援診療所が始まっているわけですが、診療所によっては24時間対応できない所もあります。24時間安心してみてもらえる、あるいはちょっと具合が悪くなったときに入院も含めてすぐに対応してくれるという、その安心感をどうつくっていくかです。それぞれの診療所群がそれを自分のところでやろうとしても、なかなか難しいですので、法人が一体となって総合的に受けていけるような道も考えていきたい。病院という一つの結集軸ができることで可能性は広がってくるでしょう。
経営的にも病院と診療所が一体となって経営全体を引き上げていく、そういう形が取れれば理想的です。病院が小さくなったので、その分負荷も小さくなります。事業収益の割合で見ると、中野共立病院が35%、介護事業も含めて病院以外で65%であり、病院以外の収益率が大きいという構造は東京民医連の中でも珍しいのです。そこに法人あげての奮闘が求められています。
私たちは、ただこぎれいな病院をつくろうとしているわけではありません。病院建設を通して、厚労省の高齢者医療切捨てに闘いを挑んでいく。これ以上は黙っていないぞと声をあげていく。地域の方々や患者さんと連帯して、そういう砦になりたいと考えているのです。
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