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協同組合報vol.41

介護の現場から

(新連載)

ある母と息子


 母91歳、息子・次男66歳、二人と亀20匹同居。もう20数年も前から、或る団地で暮して来た。母が、とうとう力尽きた。室内やトイレには這って移動、調理もできず、風呂にも入れなくなった。遠方に住む長男が事態を知り、市に相談することで初めて介護保険制度やケアマネの存在を知った。母が90歳になった、昨年のことだった。
 認定結果「脳血管性認知症・ADL低下 要介護4」。訪問の中で、もう一つの事態が明らかになってきた。居間の水槽では大小の亀が20匹程うごめき、カーペットやカーテンは排泄物の汚染で変色し、室内に異臭が漂う中で、母は、ケアマネと息子との会話に敏感に反応しチラチラッと視線を向けてくる。息子に普段の食事の様子を聞くと、炊飯器の中を見せたり、安売りで購入した菓子パンを自慢げに見せてきた。母のための買い物も、決まった物しか購入できず、他の物を勧めると混乱した。明らかに知的障害を思わせた。
 しばらくするうちに、この母は、この事態になる直前まで、息子を他の誰とも接触させず、いつも傍において世話をしてきたことがわかってきた。療育手帳のことも知らず、誰にも相談せず、何十年も……。
 或る日曜の午後、息子から「お母さん手が痛いみたいなので見にきてほしい」という連絡が来た。緊急の訪問看護を依頼したところ、高熱を出し脱水状態との報告あり、救急病院へ搬送され即日入院となった。一方、母に会いたい息子は病院が遠方にも関わらず、「お母さんに会いに自転車で行っていいか」とニコニコしながらケアマネに何度も尋ねてきた。危ないので退院まで待っているよう勧めると「じゃあ、亀の餌のザリガニを採りに行ってもいいか」との質問に変わった。
 この母と息子の長年の生活の重みや地域社会を自問しながら、知的障害を持つ息子と認知症が進み介護を必要とする母の生活を支えていくためにはどうしたらいいのか、今、懸命に対応を続けている。(T・0)


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